『百年後の私へ。西暦に換算すると、2017年の幻想郷からこれを書いています。
どうですか? 百年後の幻想郷は。きっと霊夢も魔理沙も咲夜も早苗も、とうに亡くなっているのではないかと思うのですが、代わりに賑やかな人間は出てきましたか?
私は相変わらず、魔法の森に閉じ篭っているのでしょうか。自律人形の完成に、一歩でも近づいているんでしょうか。
突然百年後に向かって手紙を書くだなんて、珍奇な思いつきだと笑われるかもしれませんが、嵐のように過ぎていく今――
人間と同じ感覚で過ごすことなど、このときを置いて今後は、もはや存在しないのではないかという焦燥感に囚われているのです。
百年後にこれを開いたときに、このときの気持ちを、百年越しにそっと思い出してやってください。
――アリス・マーガトロイドより』
「ふぅ……何やってんだろ、私」
あまりに研究が煮詰まりすぎて、紙に今の心境をできるだけ丁寧に、クソッタレな気持ちを押し込めつつ書き殴ってやった。
それを手近な箱に詰めて、百年経てば自動的に解けて爆発するように(当然中身は残るようにして、だ)庭へ埋めた。
もちろん、百年後ぴったりに、私が手に取る可能性なんて微々たるものだと思う。
なんせ、封印は適当で、解ける年月もだいたい百年を目安にしておいたけれども、ぴったり合わせるほど器用じゃない。
こんなもの、深夜の思いつきに過ぎないのだ。今宵の満月がうんたらこうたらのそうやらそうなんやらなのだ。
どうせ一週間もすれば埋めたこと自体を忘れてしまうだろうし、しかしながら、この行動の全てが無駄というわけではない。
要するに気分転換の一種なのだ。それだけストレスが溜まっているのだ。
できれば自棄酒したいし暴食に向かって全力疾走したい。大丈夫、食べても太らない体だからと麺類を口からズルズルと流し込みたい。
「あーもうほんと、私何してんだろうね」
寝転がる。乾いた草がかさかさと音を鳴らす。
樹木が鬱蒼と茂った魔法の森では、天を仰いだところで星のひとつも見えやしない。
けれども天を仰がざるをえなくなるのは人の常なのだろうか、と。
妖怪の一種族である魔法使いといえども、人の形を取っている限りは人の業には逆らえぬもので。
暗い気持ちのときには意味もなく上を向いて、大きくため息を吐きたくなるもので。
そしてこういうわけのわからない行為に耽って意味もなく時間を潰して、紅茶をバカみたいに飲んで寝転がる。
こんなことで不貞腐れている場合じゃないんだけどと思ってみても、先が見えなさすぎると何をしても無駄なのではないかという気持ちにさせられてしまうのだ。
そんなものだ、人生。なんて割り切れたらいいのだけど、少しばかり擦り切れている実感がある私にもその境地にはいまだ至れはしない。
今日という日は二度とこないということがわかっているのに、騒がしい日々にも終わりがくることがわかりきっているのに。
そして、その後の退屈な日々が緩やかにこの体を侵食していくということが確定している未来だというのに、その前からこうして悩んでいる。
嵐のような日々を、頭を空っぽにして楽しむのは、さほど難しいことではない。けれどもそうしていれば、すぐに頭打ちになるだろうとも思う。
水に顔を浸けて、できるだけ耐え忍んで、何でこんなことをしているんだろうというマゾヒスト的悦びが首をもたげはじめる。
体が無意識にそれを求め続けている限りは、飽食の日々に身を投じることなんてできやしないのだ。
つくづく、面倒な人間性(この言葉が、魔法使いである私に適当なのかはわからないけれども)をしていると思う。
劇的な出来事なんて、この世の中早々起きることでもないのだ。
当たり前の今日があって、何もなかった昨日があって、普通も普通な明日が来る。
このサイクルの中では、たとえ特別な日があっても徐々に色褪せていってしまう。
まぁそんなもんなのだ。
不幸だと思うのならば、この現状からどうにかして抜け出せばいいのだ。
しかし、それをするほど不幸ではないので、こうして寝転がっているというわけだ。
「なーんか、面白いことってないかしらねえ」
「あるよ」
「そうなの。凄い」
「うん」
がばっと体を起こす。こんな深夜に、魔法の森の鄙びた場所で、魔理沙以外と会話するなど。
「やっほー」
「や、やっほー……?」
魔理沙にしては声が高すぎるし幼いしと向き合ってみると、当然、魔理沙ではなかった。
というよりも、今まで会ったことのない少女が、にこにこ笑いながら立っていた。
白いフリルのついた青いドレス、肩にかかった金色の髪に青色の瞳。
お人形のような少女が、汚れ一つなくそこに佇んでいるのは異様だった。
魔法の森をこんな時間に歩いていたら、相当に慣れたものでなければ居場所がわからなくなって立ち往生してしまう。
仮に歩き通せたとしても、ぬかるんだ地面はどんなに気をつけて歩いてもブーツに泥が跳ねているだろうし、飛べば鉤爪のような木々が引っ掛けてくる。
そもそも、ぼーっとしていたとはいえ、話しかけてくるまで気づかないだなんて。
本当にボケが始まってしまったのか。だとしたら危ない。
「初めまして、マイマスター」
「は、初めまして……。えーと、ま、マスターって私のこと?」
「ええ。百年後の未来からやってきました、上海人形ですわ」
いったいこいつは、何を言っているのか。
「しゃ、上海って、あなたどうみても人間か妖怪じゃない」
「そうかしら? 何処からどう見ても上海人形だと思いますけど。外見を変えて貰った記憶は有りませんし」
確かに、少女はよくよく見てみれば、背格好はかなり違っているけれど、服装や顔立ち、瞳は上海人形のそれに良く似ている。
ひょっとしたら、上海人形をそのまま拡大したらこんな姿形になるのかもしれない。
「良い夜ですね。月光浴をするには少しばかし、木々が邪魔ですけれど」
頬を引っ張る。痛い。
風がぴゅるりーとお寒く吹いて、しゃんはい、の髪がふんわり揺れる。
「行きましょう、マイマスター。今日みたいな良い夜に静かに眠っているなんて、勿体無いもの」
しゃんはい、という少女は優雅に身を翻して、木々の隙間をするりと抜けて行った。
追いかける、追いかけない、少し逡巡はすれど、立ち上がって、少女の消えていった道を駆ける。
一体彼女の言葉の何が、私の胸を燻らせているのだろうか。
百年後の未来という言葉に惹かれたのか、あるいは上海人形と名乗る少女に興味を持ったか、この際両方でも良かった。
丁度煮詰まってしまっている事柄へのアンサーが目の前に転がっているかもしれない。ひょっとしたら化かされているのかもしれないけれど。
理由や真実がどうであろうと、私の中の焦燥感を煽るものがあったことには違いなかった。
ブーツやスカートの裾に土が跳ね、身体のあちこちを数多の枝葉が打つ事に少しだけ顔を顰めながらも、狭い木々の隙間を真っ直ぐに駈け抜けて行く。
