「んー?」
ひょっこりと、少しだけ開かれた障子から顔を覗かせる。
障子を開いてトテトテと近寄り、けれど"それ"からは少しだけ離れて見つめる。
「んんー?」
その少しの距離を縮め、掛けられた厚めの布を持ち上げて中を覗き込む。
ふわり、と柔らかい熱気が顔を撫でる。
「おー?」
その柔らかな熱気に誘い込まれる様に、頭から身体を中へと滑り込ませる。
中は外とはまるで別世界の様に暖かく、まるで羽毛に包み込まれるかの様に心地よい。
「んー……」
瞼を閉じ、全身から力を抜いてみる。
気持ちいい、このままゆっくりと眠ってしまいたい。
けれど無情にもそんな思いは"それ"の持ち主によって崩されてしまった。
「こーら!あんた何やってんのよ」
僅かに"それ"から出ていた足を掴まれてズルズルと外に引っ張り出されてしまう。
不機嫌そうに自身の足を掴んでいる人物の方へと振り向くと、同じように不機嫌そうな顔をした"それ"の持ち主がこちらを睨み付けていた。
『炬燵と蜜柑』
「お邪魔してるよー」
「うん、よろしい。で、あんたはそんなところで何やってるの」
ルーミアの足を掴んでいた手を離した霊夢は、脇に置いてあったお茶や煎餅を乗せたお盆を持って"それに"身体を入れる。
それを見たルーミアも同じように身体を、今度は顔からでは無く足から入れる。先ほどは違ったつま先からじんわりと暖められる感覚。
これはこれで気持ちいいな、とルーミアは思った。
"ずずっ"と水を啜る音がする。音のする方を見れば霊夢が先ほど持ってきたお茶を幸せそうな顔で啜っていた。
「霊夢ー、私にもお茶欲しいー」
「自分で煎れてきなさいよ、前に教えたでしょ。お茶葉は台所の棚にあるから」
指をくわえて催促してみたルーミアだったが、霊夢は自分で煎れるように促した。
「うー」と唸りながらも、お茶は飲みたいので渋々ルーミアは"それ"を惜しむかの様にゆっくりと這い出て台所へと向かうのだった。
ここ暫く、ルーミアは博麗神社に入り浸るようになっていた。
理由はそれなりにあるが、一番の原因はこの時期の寒さにあった。
季節を秋から冬へと移ろうかとしている幻想郷では、目に見えるように人も妖怪も出歩く姿を見る事が少なくなっていた。
それはルーミアの周りも例外ではなく、毎日の様に遊んでいた友人と言える者達のその殆どが姿を見せなくなっていた。
リグルは蛍の妖怪ともあり、元が蟲なので寒さに弱くこの時期は蟲達同様、あまり行動する事はない。
ミスティアは彼女自身が経営する八目鰻屋が近頃人気らしく、毎日せっせと汗を流して八目鰻を焼いているらしい。
橙はマヨヒガで他の猫達と暖かい囲炉裏の周りで丸くなっているらしい、主人である狐も妖怪もきっと大変だろう。
唯一この時期により一層活発になるチルノとその友人である大妖精はよく見かけるが、彼女たちはこの季節、毎日と言って違わない程とある妖怪と一緒に行動を共にしている。
きっと一緒に遊んでも彼女たちは何も咎めないだろう、けれどその妖怪と共にいるチルノを見ていると、何処かいつもと違う表情をしている気がする。
そんなチルノの邪魔をするのは、何だか気が引けた。
そういった彼女なりの考えや思いやりもあり、この時期ルーミアは1人で行動する事が多い。
元より1人で生きてきたルーミアにとって1人は苦痛ではないが、それでも友人と言える者達が出来た今、寂しいと言う気持ちは少しある。
そんな気持ちを抱きながら、ふらふらと飛んで行た先にあったのが博麗神社だった。
博麗の巫女の「人妖問わずに惹きつける性格」がルーミアをここへ招いたのか、それともルーミアが無意識の内に此処へやってきたのか。
