「なあ霊夢、シマウマって知ってるか?」
霊夢がいつもの場所でいつものようにお茶を飲んでいると、
いつもの魔法使いがいつもとは違う事を言いながら霊夢の隣に着地した。
「シマウマって動物の?実際に見たことは無いけどあんたに色は似てるらしいわね」
「違うぜ霊夢。私の言っているシマウマとは外の世界で昔流行したお遊びだ。
幻想郷で知らない奴がいるとは驚いたな。…これを見てくれ」
あらかわいらしい。魔理沙が帽子からシマウマのぬいぐるみを取り出した。
「シマウマだ」
「シマウマね」
今夜は馬刺しね。
「おいおい、私のUMAXは食べられないぜ」
「冗談よ冗談」
なにやらこのシマウマのぬいぐるみはUMAXという名前らしい。
ウマックス。何故か馬糞という言葉が思いついた。
「バフンウニって何でバフンウニって言うのかしら?」
「あんまりな名前だよな。私の推測だと食欲を無くすような名前を付けて、最初にバフンウニのおいしさに気づいた奴が独り占めしようとしたんだろうよ」
「きっとそれね」
本当は見た目が似ているとか、そんな下らない理由なんだろうけどね。
あぁ、幻想郷には海が足りない。ウニ食べたい。
「おっと、忘れるところだったぜ」
「何を?」
「シマウマ」
「ああ」
外の世界のお遊びねぇ…。正直興味が沸かない。
「今日は空が青いわね」
「そうだな。それでそのシマウマのルールだが…」
余程シマウマについて語りたいらしい。…馬刺しって誰に頼めば調達してくれるかしら。
「4人で競うゲームなんだがな」
里に下りるのも面倒だし…。第一、最近は異変も無くて大して里の平和に貢献してないからいきなり「くれ」とか言われたらドン引きするでしょうねぇ。
ますますお賽銭が少なくなりそうだ。しかしここで私の頭は光の速さで計算を始めた。
かっぱらった馬刺しの値段>>>>>>>>少なくなるお賽銭
…やめた。悲しくなる。あれ、そもそも私は里の人から馬刺しをタダで手に入れようとしてたのか。なんと図々しい。
ああ、タダでくれそうな人はいないものか。
「まずは使うものだ。このゲームでは20枚のカードを使う」
霖之助さんとかどうだろう。…どうせ馬刺しについてのウンチクを延々と披露されて時間を無駄に過ごすだけか。
馬刺しについてのウンチク。バフンウニ食べたい。
「…おーい霊夢?聞いてるかー?」
あぁ、紫なら両方もっているかも。最近あいつは何もくれないからそろそろねだってみるかな。
「……グスン」
「ちょ、魔理沙なんで泣いてるのよ」
「あらあら、女の子を泣かしちゃいけないわよ霊夢」
「あ、馬刺しとバフンウニ」
「な、なんのことかしら?」
ちょうどいい所に我らが隙間妖怪八雲紫様がいつもの様に唐突においでなすった。
「外の世界からでもかっぱらって来てよ。あんたそういうの得意でしょう?」
「紫、これ見てくれ。シマウマだ」
「あなたには3日前にパンダの毛皮をあげたでしょう?あれ手に入れるのに苦労したのよ」
「ああ、UMAXはかわいいぜ。パンダと同じくらい」
「あれはどうみても偽者だったわ。茶色いパンダなんて居るわけ無いじゃない」
「UMAX『マリサノホウガカワイイヨ』魔理沙『て、照れるぜ///』」
「パンダには2種類居るのをあなたは知っているかしら?」
「私知ってるぜ!」
「きれいなパンダと薄汚いパンダ?野良パンダって結構汚いらしいわね」
「ははっれいm」
「ジャイアントなパンダとレッサーなパンダよ」
「…」
「その劣化パンダ?とやらの毛皮だと言うの?」
「紫、シマウマやろうぜ!」
「あら、シマウマね。懐かしいわ」
魔理沙が大事な交渉中に割り込んできた。ずっとぬいぐるみと遊んでいればいいのに。
っていうか紫もシマウマとかいう遊び知ってるの?
「あら知らないの?霊夢。今度はシマウマの毛皮をプレゼントするわね」
「それはちょっと見てみたいわね」
そう言ってアリス・マーガトロイドがゆっくりと私たちの前に着地した。
いつの間にやって来たのだろうか。
ああ、そういえば皆にお茶の一つもまだ出していない。
私はいそいそとお茶を淹れて三人に出した。馬刺しとお茶って合うのかしら。
「ようアリス、珍しいな」
「魔理沙の泣き声を聞いて飛んで駆けつけてきたわ!(貴方達の会話があまりにもアホだからつい立ち寄ってしまったわ)」
「本音と建前が逆だぜ…」
「あら、これで合ってるんじゃないの?」
「ああ、そういえばアリス」
「何?」
あんな事言ったのに良く平然としていられるな。
「今からシマウマをやろうと思っていたんだ」
どうか通じないで欲しい。
「ああ、そういえばあったわねそんなの」
あーあ。
「おおぉ?これはシマウマが始まっちゃうのかい?そうなのかい?」
すっかり元気になったな、魔理沙。
「私はパス」
「私も興味ないわ」
「右に同じ」
皆興味が無かった。
しかし魔理沙の瞳からシマウマに対する情熱の炎が消えることも無かった。
「お前らそんなこと言っていていいのか?
今回は勝った奴には大奮発…このUMAXを進呈するぜ!」
いらん。
「え…!?」
「それ…くれるの…!?」
「ああ、私が負ける気はしないがな」
二人が異常に食いつく。え?それってそんなに凄いの?
