Coolier - 新生・東方創想話

狂鬼記

2010/09/25 21:26:59
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    狂鬼記















「私たちは時間を殺すために本を読むのだ」
 タイトルは思い出せないけど、そんなことが書いてあった本があった。

 私が殺した時間はどのくらいになるのだろう。
 地下に閉じこめられているとすることもなく、頼むと持ってきてくれる本を読む事は自然と日課となった。
 好きなお話は冒険物や恋愛物。それもコテコテのベタなお話。
 こんなベタな展開ありえないよ、と言いながらも次のページを捲る手は止まらない。
 私にはベタな生活は無理だから。
 そんな小さな憧れ。

 憧れは幽閉が解かれた今も残り、暇があれば本を読む。
 といっても大抵暇だから、結局本ばっか読んでいる。


 その結果として相当な量の本を読んだくせに、自分で本を書くという発想は一度も浮かばなかった。

「絵や彫刻なら想定外の線や表現が生まれる事もあるけど、本は書いたとおりにしかならない。自分で書いて自分で読んで新しい発見なんてないし」
 そんな考えで何百年か過ごした。

 何年も経ってから読めば書いた内容なんてほとんど忘れてる事に気づいたのは結構最近。
 殺しすぎた時間に後悔をした。


 そんな後悔が頭のどこかに残っていたのか、姉との食事の席で

「いっぱい本読んだし、今は読んでくれる人がいるんだから何か本みたいの書いてみようかなー」
 と口から出た。無意識に。
 姉がどういう反応するのかと目をやれば

「ふーん」

 興味なさげに料理をつついていたが羽がピコピコと動いていた。
 嬉しいときのサインだ。
 ちょっとやる気になった。


 こういう時にいきなり本格SFや大長編に取り組むのは姉の役割だから、私はもっと手軽なものから始めることに。
 特に思いつくお話のネタもなかったので、とりあえずは日々の出来事や思いついた事をつらつらと書いてみようと決めた。

 自室に本を書くための道具すらなかったので、図書館へ行きパチュリーに壊れにくいように魔法をかけてもらった万年筆と白紙のページが連なる無地の本を貰う。
 原稿用紙、という物も魅力的だったが我侭は言えない。
 何よりこの本は私のチカラならともかく、吸血鬼がちょっと乱暴に扱ったくらいではヘッチャラな特別仕様だ。
 こっそりと私より先に本を取りに来た姉がカバーを真っ赤にしたと教えてもらったから、私はなんとなく濃い青のカバーにしてもらう。
 美濃判と呼ばれる大きめのサイズの本と万年筆を持つと、知らず羽がピコピコと動いていた。


 道具を手渡すとさっさと読書に戻ったパチュリーに慌てて万年筆と本のお礼は何がいいか、と聞く。
 すると視線を上げ
「それじゃあ本の命名権」
 と言った。
 ちょっと意外だったが、
「吸血鬼が命名したらそれだけでとんでもない魔道書になるわよ」
 ということらしい。

 自分で書いた本に噛み付かれるのはちょっと間抜けなのでおとなしく本を渡す。
 受け取った本を机に置いたパチュリーは私に問いかける。

「どんな物を書くの?」
「思ったままにいろいろ!」

 即答。実際そうなのだからしょうがない。

「大雑把ねぇ」

 言いながら魔女は目を閉じ少し思案した後、指をはじく。
 机に置かれた本が一瞬淡く光り、また薄暗い図書館に戻る。
 覗き込むと青いカバーには黒く



 狂鬼記


 とあった。

「……きょうきき?」
「くるおにき、よ」

 くるおにき。小さく声に出してみる。

「語感はまぁまぁだけど狂ってあんまりいいイメージないなぁ」

 確かに狂ってるかもしれないけど。

「狂という字はケモノと王様で成り立っているのよ。狂ったケモノの王である鬼が記した本。素敵じゃない?」

 たぶん姉なら大喜びだけど、うまく言いくるめられてる気がする。
 私自身の知識で出来る範囲で反論をしてみる。

「でもケモノヘンってイヌって意味もあるんでしょ?」
「いいじゃないイヌ。あなた立派な室内犬じゃない」
「鬼だもん!」
「ほらそうやってすぐ吠えるとこなんか」
 むぅ。
 私の半分も生きていない本の虫のくせに私達姉妹揃って口では勝てる気がしない。
 子供っぽいと思いつつ、それでも思いついたままを口にだす。
 やけくそ。

「じゃあ字はそのままでいいけど読みを変える。くるおにっき」
「オニのニとニッキをかけたわけね。いいんじゃない? 可愛げがあって」
「……うん」

 あっさり肯定されてしまった。やっぱり口では勝てない。

 気恥かしさから視線を落とし、手元の万年筆をいじる。
 声は聞こえないけど、たぶん魔女は笑っていた。





 くるおにっき。
 ちょっと気にいった。









 部屋に戻り、本と万年筆を机に置く。
 何を書こう。
 私の日常。
 私の周りの人々。
 私の見ているセカイ。
 私の見たいセカイ。
 うまく書けるだろうか。


 期待と不安を抱きながら。
 まずは今日の事から。













    狂鬼記(くるおにっき)























