「アリスいるかぁ~?邪魔するぜ!」
魔法の森のずっと奥、ひっそりと佇む洋館に踏み込みつつ、そう声をかける。無断訪問はいつものこと。前までは窓から入ってたんだ。玄関から入ってるんだし、問題ないだろう。返事を待たずに入ってるからなんとも言えないんだけど。きっと暗黙の了解になっている…はずだ。一緒にいくつか異変を解決した仲だし、たまにこうしてお茶やお菓子をたかりに行っても嫌と言わないところを見るとそういうことだろう、たぶん。まぁ言わないだけで嫌なのかもしれないんだけどな。でも、結局、しょうがないなぁと言った感じでいつももてなしてくれるところを見るとそういうことだろう。いや、ただたんに私に興味がなくて適当にあしらわれてるのかもしれないな…。アイツは人形以外に興味があるモノがないのかもしれないし…
「にゃ~」
「ん?」
そんなことを考えつつ家に入ると、家の中からなにやら鳴き声が聞こえてきた。声のする方に目を向けると、声の主が棚の上から蒼い瞳でこちらの様子をうかがっていた。頭のてっぺんからしっぽの先まで真っ白な猫がそこにいた。長いしっぽをくねらせながら、じ~~~っとこちらを見つめ続けている。
「なんだ?お前が新しいここの住人か?」
軽い冗談を言いながらその猫に近寄ってみる。毛並みも良く、上品な雰囲気を醸し出すその猫は、なんとなくアイツを連想させた。魔法の森には魔草の関係で猫や犬なんかはいないはずだ。だから迷い猫…ということは考えづらい。それにこの猫、野良猫には思えない。いかにも『都会派』って感じだ。
「あいつが人形以外…猫に興味を持つなんて考えにくいが…お前どっからきたんだ?」
「にゃ~」
白猫は目線を外さずまたひとなきした。まるでこちらの言葉がわかってて、返事してるみたいだ。どこまでも蒼い瞳は、なんだか心まで見透かされてるようだ。
「そうか、アリスの猫なのか。あんなのがご主人じゃお前も大変だろ?」
「にゃあ」
そう言葉をかけるとふいっとそっぽを向いてしまった。ご主人様を悪く言って機嫌を損ねたらしい。ホントに言葉がわかるみたいだ。不思議な猫…いかにもアリス(魔女)の飼いそうな猫だな。
「あ~悪い悪い。ついな。アリスはお前に優しくしてくれるのか?」
頭を撫でてやると気持ち良さそうにめをつむった。のどをなでるとごろごろしてくる。かわいいやつめ。頭から背中にかけてゆっくりとなでてみる。かなり毛並みもいい。真っ白で光沢のある毛並みはさわっていて気持ちがよかった。
「お前のご主人も可愛いからな。ペットは飼い主に似るって本当だったんだな。」
アイツは可愛いというより綺麗だけど。顔といいスタイルといい、ホント羨ましい。あれで無愛想じゃなかったら、みんなアイツに恋しちまうんじゃないか?いつも素っ気ない態度ばっかりで、猫を可愛がってる姿を想像できなかった。アリスに可愛がってもらうなんて、少しだけコイツがうらやましい。
「なぁ、アイツに可愛がってもらうってどんな気持ちなんだ?」
白猫を撫でながら少し考えた。アイツとお茶して、なんでもないことを話してて気がついたことを。
アイツはいつも周りにおんなじ顔しか見せていない。たまに微笑むけど、それは本物の笑顔じゃない。いわゆる社交辞令に近いやつだ。それに気がついて、どうしようもなく気になって、よくここにくるようになったんだ。アイツの違う顔が見たくて、アイツの違う顔を私だけが知りたくて…。
「なあ、お前には、アリスは違う顔を見せてくれるのか?」
なでていた手を離すと、白猫はつむっていた目を開いて、少しだけ首をかしげた。アリスは私のこと、どう思ってるんだろう…
「私、アリスのことが好きなんだな…」
ぽつんと出た言葉に自分でも少しびっくりして、そしてすごく納得した。たぶん私はアリスのこと、好きなんだ。だから気になって、仕方ないんだ。
「にゃ~」
「ん?ああ、もっとなでてほしいのか?」
猫は違うといった感じで顔をそむけたけど、構わずなでまわしてやる。白猫はちがうとばかりにいやいやってした。
「うりうり!可愛いヤツめ!」
「うにゃ~~~!!」
「アイツもこれくらいわかりやすかったらいいのにな!」
「わかりにくい女で悪かったわね」
突然声をかけられてビクッとする。し、しまった。アリスが帰ってきたのか!?ていうかどっから聞いてたんだ!!?あたりを見回すけど、人気はない。いったいどこから・・・。
「ここよ、こっちだってば」
こ、こっちって、声のする方には猫しか・・・っ!!?