「霊夢…これは参加するしかないわね」
「え、ええ」
なんか自分が物の価値が分からない人みたいな雰囲気になる前に参加することにした。
「しかし最下位には…罰ゲームだ」
「な、何をすると言うの…?」
「パンダだ」
パンダ…これは前に魔理沙から聞いたことがある。外の世界のちょっとした一発芸だ。
この一発芸にはちょっとしたルールがある。まず、一回部屋の外に出て、ネタを考える。このときドアを閉めるのを忘れてはいけない。
そしてネタを考え終えたら部屋の中にいきなり入って、披露する。それだけ。
実は前に私はパンダをやらされたのだが、その時は逃げたりつまらなかったりしたらパンダにされるという悪夢のマジックアイテムがあったため本気になってやったものだ…。
え?結果はどうなったかって?私は知らない。何も。
「ふーん、パンダねぇ…」
「勝ったらUMAXをくれるんでしょ?それくらいのリスク、余裕ね」
「えー、私はあれ苦手だなぁ…」
「ってことで決まりだな。始めようぜ…このシマウマゲームを…!」
勝手に決めるな…。
……
私達は縁側からすぐそばの居間に移動して、私の左に魔理沙、正面に紫、右にアリスと言った配置で4人でちゃぶ台を囲んだ。
そして魔理沙はカードを配り始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。私は何をするか全く分からないわよ?」
そもそも勝っても訳の分からないぬいぐるみしかもらえないのだからこのゲームには乗り気じゃない…。
これで最下位になってはたまらないからせめてルールくらいはしっかり説明して欲しい。
「あら、霊夢はシマウマを知らなかったのね」
「ああ、幻想郷人だとは思えないだろ」
「私抜けるわね」
「あー!私が悪かった!うん、シマウマなんて知ってるほうがおかしい!ほら、座って座って」
そう言って、魔理沙はごそごそと帽子をまさぐり始めた。
そして、お、あったあったと言いながら私に一冊の冊子を差し出してきた。
「ルールを簡潔にまとめた冊子だぜ」
「霊夢、それ読み終わったら私に回して。前にシマウマをやったのが六十一年くらい前だったから記憶が曖昧だわ」
その冊子には魔理沙の字とは違う字でルールが書かれていた。
☆シマウマのバサシゲエム★
・4人で遊ぶきっと楽しいゲームです。
・用意するものは、20枚の『シマウマのバサシ(同梱)』カード(以下バサシ)のみです。
馬刺し食べたい。
☆ルール・目的★
・4人にそれぞれ5枚ずつ配られた『バサシ』を駆使して、最終的に自分の『バフンポイント(以下バフン)』を少なく済ませるのが目標です。
・ゲームはターン制で進行し、1ターンに1枚のバサシを必ず使わなければなりません。
・5ターンの試合を最初に決めた回数行って、総合で溜まった『バフン』が一番少ないプレイヤーが人生の勝利者です。
・このゲームではバサシを使用することを『食べる』、プレイヤーの事を『ジョッキー』、ターンのことを『○食目』と言います。
よくある感じのカードゲームね。用語以外は。
☆カード説明★
・このゲームには様々な種類のバサシがあります。色々なバサシを上手く駆使して、相手に『バフン』を溜めてやりましょう!
1、『シマウマ』『シマント』『シマンチュ』/チャージ系バサシ
・食べると『シマウマ』は『1シマシマ』、『シマント』は『2シマシマ』、『シマンチュ』は『3シマシマ』を溜めることが出来ます。
・『シマシマ』は攻撃するために必要になります(後述)。
四万十?島人?なんかシマウマから離れて行ってない?
2、『タケユタカ』/アタック系バサシ
・『シマシマ』を消費して攻撃することが出来ます。
・チャージ系バサシもしくはアタック系バサシを食べているジョッキーに、消費した『シマシマ』と同じ分の『バフン』を溜めます。
・『シマシマ』が無い時にも食べることはできますが、不発となり、何も起きません。
バサシを見てみると外の世界の人間が馬の上に乗っている絵が描かれていた。
ふーん、こんな格好で外の世界では馬に乗るのねぇ。
バサシになるくらいだからきっとこの人の乗っている馬の名前がタケユタカなのだろう。
3、『シマジロウ』/アタック系バサシ
・『5シマシマ』を消費して食べます。
・ガード系バサシを食べているジョッキーに『2バフン』、チャージ系バサシもしくはアタック系バサシを食べているジョッキーに『6バフン』を溜めます。
・『シマシマ』が4以下の時にも食べることはできますが、不発となり、何も起きません。
「当たり前かもしれないけどこういうのって全員にバフンを溜めるのよね?」
「ああ。ちなみに次のガード系バサシは全員のアタックを防ぐことが出来る」
4、『ハルウララ』『マキバオー』/ガード系バサシ
・アタック系バサシの攻撃を防ぐことが出来ます。
・『マキバオー』は食べる時に『1シマシマ』と『1バフン』が溜まります。
マキバオーのバサシは私には馬というより牛に見えた。
☆カード構成★
シマウマ×4
シマント×3
シマンチュ×1
タケユタカ×5
シマジロウ×1
ハルウララ×4
マキバオー×2
「なんだか食べるとかジョッキーとかって表現が分かりにくくしている気がするわね…」
「ああ、これを書いた奴は間違いなく説明下手だ」
☆特別なルール★
1、馬鹿力シャッフル
・5食目の最初に、『オグリキャップ(同梱)』を使って残った4枚のバサシをシャッフルします。
2、パラパッパッパラパラダイス
・最初に配られたバサシが『シマウマ×4』『シマジロウ×1』だったジョッキーがいた場合、宣言すればバサシを配りなおすことが出来ます。
「2つ目いらなくない?」
「考えられる手札の中では最悪の組み合わせだ。まぁそれだけに救済策があるのも確かにアレかもな」
「…まぁ大体分かったわ。はい紫」
紫に冊子を手渡すと、私は作戦を考え始めた。私らしくない。
…でもきっと紫は私に考える時間をわざと与えてくれたんだと思う。あいつなら六十一年前どころか百年前の事も覚えてそうだし。
アリスは魔理沙とUMAXの素晴らしさについてなにやら語り合っている。あんなのあんたなら一晩で作れそうなのに。
…恐らく、このゲームで一番重要なのはガード系バサシだろう。間違いなく。
そもそも目的が『いかに相手にバフンを溜めるか』ではなく『いかに自分にバフンを溜めないか』だから。冊子の表現は少々語弊を生む。
初手に攻撃は出来ないこと、最後にシャッフルがある事を考慮に入れて、ガード系バサシが3枚以上あるのが最善の手札だ。
そんなに都合よく手札が揃うとは限らないけれど。
後はやっている内にどうすればいいか見えてくるだろう。正直、作戦を立てるのは苦手だ。
私が頭の中を整理したのを見計らったかのように、紫も冊子を読み終わった。
「ありがと、魔理沙。いつの間にか特別なルールなんてものが出来たのね」
「あぁ、それは最近出来たからなあ。…さて、そろそろ始めようぜ」
「ええ」
魔理沙はバサシを慣れた手つきでカット&シャッフルしている。
あぁ、何だこの何ともいえない緊張感は…。
始めてやるゲームという物は最初は誰でも緊張してしまうものである。
いざ始まってみるとそんなものはいつの間にか無くなってしまうのだけれど。
魔理沙がカードを弄りつつ話し始めた。
「一応今回のルールを確認するぜ。特別ルールは両方あり、アリアリルールだ」
アリスとアリス?ちょっとアリスの顔が赤くなった。
「今回のレースは三周とする。三周目終了後にバフンが一番溜まってない奴が勝者だ」
「文句無いわ」「右に同じ」
ああ、最初に何回戦か決めるんだっけ?きっとそれのことか。
…なんという私の理解力。
そんなことを話しているうちに魔理沙がバサシを配り終えたみたいだ。
「さーて…今回のバサシはどんなもんかな」
「ふふっ、悪くないバサシだわ」
この会話を聞いて誰がカードゲームをしていると思うだろうか。
そして私はゆっくりと、緊張を隠す様に余裕を持った動作で自分のバサシを確認した。
シマウマ×1,ハルウララ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1…良いバサシだ。
これこそ私の考える最強の手札に近い。
私は歓喜した心を悟られないようにしつつ、ゲームの開始を待つのであった…。
……
(あちゃー、こりゃ最悪だぜ)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×2,タケユタカ×2
これは殴り合いになる…と言えば聞こえはいいが、やはりガード系バサシが無いのは痛い。
(まぁまぁね。不本意だけど相手次第と言ったところかしら)
紫:シマウマ×1,シマント×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
使えもしないシマジロウのバサシがあるのが唯一の欠点である。
(悪くない…むしろ良い手札だわ)
アリス:シマウマ×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1。
シマンチュのバサシがある事が大きい。
さあ、記念すべき一周目の一食目が始まる…!