 今日見たもの。
 知らない人間。今までに食べた人間?
 私のお腹から上半身だけ生えてた。まぁこの程度はよくあること。
 声は姉だった。
 遊ぼう、遊ぼうとうるさかったけど無視してたら消えた。
 遊んであげたらよかったのかな。







 月の満ち欠け一周ごとの顔合わせはいつもの場所。
 赤い部屋に赤と青と赤と虹と。 
 普段は暗い私の部屋に明かりが灯されている。
 私は暗い方が好きなんだけど。
 そんな部屋の中で椅子に座る私の前には椅子に座る人間。
 人間?ニンゲン?
 知ってる人間……といっても動く人間を初めて見てからまだほとんど経っていないが、このニンゲンはちょっと匂いが違う。
 でも人間らしい。
 そんな目の前のニンゲンが声をかけてくる。

「どうしたのぼーっとして?どこか具合でも悪い?」
「ごめん、何でもないよ八意先生」
「そう、ならいいけど。 でも何かあるならちゃんと言ってね」
「はーい」

 八意永琳。
 姉が連れてきたこの医者らしいニンゲンは、変な奴だ。
 変人だらけの紅魔館に住む私が変だというんだから相当変。



「はい、それじゃあ最近あった事。なんでもいいわ」
「唐突だね」
「物語はいつも唐突に始まるものよ?」
「それじゃあえーと……。笑わない?」
「私を笑わせたら大したものよ」

 えっへん、とでもいいそうな表情。
 我が家の食事に同席した際は結構笑っていた気がしたが、原因は私ではない……はず。
 姉のSF超大作が地球から飛び出すための宇宙船が完成しないうちに打ち切られたそうだが、それだろう。うん。


「実は最近、手記……みたいのを書いてて」
「へぇ。 それで?」
「先生との事をなんて書こうか考えてたらちょっとボケーっと……」
「ふむ」

 先生が俯いて考えこむ。
 珍しい。
 八意永琳の一番弟子と自称する長ったらしい名前を持つ兎が私の波長を調整しようとして、暴走しそうになった瞬間に麻酔のついた矢を弟子に突き刺す人が考え込んでいる。
 珍しい。
 ちなみに矢は弓で射ったのではなく手に持ってぶっ刺した。頭に。
 生き血を見てちょっと興奮しかけたけど、先生が手にもう一本の矢を持ちこちらを向いていたので冷静になれた。
 私もまだ恐怖で汗をかけるというのは発見だった。


 そんな先生が悩むのはよっぽどの事のようで少し不安になる。

「もしかして、よくないのかな」
 書くこと。は小さくなったが届いただろうか。

 視線が下がる。
 自分の体が縮んだような感覚。

 先生は小さくあぁ、と言ってから顔をあげる。

「それってあなたの見えるモノや聞こえるオトについても書いているの?」
「うん、書くことがなかった日に」
「書くことがない日が多い方が私には嬉しいわね……。でも書く事自体は良い事じゃないかしら」

 普段は良い悪いを明確にせず、自分で答えを出す事を促す先生の明確な肯定は少し心地良かった。

「そう……かな?」

 動かないように意識をしてたけどちょっと動いていたかもしれない、羽。
 視線と顔も上がり、先生と視線を交わす。

「えぇ、誰かに見せる事はもちろんだけど、後からあなたが読み返したときにも得るものがあるかもしれないわね」
「まだ読み返すほど書いてないや」
「ある程度書けたらちょっと見せてもらおうかしら」
「えー。じゃあ代わりに先生の書いた日記とか本見せてよ。あるんでしょ?」
「いいわよ。星座の本なんかどうかしら」

 八意先生の服は奇抜だけどよく見れば星座の模様がいくつも描いてある。
 大人っぽいけど実は子供なんだろうかこの人。
 口には出さないけど。










 カウンセリング、というらしい。
 私としては雑談してるだけなのだけども、先生が言うには情操教育。
 頭開くのと頭の中身育てるのどっちがいい?という選択で私は当然後者を選んだ。
 結果こうして定期的に先生と顔を合わせ、館の外や幻想郷の外、時にはこの星の外の話を先生とする。
 大抵は先生の弟子が使えないだとか先生が仕えてる人が何をしたとかいう話を聞いて、姉が何をやらかしてその従者がどうフォローしたかが話題。







 今でこそ先生との対面は私の心安らぐ時間だ。

 ただ初対面は散々だった。









 そもそもの発端は姉は私の「気がふれている行為」「情緒不安定」を治療できないかと医者である八意永琳に相談をした事。
 医者は人間の住む里で対処しきれないほどの重傷者や、妖怪を相手にした病院を幻想郷の片隅で同居人達とやっているそうだ。
 そこでは心の病気が多い妖怪相手の治療も行っている、と聞いた姉が私の事を医者に話した。
 医者は快諾したが、私は家の中をうろつく程度しか許されていない。
 結局医者にわざわざ往診してもらうことになった。