それは彼女にも分からないけれど、ルーミアはこの気持ちを紛らわせてくれるかという思いを何処かで抱き、僅かに話し声が聞こえる居住スペースの縁側へと降り立ったのだった。
「うー寒いー」
小走りで台所から戻ってきたルーミアは一目散に"それ"へと身体を滑り込ませた。器用にも左手に持った湯飲みと右手に持った急須からお茶を溢さずに、だ。
ふぅ、と溜め息をついて"ずずっ"とお茶を啜り、今度はほぅ、と一息つく。
「あんた……変なところで人間臭いわね……」
横目でルーミアを見ていた霊夢が、そんなルーミアを見てそう漏らした。確かにルーミアを知る人物からすれば、大体の者は霊夢と同じ様に思うだろう。
「だってこれって暖かいんだもん、これって一体何なの?昨日来た時はこんなのなかったよ?」
うっとりとした表情で厚い布の上に置かれたテーブルに頬を押しつけてルーミアは霊夢に問う。
ルーミアの記憶では、確かに昨日此処にあったのはこれでは無く、いつもの丸いちゃぶ台だ。「寒くなってきたわね」とか「そうだねー」とか、そんなやりとりをした記憶もある。
「あぁ、これは炬燵よ。それも今朝山の河童が持ってきた、"電気炬燵"とかいうらしいわ。原理は分からないけど、骨組みの真ん中にある装置が発熱して中を暖めるんだそうよ」
ルーミアと同じようにテーブルに頬を押しつけた霊夢がそう説明する。
「んー、よく分からないけど、外の世界の科学っていう力が作った物なのかなー?」
そう言いながらスッと煎餅が入った皿へと手を伸ばす。
博麗神社に入り浸り始めた頃、ものの数分で皿一杯の煎餅を平らげたのを霊夢にもの凄い形相で怒鳴りつけられて以降、一枚一枚ゆっくりと食べるように心がけている。
「らしいわね、まぁあとはこれに蜜柑でもあればもっと良いんだけど」
霊夢は自分の湯飲みの中が空になっているのを見て、さっとルーミアの湯飲みをかっさらって口に運んだ。
元が霊夢の物であるのでルーミアは何も言わない。これが魔理沙辺りなら「それは私のお茶だぜ」とか言って湯飲みの取り合いになったりもするのだろう。
「むっ……あんた、お茶煎れるの上手いわね……」
「えへへー、でもどうして蜜柑があればいいの?」
むむむ……と湯飲みのお茶を見て唸っている霊夢にルーミアは率直に問いかける。
「人間の世界じゃ炬燵と蜜柑は二つで一つの様なものなのよ、どういう経緯でそうなったかは私も知らないけど、今じゃ冬の定番となってるのよ」
「ふーん、でも私は蜜柑より鍋の方が好きだなぁ、牡丹鍋とか」
今にもじゅるりと涎を垂らさんかとばかりの表情を浮かべるルーミア。
「あんたは猪より……いいわ、やっぱり。聞きたくないし」
はぁ、と霊夢は溜め息をついた。
そんな霊夢を見てルーミアは今度はちょっと残念、と言った感じの表情を浮かべた。まぁ自身の食生活なんて聞かなくても分かっているだろうし、聞きたくもないんだろう、と思った。
「んー、でもそう言われると食べたくなるね」
霊夢に取られた湯飲みの代わりに、霊夢の湯飲みを取って急須のお茶を注ぎながらルーミアは言った。
「お鍋が?」
「お鍋もだけど、蜜柑だよ。炬燵で食べると美味しいんでしょ?」
「そうなんだけど生憎、今年はまだ無いのよ」
「そうなのかー、残念だなー」
はぁ、と二人して溜め息をついた。代わりに、と言った感じにルーミアはまた煎餅に手を伸ばした。
「おーっす、邪魔するぜー!」
がらっ、と勢いよく障子を開けて魔理沙が現れる、博麗神社ではもう何度も見られる光景だ。
「邪魔するなら帰ってよね」
「はいよーって何やらせるんだよ」