その背を見失わぬように追いかけて、ようやく手の届きそうな所まで辿り着いたときには、もう森を抜けてしまっていた。
群青色に広がる草原に佇んで夜空を見上げていた少女は、そのまま額縁に収めて一枚の絵画に出来そうでもあった。
風が吹く。
草木が揺れるのに合わせて、彼女のスカートも揺れる。揺れるのだから紛れもなく現実なのだけど、これが非現実であれば良いなぁという気もしないでもない。
立ち竦んでいるだけでは何も変わらない。
隣に歩み寄って、倣って天を見上げれば、一面の星空と真ん中に浮かぶ丸い月。
こちらから話を切り出すのを待っているのか、しゃんはい、は空を仰いでいるばかりで、それ以外はうんともすんとも言わなかった。
ため息を吐いて、改めて彼女の横顔を眺める。
先ほどは人間か妖怪か、と言ったけれども、私は人形遣いだ。
落ち着いて眺めれば、目の前に居るのがそれらと、そうでない何かであることぐらい区別はつく。
紛れもなく、目の前に居る少女、しゃんはいは人形のそれであった。
「……ねぇ、いきなりやって来て『百年後から来た』なんて奇妙な事言っておきながら逃げるなんて、冗談も大概にしなさいよ」
「あ、信じてくれるんだ、その話」
こちらを一瞥すらしなかったのに、私が切り出した途端に嬉しそうな顔を向けてきた。
「信じるも信じないも、あなたは私に信じて欲しいんでしょう?」
「そうね、信じてくれなかったら流石にちょっとショックかもしれない。でも、マスターならきっと分かってくれると思ってた」
「だからといって鵜呑みにするわけじゃないけど。ただちょっとだけ、ほんの指先一つまみ程度興味が湧いたの」
いきなり未来からやってきました。私を信じてください。
それを鵜呑みにして冒険の旅に出発する準備をするほど夢見がちではないし、そも、私は自他ともに認めるインドア派だ。
パチュリーほどではないにせよ、できるだけ面倒なことは避けたい性質である。
「ありがとう。それじゃあ改めて……私は上海、マスターに創られた人形です」
「はぁ」
上海の告げた言葉は、予想通りの言葉ではあった。
何の捻りもなさすぎて、そのまま耳から右から左に流れていきそうなぐらいには、私の想像の範囲内であった。
となるとこれは、大方八雲紫辺りにからかわれているに違いない。
こんな陳腐でありきたりなストーリーを用意してきているのなら、必ずひっくり返すための何かが仕込まれているのだ。
素直すぎる言葉に訝しい気持ちでいると、上海は大きくほっと息を吐いた。
「良かった、無事なマスターに会う事が出来て」
ふわり、笑顔を湛えて上海は言った。
「無事なマスター、って……え? あなたのマスターはどうしたのよ」
「居ないよ。百年後には、マスター・アリスはもう、居ない」
こいつ、涼しい顔してとんでもないこといいのけやがった。
帰り道、足が、妙に重かった。
空を飛ぶといまいち道がわからなくなってしまうため、地面の湿り気に周りの景色を足して場所を把握していく。
魔法の森は瘴気が濃いために視界が悪いため、視覚だけに頼っていては余計に時間がかかってしまうのだ。
しかし踏み慣れているはずの地面が、まるで初めて歩くように纏わり付いて来るせいで、下がっていた気分が更に落ち込んで行く。
百年後に、私は居なくなっている。
その言い方に何の意図が有るのかは分からないけど、上海はそう言った。
これが例えば、遊びで引いた占いの結果だったのなら、笑い飛ばす事も簡単だったと思う。
けれども、未来から来たという証拠は何一つないとはいえ正面から突き付けられてしまうと、やはり動揺はする。
肝心な部分はこれっぽっちも喋らずにただ伝えるだけだなんて、何処ぞのリュウグウノツカイくらいに無責任じゃないか、と蹴り飛ばしてやりたくなった。
不安を煽るだけ煽って、一体何がしたいんだか。
そのくせ一丁前にお願いだけはしてきたのだった。
「少しの間、私をマスターの元に置いてくれませんか?」
身元もわからない人形(魔力の供給源は見当たらなかった。恐らく、私自身が目指している自律人形そのものであることは間違いない)をいきなり家に置くのもあれな話だけれど。
百年後にお前は居なくなっているだなんて言ってきた輩とそのまま別れるだなんて、気持ち悪くってしょうがない。
いざとなったら強硬な手段を取ってでも発言の真意を確かめなくては夜もスッキリ眠れない。
そのいざとなる手前のギリギリのライン、それが。
「いいけどね、その代わりにあなたの身体を調べさせてね」
仕組みを調べさせてもらうこと。私としても、これが最大限の譲歩だった。
上海からの返事はなかったけれど、その無言は肯定として受け取っておくこととする。
家に辿り着いてからは、適当に服を脱ぎ捨ててベッドに潜り込んで寝た。
憂鬱で、それ以上頭を働かせたくなかったのだ。
明くる朝、体の仕組みを調べるべく上海を座らせた。なぜ球体関節なのかと聞いたら、マスターの趣味ではと返された。
まったくその通りだから困る。この子を作ったであろう未来の私は物事をよくわかっている。さすが私。
「なんでニヤついてるんですか」
「浪漫だから。腕は飛ばないの?」
「飛ばないです」
「ロケットパンチはないのね……」
「私が拒みましたから」
「え?」
「え?」
さて、自律人形の核となる部分。ソフトとしての式と、ハードとしての人工魂(コア)。この二つを両輪として体に組み込むことで自律人形は自律人形たりえる。
しかし、コアの容量を増やすことも、小型化もまったくもって上手くいかない。
式にしても、こちらから送った信号を受けて単純な動作をこなすことはできても、自分で状況を判断してということは現状では見当すらつかないでいる。
学習をすることで思考を最適化していく。これを外部からの入力ではなく、自分でこなしていかなければ自律人形とは到底呼べないのだけれど、スタート地点にもいまだ立てていないでいる。
悔しいけれど、これが自律人形に対する現実の高い壁なのだった。
ちなみに八雲紫の式、八雲藍には元々高い本人の処理能力に加えて、わけがわからない量の式が組み込まれている。
もはやあの辺に関しては考えるだけ時間の無駄なので、ここでは割愛しておこうと思う。
胸元を開き、コアの内部に書き込まれた式を試しに出力してみた。
どこまでの完成度に達しているかはわからないけれども、何もわからないなんてことはないだろう。
そう思っていたのが、
「……何、これ」
甘かった。
普段私が扱っている術式なんて、子供騙しだった。文字が機織機で織られた布のように複雑に絡み合い、紋様を描いている。
時折メモのようなものが挟まれているけれども、その意味も、一見しただけでは読み取ることができなかった。
そもそも絨毯のように広がった文字列を一周目を通すだけで日が暮れて朝陽が登りそう。気が遠くなる。
「ふっふっふ。そりゃそうだよ、マスターが三十年かかってようやく組み上げた術式だからね」