 面倒くさくなかったの?と後に私が聞いたが
「吸血鬼をサンプルにした研究が出来るなんて今後あるかわからない」
 とのことで内心大喜びだったらしい。
 吸血鬼を実験鼠扱いとはさすがに驚いた。



 一方当時の私は姉から医者が治療にくるとの話を聞かされた時は正直、へこんだ。


 もちろん姉に悪意があったわけじゃない。
 私の「症状」を少しでも改善して、紅魔館の外へ出れるようにとの考えだったはずだ。
 それは私も理解していた。
 理解していたけれど、他人に任せたという姉の行動が私の不安を強く煽った。

 そろそろ付き合いきれない。
 姉がこう思っているのではないかと邪推した。


 だから私はあえて全てをさらけ出す事にした。
 医者とやらに私のコトなんて理解できない、私を変えるなんて出来ない事と分からせるために。
 自分を治療できるなんて思っている奴を呆然とさせてやる。
 医者が投げ出せば姉はきっとまた私に付き合ってくれるはずだ。
 ひどい甘え。



 脅しをかけるなら一手目が重要だ。
 初対面の相手と一対一で内心緊張していたが、声だけは鬼らしく。

「たまにだけど幻覚が見えたり幻聴が聞こえるのよ」

 それは動物のときもあれば家族のときもあり、聞こえる音は喋り声の時もあれば戸を叩く音の時もある。
 最近人間や妖怪に知り合いが出来たが、彼女達も幻覚として現れる事も。

「あなたも私の幻覚の登場人物になるかもね?もしかしたら」

「私のチカラは知ってるわよね?幻覚や幻聴にも私のチカラで壊せる「目」はあるのよ。でもどうやらその目は私自身の「目」でもあるのよね」

 つまり、アレは「私の頭が生み出した」モノなので破壊するには自分の頭を潰さなければならない。

「生まれたての頃の私はその事を理解できず「目」を潰して自分の体を傷つけた。自分を傷つけた私は毎度のように半狂乱になり、周りの物や者やモノを破壊した」

 それは気が触れているからだと思われ、私自身もそう考えたため地下に閉じ込められ、閉じこもった。
 そして数百年。
 時間の経過で得たものは二つ。

「壊すと自分も痛い。そして暴れて迷惑がかかる。壊さなければそのうち消える事を学んでからは幻覚を壊すことをやめたわ」

 今じゃ幻覚が見えていても眠りにもつける。
 それは慣れ。

「ソレは壊してもイイのよ、フラン」
 私の世話係として妖精が任命された。
 幻覚が重く、思わず部屋の備品を壊したときは新品に変えてもらった。
 またあるときふとした拍子に妖精を壊したがそのうち元通りになった。

「その一件で私は壊してはいけないものがある事を学んだわ」

 それは学習。


 医者に返答する間を与えないようにできるだけ畳み掛けた。
 医者を焦らせるためだ。

 それなのに私が説明していた間医者は「へぇ」「ほー」「なるほどねぇ」などと相槌をうちながら何かをメモるばかりだった。

 イライラした私は、
「ねぇ、ところで人間。あなたは壊していいもの?」
 と精一杯悪魔らしい笑顔を向けてやった。

 さぁ、どういう顔をする。





 表情を崩さず医者の口が開く。
 しかし、顔に浮かんだのは恐怖でも悲鳴でもなかった。

「んー、あなたの病名は――」

 病名は、までしか聞き取れなかった。
 思考が停止していた。ついでに顔も笑顔のまま固まっていた。

 ゆっくりと思考が再開する。

 この目の前の人間は私の症状を理解し、病名まで示した。
 病名がある。
 つまり、誰かが病名をつけたから意味がある。
 そんな「誰か」がいる。
 つまり、この病名を受けた「誰か」もいる。
 つまり、つまり。


 笑顔のまま固まっている私を見て医者はあぁ、と漏らす。
「妖怪は聞いた事ないかしらね、人間だとちょっと珍しい程度なんだけど」
 やっと笑顔のフリーズが解けた私の口からも言葉が漏れる。
「ちょっと……珍しい……?」
「えぇ。というか妖怪では初めてねえ。あなた二重の意味で貴重よ」
 医者は笑みすら浮かべながら答えた。


 本物の悪魔の笑顔がそこにあった。











 噂を伝えるのだけは早い妖精によって紅魔館全体は落ち着きがなくざわざわとしていた。
 ざわめきの発信源である医者は、紅魔館の主要メンバー、私の「家族」を食堂に集め説明をするといった。
 魔女にメイドに門番に当主。私は端っこ。

