お茶飲みながら図書館のテーブルで読書にいそしんでいると、パチュリーが突然声をかけてきた。
「魔理沙、化粧させなさい」
「……脳にカビでも生えたのか」
私はすみやかに読書に戻った。ネイルさんと合体したピッコロさんの活躍を知りたい。
パチュリーは突然、わけのわからんことを前置きなしで当然のように話してくるから困る。
と、後ろに控えていた小悪魔が化粧道具セットをテーブルの上に静かに置いた。
本気だったか。すでにやる気MAXか。
「リラックスしてね。ストレスはお肌の天敵」
「小悪魔。説明しろ」
「ちょっと我慢してくださいね」
「あのな、このままだとマスタースパークでお前のご主人様をぶっ飛ばすぜ。光る雲を突き抜けFly Away!」
「Fly Away! ファンデーション塗るわよ」
「パチュリーお前あれだろ、寝てないんだろ」
ごちゃごちゃやっていたところ、つまるとこパチュリーは新型の化粧魔術を試したいんだということがわかった。それだけ聞き出すのにずいぶんかかった。
化粧はそもそもが呪術の類だ。本式に研究したことはないが、私でもそれくらいは知っている。
今回パチュリーは、魔眼に近い効果を発生させる化粧を考えたのだという。
「魔眼ってどういう魔眼だ」
「魅惑の魔眼よ。チャーム、誘惑。その目に見つめられたものは、すぐさま恋に落ち、相手の言うことを何でも聞いてしまうという」
「物騒だな」
「所詮簡易版の化粧なんで、洗えばすぐ落ちるわ……やる?」
「やる」
私は即答した。多少不安もあったが、魔術に関していえばパチュリーは信頼できる相手だったし、魔眼は私の興味範囲とけっこうかぶる。第三の目が開いてこうカッとなって闇の力が抑えきれなくなってみたい。包帯の巻き方を忘れて後戻りできなくなってみたい。
あと化粧にもかなり興味があった。
でも恥ずかしいので、ファンデーションとかはすっとばして、アイラインとマスカラだけ塗ってもらった。
鏡を見ると、なるほど多少目がでかくなったように見えた。
「なんだかな、派手な感じがして、恥ずかしいぜ。変じゃないか?」
パチュリーを見て目をパチパチすると、パチュリーはくふうっ、と呻いて下を向いて鼻をおさえた。
「何だよ、笑ってるのか。ひどいぜ」
「違うの。ええとても似合ってるわよ。そうじゃないの」
「具合でも悪いのか」
パチュリーに近づき、下から顔を覗き込む。
パチュリーはまた、うっうっ、と呻いた。
「魔理沙。化粧の説明を聞いてた?」
「あーえっとだな、マスカラがディグ……ディグダグ」
「資生堂ディグニータ、Sの黒。でもそういうんじゃなくって」
「ああ、効果。誘惑だったな」
慌ててパチュリーから離れる。
「無差別か。これ使い方が難しいな」
「それほど強いものではないから、じっと見つめないかぎりなかなか効果は出ないと思うけど」
「大丈夫か。腹減ったから飯食わせろ。本持ってくけど返さない」
「本はダメ」
と言うと、指パッチンして咲夜を呼んだ。
咲夜の飯は相変わらずうまかったが、化粧に気づいた咲夜がやたらニマニマしていたので恥ずかしかった。魔眼が効いてはいけないのであんまり見ないようにしていたが。