知ってか知らずか、外の世界ではそこそこ知名度のあるやりとりをしつつも魔理沙が何やらダンボールを抱えて入ってくる。
「おっと、こりゃホントにお邪魔だったか?」
二人して同じ様な体勢で炬燵に入っている霊夢とルーミアを見て、魔理沙は仕返しと言わんばかりにそう口にする。
「おー魔理沙だー、いらっしゃーい」
「おう、邪魔するぜ」
ルーミアがいる状況に慣れているのか、魔理沙はルーミアの挨拶にも驚くことなく返す。
「で、それは何なの?」
「あぁ、この時期には定番の物だぜ」
そう言ってダンボールを開ける、すると中にはぎっしりと詰められた蜜柑が山の様に入っていた。
「炬燵も出してるみたいだし、タイミングが良かったぜ。おーこれがにとりが言ってた電気炬燵ってヤツか?」
よっ、とダンボールを霊夢とルーミアの間に置いた魔理沙は、言うな否や霊夢の向かい、ルーミアの右に霊夢やルーミアと同じように身体を滑り込ませていた。
「あら、丁度蜜柑の話しをしてたのよ」
ナイスタイミングね、と言って霊夢は上機嫌になったのか、自分の湯飲みにお茶を注いで魔理沙の前に差し出す。この時霊夢が注いだのはルーミアが煎れてきたお茶である。
「そりゃますます丁度良かったぜ。……ん、少し冷めてるけど美味いな。ルーミアか?」
「鋭いわねあんた……」
「お前が煎れるお茶は私には薄いからな、不味くはないが私はこっちの方が好みだぜ」
カカッ、と笑う魔理沙、そんな二人には目もくれずルーミアは既に魔理沙が持ってきた蜜柑を頬張り続けている。一応霊夢に怒られるのは嫌なのでペース自体は少しゆっくりだ。
「ちょっと魔理沙、貴女も少しは手伝いなさいよ……ってあら、珍しい子がいるのね」
先ほどの魔理沙と同じようにダンボールを抱えて入ってくるのはアリスだ、アリスはルーミアを見ると意外、と言った感じの声を上げた。
こんばんわーと律儀に挨拶するルーミアに、あら偉いわね、こんばんわ、とアリスも挨拶を返すと、漸くその抱えていたダンボールを下ろす。
どすん、と音を立てて下ろされるダンボールを見て、今度はルーミアがアリスに問いかける。
「それはなにかなー?美味しそうな匂いがするけど」
「あら、勘が……というか鼻が利くのね」
アリスがダンボールを開けると、
「里で良い食材が手に入ったのよ」
「今夜は鍋だぜ!」
ルーミアと霊夢が中を覗き込むと、同時に二人を目を合わせる。
「こういうのって棚から牡丹餅って言うんだっけ?」
「牡丹だけに?あんたにしては上手い事言うわね、今日は良い日だわ」
中には人参や椎茸、白菜に味噌、そして大量に盛られた猪肉が入っていたそうな。
終わり。
ひょっこりと、少しだけ開かれた障子から顔を覗かせる。
障子を開いてトテトテと近寄り、けれど"それ"からは少しだけ離れて見つめる。
「んんー?」
その少しの距離を縮め、掛けられた厚めの布を持ち上げて中を覗き込む。
ふわり、と柔らかい熱気が顔を撫でる。
「おー?」
その柔らかな熱気に誘い込まれる様に、頭から身体を中へと滑り込ませる。
中は外とはまるで別世界の様に暖かく、まるで羽毛に包み込まれるかの様に心地よい。
「んー……」
瞼を閉じ、全身から力を抜いてみる。
気持ちいい、このままゆっくりと眠ってしまいたい。
けれど無情にもそんな思いは"それ"の持ち主によって崩されてしまった。
「こーら!あんた何やってんのよ」
僅かに"それ"から出ていた足を掴まれてズルズルと外に引っ張り出されてしまう。
不機嫌そうに自身の足を掴んでいる人物の方へと振り向くと、同じように不機嫌そうな顔をした"それ"の持ち主がこちらを睨み付けていた。
『炬燵と蜜柑』
「お邪魔してるよー」