 皆が大きな楕円のテーブルの周りに座ると、医者が私の「診断結果」を彼女らに述べる。
 私の「病名」そして「治療では治らない」という二点。

 全員が鉄槌で頭を殴られたかのような顔をしたあと、様々な表情を見せた。
 疑惑の目を医者に向ける者。
 喜びの視線を私に向ける者。
 自身の思考に耽る者。
 同じ表情のまま場を眺める者。

 そんな皆を見つめる私は未だ混乱中。


 医者は私を含めた全員を見渡しながら言う。

「んじゃまぁ順序だてて説明していこうかしらね」

 さまよっていた五人分の視線が医者へ戻る。
 視線が集まったのをゆっくりと確認してから医者は口を開く。

「まず、これは心の病ではないわ」

 全員が殴られたばかりの頭を逆からぶん殴られた。

 周りからは気がふれていて、情緒不安定と言われていた。
 私自身ですら心がオカシイと信じてきたものをあっさり否定された。

 最初に思考が再開したパチュリーがつぶやくように漏らす。
「でも私は……少なくとも私はそんな病名は聞いた事ないわ」
 医者は即答する。
「あなたが聞いた事がなかったのは妖怪の心の病気の側面からしか調べていなかったからじゃないのかしら。コレは人間の病気よ」
 息を飲む音がした。

 医者は代わりとばかりに一つ息を吐きながら続けた。
「まぁでも妖怪の中でも上位種である吸血鬼が人間のカラダの病気になるなんて思わないわよね、そもそも妖怪じゃ初の症例よ」

 再び混乱中のパチュリー、そして未だに大混乱中の家族。
 そんな様子を見て逆に冷静になった私が次の発言者となる。

「あの……色んなモノが見えちゃうのが症状……なの?」
「えぇそうよ、人によって見えるモノは人だったり化物だったり、珍しいのなら螺旋が見えたのもいたわね」
 あっさりと肯定される。

「でも、私がアソブとき力の加減できなくて滅茶苦茶にしちゃうのとか……そういうのは……」

 俯きながら言った言葉もやはりあっさりと、ただし今度は否定された。

「それは単に能力の加減ができなかったり、地下に幽閉されていて誰とも接していなかったからよ。性格みたいなものよ」

 今度は姉が顔を上げる番だった。
 はっとした表情。

 私は抵抗したつもりはなかったが、地下に幽閉したのは姉だ。
 その姉にとって今の医者の発言は「幽閉生活のせいで症状が悪化した」と聞こえたに違いない。


「それじゃあ、私が地下に閉じ込めなければフランは……?」

 悲痛な声色の姉。
 私がお姉さま、悲しまないで、と声をかける前に医者の口が開いた。

「そうともいえないわね、人間ではたまにいるとはいったけど妖怪では初めてと言ったでしょ?」
「……どういうこと?」

 私もついていけていない。

「推測だけどね、あなたの妹さんと同じ病気の妖怪がいないのはみんなすぐ死んでるからなのよ」
「……何故?」

 もちろん、姉も家族もついていけていない。
 医者だけが一人快走中。

「この病気は心は正常なのに正常な行動が取れない。これがどんなに辛いか分かる?」

 ここにきて変化が二つに。
 姉と家族の顔には相変わらず疑問符。
 私の顔には感嘆符。
 異常の当事者の私には医者の言おうとしていることが分かった。
 正常な姉達には、ここではまだ分からない。

 異常者を理解する正常な医者は続ける。

「周りと違うという自分自身へのストレス。違う奴に対する周りからのストレス。生まれたばかりで特に心が弱い状態の妖怪はこのストレスにはまず耐えられないわね。死ぬか発狂するかのどっちかよ」
「あ……」

 ここで姉の顔にも感嘆符。
 なんだかんだいって聡い姉だ。今の医者の話で理解したようだ。
 姉以外もそれとなく察した顔をしている。

 医者は私達の反応全てひっくるめて理解した上で確認するように答えを出した。

「それでもなぜ今あなたの妹さんがこうしてるかって、閉じ込めて外との接触を避けてきたからよ。接触がなければ受けるストレスは極端に減るわ」


「……そう。それは……よかったわ」
 一呼吸おいて姉は安堵の表情と共に言った。

「そうね。よかったわね」

 医者はたぶん、貴重なサンプルを得られた喜びも含めて言った。









 当主が落ち着いたので、場の雰囲気も少し緩む。
 咲夜が全員に紅茶を配り、全員が静かに紅茶を飲む音だけが部屋に満ちる。

 その静寂を破ったのは門番の紅美鈴だった。
「ふと思ったのですが、今フランドール様がこうして他人と接する事は負担にはならないのでしょうか?最近は乗り込んできて弾幕勝負とかも……」