◆ ◇ ◆
(さて、どうするか)
ほうきにのってふらふら飛びながら私は考えた。魔眼の活用法について。面白いものではあるが、あまり強いものではないというし、どれだけの実用性があるものか。
にとりのところに行って何か機械でもいただいてこようか、白玉楼や永遠亭のお宝も良いけど効かない相手が多そうだしな……と考えつつもいつのまにか博麗神社の方向へ足が向いているのは、ほとんど習性といえた。
空を飛んでいるといろいろなものが見えて楽しい。ルーミアが闇の球体のようになってふらふら飛んでいるのは面白いし、鳥なのに地上で屋台を引いているミスティアを見るとなんとなくからかってやりたくなる。
地面も空も遠くにあって、身の回りをさえぎるものが何にもなくて、風が肌と服の間を通り抜けていく。大好きだ。
とかなんとか考えなから飛んでいると、
「ネタください」
「うおっ」
幽霊のような顔をした天狗が突然あらわれた。驚いてちょっぴり挙動を乱す。
「危ないだろ」
「危ない? それは、次の新聞のことですか。発行に間に合わない、真っ白な紙面で出すしかない、天狗社会の笑われ者になるがいい、そして自分の慰み者になるがいい、と、あなたはそう言うんですか」
「何も言ってない……」
引いた。
こいつはときどきこういう状態になる。記者というか文筆業というか、締切りがある生活ってな大変だなと思う。しかしお前の新聞なんかどうせ誰も読んでないんだから出さなきゃいいじゃないかと一度言ったら大風起こしてその場の全員のドロワが切り裂かれたあげく私ん家の生活必需品のすべてに「あや」と名前を書いていくという嫌がらせに出たので怖いので黙っておく。
「では結婚しましょう」
「落ち着け」
「いえね、もうね、家庭に入るのもいいかと思ってるんですよ。新聞は趣味です、趣味。ネタがたまったら適当に発行して、あらこれが巷で話題のカリスマ主婦のやってる新聞でございますわねホホホ、あいかわらずとれんでぃ~でトッポいわね、この後ザギンでシースーでもどう、なんて言われたりなんかしちゃったりして」
「落ち着け」
「ぜんぜん話は変わりますが、まんげきょう、という単語はギリギリだと思いませんか?」
「頼むから黙れ……」
あんまり関わるとロクなことないかな、と思った。トッポいってお前。
そのまますいーっと何食わぬ顔で立ち去ろうとしたところ、
「あやや。魔理沙さん、お化粧してますね」
さすが天狗、目ざとく見つけやがった。帽子を深くかぶって、気のせいだろ、急ぐんだぜじゃあな、と言って最高速を出す。
余裕で追いつかれた。
「ちきしょうめ」
「天狗を甘く見ないでくださいね……ほらほら、お化粧よーく見せてくださーい」
「だぁぁ」
一瞬の隙をつき、射命丸の瞳をガン見する。
髪が黒い射命丸は瞳の色も黒く、切れ長の瞳が多い天狗のうちでは丸っこい目をしている。
若く見えるんですよ、と自慢気にしていた。
その瞳にわが魅惑の魔眼を叩き込んでやるのだ!
(……)
(……)
見つめあって一分くらいたった。
何も変わらない。
そもそも簡易版だ。こいつには通用しないか?