「さーて、みんな準備は良いか…?」
「「「セットバサシカード…」」」
「え?え?」
霊夢は何のことだか分からず困惑している。
とりあえず3人を真似てカードをちゃぶ台の中央に伏せた。
「「「実食!」」」
「ちょっと、掛け声があるなら最初に言ってよね」
最初の4枚のバサシが食された。
霊夢:シマウマ 魔理沙:シマント 紫:シマント アリス:シマンチュ
「あらあら…霊夢、貧しいわねえ」
「相当運が無かったようね、貴方らしくない」
(勝手に言ってなさい…私が痛い目にあわないことが、あんたらへのダメージになる)
まずは全員定石通りチャージ系バサシを使う。
掛け声が出来なかったのもあり、霊夢は遅れをとっているかに見えた…。
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:2シマシマ0バフン 紫:2シマシマ0バフン アリス:3シマシマ0バフン
「よし、二食目いくぜ」
(ここからは私は何も考えずにガード系バサシを食べていれば良い…なんて簡単なんでしょ)
霊夢:ハルウララ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1
ガード系とは、ハルウララとマキバオーのこと。
(タケユタカのバサシを食べ切ったほうが得、だな)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,タケユタカ×2
今回は、5ターン目の馬鹿力シャッフルでタケユタカのバサシを誰かに渡すのは危険…そう魔理沙は考えた。
(迷う場面ではありませんわね)
紫:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(どのタイミングでタケユタカのバサシを食べるが鍵ね)
アリス:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
シマンチュのバサシを使ったことによる有利はあるのだが、悩ましい手札である。
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
二食目…!
「私のバサシはこれだぜ…」
魔理沙、ここで2シマシマを消費しタケユタカのバサシを食す…!
「あらあら…早いわね(魔理沙はチャージ出来なくなったのかしら?)」
紫、シマウマのバサシを食す。合計3シマシマ。しかし魔理沙のタケユタカにより2バフン…!
「くっ、やるわね」(チャージできなくなった可能性もあるけど…)
アリス、シマウマのバサシを食す。合計4シマシマ。しかし同じく2バフン…!
「あらみんなして汚いわね」
霊夢、ここでマキバオーのバサシを食す…!!1シマシマと1バフンが溜まり、2シマシマ1バフン…!魔理沙の攻撃を防ぐ!
「ほう、堅実と言うかなんというか」
「こんなに早くガード系バサシを食べて良いのかしら、霊夢…?」
霊夢はこのゲームに関しては素人である。紫とアリスは、2シマシマしかない(今後も増えそうに無い)霊夢は眼中に無かった。
それは置いといて、魔理沙がここでタケユタカのバサシを使った理由は二つ考えられる、と二人は考えた。
一つはチャージ出来なくなった可能性。残りの馬刺しでガード、もしくはもし魔理沙に不発になるアタック系バサシが2枚あった場合は絶好の的になる。
もう一つはタケユタカのバサシがもう一枚と、チャージ系バサシが一枚あるため、タケユタカのバサシを使い切りに来た可能性。
こちらの場合は次にチャージ系を使ってくる可能性が高いため、次のターンが狙い目になる。
二人の手札からはどちらの可能性もあるかに見えた…。
ちなみに霊夢は全く悩んでいなかった。悩む必要の無い手札だから。
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:3シマシマ2バフン アリス:4シマシマ2バフン
「三食目ね」
(計画通りね)
霊夢:ハルウララ×2,タケユタカ×1
(くっ、なんてつまんない手札なんだぜ)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,タケユタカ×1
(虎視眈々とはここまでよ)
紫:ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(分岐点ね)
アリス:ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
三食目、開始…!
「シマシマを溜めるぜ」
魔理沙、シマントのバサシを食す。2シマシマ…!
「ふふっ、バレバレよ、魔理沙」
「ふん、覚悟はしてたさ」
紫、ここで3シマシマを消費しタケユタカのバサシを食す。魔理沙に3バフン溜める…!
「これまた予想通りね」
アリスが食したのはハルウララのバサシ…!紫の攻撃を防ぐ。
「魔理沙、汚くなったわね」
霊夢、ハルウララのバサシを食す。またしてもガードっ…!!
「さて、ここまで来ると大方次の貴方達の一手…いえ、一食が見えてくるわね」
「私達の食べられるバサシは限られてくるからな」
そう、ここまで来ると次の一食は大体限られてくる。
シマシマの残っているジョッキーはアタック、無い者はガード。
このゲームの一周目は大体の場合、4ターン目に自分の戦略が完結するように作戦を立てることが基本だ。
それは最後に馬鹿力シャッフルがある所為である。まだ一周目であるため、今回は全員様子見で行くかに見えた。
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:2シマシマ3バフン 紫:0シマシマ2バフン アリス:4シマシマ2バフン
「四食目っ…」
(まぁ一択でしょう)
霊夢:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(待てよ…どうせ私はバフンが溜まってしまうんだ…それなら)
魔理沙:シマウマ×1,タケユタカ×1
(まぁ、ここでシマジロウのバサシを食べるほど私はパンダやりたくないわ)
紫:ハルウララ×1,シマジロウ×1
5ターン目にシマジロウのバサシを食べられる可能性があるが、この4ターン目に攻撃される可能性が高い以上、シマジロウのバサシを食べるのは相当危険である。
(最後にマキバオーを送りつける…痛快ね)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×1
アリスは定石どおり霊夢と魔理沙が攻撃、
タケユタカが全て使われた以上、最後に攻撃するものは居ないのでシャッフルでマキバオーを手にしたジョッキーは1バフン、発動しただけ損…そう読んだ。
四食目…。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食っ…!」」」」
「ふふっ、貴方達は攻めてくるのでしょう…?」
紫、ハルウララのバサシを食す…!ガード…!