 言われてみればそうだ。
 あれ?もしかして私ピンチ?
 だが医者はのんびり紅茶を啜っていた。
 カップを優雅に置いてからのんびり口を開く。

「さっき話して分かったけどこの子はもう精神的にはしっかりしてきてるからこの程度は平気よ」

 しっかりしてると言われ、ちょっと嬉しい。

「それに暗いけど人格もしっかりしてるし教養も少しはある。今の状態なら他人と弾幕撃ちあって興奮はしても、ストレス抱え込んで自爆はそうそうしないでしょ」

 暗いと言われ、ちょっと凹む。

「ついでに幻想郷にはちょっと物壊せる程度の吸血鬼が暴れたくらいじゃ何ともないのばっかじゃない。今はむしろ知り合い増やした方が今後のためよ」

 結果的に二歩進んで一歩下がった。






 紅茶を飲み終えたところで医者は話を次のステップへ。

「まぁ症状等についてはこれからの観察次第として、とりあえずの方針について説明するわね」

 全員の顔が引き締まる。
 あら?と咲夜が質問をする。
「さきほどは治療では治らない、と……」

 医者は咲夜へ体を向けてから返答をする。
 部屋の中で青と赤だけが動く。

「そう、治らない。簡単に言えば脳が悪いのよ。もし根本的に治すのなら頭開いて弄繰り回すしかないんだけど……私はそれでも構わないけど?」

 医者が視線をぐるりと回すと、初めて医者以外全員の顔が動く。左右に。

「まぁそうよね。だから私がするのは厳密には治療じゃないわ。まぁ平たく言えば情操教育よ」

 言葉は聞き取れたが意味が分からないので素直に聞く。

「じょーそーきょーいくってなあに?」

 青と赤の境界線が正面に来る。

「あなたが何をして良いのか、何をしてはいけないのかを覚えるの。これが出来れば友達百人出来るわよ」
「ほんとに?」

 少し身を乗り出す。

「確証はないわ。でもやってみなくちゃ分からないじゃない。それに館の外や幻想郷の外の事も学べるわよ?」
「……それなら……いい……のかな?」

 外の事というエサに思わず釣られる。
 ずいぶん前から入れ食い状態だったかもしれないが。
 そんな様子を見た姉は、食いついた私に笑いを向けながら言った。

「フランがいいというのなら、試してみましょう」

 医者も含めた全員が頷いた。




 その後細かい日取りや方法等を話し、医者が今日は失礼するわ、と言って立ち上がった。
 姉は医者を晩餐に招きたがったが、医者は自宅で待つ人達がいるのでと断った。


 そして医者は最後に部屋を出る前に

「まーいろいろあるだろうけど、私はみすみす貴重な研究材料を見殺しにはしないから安心なさい」
 笑顔と共に言い放った。


 最初に笑ったのは、私。
 そして私の大切な人達も笑顔になる。




 「医者」が「先生」になるまでに大して時間はかからなかった。











 今日見たもの。
 真っ白なコウモリ。あるびの?
 最初は一匹。見てたらどんどん増えていって天井が白くなってた。
 鳴き声も羽音も無かった。
 音も立てずにパタパタ。矛盾。
 お手洗いに行って戻ってきたら消えてた。









「だー!もういい!あっちで本でも読んでる!」

 白黒が離脱。




 今日も今日とて紅魔館の自室。
 そして今日も部屋には人間がいるので光源付き。
 最初は魔理沙が光源を用意すると言ったが、いきなり上に向かって恋符を掲げようとしたので霊夢と二人してスペルを叩き込んだのはだいたい一時間前のお話。

「まったくアイツは……。あぁ、次は今折った線に向けてこっちからこうよ」
「はーい」

 指示をするのは紅白の巫女服。
 指示に従うのは……虹?赤?金?
 要するに私。

 今、楽園の素敵な巫女は私の折り紙の先生になっていた。
 いつもの巫女服姿の霊夢は、床の上で崩れたあぐらのような座り方をしながら器用に折り紙を折っていく。

 私も一生懸命真似をするのだけれど、どうしても端がずれたり形が歪になってしまう。

「むー、やっぱ霊夢のとちょっと違う」
「でも完成するだけ魔理沙よりはましじゃないの」

 霊夢の視線を追うと、既に魔理沙は私のベッドの上で図書館にあっただろう大きな魔道書を広げていた。

「あれと比較されてもなあ」









 そもそものきっかけは、やっぱり八意先生。

「あなた、何か生み出すとか育てるという事を学んでみなさい」

 先生はいつも突然だ。
 とりあえず何がいいかしらねぇ?という先生との問と答。
 動物。誰かが食べる。誰も食べなければ私が食べる。
 植物。日が当たるところでの観察はこちらの生命が危険。
 芸術。爆破芸術は認められなかった。
 料理。咲夜に笑顔で拒否された。
 恋心。姉が部屋の扉をぶち破って飛び込んできた。
 子供。姉が発狂した。