思わず猫から飛びのく。え・・・まさか!まさかッ!!?
白猫はゆっくりと棚の端に移動して、すっと棚から飛び降りた。
…と、思ったら、次の瞬間、白く光って瞬く間にひとの形になった。
そしてその人は―――
「あ、あああああああアリス!!!???」
「…わかりやすい動揺の仕方ね」
そう、アリスだった。白猫がたちまちアリスに早変わり。驚くなっていうほうが無理だ。混乱する頭をフル稼働して考える。つまりアレだ。アリスが白猫で白猫アリスだったわけだな?ねこありす…にゃりす?いやもうわけわかんない。
「な、なんで猫になってたんだよ!?」
「獣に擬態する魔法の練習」
「なんでそんな魔法の練習してんだよ!?」
「人形をいろんなものに擬態させて、段幕勝負の時とかに相手を撹乱できないかなぁって」
「なんでよりによって猫なんだ!?」
「猫が好きだから。ダメかしら?」
私の質問に坦々と答えるアリス。や、やばい。いろいろ聞かれてしまった。可愛いとか。アリスのこと好きだとか。こんなの、もう告白とかわらないじゃないか!どうしよう?別にあんたのことなんとも思ってないわよ。とか、なに言ってんの?気持ち悪い。なんて言われたらどうしよう!?今からでも適当なこといってごまかしたほうがいいんだろうか?でもいったいなんてーーー
「魔理沙」
「は、はい!」
「どうせまたお茶でもたかりにきたんでしょ?お菓子用意するからこっちに座って?」
「…お、おう」
あっけにとられながらも椅子に腰かける。アリスは何事もなかったように人形に指示を出してお茶の用意をはじめた。…よかった。なかったことにしてくてたみたいだ。でもなんか残念だな、返事くらい聞かせてくれても…いやいや、怖すぎる。あんなこと掘り下げられてもこまるし、これでよかったんだよな、うん。
「紅茶でいいでしょ?」
アリスが向かいの席に腰かけながら聞いてきた。
「おう!ミルクと砂糖も頼むぜ!」
「はいはい。わかったわよ。」
いつもどおり、アリスの作ったうまいお菓子でも食べながら何気ないことでも話そう。
なんだかんだ言って今の関係が一番いいのかもしれないし。
アリスだって、今の関係を壊したくないからそうしてくれたのかもしれない。うん。これでよかっ――
「あ、あと―――
私は好きだからね?アンタのこと。」
―――――え?今、なんて―――――――
そう言おうと思ったけど、なにも言えなかった。
だってそこには耳まで真っ赤にして、見たこともない表情をしている彼女がいたから――――――
「おっす!じゃまするぜ!」
「また来たの?物好きね」
あの日から毎日のようにここに来ている。アリスの言葉が忘れられなくて、むずむずして、ついついここに来てしまう。だって気にしてたヤツに好きって言われて、気にならないほうがおかしいよな。だから私は悪くない。
「…いい加減離れてくれないかしら?」
だからこうして抱きついたっておかしくない。うん。
「なんだよー、猫の時はこうして背中をなでなでするとよろこんでたくせに…うれしくないのか?」
「…作業ができないって言ってるの。まったく…アンタのほうがよっぽど猫っぽいわ」
「うれしくないことはないんだな?安心したぜ」
「…ばか」
今のは照れ隠しの顔、だな。最近はどんどん新しい顔が発見できてる気がする。この調子でもっともっとみんなが知らないアリスが見つかるといいな。
「アリス!好きだぜ!!」
「――ッ。ホントにばかなんだから!」
あ、また―――。
魔法の森のずっと奥、ひっそりと佇む洋館に踏み込みつつ、そう声をかける。無断訪問はいつものこと。前までは窓から入ってたんだ。玄関から入ってるんだし、問題ないだろう。返事を待たずに入ってるからなんとも言えないんだけど。きっと暗黙の了解になっている…はずだ。一緒にいくつか異変を解決した仲だし、たまにこうしてお茶やお菓子をたかりに行っても嫌と言わないところを見るとそういうことだろう、たぶん。まぁ言わないだけで嫌なのかもしれないんだけどな。でも、結局、しょうがないなぁと言った感じでいつももてなしてくれるところを見るとそういうことだろう。いや、ただたんに私に興味がなくて適当にあしらわれてるのかもしれないな…。アイツは人形以外に興味があるモノがないのかもしれないし…