「うん、よろしい。で、あんたはそんなところで何やってるの」
ルーミアの足を掴んでいた手を離した霊夢は、脇に置いてあったお茶や煎餅を乗せたお盆を持って"それに"身体を入れる。
それを見たルーミアも同じように身体を、今度は顔からでは無く足から入れる。先ほどは違ったつま先からじんわりと暖められる感覚。
これはこれで気持ちいいな、とルーミアは思った。
"ずずっ"と水を啜る音がする。音のする方を見れば霊夢が先ほど持ってきたお茶を幸せそうな顔で啜っていた。
「霊夢ー、私にもお茶欲しいー」
「自分で煎れてきなさいよ、前に教えたでしょ。お茶葉は台所の棚にあるから」
指をくわえて催促してみたルーミアだったが、霊夢は自分で煎れるように促した。
「うー」と唸りながらも、お茶は飲みたいので渋々ルーミアは"それ"を惜しむかの様にゆっくりと這い出て台所へと向かうのだった。
ここ暫く、ルーミアは博麗神社に入り浸るようになっていた。
理由はそれなりにあるが、一番の原因はこの時期の寒さにあった。
季節を秋から冬へと移ろうかとしている幻想郷では、目に見えるように人も妖怪も出歩く姿を見る事が少なくなっていた。
それはルーミアの周りも例外ではなく、毎日の様に遊んでいた友人と言える者達のその殆どが姿を見せなくなっていた。
リグルは蛍の妖怪ともあり、元が蟲なので寒さに弱くこの時期は蟲達同様、あまり行動する事はない。
ミスティアは彼女自身が経営する八目鰻屋が近頃人気らしく、毎日せっせと汗を流して八目鰻を焼いているらしい。
橙はマヨヒガで他の猫達と暖かい囲炉裏の周りで丸くなっているらしい、主人である狐も妖怪もきっと大変だろう。
唯一この時期により一層活発になるチルノとその友人である大妖精はよく見かけるが、彼女たちはこの季節、毎日と言って違わない程とある妖怪と一緒に行動を共にしている。
きっと一緒に遊んでも彼女たちは何も咎めないだろう、けれどその妖怪と共にいるチルノを見ていると、何処かいつもと違う表情をしている気がする。
そんなチルノの邪魔をするのは、何だか気が引けた。
そういった彼女なりの考えや思いやりもあり、この時期ルーミアは1人で行動する事が多い。
元より1人で生きてきたルーミアにとって1人は苦痛ではないが、それでも友人と言える者達が出来た今、寂しいと言う気持ちは少しある。
そんな気持ちを抱きながら、ふらふらと飛んで行た先にあったのが博麗神社だった。
博麗の巫女の「人妖問わずに惹きつける性格」がルーミアをここへ招いたのか、それともルーミアが無意識の内に此処へやってきたのか。
それは彼女にも分からないけれど、ルーミアはこの気持ちを紛らわせてくれるかという思いを何処かで抱き、僅かに話し声が聞こえる居住スペースの縁側へと降り立ったのだった。
「うー寒いー」
小走りで台所から戻ってきたルーミアは一目散に"それ"へと身体を滑り込ませた。器用にも左手に持った湯飲みと右手に持った急須からお茶を溢さずに、だ。
ふぅ、と溜め息をついて"ずずっ"とお茶を啜り、今度はほぅ、と一息つく。
「あんた……変なところで人間臭いわね……」
横目でルーミアを見ていた霊夢が、そんなルーミアを見てそう漏らした。確かにルーミアを知る人物からすれば、大体の者は霊夢と同じ様に思うだろう。
「だってこれって暖かいんだもん、これって一体何なの?昨日来た時はこんなのなかったよ?」
うっとりとした表情で厚い布の上に置かれたテーブルに頬を押しつけてルーミアは霊夢に問う。
ルーミアの記憶では、確かに昨日此処にあったのはこれでは無く、いつもの丸いちゃぶ台だ。「寒くなってきたわね」とか「そうだねー」とか、そんなやりとりをした記憶もある。