 二人して姉をつまみ出した後、先生は新しい案を出した。

「しょうがないわね、折り紙でもやってみなさい」
「折り紙ってあの紙でやる?」
「そうよ」
「私やったことない」
「そうでしょうねぇ」
「……紙で何かを作って役に立つの?」
「力の加減の練習にもなるし、失敗しても迷惑が掛からない。何よりあなた一人でも出来る。一歩目としては妙案だと思うけど?」
「何か子供みたいなんだもん……」

 一応五百年近く生きている。子供ではないつもりだ。

「五世紀やそこらじゃまだよちよち歩きじゃない」

 へっ、という何だか中年男性のような笑い。
 あれ、先生って人間じゃないっけ。
 人間は長生きできないはずだ。たしか。
 でも先生は私なんかの数倍生きてるように見える事がある。
 人間はおもしろい。


「まぁなんでもいいや。じゃあ先生さっそく教えてー」
「私は医者であって保母さんじゃないのよ。それに」

 豆袋を手荷物の鞄に戻し、代わりに鞄の中から一枚紙を抜いたかと思うと、物凄い早さで手を動かし始めた。
 ものの二秒もしないうちに先生の手の中には図鑑で見た事しかない鳥。名前は忘れた。

「人に何かを教えるのは下手なの。相手のレベルに合わせるのがどうもできなくてねぇ」

 いつだかの先生の弟子とやらがちょっとかわいそうになった。






 里で寺子屋をやっている人妖にでも声をかけておくと言って先生は竹林に帰っていった。

 後日私が頼んで咲夜に里の寺子屋へ日程の都合等の相談に赴いた際、当の人妖より先にたまたま買い物に里へ降りてきていた霊夢と遭遇。
 咲夜が折り紙の話を出すと

「あら、私もできるわよ折り紙」

 あっさりそんなことを言われ。
 どうせ頼むなら顔見知りのがいいわね、と咲夜の独断で高級ワインを餌に霊夢を紅魔館へ連れ帰る運びとなった。

 寺子屋の人妖はやる気満々で準備をしていたそうで、後日この事実を知らされた時は

「そうか、それならしょうがない」

 といいつつちょっと悲しそうな顔をしていた、と咲夜から聞かされた。
 いつか会ったらごめんなさいをしようと頭の片隅に置いた。



 そんな霊夢が咲夜と共に紅魔館に着くのと魔理沙が恒例の図書館漁りを終えて退散しようとするのが同時。
 当然のごとく

「おもしろそうだから。あとお礼のワインうまそうだから」

 と魔理沙も「先生」に加わることに。
 魔理沙先生は一時間しかもたなかったが。









「よお、フランドール!」
「こんにちは、お久しぶりね妹さん」

 自室に赤白黒白が入ってきたときは結構びっくりした。
 彼女たちとはパーティー等でそこそこの回数顔をあわせ、その時には会話もしている間柄でもある。
 それでも過去に私をボコボコにした事もある二人がそろって私の部屋に入ってきたのだ。
 動揺しないわけがない。

「あ、姉がいつもお世話になっております?」

 動揺は語尾に出た。

「おりますねぇ。お世話してるのこっちだけど」
「そ、それでどうしたの突然」

 口を開こうとした霊夢より先に魔理沙が叫ぶ。

「おりにきたぜ!」

 訳がわからなかった。













 霊夢自身は

「お札の余りとか新聞でたまに」

 という程度らしいが、見れば色とりどりの紙は余計な折り目もなく動物に変化していく。
 同じ手順で作ったはずの私のは折り直しとズレでぐちゃぐちゃ。

「むー」

 くしゃり。
 能力を使うまでもない。

「もったいないじゃない」

 霊夢に諭される。霊夢の手元の出来上がりを見てちょっと拗ねる。

「だってこれ失敗作だもん」
「失敗作であることの罪は失敗作にはないんじゃないの?イジメっこねぇ」
「むーむー」

 私は不良品以下か。

 ふてくされる私の様子を見た霊夢は、急に無言になりスピード上げて紙を折り始めた。
 次々と動物や箱が完成していく。
 当然私はそんなペースについていけるわけがない。

「ねぇ霊夢。私全然ついてけない……」

「まぁいいからちょっと待ってなさい。あとお茶のおかわり」

 コイツ全然優しくない。
 それでもわざわざ日本茶を取りに行く辺り私は大人だと思う。

 日本茶を、急須がない我が家の常としてポットに入れて戻ってくると霊夢の作った作品が七つほど並んでいた。

「うし、こんなもんかな」

 一仕事終えたとばかりにポットからなぜかこれだけはある湯のみにお茶を注ぎ一口。

「こんなもん。て私に教えてくれるんじゃないの……?」

 ちょっと泣きそう。


 そんな私を無視で霊夢は湯のみを置き、新しい紙を取り出して私の前に置く。

「それじゃ始めるわよ、ほらあんたさっさと座りなさい」
「始める?霊夢のはもうできてるじゃない」

 ちょっとふてくされた口調になったが、霊夢は気にしない。

「何言ってんのよ、見本よ見本。あんた初めてみたいだし目の前に完成品あったほうが分かりやすいでしょ?」

 ちょっと泣きそう。


 その後も霊夢は常に私の一手先を進み、丁寧に折り方を教えてくれた。
 もしかしたらコイツすごい優しいかもしれない。

 初対面ではボコボコにされるし、パーティでもあまり愛想よくしている姿を見た事がなかった。
 どっちかというと周りの妖怪がベタベタして本人は嫌がってるくらい。
 他人と関わりを持ちたがらないタイプだという印象だった。
 事実折り紙での件を姉に話すと「そんなに優しい霊夢知らない……」と拗ねていた。
 先生にも言ってみると、ちょっと意外そうな顔をしつつも