「さんじゅ……!」
「それに、組み始めるまでの勉強に十五年、体の素材の選定と準備に五年、他にも一杯時間が掛かってるんだから」
それだけの時間を人形作りに費やして、我ながら他にやることがなかったのだろうかと呆れてしまった。
他にも一杯と言うけれど、それだけ膨大な時間をかけなくては作り上げることが叶わなかったものが、今私の目の前に居る。
きっと本来ならば、心骨を砕いて磨り減らしていってようやく掴んでいった糸口の数々が容易に手に届く場所にあった。
調べたい。
目的に一歩どころか百歩どころか千歩飛ばして近づくことだって、夢じゃない。
魔理沙にとっては小さな一歩でも、私にとっては(改めて言う必要もないのだけど)千載一遇のチャンスなのだ。
「出来ない事じゃぁ、ないわね……! 気合を入れなさい! 私!」
ぺちん! と自分の頬を叩いて妙に浮ついたり不安になったりと状況やらなんやらに流れっぱなしの今にドロップキックだ。
なぁに時間だったらいくらでも有る。妖怪の一生に比べれば百年だって須臾の様に短いものだ……。パチュリーで百歳っていうのを考えると気は重くなるのだけど。
けれども、完成する未来が分かっているのなら、いくら時間を費やしてもそれは無駄な事じゃない、成功も失敗も全て意味の有る過程になる。
本当に完成するのか、していることは全て無駄なんじゃないかという疑心暗鬼に襲われることも、こうして結果が示された今存在しない。
研究に未来が見えた。それも、大きな追い風を呼び込んでの希望に満ちた未来が。
「うん! 協力お願いね、上海」
私に残された時間が百年だと言うのなら、その百年の間に完成させるまで。
いや、百年と言わず、縮める事は容易のはず。だっていまここには、結実したそのものが居るんだから。
何はともあれ先へ進む為の道は見付かった、後は全速力で駆け抜けるだけだ。
いまはただ、先だけを見ていれば、それでいい。余計な考えを介在させる必要も必然もないのだから。
ブレていた"時"はもう、終わっているのだから。
「………」
少しばかし回転数を早めすぎた感もある気持ちのエンジンに対して、上海は何事か考えているような顔で居た。
けれどもすぐに、ギリギリ聞こえるくらいの声でハーイと呟いてくれた。
やはりこの子は上海だ。
◆
「マスター、どこへ、行くのですか? 私が何か、気に障ることをしましたか?」
「どこか遠いところへ。幻想郷が駄目なら、月にでも外の世界にでも、ダメなのよ。私はもうここに居られない。
ここの、深い部分で歯車が絶望的なまでに噛み合わないの……。愚かだったのかもしれないわね。
数十年間、私は全ての心血を貴女を作るために捧げてきて――完成させたときに何かが手に入るんじゃないかって思ってた。
ただそれだけを思ってがむしゃらに。でも駄目ね。本当はもう気づいていたのよ。
目標にしていること以外がいつのまにか私の手から消え去っていて、後戻りできなくなったから余計に一心不乱に走り続けて。
……ごめんね上海。こんな駄目なマスターなんかが、貴女を生んでしまって」
「マスター……」
「もう、行くわ。せめて貴女は自分の思うように生きてみなさい。もう二度と会うことはないんでしょうけど……またね」
◆
そろそろ、女という性別から脱却する時期がきたのかもしれない。
鏡にはくすんだ金髪がアホ毛のようにあっちこっち飛び跳ねて、眼のしたには真っ黒な隈。
肌のハリは綺麗さっぱり失われていて、綺麗でもさっぱりでもない荒地を形成することに成功していた。
服はよれよれ。しかし着替えはとっくのとうに使い切ってしまった。
家事は普段ならば人形を操作して行っているのだけど、常に集中を強いられる環境なんだもの! できなくたって仕方がないでしょう!
一体誰に言い訳しているのか。それはたぶん乙女界とかいうものが平行宇宙には存在していて、そこでは少女は少女らしくしていなければならないとかなんとか。
いまの私のような、もはや男だの女だのという境界線を軽く斜め下に突き破った生き物など足を一歩踏み入れただけで蒸発してしまう。
花とスイーツを愛して、ちょっとでもイヤなことがあるとクラっとぶっ倒れてしまう。
しかし私の周りには、原始肉に齧り付いたまま数百m引き摺られても平気な顔をしているような少女しか居ないからなんとかなりそう。
そんなバカなことを考えながら机に突っ伏していると、上海が(これは今の私が作ったほう。ややこしい)が紅茶を置いてくれた。
ありがとう上海。紅茶に含まれるカフェインでもう少しだけがんばれるような気がするわ。
笑いかけたつもりなのに頬の筋肉が硬直していてぎこちなくなってしまった。上海はそそくさとどこかへと行ってしまった。
思えばあの子とも長い付き合いになる。百年後からやってきたっていう自律人形があの子だったっていうのも、一番初めに動かした子だからなのかなぁ、だなんて。
もし、このまま研究が上手く行ったとして、百年後にはこの子は一人になったとして。
これ見よがしに窓から外を見ているあの子のようになるんだろうか。
百年後、あなたは死んでいますよと宣告されても、はいそうですかとしか言いようがない気がする。
そりゃ居なくなっていると言われたらショックだ。けれども、不老不死でもない限りそのときは確実に訪れる。
ほんの十秒後かもしれないし、一万年後かもしれない。
死に方だってバナナの皮に足を滑らせて頭を打ってそのままぽっくり逝くとか。
死ぬんじゃなくて、ただ単に失踪しただけかもしれないけれど。
自律人形を完成させてしまった己の腕が怖くて、だとか。
ともかく、考えても見れば百年もあとのことを今からどうこうしても、しょうもない。
作業に打ち込んでいるうちに、徐々にそう思えるようになってきた。
もう一体の上海がうちに来てから、今日で丁度二週間になる。
外に出たい出たいという彼女の要望を圧殺しつつ(知り合いに会ったときに説明が面倒だから)研究を続けているのだけれど、それなりに協力的では居てくれている。
相変わらず何かを隠しているようではあるのだけど、それを無理に聞き出すことで得られるメリットが大きいとは思えない。
重要なことならば、いずれ彼女自身の口から話してくれることだろう。
「マスター」
「何かしらね」
「休むか気分転換をすることを、勧めます。こんなに詰める必要も、私にはないように思うのですが」
「確かにね」
「だったら」
どこかへ行こう、という言葉を手で抑える。あからさまにしゅんと肩を落とすけれども、理由なくこんなことを言ってるわけではない。
「あなたを見せびらかすような真似をしたら説明が面倒だわ。まさか、他人が百年後からやってきましただなんて信じるわけがないし」
「マスターは信じてないの?」
「信じてる。悪意にしても、誰がこんな手を込んだ悪戯をするのよ。
二週間弄って確信したけど、程度の違いはあっても式の組み方に私の癖がある。