「ふん、貴方は予想通りね」
アリス、4シマシマを消費したタケユタカのバサシを食す!強力無比の一撃…!
「おお、危ない危ない」
「…!」
霊夢、またしてもハルウララのバサシを食す…!アリスのタケユタカをガード…!
「私のカードはこれだぜ…!!(急な予定変更だったがな…!)」
「…最初から賭けに出たわね、魔理沙…!」
「魔理沙ばっちぃわねえ」
魔理沙、ここでシマウマのバサシを食す!!アリスのタケユタカ、直撃!4バフン!!!
魔理沙、合計7バフン…!
「最初から波乱の展開になってしまったわね…」
「やっぱりシマウマはこうでなくっちゃな!」
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:3シマシマ7バフン 紫:0シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
霊夢、圧倒的有利…!
そして残ったバサシは、タケユタカ×2,マキバオー×1,シマジロウ×1。
(ふーん、なかなかやるわね、霊夢…。このゲームの攻略法を自分なりに見つけたようね、それが合っているかは最後に分かるでしょうけど)
(…マキバオーのバサシが大当たりになってしまったわ…あの場面ではタケユタカのバサシしか選択肢は無かったのかしら…)
アリスは最初のバサシが良かっただけに、読みが外れたのは勿体無い。
ここでは最後のシャッフルでタケユタカのバサシを食べられるような立ち回りが最善だった…!
(さぁ、最後にタケユタカのバサシを食べられるかだな…!)
(まぁどのバサシが来ても大丈夫ね、ある程度)
シマシマを残した二人のジョッキーは勿論タケユタカのバサシが食べたい…!当然の心理…!
そしてシマウマは5食目へと突入する…!
「で、どうやってシャッフルするんだっけ?」
「こいつだ。『オグリキャップ』。コイツの口にバサシを入れてくれ」
魔理沙がちゃぶ台の中央にオグリキャップを置くと、4人のジョッキーがそれぞれ一枚、オグリキャップと呼ばれる馬の形をした合成樹脂製の何かの口の中に入れた。
すると爆音と共にすごい勢いでオグリキャップが回転し始めた。
「おーおー、よく回ってるな。紫の所の狐より回ってるんじゃないか?」
「私の藍も甘く見られたものですわね…藍はこの馬の1029倍の速さはあるわ」
心底どうでもいい会話が終わるのと同時にオグリキャップは霊夢の方を向いて動作を停止した。
「なんでこいつは吐きそうな顔をしてこっちを向いているのよ」
「きっとお前の顔があまりにも気持ちわr…痛いぜなにすんだよ」
霊夢はお祓い棒で魔理沙を思いっきり殴ってやった。
するとオグリキャップの顔がいきなりぱっと明るくなった。
「ウェーイウェーイwwwオグリギャルwwwww」
「うぇ、なにいってんのこいつ…わ、バサシを吐き出したわ」
続けて魔理沙、紫、アリスの目の前へとバサシを吐き出していく。
4人のジョッキーにバサシを配り終えたオグリキャップは魔理沙の手によって3次元帽子の中に入れられた。
「まだ見ちゃだめよ、霊夢」
「確認しないでいきなり実食するんだぜ」
「ふーん、分かったわ」
「さあ、始めようぜ…!」
残ったバサシは、タケユタカ×2,マキバオー×1,シマジロウ×1…!
タケユタカのバサシの食べたい魔理沙と霊夢、マキバオーのバサシが食べたい紫とアリス…!
五食目っ…!
「「「「セットバサシカードっ……!」」」」
(頼む、来てくれタケユタカ…!)
「「「「実食っ……!!!」」」」
「やったっ…!」
「…!」
魔理沙、なんという強運…!3シマシマを消費し見事タケユタカのバサシを食べることに成功っ…!
「ふーん、まぁ最低限ね」
霊夢、マキバオーのバサシ…!1バフンが溜まるが魔理沙の攻撃を防ぐ!
「あらあら、魔理沙の強運に乾杯といったところかしら」
「くっ、ついてないわね」
「ふふふ、紫、アリス、ばっちぃわねぇ」
紫、タケユタカのバサシ。アリス、シマジロウのバサシ。紫、アリス、魔理沙の攻撃により3バフン…!
一周目の総合バフン
霊夢:2バフン 魔理沙:7バフン 紫:5バフン アリス:5バフン
魔理沙、最後に一矢報いるが依然不利。霊夢、圧倒的有利…!
……
「なかなかやるわね、霊夢…」
「それでこそ私の好敵手だぜ」
「まぁ今回は配られたバサシが良かったわねぇ」
そう、今回は私はほとんど考えることも無く一週目を終わらせた。
魔理沙のような手札だった場合はどうなっていただろうか…。
「とりあえず休憩にしようぜ」
「そうね、久々にシマウマをやったら疲れたわ」
「そんなに涼しそうな顔で言われてもねぇ…」
どうやら休憩らしい。休憩時間を取ると私のおやつが減っていくのだけれど。
そんなことを考えてるうちに言わんこっちゃ無い、魔理沙が勝手に私の煎餅を台所から持ってきた。
「差し入れだ、感謝しろよ」
「あら気が利くわね」
「有難う魔理沙」
いや私に感謝しなさいよ。
「どうした霊夢。そんなにプンスカして。煎餅の気分じゃないなら羊羹もあるぜ」
あぁ、私のおやつが減っていく…。
しかし出されたものは仕方が無い。私もみんなと一緒にオヤツタイムにすることにした。
「ああ、それにしてもこのUMAXは素晴らしいわあ」
「ふふふ、そうだろうそうだろう」
…この良く分からないシマウマのどこがいいのだろうか。
私はこれの価値をそれとなく聞いてみようと思った。
「そんなもの何処で手に入れたの?」
「ああ、無縁塚の上を飛んでいたらたまたま見つけたんだ」
「無縁塚…確かにあそこでは何が起こるか分からないけど」
「それでな。拾ったときに香霖にみつかって何故か馬刺し1kgと交換を迫られたんだが、当たり前のように断ってやったぜ」
「え!?」
三人が「?」みたいな顔をしている。思わず声が出てしまった。
なんと…そんなに価値のあるものだったのか、少なくとも霖之助さんにとっては。
私はシマウマの目標をビリにならない事からTOPを狙うことにスイッチした。
「ん?今カチッて音が聞こえなかったか?」
そのスイッチじゃない。スウィッチ。
「…あら、お煎餅が最後の一枚だわ」
あの、私全然食べてないんだけど。
「これは…アレで食べる奴を決めるしかないな」
「アレね…魔理沙…激しい戦いになりそうね」
アレか。アレをやるというのか…!アレならば仕方あるまい…!