「誰にでも平等な距離感とか言ってたけどベタベタしてくるのは遠ざけてるから、あなたに優しくしてバランス取ってたのかもねぇ」

 という感想。よく分からない。






「また今度ね」

 去り際の一言。魔理沙は口にお菓子をいれてモゴモゴ。汚いし何て言ってるか分からない。


 また今度というのはパーティやお茶会のことで、折り紙はあれきりかと思っていたら霊夢は次の週にも来た。
 これは優しさやらバランスやらというよっぽどお礼のワインが美味しかったに違いない。
 折り紙をまったくしていなかった魔理沙も一緒だったのでこの説にはちょっと自信がある。





 前回の反省から、まずは霊夢が見本を作るのを眺めることに。
 魔理沙も今のところまだ折り紙をする気のようで興味深く眺めている。
 今日は何を作るのだろう。


 その時だった。
 私の世界が変わる。









「あ」

 声は小さかったはず。横の魔理沙もまだ気付いていない。ハズ。
 大丈夫。大丈夫。
 自分に言い聞かせながら霊夢へと視線を戻す。
 驚いた事に、霊夢は折り紙を中断しこちらへと視線を向けていた。
 気付いたのか。
 すごいな、やっぱり。
 あぁ、もうだめだ。
 目を瞑る。

「どうした霊夢。……フラン?どうした?」

 横から魔理沙の声が聞こえる。

 目は瞑ったまま。
 それでもミエル。ワカル。
 魔理沙達がいるのとは反対側の方向へ壁までいったところに、蠢く顔だけの動物達。
 猿、犬、猫、鼠、虎、兎、鳥……。
 大きさも数もバラバラ。
 彼らは声を立てず、こちらを赤い、真っ赤な瞳でこちらを睨んでイる。


 そのうち、視線は私に合わせたままこちらにズリズリと顔だけで這ってくる。
 彼らは私を取り囲む。
 魔理沙と霊夢は居るのに、そこに彼らもイる。



 初めてならともかく、最近ではこの程度ならそのまま寝る事も出来る程度には慣れていた。
 ハズだった。

 でも今は呼吸は荒く、瞑った目を開ける事すらできない。
 全身に汗をかき体はブルブルと震えていた。
 座ったままで下を向き目を瞑り、横に倒れる事もできないでいた。


 側に知り合いがいるだけで、こんなにも辛い。
 初めて、家族以外がいる時の「発作」だった。
 助けを求めるわけにはいかない。
 見えていない人に助けを求めても意味がない。
 それに助けを求めなかったとしても、今の私を見ただけで彼女たちは私の事を不気味に思うかもしれない。
 そして私が再び目を開けたら、彼女たちはもういないのではないか。
 それは嫌だ。
 楽しい時間がなくなるのは、イヤだ。
 イヤだ。
 もうイヤだ。
 イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ。





 それなら、壊しチャエ。


 気付けば、手の中に彼らの、そして私のでもある「目」を集めていた。
 頭をつぶしたくらいじゃ吸血鬼の私が死に絶える事はない。
 何日かすれば顔も元通りになるだろう。

 一度壊してしまえば私は暴れる。

 それでもこの二人なら私を止められるかもしれない。



 そうだ。壊してしまえ。コワシテシマエ。
 ヤッテミロ。コワシテミロ。

 彼らの視線は、私の破壊衝動を挑発する。。


 いやだ、こわしたくない。
 コワセ。イヤじゃない。
 いやだ。
 イヤダ
 いやだ
 イヤダ。
 頭の中で思考がグルグル廻るうちに息が詰まる。


 肺に溜まった空気をなんとか吐き出す。押し出すように。
 するとその反動で思いがけず深く息を吸う事ができた。

 少しセカイが戻り、私の耳に声が届く。目は瞑ったままだ。

「おいフラン聞こえるか?急にうずくまってどうした?腹でも痛いのか?」

 これは魔理沙の声。

「ずいぶん苦しそうだしもしかしてアレじゃないの、ほらあの医者がフランと遊ぶならとか覚えておけとかどうたら言ってた」

 これは霊夢の声。
 二人の声には深刻さはそこまで感じられない。そういえば私との初対面ですらこんな調子だった。

「あぁ、幻覚が見えるとかだったか?それにしてもちょっとこれはずいぶん辛そうだな」
「魔理沙が昔毒キノコ食べたときもこんなんだったわね」
「あの時は全身麻痺して……ってそんな話じゃない。フラン、おいフラン。大丈夫か?」