それすらも完璧にトレースして自律人形を作って送り込みました、だなんて悪い冗談にもほどがあるわ。
大体、私にそれをすることで誰が得をするのよ?」
「だったら」
「でも、このことはなるべく隠しておきたいの。私だけが確信してることを、他人が納得するように話せっていうのは難しいというのが一つ。
それに天狗が嗅ぎつけてきたら厄介だし、もしそうなったら見世物になってしまうかもしれない。
メディスン・メランコリーと同じって誤魔化そうとしても、見る人がみたらわかってしまうもの」
本人にもまだ作れないものが、本人と同じ手癖で作られているだなんて、怪奇現象にもほどがある。
それに、寝てる間に妖精さんが作ってくれたんじゃないかとかからかってくる知人もいるし、それは避けたかった。
「でもマスター。マスターにとっての人形作りは何にも代えられない、大事なコトなの? 生きてくために、欠かせないこと?」
「うーん? うーん」
語気強く改めて問われると、なぜここまでがんばっているんだろうという気にならないこともない。
魔法使いはパチュリーのような精霊魔法を使う者、魔理沙のように触媒を使って爆発的な火力を出す者。
白蓮のように身体を強靭にして、妖獣にも劣らない強さを持つ者。そして、私のように命無き者に命を吹き込む私のような者。
けれども、最後に行き着くのは『魂』に関するものであること。
肉体は滅んでも、魂は滅ぶことは決してない。
生まれ変わって書き換わることがあっても、魂そのものは不滅であるというのがこの世界の理。
蓬莱人などは魂が肉体の形を取って闊歩しているようなもので、あれも行き着く究極の形の一つだった。
けれども、自らを不死にすることや他人を不死にすることは興味がなくて、人工の魂を作り出すことが目的。
そして、
「私は、そうだ。お母さんみたいになりたかったんだ」
「お母、さん?」
「私のお母さん。あなたに話したことはなかったかしら。魔界の創造神である、神綺様のことを」
ふるふる、と上海は首を横に振った。
「……まぁあんまし話さないわよねぇ。私だってほとんど話したことないし。
あのね、お母さんは魔界の全てを作った人なの。魔界そのものから、生きとし生けるものを、全て」
普段はぽけーっとしているし夢子さんに叱られてばかりで、そんな凄い人だとは思えないのだけども。
料理を作るのが苦手でケーキは焦がすしカレーもシチューになってるしピザとお好み焼きの区別もつかない。
口の周りをソースとケチャップで汚すのが大得意で前掛けをして食事をしないといけないくせに、やたらとあれこれと食べるように勧めてくる。
手先も不器用で針仕事をするとあちこち突き刺して指をしゃぶることになってるし、お母さんらしいことをしたいとか言い出してガラガラを持ち出してきたときは流石に。
それに忙しいはずなのに、毎月百ページぐらいの手紙を送ってくるぐらいに暇人で、ああきっと今の格好をお母さんが見たらおよよよとか言って泣き真似をするに違いない。
お風呂に入って洗濯物を干して掃除もして、思考が拡散していって当初の目的が飛びそうになってきた。
「うーん……。大事なコトか生きていくために欠かせないことかはわからないけど。
私はお母さんが好きだし、あの人の背中に一歩でも近づくために人形を作っているん、だと思う。
本当にそうなのかって自信はないんだけど、多分、そうなんだと思う」
上海は目を丸く大きく見開いた。
「ねぇマスター。私はじゃあ、マスターの子供ってこと?」
「え、その……。そうなんじゃないかな……? その、私もお母さんって呼んでるわけだし」
「そうなんだ。そうなんだ……。じゃあ、これからマスターのことを、お母さんって呼んでもいい?」
「えっ」
「だって私を作ってくれたのはお母さんなんでしょう?」
「ちょっちょちょっと待ってよ。お母さんって呼ぶのを許可してないし私まだ子供持つ歳でもないし!」
「でも私のここは、お母さんが作ってくれたんでしょ」
人が心臓の鼓動を確かめるように、上海はコアの入っている部分に手を当てて目を瞑る。
頭で物を考えるだのと言っても、私はこの部分に、大切なものがたくさん詰まっていると信じている。
そんなところが彼女にも受け継がれているようで、嬉しくなった。
お母さんと呼ばれるのには抵抗があるけれども、このような小さな仕草にも、この子が上海だということを感じる。
くいくい、と袖を引っ張られたのでそちらを見ていると、小さいほうの上海が不安気にこちらを見上げていた。
この子が将来、私をお母さんと呼びたいと提案してくるようになるのだろうか。
膝に抱え込んで、あえて考えてこなかった疑問をもう一度、頭に浮かべる。
――どうして百年後の私は、この子を残して居なくならなければならなかったのか。
「お母さん、町に行こうよ」
「余計にダメ」
◆
どうしてもと五月蝿いので、私としてもとうとう折れざるをえなくなった。
流石にストライキまで起こされてしまうと、こちらとしてもやることがないため、譲歩に応じることにしたのだった。
「いい? 大人しくしてなきゃダメだからね」
「わかってますよぉ。お母さんの知り合いにあっても喋っちゃダメなんでしょう」
「そのお母さんって呼び方も禁止。マスターも禁止。ちゃんとアリスさんって呼ぶのよ」
「ちぇー」
最近、この子を送り込んできた黒幕がどこかに居るんじゃないかという疑念に駆られてきた。
どこぞの隙間妖怪のように、私のことをどこかから眺めて楽しんでいるんじゃなかろうか。
くいくい。
「……で、今度はこっちの上海なのね」
上海、上海と呼ぶたびに両方が反応してしまう。
大体はこの子じゃないほうを呼んでいることにちょっぴり妬いているのか、こうして袖を引っ張ってくるようになった。
こんな甘えん坊な設定にした覚えはないのだけど、この子も連れていけば文句も言わないだろう。
それこそ、手間のかかる子供が一挙に二人出来た気分だったけれども、まぁ、悪い気もしない。
子供を持つということを意識したことは今まで当然なかったことだけど、母の気持ちとはこういうものなのかと驚きばかりだった。
「オデカケオデカケタノシイナー」
「上海ったらもう、いつも連れて行ってるじゃない」
「ヒトツキブリ? グライ。アリス、ヒキコモリ」
「悪かったわよ。およそ人間としても魔女としても最悪の生活だったって」
「はんせー。とかいって、あ、り、す、さんは頑固だから明日からまた戻るに決まってる」
「キマッテル」
「う……。二人で言ってくるのはその、ズルイことだと思うなぁ私は。2対1で一方的に一人を嬲るっていうのは正々堂々じゃないっていうか」
多少不摂生をしたところで急に悪くなるわけでもあるまい。魔女というのは、睡眠も食事がなくても生きていける。
何かに夢中になるとそれ以外目に入らなくなるのは、悪い癖だということはわかってはいるのだけど!