「行くぜ…私からで良いな…?」
「ええ…」
「異論は無いわ…」
「右に同じ」
「「「「せーのっ…!!」」」」
「「「「マリから始まるリズムに合わせてっ…!!」」」」
ドンチャッ
「ゆか2!」
ドンチャッ
「ゆかゆか!」
ドンチャッ
「アリ4!」
「アリアリアリアリ!」
ドンチャッ
「マリ3!」
ドン
「マリマリマリ!」
ドンチャッ
「れい1!」
ドンチャッ
「「「うーれい!」」」「れ…えっ?えっ?」
霊夢、痛恨のミス…!
「なによそのルール…はじめて知ったわよ?博麗神社ではそんなルール認めないわ」
「ははっ、霊夢遅れてるなあ」
「このルールって何時から始まったんだっけ?」
「結構早い段階からあったような気がするんだけど」
「…」
「…で?」
「…」
「…私食べて良い?」
「ええ、どうぞ…」
「さて…そろそろ二週目を始めようぜ」
「ゾクゾクするわぁ…」
遂に二週目が始まってしまうと言うのか。
魔理沙がバサシをシャッフルし始める。
現在の状況は…私がトップで2バフン、続いてアリスと紫が5バフン、魔理沙が7バフンね。
正直、余程バサシが悪くない限りこのまま私が勝ちそうなのだけれど。
「さァて…配り始めるぜ…!」
……
(少なくとも大敗はなさそうね)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×2,タケユタカ×1,シマジロウ×1
ガード系バサシ・ハルウララのバサシが2枚あるのが大きい。
(今日は厄日だぜ…この手札でタケユタカのバサシがないとはな…)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×2
チャージ系の三枚をいかに使うか。
(霊夢はいつも通りのすまし顔…魔法使い二人の表情は良くないわね)
紫:シマウマ×2,シマント×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
紫の手札もあまり良いものとは思えなかったが…。
(3枚もタケユタカが来るなんて…)
アリス:シマント×1,マキバオー×1,タケユタカ×3
ひどい。
「さて、まずは一食目だ…」
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
霊夢:シマウマ 魔理沙:シマンチュ 紫:シマント アリス:シマント
「あら霊夢…毎度貧しいわね」
「うっさいわねー」
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:3シマシマ0バフン 紫:2シマシマ0バフン アリス:2シマシマ0バフン
「二食目ね」
(うーん…今回は3枚もガード系バサシが無いのよねえ)
霊夢:ハルウララ×2,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(まぁ…今回も最後に賭けるか…!)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,ハルウララ×2
5ターン目に運よくアタック系バサシが来ることを願うしかない。
(霊夢は置いておいて、魔法使い二人は悪くなさそうに見えるのだけど…このターンで分かるわね、少なくとも片方は)
紫:シマウマ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1
(うーん、さっきの魔理沙みたいねえ)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×3
二食目…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
(二食目は攻撃が通りやすい…どうせチャージできないのだからここで食べるわ)
霊夢、二食目にしてタケユタカのバサシを食す…!1シマシマを消費…!
(どんな手札かばれてしまいそうではあるけれども)
アリスも2シマシマを消費しタケユタカのバサシ…!霊夢から1バフン受けるが、霊夢に2バフン!
「くっ、ちまちま攻めてきやがるなあ」
魔理沙、シマントのバサシ!2シマシマ溜めて合計5シマシマ…しかし二人の攻撃を直撃し、3バフン!
「あらあら魔理沙、無用心ねえ…」
紫、マキバオーのバサシを食す。1シマシマと1バフンを溜め、ガード!合計3シマシマ…!
(ふふっ、アリスはさっきの魔理沙みたいな感じね。魔理沙は一見調子良さそうだけれど…)
魔理沙、早くも5シマシマ。この5シマシマを使うことが出来れば魔理沙にも勝機があるのだが…。
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:3シマシマ1バフン アリス:0シマシマ1バフン
「三食目ね…」
(魔理沙が危険ね。次にでも打ってきそうだわ…)
霊夢:ハルウララ×2,シマジロウ×1
(このターンは紫のみ警戒ではあるが…一つ作戦はある)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×2
(ここで全員の手札が分かりそうね)
紫:シマウマ×2,タケユタカ×1
(もうタケユタカのバサシは2枚食べられてしまったから、私のを引いてあと1枚…魔理沙と紫のどちらかが持っていたら危険ね。いつマキバオーのバサシを食べれば…!)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×2
アリス、苦しい手札…!
三食目が始まろうとしている…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
「あら…魔理沙、じらすわね」
アリス、マキバオーのバサシを食す。1シマシマと1バフンが溜まる。合計2バフン…!
「魔理沙、撃ってこないの?動いたら撃つのかしら」
霊夢、ハルウララのバサシを食す。
「撃ってこないと言うよりは撃てないんじゃないかしら…?」
紫、ここでシマウマのバサシを食す!合計4シマシマ…!
「うっせぇやい…タイミングってものがあるんだぜ」
魔理沙、ハルウララのバサシ…!
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:4シマシマ1バフン アリス:1シマシマ2バフン
このやりとりで、紫が圧倒的に得している…かに見えた…!
「四食目…今回は穏やかね」
「このまま何も起きないで欲しいのだけれど」
(全体での残りのタケユタカのバサシは3枚。アリスはどうでもいいとして、紫か魔理沙はここで十中八九撃ってくるわ)
霊夢:ハルウララ×1,シマジロウ×1
そう、霊夢の手札からはそう見えざるを得なかった…。
(紫には気づかれちまったか…?まぁいい、私の作戦は成ったようだ)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×1
(私の読みだと…)
紫:シマウマ×1,タケユタカ×1
(これはひどい)
アリス:タケユタカ×2
四食目…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
ここで霊夢は初めて危険に気づく…!
「え?え?魔理沙も紫も撃って来ないの…?」
霊夢、ハルウララのバサシを食す!
「くくっ、これでガード系バサシは全て無くなったぜ…!」
魔理沙、同じくハルウララのバサシ…!
「あらあら…霊夢、あなたはまだ理解していないようね」
紫、シマウマのバサシを食す…合計5シマシマ!
「あら、私は助かってしまったわね」
アリス、タケユタカのバサシ。紫のみに1バフン…!