「にゃ~」
「ん?」
そんなことを考えつつ家に入ると、家の中からなにやら鳴き声が聞こえてきた。声のする方に目を向けると、声の主が棚の上から蒼い瞳でこちらの様子をうかがっていた。頭のてっぺんからしっぽの先まで真っ白な猫がそこにいた。長いしっぽをくねらせながら、じ~~~っとこちらを見つめ続けている。
「なんだ?お前が新しいここの住人か?」
軽い冗談を言いながらその猫に近寄ってみる。毛並みも良く、上品な雰囲気を醸し出すその猫は、なんとなくアイツを連想させた。魔法の森には魔草の関係で猫や犬なんかはいないはずだ。だから迷い猫…ということは考えづらい。それにこの猫、野良猫には思えない。いかにも『都会派』って感じだ。
「あいつが人形以外…猫に興味を持つなんて考えにくいが…お前どっからきたんだ?」
「にゃ~」
白猫は目線を外さずまたひとなきした。まるでこちらの言葉がわかってて、返事してるみたいだ。どこまでも蒼い瞳は、なんだか心まで見透かされてるようだ。
「そうか、アリスの猫なのか。あんなのがご主人じゃお前も大変だろ?」
「にゃあ」
そう言葉をかけるとふいっとそっぽを向いてしまった。ご主人様を悪く言って機嫌を損ねたらしい。ホントに言葉がわかるみたいだ。不思議な猫…いかにもアリス(魔女)の飼いそうな猫だな。
「あ~悪い悪い。ついな。アリスはお前に優しくしてくれるのか?」
頭を撫でてやると気持ち良さそうにめをつむった。のどをなでるとごろごろしてくる。かわいいやつめ。頭から背中にかけてゆっくりとなでてみる。かなり毛並みもいい。真っ白で光沢のある毛並みはさわっていて気持ちがよかった。
「お前のご主人も可愛いからな。ペットは飼い主に似るって本当だったんだな。」
アイツは可愛いというより綺麗だけど。顔といいスタイルといい、ホント羨ましい。あれで無愛想じゃなかったら、みんなアイツに恋しちまうんじゃないか?いつも素っ気ない態度ばっかりで、猫を可愛がってる姿を想像できなかった。アリスに可愛がってもらうなんて、少しだけコイツがうらやましい。
「なぁ、アイツに可愛がってもらうってどんな気持ちなんだ?」
白猫を撫でながら少し考えた。アイツとお茶して、なんでもないことを話してて気がついたことを。
アイツはいつも周りにおんなじ顔しか見せていない。たまに微笑むけど、それは本物の笑顔じゃない。いわゆる社交辞令に近いやつだ。それに気がついて、どうしようもなく気になって、よくここにくるようになったんだ。アイツの違う顔が見たくて、アイツの違う顔を私だけが知りたくて…。
「なあ、お前には、アリスは違う顔を見せてくれるのか?」
なでていた手を離すと、白猫はつむっていた目を開いて、少しだけ首をかしげた。アリスは私のこと、どう思ってるんだろう…
「私、アリスのことが好きなんだな…」
ぽつんと出た言葉に自分でも少しびっくりして、そしてすごく納得した。たぶん私はアリスのこと、好きなんだ。だから気になって、仕方ないんだ。
「にゃ~」
「ん?ああ、もっとなでてほしいのか?」
猫は違うといった感じで顔をそむけたけど、構わずなでまわしてやる。白猫はちがうとばかりにいやいやってした。
「うりうり!可愛いヤツめ!」
「うにゃ~~~!!」
「アイツもこれくらいわかりやすかったらいいのにな!」
「わかりにくい女で悪かったわね」
突然声をかけられてビクッとする。し、しまった。アリスが帰ってきたのか!?ていうかどっから聞いてたんだ!!?あたりを見回すけど、人気はない。いったいどこから・・・。
「ここよ、こっちだってば」
こ、こっちって、声のする方には猫しか・・・っ!!?