「ねぇアリスさん」
「ん、何?」
「私、"マスター"とアリスさんって、一緒なのかなって思ってたけどぜんっぜん違う人だった」
「ふーん?」
「その、私が知ってる"マスター"はね、あまり、笑わない人だったし。
いつも、遠くを見るような目をしてたの。その理由は、最後まではっきりとは教えてはくれなかったけど。
アリスさんは、お酒もあまり飲まないのね。びっくりしちゃった。私、よく買いに行ってたから。
一人で買い物もできるしね、あ、そうそう。人形も作ったりできるの。妹が欲しくって、弟でもいいんだけど」
「一体持ってく?」
「えっ」
丁度魔法の森も切れた。ここからは空を飛んでいける。
「あなた、空は飛べるのかしら?」
「飛べます飛べます。簡単な魔法も使えますし」
「じゃ、その話の続きは空でしましょう」
とたん、と地面を軽く蹴って空へ。軽く推進力を作ってやらないと上手く身体を乗せることができない。
空を飛ぶ感覚は、飛ぼう! というよりも落ちずにそのまま昇っていくという感覚のほうが近いのであった。
一月飛んでいなかったけれど、身体はそれをしっかりと覚えていてくれたようだった。
「あえて聞かなかったけれども、」
「はい」
「あと何日間、あなたはここに居られるの?」
彼女がここで何を成し遂げようとしているのか。一体何の目的で百年という時を越えたのか。
こちらの目的のために利用させて貰っていたけれど、強硬な態度を取ったということはいよいよ痺れを切らしたのだろう。
協力できることならばしてあげたいけれど、何にせよ真意を話してもらわないことには始まらない。
「ドッカイクノ?」
ちっこい我が娘は首を傾げている。ずっと一緒に居てくれると思っていたのかもしれない、寂しそうに服の裾を引っ張っている。
「大体、あと十日ぐらいです」
「次の満月ってことかしら」
こくり、と頷く。
「あなたの"マスター"は、あなたを作るに当たってはすべて独学でしたと」
「そう、です」
「でしょうね。試行錯誤を重ねていかないと――それもこの二週間ほど私がしていた生活を数十年。
犠牲にして注ぎ込まないと百年であそこまで辿り着くことはできない、と思う。
天から降ってきた閃きだけで、トントン拍子に研究が進むなんてこと、ありえなもの。
しかし私の目の前には貴女がいる。しなければならないことを教えてくれる存在がいる。
明らかに貴女が来た未来と、百年昔であるこことは矛盾が生じている。
ということは、わかるかしら? あなたが百年後に戻っても、なんら結果は変わらない。
ここは貴女が居た未来に繋がる過去ではなく、無限に枝分かれしていくパラレルワールドの一つに過ぎない」
「……」
「それでも貴女がここで探しているもの、しなければいけないことは、一体何かしら?
まさか、無気力じゃないときの私に会ってみたかったから百年の時を越えたわけではないでしょう?」
「それ、は……」
「それに貴女の身体を調べさせてもらって確信した。独力では時間を飛び越えることなんてできない。
となれば、協力している誰かが確実に存在している。何の目的かまではわからないけど、悪意はたぶん、ないでしょ」
「そこまで気づいていて、なぜ?」
「慌てて問い質す必要もないでしょ。私にとってもあなたの身体を調べるのは有用だし、危ないものもついてなかったし。
それに、実際一緒に過ごしてみてどうなのかなってのも感じてみたかったのよ。
多分だけど、この子がそうなったときにはきっと、楽しくやっていけると思うの」
上海の目から、一粒水滴が落ちていった気がした。それは見間違いだったのかもしれないけれど。
あえてそのことに触れるのはやめておいてあげた。人間関係が拙いと多少は自覚している私の、精一杯の気遣いなのだった。
上海は人形のわりによく食べた。びっくりするぐらいに食べた。
自身、食が細いわけでもないけれど、流石に目の前でウドンに蕎麦に煎餅大福に焼き鳥に鰻に天麩羅までパクパクと食べられると胸がつかえそうになった。
味覚があるから、食事は最大の娯楽だったと言うけれど、細い体のどこに入っていくのかと不思議だった。
調べさせてとも、なんとなく言いにくいし。
「好みはアリスさんと一緒なんです」
「そんなに食べないのに……」
「たくさん食べるのが夢だったんだとか、言ってたような」
「ふぅん……」
ストレス解消でもしたかったのかもしれない。考えれば考えるほど、そんな憂鬱な人生を歩んでしまった自分が悲しくなる。
同じ轍を通らないように警告したかったから、彼女はここに来たんだと考えると成る程説明はつく。
未だに私は、黒幕も理由も曖昧にされたままでいる。でも、理由を無理に知る必要もないのではないだろうか。
「シャンハイモ、タベル」
「あんたはまだ食べれないでしょ」
不満気にされても。
申し訳ないけれど、今の技術じゃ食事をさせてあげることはできないの。ごめんね。
「ベツニ、シャンハイソンナノ、タベタクナイシ」
そうですか。
ぷりぷりと機嫌悪くしている上海と、黙々とパフェを積み重ねていくもう一体の上海。
お金に困ってはいないけれども、これはちょっと、しばらく切り詰めた生活をしなければいけなくなるかもしれない。
六軒目に引っ張り込まれて、大きくため息を吐いた。
「ほんっと、よく食べるのね」
「育ち盛りなんです」
こういう切り返しを自分も好んでするのだけれど、他人にされるとムッとくるものがあった。
人形の癖に育つも何も無いだろうに。とくにその薄っぺらい胸とか。身長とか。
チルノやレミリアなんかに比べれば大きいけれども、魔理沙よりも一回りは小さい。
丁度この子と私が一緒に歩くと、姉と妹が並んでいるようで、横に居る上海は体の大きさだけ見れば赤ちゃんにも見えないことはない。
美人三姉妹、なんてね。
そんなアホなことを考えつつ帰宅の路についた。
魔理沙が普通に居た。
勝手にお茶飲んでた。
「おっす。横のは誰だ? 急に妹でもできたか?」
「ちょちょちょっとあんたなんで勝手に上がりこんでるのよ!」
「いやー、霊夢のところに行った帰りにな。緑茶を飲んだから紅茶が飲みたくなったんだ」
「しっし! 紅茶が飲みたいなら紅魔館にでも行ってなさいよ! うちの紅茶はあんたみたいな泥棒に飲ませるようにできてないのよ!」
「なんだツレないな。いつもだったら『ふーん。私も飲むからついでに淹れるわよ』ぐらい言うくせに」
「今日は星の巡りが悪いのよ。わかったらさっさと帰ってちょうだい」
里で会わなかったから油断していた。一番"会わせたくない相手"が強襲をかけてくるだなんて――
これだから詰めが甘いとか言われちゃうのようわああああああああああああ。
「いつも通りアリスの脳がスパークしてるみたいだな。いつものことだが。で、おまえさんはどこの誰だ?」
「えっと私は――」「親戚よ!」
「あ? 親戚ってお前。アホ魔界神がまた創ったのか?」
「そう! そういうことにしといて!」
「にしてはなんか、違うよーな」
「いやいやいやいやぜんぜん一緒私の親戚なの」
「アリス。お前嘘吐いてるだろ」
「うっ!」
汗が顔中から吹き出した、気がする。
私の偽装は完璧だったはずなのに、何この子、もしかして人の技をアレンジするのが得意だからさとり妖怪から技を盗んだとか。
「いや誰でもわかるだろ。焦りすぎだ」
「やっぱり読んでるのね!? そうなのね!? ああもうこうやってだんだん追い詰められていくんだわ!