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:5シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
霊夢がハルウララを使うのも無理は無い…何しろ先程の状態で魔理沙と紫の直撃を受けると、9バフン。これは負けである。
しかし紫と魔理沙はそれぞれの思惑で霊夢の予想の上を行った。
結局はここで霊夢はシマジロウを不発させるのが正解ではあった。五食目を安全にするために。
紫は魔理沙がアタック系バサシを持っていないことに賭けた…!
魔理沙が手札を配られて最初に見せた表情は、一周目の戦いを見る限り正直だ。
一見シマンチュとシマントがあって調子が良さそうに見えるにも関わらず表情が良くないと言うことは、攻撃手段がないと言うこと。
正直ここは紫らしくは無い、計算に基づいていない賭けではあった。あまりにも魔理沙が真っ直ぐだったので、思わず最初に見た表情を信じてしまったのだろう。
そこでアリスか霊夢がガードすることが濃厚な四食目より、ガードが使い切られるであろう五食目に賭けることにした。
これで実は全て魔理沙の思惑だった、みたいな事になっては人間不信になってしまう所だったので内心紫はほっとしていた。
魔理沙は、霊夢には持ち前の幸運があると分かっていた。
彼女はきっと理想の手札に近いものを毎回持ってくるだろう…と。
それは初戦を見る限り、ガード系バサシで固めた手札。
霊夢の強靭な守りを崩すには、5食目、霊夢がガード系バサシを引かないことに賭けるしかない。つまり狙いはガード系バサシを5食目までに使い切ること。
今回、自分にガード系が二枚来た。全体で6枚あるので、残る未確定のガード系は四枚。
さらに、二食目に紫がマキバオーを食したことにより、残り三枚。
さらにさらに、二食目の霊夢の行動は、1シマシマを消費でタケユタカというあまりにも消極的な行動。
これでは残りの手札でガードしますよと言っているようなものだ。
そして三食目、アリスと霊夢がガード系を使う。残り一枚。
これは嬉しい計画通り。魔理沙の持っている分を引いた残る一枚のガード系は、おそらくは霊夢が持っているだろう。
四食目、霊夢は魔理沙と紫を警戒して絶対にハルウララを使ってくる。そして魔理沙が手持ちのガード系を使ってしまえば…五食目にガード系は無くなる。
一番恐ろしかったのは最後にアタック系が無くなるのではないかということ。しかし実はこれはなかった。
四食目開始時、使われてないアタック系は四枚。そして魔理沙は唯一、アタック系を持っていなかった。
つまり他の三人が四食目に一斉に使ったとしても、五食目には一枚余る。
それでも最後に引ける可能性は低いけれども。結局は賭けである。
そんな訳で幻想郷の住人は適当であった。
…さあ、五食目が始まる…!
「さて、馬鹿力シャッフルだ」
「私はあいつ苦手なんだけど」
魔理沙が一周目と同じようにちゃぶ台の中央にオグリキャップを置くと、4人のジョッキーがそれぞれ一枚、オグリキャップの口の中にバサシを入れる。
またもや轟音と共にすごい勢いでオグリキャップが回転し始めた。
「どうにかならないの?これ正直うるさいんだけど」
するとまたもやオグリキャップは吐きそうな顔をして霊夢の方を向いて動作を停止した。
「なんなのよこれ…私何か悪いことでもした?」
「きっとお前の顔があまりにもきm…痛いぜ」
霊夢はお祓い棒で魔理沙を思いっきり殴ってやった。
するとオグリキャップの顔がいきなりぱっと明るくなった。
「ウェーイウェーイwwwwニワカハカエレwwwww」
「あんたが帰りなさいよ…うぇ、またバサシを吐き出したわ」
続けて魔理沙、紫、アリスの目の前へとバサシを吐き出していく。
「さあ…何が飛び出してくるかな」
オグリキャップの中のカードと4人のステータスは以下のとおりである。
シマジロウ×1,シマウマ×1,タケユタカ×2
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:5シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
魔理沙と紫は攻めるため、アリスと霊夢は攻められないため、タケユタカとシマジロウのバサシを狙う…!
「運命の五食目だ…!」
「「「「セットバサシカード…!!」」」」
「「「「実食っ…!!!」」」」
「やったっ…!!!!!」
魔理沙、ここでまた強運を発揮…!引いたバサシは、シマジロウ…シマジロウのバサシを食す!!
「くっ…」「やられたわ…最悪は逃れたけど」
霊夢、アリス、ここでタケユタカのバサシを食す…魔理沙によって6バフンが溜まる…!
「なんということ…」
紫、不運にも引いたバサシはシマウマ…!5シマシマを残し、無念の6バフン、溜まる…!
「なんとか5シマシマ溜めたのだけれど…ついてないわぁ」
「ふふん、日ごろの行いが悪いからだぜ」
「そのネタにはもう突っ込まないわ…」
(まさか私のミスで魔理沙と同率になってしまうなんて…!あの時にシマジロウのバサシを消費しておけば…!)
この一戦は霊夢の考えに少なからず影響を与えたようである。
霊夢:0シマシマ8バフン 魔理沙:0シマシマ3バフン 紫:5シマシマ8バフン アリス:0シマシマ8バフン
二周目までの総合バフン
霊夢:10バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
魔理沙、健闘…!
霊夢と魔理沙がトップに並び、紫とアリスが3バフンビハインドのまま三周目に突入する…!
……
「休憩だ」
「そう」
休憩らしい。
「この神社は客に煎餅の一つも出せないのか?」
さっき出したじゃない…。
「あれは私が出してきたんだ。だから私の出した煎餅だ」
「そうよ、霊夢。さっさと持って来なさいな」
「貴方ならまだ沢山持っているでしょう?来るたびにいつも出してくれるんだもの」
ここぞとばかりに好き勝手言ってくる。切れたほうがいいかな。
「どうした霊夢、プンスカして」
「そりゃあプンスカもするわよ…大体あんたらはいつも土産の一つもよこしはしない」
「実は土産はあるぜ」
え!?早くそれを言って頂戴よ。
「しかしタダであげるのは面白くない。ここはアレで勝負しようぜ。アレで勝った方が土産、もしくは煎餅を手に入れる」
「アレね、魔理沙…私達の分まで頑張ってちょうだい…」
アレで勝負しようと言うのか…ふふっ、面白い…。
「いくぜ、霊夢…!」
「ええ、いつでも来なさい…!」
「「グーチョキパーで…!グーチョキバーで…!!何作ろう…!何作ろう…!!」」
軽快なリズムとは裏腹に顔はマジである。
「右手はパーで…!」「右手はパーで…!」
一戦目、引き分け…!