(……)
(……)
また一分くらいたった。
そろそろ間がもたん。
私はパチュリーに教えてもらった、魔眼の効力を最大限に発揮する所作を試してみた。
左目を一瞬だけ閉じる。右目は相手をじっと見つめてはなさない。
ウインクである。
私は射命丸に向かってばちこーんとウインクした。
(ばちこーん)
(……)
(ばちこーん)
(……)
(ばち、ばちこーん)
(……)
(……)
(……)
私はため息をついた。
「ダメだなこりゃ。これな、パチュリーがやったんだよ。魅惑の魔眼の化粧なんだけど、お前には効かなかったみたいだな。
いいよ、写真撮れよ。でもこんなのがネタになるのか?」
「優しい……」
「あ?」
「あ、いえいえ。とても可愛いですよ。私としたことが、思わずとってくおうとしてしまいました」
「物騒だな」
「関係ないですが、あの野原とか歩くと服にくっついてくるちっちゃくてトゲトゲのあの実、あれオナモミっていうんですよ」
「関係ないな」
「はい、チーズ」
カシャリ、とシャッターをきる。
もう破れかぶれなのでピースサインしてやった。
「魔理沙さんは今後どちらへ?」
「お前が邪魔しなきゃすぐにでも博麗神社へ行くところだったんだよ」
「霊夢さんですか。それはまた、さらにネタになりそうですね」
横向いてぶつぶつと、僕の見つけた真実はレイマリ……とかつぶやいてるのでほっといて先に出発したらすぐにちゃんとついてきた。
◆ ◇ ◆
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ、魅惑の化粧、ひゃっひゃっひゃっひゃひゃっ」
霊夢が馬鹿笑いしていた。化粧した目を見せると最初こそ物珍しそうにへえーとか言いながらみていたものの、用途と効力を説明すると畳に寝転がって笑い出したのだった。
失礼な奴め。
しかしどうやら霊夢にも通用しないようだった。
「こうくるとこの化粧、あやしいもんだな。パチュリーの奴しくじったか」
「あのねえ」
霊夢は笑いながら言う。
言おうとしたが途中で笑ってしまって、やっぱりつづけられない。
「あのね、ぶひゃひゃ、その、そうね。君の瞳に乾杯、とか、そういうこと言ってみてよ」
「あれ、霊夢なんか今日可愛くない? 彼氏と別れたら一番に教えてよ」
「うひゃひゃひゃひゃ」
「この前霊夢の夢見たぜ。子どもの頃の霊夢だったけど、今のほうが可愛いな」
「ひゃーっひゃっひゃっひゃ」
私も笑った。やっぱりこういうほうが、私たちには合ってるかな。
射命丸がパチパチ写真を撮っていた。
「うーん、おふたりが微笑ましいのはいいですけど、笑ってるだけじゃあんまり記事になりませんね。もっとこう、修羅場的なことにはならないでしょうか。たとえば実は魔理沙さんは私のことが好きとか」
「文のそういう考え方、面白いな。休みって普段何してるの?」
「新聞作ってます」
「うひゃひゃひゃひゃ」
ひとしきり笑ったところで、飯食って風呂はいって寝た。
起きると射命丸はいなくなっていた。新聞作りに行ったんだろう。次の文々。新聞もほのぼのワイドショーテイストだな。
朝飯は味噌汁と目刺しとたくあんだった。目刺しがついてるのが豪華だな、と言うと、さんざ笑わせてもらったからね、と言う。私は胸を張った。
「なあ、霊夢も化粧してもらいに行こうぜ」
「私が? 嫌よ、恥ずかしいじゃない」
「私も恥ずかしかったけど、やってみると気持ちいいぜ」
「魔理沙も女ねぇ。魅惑の魔眼とか、適当なこと言っちゃって」
「適当じゃないぞ。魔力がこもってるんだ」
「そう」
霊夢はお茶をずずっと飲むと、
「じゃあ、私もやってもらおうかな」
「お、その気になったか。じゃあ早速パチュリーのところへ行こう。あいつまだ寝てるかもしれないけど、耳元で淫語をつぶやくと起きる」
「いやいや、あんたひとりで行ってきなさい」
「なんだ、やっぱりやらないのか」
「やるわよ。ただ、私はあんたに化粧してもらいたい」