もはや私には安寧の地は残されていないのかしら!」
「マスター……」
テンパりすぎた感が否めない。
私何やってるんだろうという気持ちがそこはかとなく芽生えてきているけど、もう止められなかった。
走馬灯のように思い出すのは、お母さんじゃない人をお母さんと呼んだときのあの気まずさ。
友人に「お母さんじゃないじゃん」って言われても「こ、ここではお母さんみたいなものだもん!」なんて誤魔化した。
苦しい言い訳すぎて頭が沸騰しそうだったけど、あのときの私もいまの私ももう止まれなかった――
滑ったギャグを認めることができなくてこれ面白いじゃんって言い続けてた。
フォローする咲夜がただただ痛々しかった、先月の宴会時のレミリアよりももっと惨めな気分だった。
「まぁ落ち着けよアリス。私はお前を許そうと思う。お前はアレだろ。
本当は自律人形を作るんじゃなくてお笑い芸人になりたかったんだよな。
人形劇はその練習だったんだろ、わかるよ」
「ち、違うもん! 自律人形ならいるもんそこに!」
指を差してしまってから気づいた。やっぱり私って、お笑い芸人目指してるんじゃないかなってことに。
「……さてと事情を話してみようか。アリスくん。なに、カツ丼なら作ってやらんこともない」
魔理沙が芝居がかった風に言うもんだから、私も乗ってみた。
「仕方なかったんです……。全部貧乏が悪かったんです……」
「マスター……。性格がぜんぜん違うんですけど……」
「何を言ってるんだ。アリスは命の全てをお笑いにかけてる奴なんだぜ」
「そ、そうだったんですか!?」
「嘘を教え込まないでよ……」
「で、私にゃ状況がさっぱりわからん。この子はなんでお前をマスターって呼ぶんだ?
自律人形の研究の完成は、ずいぶん先なんじゃないのか? メディスンの奴とはぜんぜん違うみたいだしな」
「それはその、ある朝目覚めたら私が天才的な閃きによって」
「ないない」
出鼻を挫かれた。
「確かに発想は大事だけど、それでいきなり進むもんじゃないってのは私にだってわかる。
当然だ。私たちは魔法使いだからな。魔法は万能の力なんかじゃない。
順序があって、一つずつ障害を乗り越えていって進むものだ」
「まぁね」
「で、私が聞きたいのは、その遠い場所にあるはずの自律人形が、今ここにあるかってことだ。
これは普通のことじゃーない。他の誰かが作ったのなら別だけども、そこまで底意地の悪い奴は居ないだろう。
そもそも服の趣味もアリスぐらいのもんだろ、そんなフリフリを付けるなんて」
「うぎぎ……」
「私も女だ。なぁによっぽど荒唐無稽な話じゃなかったら信じる度量はある。言ってみろ」
ちらりと上海のほうを見ると、どうしたものかと口ごもっている。
ここはやはり私が言うしかないんだろう。
「その、百年後から来たらしいの」
「で? 本当のところは?」
「ほらやっぱり信じてくれないじゃない! だから嫌だったのよ『アリスちゃんは空想癖があるのね』って言われたときの気持ちがわかるの!?」
「お、落ち着けよアリス。誰もそんなファンシーでメルヘンなことを咎めているわけじゃないんだ。
ほら女の子なんだから人形が部屋一杯に飾ってあっても何もおかしいことはないぜ。
世間じゃ人形の家だとか、偏屈で恐ろしい魔女が人間を人形にしてるとか言わ黷トるけど」
「そんなことないもんただの趣味だもん!」
「すまんアリス。わざとじゃないんだが、見事にトラウマを抉ってしまったようだ」
「はは……」
これ、私と魔理沙の間では普通の会話なのだけど、上海が見事にひいていた。
「だってぜんぜん違うじゃないですか。いっつも鬱々としてるっていうか、生真面目っていうか。
そんな風だと思ってたマスターなのに、こんな楽しそうに話してるところなんて、本当に初めて、見ました……」
「おわっ、なんで泣くんだよ。おーおー、泣くな泣くな。どうした甘いものでも食べたいか?」
「泣いた子には甘いもの食べさせておくと大抵泣き止むわよね」
「私もよく嘘泣きしたもんだ」
「やめなさい」
どんだけ甘いものに飢えてるんだこいつは。うちにもよくたかりにくるし紅魔館でも博麗神社でもよくパクついてるけど。
でも太らないあたりが幻想郷中の女性陣にケンカを売ってるとしか思えない。
某Sさんとか、意外と体重管理に気を使ってるんだからね。
「ほんと、来てよかったです……」
「……」
「ん?」
実を言えば、彼女の記憶のロックが緩んでいたため、百年後の私がいかにして去っていったのかを知ることが出来ていた。
生きる気力を失った"私"は少ない手荷物だけを持って魔法の森を去っていった。
そのワンシーンだけが見えただけで、他の術式は正直言ってちんぷんかんぷん。
よっぽど強烈な記憶だったのか、そこばかり記憶がリフレインしてしまっているのか。
ちょっとだけ覗いてそれっきりにしたけれど、一人残された上海の気持ちを慮ることはできた。
例えばの話、霊夢や魔理沙が居る今は騒がしいけれども、彼女らが居なくなったあとの幻想郷は酷く寂しいものになるのかもしれない。
そして寂しさから逃れるために一心不乱に打ち込んで。
目標を達成したとき――目標を失ったときに、どうしたらいいのかわからなくなって立ち尽くすとか。
無気力だったとか、酒浸りだったとか。そんな自分を想像したくはなかったけれども、この子の瞳に残されていた"マスター"はそうとしか思えなかった。
擦り切れて、ボロボロになった百年後の自分がそこに居たのだ。
彼女の見てきた私というのは、脱げ殻のようになったあとの私なのだろう。
あえて理由を聞き出さなかったのは、彼女の口から語らずともそうなってしまう自分が想像できたからだった。
頭をぐしぐしと撫でている魔理沙だって、この十年ほどですっかり大人の女性になってしまった。
魔女にならなくては、百年もしないうちに死んでしまう。
いや、十年や百年といった尺度ではなく。
それこそ明日にでも、死なないにせよ急ぎ足で変わっていってしまう。
それが人間というものだった。
「ねぇ魔理沙」
「あ?」
「魔理沙には何か目標はあるの?」
「うーん。いっぱいあるな。霊夢を散々打ち負かすとか、月どころかもっと遠いところまで行ってみたいとか、究極の魔法を作ってみるとか」
「ふぅん……。それがぜーんぶ叶ったとしたら、魔理沙だったらどうする?」
「愚問だな。その頃には次のがほしくなってるのさ」
「欲張りじゃない? それって」
「んなこたぁない」
ちっちっち、と指を振る。
「夢なんて結局一つも叶わないかもしれないだろ。
でも、小さな目標だったら今日の夕食に美味いものを食べるとか。
明日になったらまた美味いものが食べたいって思うとか。目標がおっきくなってもそうだろうって言いたいのさ」
「ふーん……」
「こいつがまぁ、本当に百年後から来たとしてだな。お前の研究は結実したんだとかそういう話だとしても、
私がお前なら、ラッキーぐらいにしか思わないな。『ああ、これはきちんとできたんだ。その次は何しようかな』って。
なに、いまから次の準備をできるんだって思えば悪くないんじゃないか。ちと無理やりかもしれないがな」
「だからって人の家に夕飯をたかりにくるのはよくないと思うわ」
「だから無理やりやってるんだろう」
「ばーか」
魔理沙を小突いてから、私は上海に目配せをした。意図が上手く伝わったかはわからないけれど、きっと、わかってくれた気がする。
もう、今度こそは大丈夫。上手くやってみせるよ。
◆
「ありがとうございました。アリスさん」
「ん」
いよいよ今夜、上海は百年後へと戻ることになった。
「私、きっとこのことを忘れませんから」
「私も。ありがとう上海。……向こうでも上手くやるのよ。変な気を起こさないようにね」
「まさか。きっと、平気ですよ。――私、帰ったら人形を作ろうと思うんです。
長い時間はかかるかもしれないけど、弟や妹をこの手で作ろうって思って」
「良い考えだと思うわ」
そんな会話をしながら、私たちは初めて一緒に天を仰いだ草原へと来ていた。
"協力者"がそこから繋げてくれるらしいけれども、どうせ関わっているのはロクでもない輩だろう。
からかわれているのかもしれないけれど、そんな小さなことは気にしない。
まぁるい月が、緩い風にゆらゆらと体を揺らす草原を明るく照らしていた。
「それじゃあ――」
またね、と言い終えるか言い終えないうちに、上海は宙に浮いてそのまま忽然と、姿を消してしまった。
それっきり、風が草を揺らすしゃらららという音のほかには、何も聞こえなかった。
「マタアエル?」
「そればっかりは、さぁねぇ。いい子にしてたら会えるんじゃないの?」
しょぼんとしている上海。
この子が成長していったら、あの娘のような子になってくれるんだろうか。
そして、お母さん、だなんて。
「うぎぎ……お母さんって呼ばれるのにはやっぱり、抵抗あるなぁ」
「アリス、コモチカ?」
それに関してはおいおい考えることにしようじゃないか。
なんせそのときまでにはまだ、百年もあるのだから。
「とか、今頃は言ってるに違いないわね」
「ドッキリ大成功ですね。マスター」
『百年後の私へ。西暦に換算すると、2017年の幻想郷からこれを書いています。
どうですか? 百年後の幻想郷は。きっと霊夢も魔理沙も咲夜も早苗も、とうに亡くなっているのではないかと思うのですが、代わりに賑やかな人間は出てきましたか?