「左手はグーで…!」「左手もパーで…!」
「八方鬼b」「マスタースパーク!!!」
「きゃああぁぁぁっ!!!!」
負けた。
「はっはっはー霊夢ざまねえなー」
「勝手にお煎餅もらっておくわねー」
お前らはジャ○アンとス○夫か。
「あらあら、霊夢、あられもない姿になってしまって…」
なってないなってない。
「さてと、神社の食糧も尽きたことだし、三周目を始めようとするかね…!」
悪魔め…。
悪魔理沙がバサシをシャッフルする。
「これが最終戦…感慨深いわぁ」
そう、これで誰がリアル馬刺し…もとい、UMAXを手に入れるかが決まる。
魔理沙がバサシを配り始めた。
「さーて、最後にどんなバサシを引いたかね…!」
皆が手札を確認する。それを見て私も手札を確認し始める。緊張の一瞬である…。
その時、魔理沙がいきなり笑い出した。
「ははっ、みんな、これを見てくれ」
「これは…」
「よーし行くぜ!せーの、」
「「「パラパッパッパラ、パーラダイスー!!!」」」
「え?え?」
ああ、もうこういうわけの分からないのには付き合わないことにしよう…。
「おい霊夢、配りなおしだぜ」
「…あー、あったわねそんなルール」
渋々私は手札を魔理沙に返す。
パラッパラッパー魔理沙がバサシをシャッフルする。
「まさかパラパッパッパラパラダイスが起こるとはね」
もっと短い名前に出来なかったのだろうか。
「ああ、私も驚いているぜ」
魔理沙はそう言いながら、最後の手札を配り始めた…。
私はゆっくりと自分のバサシを確認する。今度こそ緊張の一瞬である…。
ハルウララ…マキバオー…シマウマ……マキバオー…!なかなかね…ん?
霊夢が最後に確認したバサシは、シマジロウであった…!!
二周目までの総合バフン
霊夢:10バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
……
(シマジロウのバサシ…)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×2,シマジロウ×1
(くくく、今日は私には苦しい勝ち方しか出来ないようになってるな…)
魔理沙:シマウマ×2,ハルウララ×1,タケユタカ×2
(この試合…きっと全員が同じ事を考えて動くわ…)
紫:シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×2
(そう…皆が五食目、最高の状態になるように動くわね…!)
アリス:シマント×2,シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
「さあ、長かった一日ももうすぐ終わるぜ…!」
一食目…!
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「…こういう感じになるとは思ったけど…あまりにも予想通りね…」
アリス、定石どおりシマントのバサシを食す。2シマシマ。
「さあ、もうどんな手札かが分かっちまうかねぇ…?」
「ふふ、どうかしら」
紫、魔理沙、なんと共にタケユタカのバサシ…不発っ…!不発っ……!!
(一食目から…。これが意味するものは…)
霊夢、シマジロウのバサシ…これまた不発っ…!はたまた…不発っ……!!!
「あら…霊夢、反省したわね?」
そう、二周目の戦いもこうすれば勝っていたのだ。もともと攻めっ気のない霊夢のスタイルでは、アタック系を残すことこそ愚か…!
一食目にはチャージ系を使う必要すらない…。
そして霊夢は考えた。紫と魔理沙の意味不明のバサシの意味を…!
紫は、3バフンビハインド…これは相当大きい。きっと馬鹿力シャッフルに勝負を賭けてくる。つまり、最後までタケユタカを使うことはない…!
魔理沙は、霊夢と同率。こちらは、霊夢と同じ、いわば穏健派…!馬鹿力シャッフルにはガード系を突っ込むだろう。
ここまでの霊夢の読みは大体当たっていた…!
霊夢:0シマシマ0バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:0シマシマ0バフン アリス:2シマシマ0バフン
「二食目ね…」
(さっきの読みどおりなら、悩む必要も無いわ…あれ?)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×2
ここで霊夢は気づいた。マキバオーのバサシ…!
(まずい、私と魔理沙が完全に攻撃を防げたとして…最後にマキバオーのバサシの1バフンが仇になりえる…。
まぁもうこれは仕方ないのだけれど)
(さーて…今のところ私にはどうすることも出来なさそうだな…)
魔理沙:シマウマ×2,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(魔理沙は四食目までに仕掛けてくるわ…必ず)
紫:シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(これはどうするか、分かりきっているわね)
アリス:シマント×1,シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
二食目…!
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「安全なんだもの…これしか無いわよね」
霊夢、シマウマのバサシを食す。1シマシマ。
「ああ、同感だぜ」
魔理沙、シマウマのバサシを食す。1シマシマ。
「ふふっ、余裕ねえ」
紫、シマンチュのバサシを食す。3シマシマ。
「…まあ、こうなるでしょうね」
アリス、シマントのバサシを食す。合計4シマシマ。
…アリスがここでタケユタカのバサシを使えば、高い確率で三人にバフンを溜められるだろう。
が、それまで。
霊夢と魔理沙に、現状の2シマシマで攻撃するだけでは追いつけない。やはり最後に賭けるしかない。
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:1シマシマ0バフン 紫:3シマシマ0バフン アリス:4シマシマ0バフン
「三食目だ…!」
(うーん、今回はもう悩む必要は無いわね)
霊夢:ハルウララ×1,マキバオー×2
(本来は悩む場面だが…)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(今回も、霊夢にガード系が偏っているのは間違いないわ)
紫:シマント×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(それを崩すには三人の結託が必要…!)
アリス:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
三食目…。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「ふふっ、みんな同じことを考えているわね」
紫、シマントのバサシ。合計5シマシマ…!
(紫がシマジロウを持っていたら終わっていたわ…)
アリス、シマウマのバサシ。これまた合計5シマシマ…!
「あー、私にも霊夢の貧乏がうつってしまったぜ」
魔理沙、シマウマのバサシ。合計2シマシマ…!
「ふん、みなさん仲のよろしいこと」
霊夢、マキバオーのバサシ。1シマシマと1バフンが溜まる…!
魔理沙はハルウララを五食目まで温存しておくつもりである。
なぜなら、魔理沙を狙って、万が一アリスと紫が同時に攻撃してきた場合、アリスは紫の、紫はアリスの攻撃を受けてしまう。
こうなってしまっては、おそらくガード系で固まっている霊夢を抜くことは、アリスと紫には不可能となってしまうだろう…。
なので魔理沙はハルウララを使う必要など無かった…!
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:2シマシマ0バフン 紫:5シマシマ0バフン アリス:5シマシマ0バフン
四食目…!