え、と私は驚いた。
「お化粧覚えてきて、私に教えてよ。パチュリーに顔触られるよりあんたに触られたほうが楽だわ。私は繊細なんだからさ」
「お前そういえば意外と警戒心強いんだよな。誰とでも宴会するくせに」
「うるさい」
ぷい、と横を向く。
しかたないので頬をぷにぷにしてやった。殴られた。
そうだな、私がお前を女にしてやるよ、と言ってばちこーんとウインクをすると、また殴られた。
「魔理沙、化粧させなさい」
「……脳にカビでも生えたのか」
私はすみやかに読書に戻った。ネイルさんと合体したピッコロさんの活躍を知りたい。
パチュリーは突然、わけのわからんことを前置きなしで当然のように話してくるから困る。
と、後ろに控えていた小悪魔が化粧道具セットをテーブルの上に静かに置いた。
本気だったか。すでにやる気MAXか。
「リラックスしてね。ストレスはお肌の天敵」
「小悪魔。説明しろ」
「ちょっと我慢してくださいね」
「あのな、このままだとマスタースパークでお前のご主人様をぶっ飛ばすぜ。光る雲を突き抜けFly Away!」
「Fly Away! ファンデーション塗るわよ」
「パチュリーお前あれだろ、寝てないんだろ」
ごちゃごちゃやっていたところ、つまるとこパチュリーは新型の化粧魔術を試したいんだということがわかった。それだけ聞き出すのにずいぶんかかった。
化粧はそもそもが呪術の類だ。本式に研究したことはないが、私でもそれくらいは知っている。
今回パチュリーは、魔眼に近い効果を発生させる化粧を考えたのだという。
「魔眼ってどういう魔眼だ」
「魅惑の魔眼よ。チャーム、誘惑。その目に見つめられたものは、すぐさま恋に落ち、相手の言うことを何でも聞いてしまうという」
「物騒だな」
「所詮簡易版の化粧なんで、洗えばすぐ落ちるわ……やる?」
「やる」
私は即答した。多少不安もあったが、魔術に関していえばパチュリーは信頼できる相手だったし、魔眼は私の興味範囲とけっこうかぶる。第三の目が開いてこうカッとなって闇の力が抑えきれなくなってみたい。包帯の巻き方を忘れて後戻りできなくなってみたい。
あと化粧にもかなり興味があった。
でも恥ずかしいので、ファンデーションとかはすっとばして、アイラインとマスカラだけ塗ってもらった。
鏡を見ると、なるほど多少目がでかくなったように見えた。
「なんだかな、派手な感じがして、恥ずかしいぜ。変じゃないか?」
パチュリーを見て目をパチパチすると、パチュリーはくふうっ、と呻いて下を向いて鼻をおさえた。
「何だよ、笑ってるのか。ひどいぜ」
「違うの。ええとても似合ってるわよ。そうじゃないの」
「具合でも悪いのか」
パチュリーに近づき、下から顔を覗き込む。
パチュリーはまた、うっうっ、と呻いた。
「魔理沙。化粧の説明を聞いてた?」
「あーえっとだな、マスカラがディグ……ディグダグ」
「資生堂ディグニータ、Sの黒。でもそういうんじゃなくって」
「ああ、効果。誘惑だったな」
慌ててパチュリーから離れる。
「無差別か。これ使い方が難しいな」
「それほど強いものではないから、じっと見つめないかぎりなかなか効果は出ないと思うけど」
「大丈夫か。腹減ったから飯食わせろ。本持ってくけど返さない」
「本はダメ」
と言うと、指パッチンして咲夜を呼んだ。
咲夜の飯は相変わらずうまかったが、化粧に気づいた咲夜がやたらニマニマしていたので恥ずかしかった。魔眼が効いてはいけないのであんまり見ないようにしていたが。
◆ ◇ ◆
(さて、どうするか)
ほうきにのってふらふら飛びながら私は考えた。魔眼の活用法について。面白いものではあるが、あまり強いものではないというし、どれだけの実用性があるものか。
にとりのところに行って何か機械でもいただいてこようか、白玉楼や永遠亭のお宝も良いけど効かない相手が多そうだしな……と考えつつもいつのまにか博麗神社の方向へ足が向いているのは、ほとんど習性といえた。