私は相変わらず、魔法の森に閉じ篭っているのでしょうか。自律人形の完成に、一歩でも近づいているんでしょうか。
突然百年後に向かって手紙を書くだなんて、珍奇な思いつきだと笑われるかもしれませんが、嵐のように過ぎていく今――
人間と同じ感覚で過ごすことなど、このときを置いて今後は、もはや存在しないのではないかという焦燥感に囚われているのです。
百年後にこれを開いたときに、このときの気持ちを、百年越しにそっと思い出してやってください。
――アリス・マーガトロイドより』
と書かれている手紙を上海が庭で拾ってきたせいで、飲んでいた紅茶を吹き出してしまったのが一週間前。
ポエム満載の内容の上に、文字もガタガタで不安が隠し切れていない。
こんなものを百年後に見つけてしまったら、たとえ相手が自分であってもからかいたくなったのが真相だった。
「『それに貴女の身体を調べさせてもらって確信した。独力では時間を飛び越えることなんてできない。
となれば、協力している誰かが確実に存在している。何の目的かまではわからないけど、悪意はたぶん、ないでしょ』ですって」
「それ本当に傑作よね……! まさか黒幕が未来の自分自身だなんて思わないでしょうに」
「えへへ。私の名演技を見せたかったです。もう、別れ際も涙一杯に溜めてたりして、んとかしか言えなくなってて」
「青いなぁ。青臭いなぁ! 私!」
まさに青春! みたいな!
私自身はとっくのとうにそんな時期を過ぎているから、聞いているだけでも全身がムズ痒くなってくる。
そしてきっと、別に泣いてなんかないわよ。いつかまた会えるでしょ。なんてことを言ってるに違いないのだ。
それぐらい自分のことのようにわかる。自分のことだし。
悶えていると、拗ねた娘が膝の上を不法占拠しはじめた。
これをされると他の娘が拗ねてしまうのだけど、まずは目先の脅威を取り除くことのほうが大事とかなんとか。
「上海ばっかりズルい。行きたかった」
「蓬莱は私みたいな演技ができないでしょ、素直だから」
「ん」
ぐしぐし、と上海が蓬莱の頭を撫でる。よくやった、さすがはお姉ちゃん。
いつもこうなら私の気苦労も減るんだろうけど、こいつもたまに一緒になって拗ねるからいけない。
ロケットパンチだって付けようとするとストライキを起こされるし、反抗期も甚だしい。
とりあえずあの頃、何を考えて生きているかはハッキリとは思い出せないし、それこそ、上海が行って帰って来たのもパラレルワールドでしかないのかもしれない。
私にとっては演技でしかなかった悲劇的な末路。けれども、本当にそれを迎えた私も、どこかに存在したのかもしれない。
けど、少なくとも今ここに居る私は、お母さんに一歩近づけたと胸を張れる。
今でもお母さんは毎月百ページばかしの手紙を送ってくるし、魔界人を無計画に育ててるから夢子さんにも大目玉を食らっているんだとか。
けれども私はそれを笑えなかったりする――血は争えないのか、上海、蓬莱のほかにもたくさんの人形が自律人形として生活している。
そんな孫たちを見せろ見せろと五月蝿いから、今では魔界にもたまに里帰りをしている。
「ま、幸せっちゃ幸せよね」
「何一人で呟いてるの? お母さん」
「……ッ。上海? お母さんって呼ぶのはやめなさい」
「えーっ」
けれども、お母さんと呼ばれることには、百年前と変わらずに抵抗があるわけで、そこだけは百年前の私とも共有できる感覚なのかもしれない。
「あー、もう。紅茶が飲みたいわ。蓬莱お願い」
「ん」
「あ、私も行くー。待っててね、お、か、あ、さ、ん」
西暦2017年の私へ。
百年後のあなたは、そのときのあなたが思い描いている以上に、楽しい生活をしています。
そりゃいつも上手くいっているなんてことはないけれど、たくさんの娘に囲まれて、賑やかに過ごしています。
若かった頃の私は子供を育てはじめた皆の気持ちがわからなかったけれど、今ならその幸福がちょっとだけ、わかるような気がしていて。
彼女たちと同じように歳を重ねることはなかったけれど、それでもあなたが思っているような不安は、若かりし日の思い出として、くすりと笑えてしまったり。
「さ、時を越える研究の次は何をしようかしらね」
「自分自身で紅茶を入れる研究とか」
「却下よ。蓬莱。棚にお菓子が入っているはずだから」
「いつも私ばっかり淹れてる。たまにはアリスが淹れるべき」
「蓬莱が一番上手なんだもの。お母さん、甘えちゃう」
「都合のいいときばっかりそういう言葉を使う……」
「バカジャネーノ」
そんな私の悩みと言えば、娘の反抗期にどう付き合っていけばいいのかということで。
まぁ、それなりに平和じゃぁないでしょうか。
そんなことを思いながら、角砂糖を二つ摘んで、紅茶のカップへと落とすのでした、っと。
アリ×アリもアリ。名言ですね……
そんな未来アリスさんの言葉が聞こえてくるようでした
これがライア効果か!恐るべし。
自立上海可愛いなあ。
よかったです!
人間組は微妙な時期でしょうか? 幻想郷の平均寿命はわかりませんが。
未来のアリスが夢や悪戯心を持ち続けていられるのはどうしてなのでしょう。
勿論アホ魔界神や姉妹、妖怪の友人達の影響もあるのでしょうが、とてもそれだけとは私には思えません。
結論、友情って素晴らしい。
全ては私の想像に過ぎませんが、そう考えている時間はとても楽しかった。
このような時を与えて下さった作者様とライア様に感謝を。
楽しい作品でした
幻想郷の住人は未来でも変わらず楽しくやってると信じたいですね。
あぁもう、アリスは幸せ者だな!