 魔理沙の心配そうな声がこちらを向くをの感じた。

 大丈夫、じゃない。
 大丈夫になりたい。
 ダイジョウダ、コワシテミロ。
 魔理沙の言葉が私の破壊衝動の背を少し、押した。



 いきなり私の頭から爆発が起きたらさすがにこの二人もびっくりするかなぁ。
 でも、ダイジョウブになりたいよ。

 少し手に力を籠めようとした。

 その時


「大丈夫よ、フラン」



 霊夢はそう言いながらそっと私の手を握った。


 彼らが消えたわけでもない。もちろん霊夢が消したわけでもない。
 まだ目は瞑ったままだし、息は荒い。「目」も霊夢が触れた手の中にある。
 そして掛けられた言葉は、魔理沙と同じ。
 でもその意味は真逆。


 少しだけ、ほんの少しだけ楽になった。
 ダイジョウブ。私は大丈夫。
 言い聞かせるように頭の中でその言葉を繰り返す。

 気付けば、空いている方の手を魔理沙が握っていた。
 もう少し、楽になった気がした。





 どのくらい経っただろうか。
 彼らの視線と気配が消え、声も消えた。自然と呼吸も落ち着く。
 手の中の「目」も消えていた。
 いつのまにか二人の手も私の手にはなかった。
 
 目をゆっくりと開けると、そこには並ぶ赤白と白黒。

「おめざめか」
「おはよう、目覚めはいかが?」

 窓の無い部屋のはずなのに、私には光が差し込んでいるように感じられた。

「ご、ごめん」

 思わず謝ってしまう。眩しくて。
 ニカッと笑う魔理沙。

「そういうときは謝罪じゃなくてなんていうんだ?」

 霊夢もちょっとニヤけていた。
 ベタベタだ。
 ベタな話は本で読むたびにありえないって思ってた。
 でも。

 いいなぁ。



「ありがとう」





「「よくできました」」




 笑顔が三つ。












「ねぇ、今なんとかできない?再現とか」
「先生……それは無理だよ……というかヒドイ」
「あいつらには記録装置持たせるべきだったわ。まったく、白と赤と黒の三色で二人の癖に」

 ぶつぶつぶつ。あ、舌打ちした。

「なんか凄いところに八つ当たりしてるね」

 先日の一件を話すと先生はとても悔しがった。
 先生が見たことない「発作」を彼女たちが見たのが気に食わなかったようだ。

 そして一通り悔しがった後に、見た幻覚やその時の私の状態について詳しく聞き出した。
 これからは私に起こったコトと状態を記録して、私のために役立てるらしい。
 ついでだからと今まで見た幻覚についても話す事になり、その日はそれだけで先生との時間が終わった。


 ただこの前の一件についてベタな展開の部分は先生には「二人が待っている間に自然に収まった」としか伝えていない。
 どうせ詳細は魔理沙か霊夢から漏れるだろうし。恥ずかしいし。















「まーる、と」

 一区切りついたところで紅茶を一口。

 目をやれば二冊目の本を取りに図書館へ行く日も近い。
 次のカバーは何色にしようかな。
 姉の代わりに赤?それとも白?やっぱり同じ青?

 頭の中で虹を描いていると、部屋の扉が叩かれる。

「はーい」

 今日は先生が新しい人を連れてくることになっていた。
 どんな人だろう。
 私の世界をどんな風に広げてくれる人なんだろう。


 揺れる虹を背に、扉へと一歩を踏み出した。
 読んでいただいてありがとうございました。
 二度目まして、本家では初めましてになります。ねもいと申します。

 ジェネ初投稿→何かまた書こう→あぁでも仕事→2ヶ月でメモ帳にネタばかり貯まる→久々に創想話スレを見たら何かネタにあったものに近いレス→よし書こう
 で書きあがりました。きっかけをくれた創想話スレの人、ありがとう。

 フランの幻覚やらを思いついたのはタイトルの元ネタでもある色川武大の「狂人日記」を読んだときでした。魯迅の方じゃないです。
 でも医学知識も経験もないので結局妄想の病気です。ごめんよフラン。
 作中の「私たちは時間を殺すために本を読むのだ」は佐藤亜紀の「戦争の法」からです。

 
 ご感想等頂けたら幸いです。
ねもい
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コメント



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7.90名前が無い程度の能力削除
少し文章がこなれてなくて読みにくさはありましたが、内容はとても良かったです。
タイトルから暗めの展開かと思いましたが、そんなことは全然なくてすごく優しい物語でしたね。
正常な心を持つフランのいじらしさに和みましたし、永琳先生の頼もしさも心強かったです。

フランの今後の経過もぜひお話として読んでみたいです。