「あぁ、これは炬燵よ。それも今朝山の河童が持ってきた、"電気炬燵"とかいうらしいわ。原理は分からないけど、骨組みの真ん中にある装置が発熱して中を暖めるんだそうよ」
ルーミアと同じようにテーブルに頬を押しつけた霊夢がそう説明する。
「んー、よく分からないけど、外の世界の科学っていう力が作った物なのかなー?」
そう言いながらスッと煎餅が入った皿へと手を伸ばす。
博麗神社に入り浸り始めた頃、ものの数分で皿一杯の煎餅を平らげたのを霊夢にもの凄い形相で怒鳴りつけられて以降、一枚一枚ゆっくりと食べるように心がけている。
「らしいわね、まぁあとはこれに蜜柑でもあればもっと良いんだけど」
霊夢は自分の湯飲みの中が空になっているのを見て、さっとルーミアの湯飲みをかっさらって口に運んだ。
元が霊夢の物であるのでルーミアは何も言わない。これが魔理沙辺りなら「それは私のお茶だぜ」とか言って湯飲みの取り合いになったりもするのだろう。
「むっ……あんた、お茶煎れるの上手いわね……」
「えへへー、でもどうして蜜柑があればいいの?」
むむむ……と湯飲みのお茶を見て唸っている霊夢にルーミアは率直に問いかける。
「人間の世界じゃ炬燵と蜜柑は二つで一つの様なものなのよ、どういう経緯でそうなったかは私も知らないけど、今じゃ冬の定番となってるのよ」
「ふーん、でも私は蜜柑より鍋の方が好きだなぁ、牡丹鍋とか」
今にもじゅるりと涎を垂らさんかとばかりの表情を浮かべるルーミア。
「あんたは猪より……いいわ、やっぱり。聞きたくないし」
はぁ、と霊夢は溜め息をついた。
そんな霊夢を見てルーミアは今度はちょっと残念、と言った感じの表情を浮かべた。まぁ自身の食生活なんて聞かなくても分かっているだろうし、聞きたくもないんだろう、と思った。
「んー、でもそう言われると食べたくなるね」
霊夢に取られた湯飲みの代わりに、霊夢の湯飲みを取って急須のお茶を注ぎながらルーミアは言った。
「お鍋が?」
「お鍋もだけど、蜜柑だよ。炬燵で食べると美味しいんでしょ?」
「そうなんだけど生憎、今年はまだ無いのよ」
「そうなのかー、残念だなー」
はぁ、と二人して溜め息をついた。代わりに、と言った感じにルーミアはまた煎餅に手を伸ばした。
「おーっす、邪魔するぜー!」
がらっ、と勢いよく障子を開けて魔理沙が現れる、博麗神社ではもう何度も見られる光景だ。
「邪魔するなら帰ってよね」
「はいよーって何やらせるんだよ」
知ってか知らずか、外の世界ではそこそこ知名度のあるやりとりをしつつも魔理沙が何やらダンボールを抱えて入ってくる。
「おっと、こりゃホントにお邪魔だったか?」
二人して同じ様な体勢で炬燵に入っている霊夢とルーミアを見て、魔理沙は仕返しと言わんばかりにそう口にする。
「おー魔理沙だー、いらっしゃーい」
「おう、邪魔するぜ」
ルーミアがいる状況に慣れているのか、魔理沙はルーミアの挨拶にも驚くことなく返す。
「で、それは何なの?」
「あぁ、この時期には定番の物だぜ」
そう言ってダンボールを開ける、すると中にはぎっしりと詰められた蜜柑が山の様に入っていた。
「炬燵も出してるみたいだし、タイミングが良かったぜ。おーこれがにとりが言ってた電気炬燵ってヤツか?」
よっ、とダンボールを霊夢とルーミアの間に置いた魔理沙は、言うな否や霊夢の向かい、ルーミアの右に霊夢やルーミアと同じように身体を滑り込ませていた。
「あら、丁度蜜柑の話しをしてたのよ」
ナイスタイミングね、と言って霊夢は上機嫌になったのか、自分の湯飲みにお茶を注いで魔理沙の前に差し出す。この時霊夢が注いだのはルーミアが煎れてきたお茶である。