タイトルいいっすね 美鈴涙目だけど
未来上海に残ってた無気力アリスの記録すらも仕掛けだったのね
青臭い現代アリスの様子を録画して鑑賞会とかアリスさんマジアリアリ
自己愛? 自虐? 複雑な属性の未来アリスが心配です
・「p」とか「P」は「ページ」に開いたほうが良い希ガス
・「百年」と「100年」が混在してる
テンポが良くない感じがしました。
中途半端にスレてる現代アリスの青臭さをもっと出しておいたほうが未来アリスのオチが際立つと思います。
もっとあざとく計算していい気がする。
黒幕が自分、単純で以外な盲点でした。これにはやられました。
加えて上海(100年後の方)の行動、なるほど上手な演技だ。
これは今年の名著に入る一作だ。
電気羊×ライア、恐ろしい隠し玉をもっていた(フラグ的意味でなく)。
傑作だと思います!
確かにこのオチは話の流れとか整合性を鑑みて、十分あり得る範囲だと思うし、読みながら予想してたオチの一つでもある。
ただ、話に思いっきり入り込んで読んでた自分にとって、このラストはどんでん返し、
というよりは出来の悪いデウスエクスマキナでしかなかった。
話の余韻に浸りたかった所に思いっきり泥水をぶちまけられたような気分でした。
非難ばっか並べてしまったが、最後以外は120点を入れたいぐらい好きな話でした。
なんか幻想ライフを満喫してるって感じが読んでて楽しかったです
未来アリスも幸せそうでなによりです。
気持ちのいいお話をありがとうございました。
後、何となくケツメイシの手紙って曲を思い出しました。私だけ?
とにかく面白かったです!!
最後にちょっぴり出た蓬莱が可愛かったので全て良し
あとがきのアリス×アリスもアリっすねで羊さんのしたり顔が見えたからマイナス10点
というのは冗談で、真理を説く魔理沙ってのはちょっと食傷なので
アリアリもアリですね
最後のオチがすばらしい!
ドッキリオチは全然素晴らしいんですけど、後少し強い動機が欲しかったです。
「マスター、どこへ~」の部分も上海の回想なのか、アリスを騙す話なのか、読者を騙す話なのか判断がつきませんでしたし。
完成度が高くて面白かっただけに、なぜかそこが気になったのでこの点数で。
ネタバレはいらなかった
オチまでが素晴らしいだけに、どうしても落差を感じざるを得ませんでした。
過去アリスのみならず、自分までドッキリに引っ掛かりましたよ。
誤字報告
>>原始肉に齧り付いてまま
「付いた」の間違いかと。
長々と読んで最後がこんなのかよ…と。
こいつぁ、アリかアリかと聞かれたら…
アリだな
百年たってもアリスが可愛いまんまで安心した
オチのどんでん返しにびっくりしました。でも、読みなおせば最初がしっかり伏線になってますね。
でも、こんなノリノリでテンション高めのアリス&人形だと、
あと100年したら母親よろしく蓬莱人形に日常生活の主導権を握られてそうです。
という発想が素晴らしいです。さすが未来アリス。
その返事の内容が、少々伊達と酔狂の幻想郷的に
染まりすぎな気がしますが。
現在アリスは今のところ式を解読しても仕込みの
偽映像しか見れなかったようですが、この後研究
が進んで式から真相を読み取ったとき、どれだけ
怒り狂うかと想像するとニヤニヤします。
後読感を良くしてくれる素敵なオチでした。
オチは賛否両論あるみたいですね、完全にBADEND覚悟してた人には肩透かしだったのかな。私的にはアリアリですが。
全体的にライトな流れだったし、ロケットパンチとかのくだりでもバッドエンドを予想できない点がいくつかあったので、アリスが楽しくやってるようで何より。
オチのおかげで読後感もよかったですし、最後は読んでいて非常に楽しめました。
うむむ、とりあえず自分はそのよう解釈したのですが、……どうにも真意を掴みあぐねている気がします。
まぁ、そんな僕の個人的な悩みは置いといて、今はこの素晴らしい読後感に拍手とこの点数を。
面白かったです。
こんなにも清清しい気持ちで読み終えたのは久方ぶりです。
オチも、私は大好きですよ。
東方には似合ってると思うのでこのオチはありです。
未来ではアリスが去った後に魔理紗が過去を変えようとしたかと思っていました(笑)。
良い良すぎる。
おもしろかったです
アリアリはアリだと思います。
なんだろう、この身悶えするようなムズムズ感は。
読み終わった後の、この爽快な気持ちを表現したいのだけれど……自分の貧弱な語彙が恨めしい
過去にはこれから辿るであろう幾多の未来がある。
だからちょっとずるいけれど、過去もひとつじゃないんだよ、と。
読み終え、わたしはそんな風に思いました。
微笑ましくて、ちょっぴり切ない。
深いとこまで丁寧に描かれた、とても素敵なお話でした。
アリスさんかわいい!
自律上海もやきもち妬く上海も素敵でしたが神綺様かわいいよ!
アレは未来の中の一つにすぎないということでしょうか
青春の蒼が垣間見える比喩表現にぐっと引き込まれる感じがたまらない
氏らしい語り口ですうっと頭に入ってくる文章も素敵。面白かったです
なんか落ちにモヤモヤしつつもスッキリしちゃって困る。
モヤモヤの理由は他の方達が言ってるようなことじゃあなくって、アリス2017が騙されたまま終わることに対して。
でも騙した方のアリス2117も(たぶん)ほぼ同位のアリスなのであって……それでまあいっかとなる。
しかし、アリスのそれなりに楽しそうな未来への展望も望めるラストにほっと一息。
アリスが人形に化けて来たのかと思ったらそんなことはなかった
いやほら、アリスってジップロック仕様じゃない
丁度人形くらいの大きさになるかと思ってたんだ
そもそもそんなものつけようなんて茶目っ気がないでしょうから。
そういった矛盾がもういくつかあれば落ちもすんなり受け入れられやすいと思いました。
アリス、お茶目だなぁw
ハッピーエンドで良かった
幸せな未来に「上書き」されたんだ、という解釈で読みました。
手紙見つけてベッドで足ばたばたしたんだろうか
素晴らしい物語でした。ありがとうございます。
アリ×アリ、アリですね
いいお話をありがとうございました
と言いながら自分もオチに「ん?」となってしまったのではありますが、
100年後への手紙がトリガーとなり
上海人形が未来からやって来て
未来からやって来た上海に影響を受けたアリス、という平行未来が生まれ
胸を張って生きているアリスの未来が生まれた
と勝手に解釈致しました。とここまで書いて171さんと被りすぎな意見という事に気付きましたとさ
アリアリアリでした
の一言です。
アリスが好き過ぎてたまらない私は、アリスの涙はみたくないもの
です。幻想郷の百年後、、という心苦しい話かとおもいましたが
アリスがアリスで安心しました、
途中で読み止めていたら夜は枕を濡らしていたでしょう
いやはやアリスがアリスで良かったです。
読後感がたまらない
むしろ素晴らしかったです。
アリスちゃんが楽しそうで何よりです。
ちょろっと出ただけど魔理沙だけど、彼女の言葉がアリスにとってとても大事なものだったのかな、とか思いました。