思わず猫から飛びのく。え・・・まさか!まさかッ!!?
白猫はゆっくりと棚の端に移動して、すっと棚から飛び降りた。
…と、思ったら、次の瞬間、白く光って瞬く間にひとの形になった。
そしてその人は―――
「あ、あああああああアリス!!!???」
「…わかりやすい動揺の仕方ね」
そう、アリスだった。白猫がたちまちアリスに早変わり。驚くなっていうほうが無理だ。混乱する頭をフル稼働して考える。つまりアレだ。アリスが白猫で白猫アリスだったわけだな?ねこありす…にゃりす?いやもうわけわかんない。
「な、なんで猫になってたんだよ!?」
「獣に擬態する魔法の練習」
「なんでそんな魔法の練習してんだよ!?」
「人形をいろんなものに擬態させて、段幕勝負の時とかに相手を撹乱できないかなぁって」
「なんでよりによって猫なんだ!?」
「猫が好きだから。ダメかしら?」
私の質問に坦々と答えるアリス。や、やばい。いろいろ聞かれてしまった。可愛いとか。アリスのこと好きだとか。こんなの、もう告白とかわらないじゃないか!どうしよう?別にあんたのことなんとも思ってないわよ。とか、なに言ってんの?気持ち悪い。なんて言われたらどうしよう!?今からでも適当なこといってごまかしたほうがいいんだろうか?でもいったいなんてーーー
「魔理沙」
「は、はい!」
「どうせまたお茶でもたかりにきたんでしょ?お菓子用意するからこっちに座って?」
「…お、おう」
あっけにとられながらも椅子に腰かける。アリスは何事もなかったように人形に指示を出してお茶の用意をはじめた。…よかった。なかったことにしてくてたみたいだ。でもなんか残念だな、返事くらい聞かせてくれても…いやいや、怖すぎる。あんなこと掘り下げられてもこまるし、これでよかったんだよな、うん。
「紅茶でいいでしょ?」
アリスが向かいの席に腰かけながら聞いてきた。
「おう!ミルクと砂糖も頼むぜ!」
「はいはい。わかったわよ。」
いつもどおり、アリスの作ったうまいお菓子でも食べながら何気ないことでも話そう。
なんだかんだ言って今の関係が一番いいのかもしれないし。
アリスだって、今の関係を壊したくないからそうしてくれたのかもしれない。うん。これでよかっ――
「あ、あと―――
私は好きだからね?アンタのこと。」
―――――え?今、なんて―――――――
そう言おうと思ったけど、なにも言えなかった。
だってそこには耳まで真っ赤にして、見たこともない表情をしている彼女がいたから――――――
「おっす!じゃまするぜ!」
「また来たの?物好きね」
あの日から毎日のようにここに来ている。アリスの言葉が忘れられなくて、むずむずして、ついついここに来てしまう。だって気にしてたヤツに好きって言われて、気にならないほうがおかしいよな。だから私は悪くない。
「…いい加減離れてくれないかしら?」
だからこうして抱きついたっておかしくない。うん。
「なんだよー、猫の時はこうして背中をなでなでするとよろこんでたくせに…うれしくないのか?」
「…作業ができないって言ってるの。まったく…アンタのほうがよっぽど猫っぽいわ」
「うれしくないことはないんだな?安心したぜ」
「…ばか」
今のは照れ隠しの顔、だな。最近はどんどん新しい顔が発見できてる気がする。この調子でもっともっとみんなが知らないアリスが見つかるといいな。
「アリス!好きだぜ!!」
「――ッ。ホントにばかなんだから!」
あ、また―――。
やっぱアリスはツンデレなんだw
地の文の頭は一文字分スペース空けるといいですよ。
でももうちょい展開した話が読みたかった
欲を言えばもちっとボリュームがあれば満足できたかも
それがあなたにできる善行です。
まあ、盛大にニヤニヤしましたけどね。
大量の砂糖を。
これ以上やられたら糖尿病になって死んでしまう