空を飛んでいるといろいろなものが見えて楽しい。ルーミアが闇の球体のようになってふらふら飛んでいるのは面白いし、鳥なのに地上で屋台を引いているミスティアを見るとなんとなくからかってやりたくなる。
地面も空も遠くにあって、身の回りをさえぎるものが何にもなくて、風が肌と服の間を通り抜けていく。大好きだ。
とかなんとか考えなから飛んでいると、
「ネタください」
「うおっ」
幽霊のような顔をした天狗が突然あらわれた。驚いてちょっぴり挙動を乱す。
「危ないだろ」
「危ない? それは、次の新聞のことですか。発行に間に合わない、真っ白な紙面で出すしかない、天狗社会の笑われ者になるがいい、そして自分の慰み者になるがいい、と、あなたはそう言うんですか」
「何も言ってない……」
引いた。
こいつはときどきこういう状態になる。記者というか文筆業というか、締切りがある生活ってな大変だなと思う。しかしお前の新聞なんかどうせ誰も読んでないんだから出さなきゃいいじゃないかと一度言ったら大風起こしてその場の全員のドロワが切り裂かれたあげく私ん家の生活必需品のすべてに「あや」と名前を書いていくという嫌がらせに出たので怖いので黙っておく。
「では結婚しましょう」
「落ち着け」
「いえね、もうね、家庭に入るのもいいかと思ってるんですよ。新聞は趣味です、趣味。ネタがたまったら適当に発行して、あらこれが巷で話題のカリスマ主婦のやってる新聞でございますわねホホホ、あいかわらずとれんでぃ~でトッポいわね、この後ザギンでシースーでもどう、なんて言われたりなんかしちゃったりして」
「落ち着け」
「ぜんぜん話は変わりますが、まんげきょう、という単語はギリギリだと思いませんか?」
「頼むから黙れ……」
あんまり関わるとロクなことないかな、と思った。トッポいってお前。
そのまますいーっと何食わぬ顔で立ち去ろうとしたところ、
「あやや。魔理沙さん、お化粧してますね」
さすが天狗、目ざとく見つけやがった。帽子を深くかぶって、気のせいだろ、急ぐんだぜじゃあな、と言って最高速を出す。
余裕で追いつかれた。
「ちきしょうめ」
「天狗を甘く見ないでくださいね……ほらほら、お化粧よーく見せてくださーい」
「だぁぁ」
一瞬の隙をつき、射命丸の瞳をガン見する。
髪が黒い射命丸は瞳の色も黒く、切れ長の瞳が多い天狗のうちでは丸っこい目をしている。
若く見えるんですよ、と自慢気にしていた。
その瞳にわが魅惑の魔眼を叩き込んでやるのだ!
(……)
(……)
見つめあって一分くらいたった。
何も変わらない。
そもそも簡易版だ。こいつには通用しないか?
(……)
(……)
また一分くらいたった。
そろそろ間がもたん。
私はパチュリーに教えてもらった、魔眼の効力を最大限に発揮する所作を試してみた。
左目を一瞬だけ閉じる。右目は相手をじっと見つめてはなさない。
ウインクである。
私は射命丸に向かってばちこーんとウインクした。
(ばちこーん)
(……)
(ばちこーん)
(……)
(ばち、ばちこーん)
(……)
(……)
(……)
私はため息をついた。
「ダメだなこりゃ。これな、パチュリーがやったんだよ。魅惑の魔眼の化粧なんだけど、お前には効かなかったみたいだな。
いいよ、写真撮れよ。でもこんなのがネタになるのか?」
「優しい……」
「あ?」
「あ、いえいえ。とても可愛いですよ。私としたことが、思わずとってくおうとしてしまいました」
「物騒だな」
「関係ないですが、あの野原とか歩くと服にくっついてくるちっちゃくてトゲトゲのあの実、あれオナモミっていうんですよ」
「関係ないな」
「はい、チーズ」
カシャリ、とシャッターをきる。
もう破れかぶれなのでピースサインしてやった。
「魔理沙さんは今後どちらへ?」
「お前が邪魔しなきゃすぐにでも博麗神社へ行くところだったんだよ」