「そりゃますます丁度良かったぜ。……ん、少し冷めてるけど美味いな。ルーミアか?」
「鋭いわねあんた……」
「お前が煎れるお茶は私には薄いからな、不味くはないが私はこっちの方が好みだぜ」
カカッ、と笑う魔理沙、そんな二人には目もくれずルーミアは既に魔理沙が持ってきた蜜柑を頬張り続けている。一応霊夢に怒られるのは嫌なのでペース自体は少しゆっくりだ。
「ちょっと魔理沙、貴女も少しは手伝いなさいよ……ってあら、珍しい子がいるのね」
先ほどの魔理沙と同じようにダンボールを抱えて入ってくるのはアリスだ、アリスはルーミアを見ると意外、と言った感じの声を上げた。
こんばんわーと律儀に挨拶するルーミアに、あら偉いわね、こんばんわ、とアリスも挨拶を返すと、漸くその抱えていたダンボールを下ろす。
どすん、と音を立てて下ろされるダンボールを見て、今度はルーミアがアリスに問いかける。
「それはなにかなー?美味しそうな匂いがするけど」
「あら、勘が……というか鼻が利くのね」
アリスがダンボールを開けると、
「里で良い食材が手に入ったのよ」
「今夜は鍋だぜ!」
ルーミアと霊夢が中を覗き込むと、同時に二人を目を合わせる。
「こういうのって棚から牡丹餅って言うんだっけ?」
「牡丹だけに?あんたにしては上手い事言うわね、今日は良い日だわ」
中には人参や椎茸、白菜に味噌、そして大量に盛られた猪肉が入っていたそうな。
終わり。
ルーミアがいいキャラ出してますねぇ。
多少違和感がしましたが、そういえば炬燵って電気炬燵オンリーでは無かったのですね。
ただ、感嘆詞を台詞の途中で使うのは若干おかしいように思われます。
にとりが魔理沙に電気炬燵についてどの程度説明したかに依りますが……
作品は良かったです。
ありがとうございます。中々表現の難しいキャラではありますが、自分なりに頑張ってみた次第です。
そんなルーミアを良いと言って下さるのであれば私はただただ本当に嬉しいの一言です。
>>8
ありがとうございます。今後もこういったほのぼのとした作品をメインにして行きたいです。
>>22
私のイメージとしては、幻想卿で使われる炬燵は熱源で木炭などを使うタイプが主だと思っています。
>ただ、感嘆詞を台詞の途中で使うのは若干おかしいように思われます。
この辺りはまだまだ私の勉強不足です、貴重なご指摘に感謝します。読んで下さり、評価までして頂きありがとうございました。
ルーミアがこう、こたつでだらだらしてるのがすごいかわいいw うちのイメージの中ではバカルテット~だったのでこういう考えもいいなかわいいなって思えました。
文章も読みやすくするする読めました。面白かったです~。
資料程度に。
猪肉は基本的に牛と比べて硬いです。故に鍋料理がほとんど。
脂肪は焼くとコリコリしててうまい。
豚とは比較にならないほど肉の栄養価が高い。
あと、うー氏の書いてるとおり基本味噌です。
狩猟仲間では猪肉は奪い合いです。ちなみに鹿肉は不人気。
ただこれは長野県の猟友会の場合です。
らしいですね、私も一度は食べてみたいモノです。
私としては後書きでも書いてるように、バカではあるけれど頭は決して悪くはない天然キャラ、というイメージですね。
出来るだけ気を付けていたつもりでしたが、読みやすかったのであれば良かったです。
>>32
冬ですからね~
猪肉は栄養が沢山なんですね、猟師の方が元気なのはこれが秘訣なんでしょうか・・・
鹿肉はちょっと食べたくないですね・・・味とかそう言うの以前に、鹿って可愛いじゃないですか。ね?