「霊夢さんですか。それはまた、さらにネタになりそうですね」
横向いてぶつぶつと、僕の見つけた真実はレイマリ……とかつぶやいてるのでほっといて先に出発したらすぐにちゃんとついてきた。
◆ ◇ ◆
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ、魅惑の化粧、ひゃっひゃっひゃっひゃひゃっ」
霊夢が馬鹿笑いしていた。化粧した目を見せると最初こそ物珍しそうにへえーとか言いながらみていたものの、用途と効力を説明すると畳に寝転がって笑い出したのだった。
失礼な奴め。
しかしどうやら霊夢にも通用しないようだった。
「こうくるとこの化粧、あやしいもんだな。パチュリーの奴しくじったか」
「あのねえ」
霊夢は笑いながら言う。
言おうとしたが途中で笑ってしまって、やっぱりつづけられない。
「あのね、ぶひゃひゃ、その、そうね。君の瞳に乾杯、とか、そういうこと言ってみてよ」
「あれ、霊夢なんか今日可愛くない? 彼氏と別れたら一番に教えてよ」
「うひゃひゃひゃひゃ」
「この前霊夢の夢見たぜ。子どもの頃の霊夢だったけど、今のほうが可愛いな」
「ひゃーっひゃっひゃっひゃ」
私も笑った。やっぱりこういうほうが、私たちには合ってるかな。
射命丸がパチパチ写真を撮っていた。
「うーん、おふたりが微笑ましいのはいいですけど、笑ってるだけじゃあんまり記事になりませんね。もっとこう、修羅場的なことにはならないでしょうか。たとえば実は魔理沙さんは私のことが好きとか」
「文のそういう考え方、面白いな。休みって普段何してるの?」
「新聞作ってます」
「うひゃひゃひゃひゃ」
ひとしきり笑ったところで、飯食って風呂はいって寝た。
起きると射命丸はいなくなっていた。新聞作りに行ったんだろう。次の文々。新聞もほのぼのワイドショーテイストだな。
朝飯は味噌汁と目刺しとたくあんだった。目刺しがついてるのが豪華だな、と言うと、さんざ笑わせてもらったからね、と言う。私は胸を張った。
「なあ、霊夢も化粧してもらいに行こうぜ」
「私が? 嫌よ、恥ずかしいじゃない」
「私も恥ずかしかったけど、やってみると気持ちいいぜ」
「魔理沙も女ねぇ。魅惑の魔眼とか、適当なこと言っちゃって」
「適当じゃないぞ。魔力がこもってるんだ」
「そう」
霊夢はお茶をずずっと飲むと、
「じゃあ、私もやってもらおうかな」
「お、その気になったか。じゃあ早速パチュリーのところへ行こう。あいつまだ寝てるかもしれないけど、耳元で淫語をつぶやくと起きる」
「いやいや、あんたひとりで行ってきなさい」
「なんだ、やっぱりやらないのか」
「やるわよ。ただ、私はあんたに化粧してもらいたい」
え、と私は驚いた。
「お化粧覚えてきて、私に教えてよ。パチュリーに顔触られるよりあんたに触られたほうが楽だわ。私は繊細なんだからさ」
「お前そういえば意外と警戒心強いんだよな。誰とでも宴会するくせに」
「うるさい」
ぷい、と横を向く。
しかたないので頬をぷにぷにしてやった。殴られた。
そうだな、私がお前を女にしてやるよ、と言ってばちこーんとウインクをすると、また殴られた。
愛され魔理沙、流行ればいいと思います。
会話のテイストが特にいい
うひゃひゃひゃひゃww
うひゃ笑いにやられた
うっひゃっひゃっひゃっww
そしてあややとはきっと友達になれると確信した。可愛いなあ。
うっひゃっひゃっひゃwww
そして霊夢の笑い方www
一寸太すぎかなと思うぐらいが良いよねぇ。
よくよく考えるとマンガの女の子キャラってすげーまつ毛太いし。
彼女たちもやっぱり女の子なんだと再認識しました。
天狗は目尻に赤ラインとか、どぎついメイクをしそうなイメージww
魔理沙も文も霊夢も可愛くて、テンポが良くてスラスラ読めて、とても面白かったです。ああもうみんな宝石みたいに可愛いな!
なんて思わせる、なかなか素敵な文章でした。