「心なしか進むペースが速いわね」
「きっと気のせいよ。焦っているんじゃないの?」
「そ、そんなことないわよ」
(しゃべることがないわ)
霊夢:ハルウララ×1,マキバオー×1
(ここで使うのは、もちろん…)
魔理沙:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(ガード系を五食目に残すのは点数的に不利な私達のすることではない)
紫:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(同上)
アリス:ハルウララ×1,タケユタカ×1
四食目。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「ほーら、ガードするんだろう?」
魔理沙、2シマシマを消費し、タケユタカを食す…!
「当然ね」
「当然よね」
「上に同じ」
霊夢、紫、アリス、ハルウララのバサシを食す…!魔理沙の攻撃をガード!
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:5シマシマ0バフン アリス:5シマシマ0バフン
ここで残ったバサシは、タケユタカ×2,ハルウララ×1,マキバオー×1。
総合バフンは、霊夢:11バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
幸か不幸か八百長か。これは全員に勝ち目がある。
まずは魔理沙。ハルウララもしくはマキバオーを手にした瞬間、勝利…!
次に霊夢。ハルウララを手にした場合、無条件勝利…!マキバオーを手にした場合、魔理沙以外がハルウララを所持していなければならない。
さらにタケユタカを魔理沙と共に食した場合も勝利となる…!
最後に紫とアリス。どちらかがマキバオー、どちらかがハルウララを手にした場合でなくては、二人に勝利はない…!厳しい…!
「あぁ…余興は終わりだぜ…!」
「えぇ、ここで人生の勝利者が決まるのね…」
「結局運g」
「霊夢、そういうことを言ってしまっては興が削がれてしまうわ」
さあ、魔理沙がオグリキャップをちゃぶ台の上に乗せた…!
……
私が勝つ確率は相当高い。ふん、最後には巫女が勝つものなのよ…。
この勝負に勝ったら、UMAXを霖之助さんの馬刺しと交換するんだ…。
「さて、みんなバサシを入れてくれ」
4人のジョッキーがバサシをオグリキャップの口の中に入れると以下略。
「…」
「なんで今叩いたんだよ霊夢…」
するとオグリキャップは『キリッ』という効果音が付きそうな顔をした。
「俺に賭けな…」
「あれ、今何かカッコいいこと言ったわよこの馬」
オグリキャップの口から運命のバサシが吐き出される…!
「ああぁ…緊張するぜぇ…」
4人がちゃぶ台の中央にバサシをセットする…。
この瞬間のために今日は頑張ってきたのね。
きっと今日の夜は馬刺しを囲んでみんなで…。
「五食目だぜ…!!!」
「「「「セットバサシカードっ…!!!」」」」
「「「「実食っ…!!!!!」」」」
「やったっ……!!!!!」
魔理沙、ハルウララのバサシを、食す、食す、食すっ…!!!!魔理沙、優勝っ……!!!!
「あーあ、やられたわ…」
紫、マキバオーのバサシ…。
「UMAX欲しかったわ…」
アリス、タケユタカのバサシ…。
「全くだわ…今までのは何だったのかしら」
霊夢、タケユタカのバサシ…。
……
「はっはっはー、UMAXは私のものだぜー」
「まぁ勝負だし仕方ないわね…」
「次に勝負するときは絶対にいただくからね!」
ふぅ…今日は散々だった。神社の食糧をごっそり減らされた上に、馬刺しすら手に入らなかったのである。
さーて、そろそろ夕飯時ね…。
「ほらほら、夕飯までご馳走する義理はないわよ?さっさと帰った帰った」
「「「えっ?」」」
いや、えっ?じゃないでしょ。
むしろあんだけ食べたのにまだ食べるつもり?
「さっき言っただろ?土産だ、土産。そろそろ来るはずなんだが…」
そういって魔理沙は鳥居の方に向かって行った。
私たちも魔理沙に続く。そこには夏には嬉しい二人の姿が。
「あらあら、紫までいるのね」
「あら、幽々子に妖夢じゃない。何、土産って冥土の土産?」
「こ、これですよ。ここまで運んでくるの大変だったんですからね」
妖夢があまり目にしない白い箱(?)を置いた。
空けてみると…そこには馬刺しのブロックが沢山入っていた…!
「ど、どうしたのよこれ…?」
「なんか幽々子様が町で見かけた男性を脅したらくれたんですって」
「人聞きが悪いわね、妖夢。ちょっと美味しそうだったから分けてちょうだいって言っただけよ」
町は馬刺しブームなのだろうか。一人だけ馬刺しを持っている人物は思い当たるのだが。
「んで、魔理沙はなんでこの事を知っていたの?」
「香霖から聞いた。あいつ、奪われたみたいだな」
「え、さっき魔理沙はUMAXと交換を迫られたって…」
「そうでも言わないとお前は本気を出してくれないだろ?」
余計なお世話だ…。この事を知っていたら適当にやってたのに。
…あれ、適当にやってよかったんだっけ?何か忘れているような…。
「忘れるようなことはきっとどうでもいいことなのよ」
「幽々子はもうちょっと物覚えを良くして欲しいものだけれどもね」
まぁ、それはともかく。
「ってことで、今日はみんなを誘って宴会やろうぜ!」
「ええ、こんなに沢山の馬刺し食べきれないしね(さっき沢山おやつ食べたし)」
そうして、博麗神社でのもう何度目か分からない宴会が始まった。
幻想郷には珍しい馬刺しが振舞われると聞いて、種族問わず様々な者が集まった。
「馬刺し…前に食べたのはいつだったかしら」
「あぁ、肉なんて食べることはあまりないからな。兎や鳥の肉くらいで」
鈴仙が少し反応した。流石に耳の良い奴だ。
大丈夫、兎鍋は出さないから。今日のところは。
「あぁ、霊夢見ろよこの霜降り…なんて良い馬刺しなんだ」
「えぇ…口の中でとろけるようだわ」
妖夢特製のタレをつけて食べる馬刺しは絶品だった…。
「そういえば、霊夢」
「何?」
「これを見てくれ」
霊夢:16バフン 魔理沙:10バフン 紫:14バフン アリス:15バフン
「そ、それがどうかした?」
「ってことで霊夢、パンダ」
「あっ」
す、すっかり忘れていた…。
「ああ、そうだ。折角だからこいつも連れてきた」
「ひいいぃっ!!!」
魔理沙の四次元帽子から現れたのは、黒と白の死神…!P野郎っ…!
宴会に来た魑魅魍魎、有象無象もざわめき始める…。
P野郎はつまらないパンダを見るとそのパンダをやった人を一週間、パンダに変えてしまう恐ろしいパンダのぬいぐるみパンダ。
へ?『パンダをやる』って何かって?パンダはパンダよ。最初の方に説明したでしょ?え?もう忘れた?
仕方ないわね…。
『パンダとは外の世界のちょっとした一発芸だ。
この一発芸にはちょっとしたルールがある。一回部屋の外に出て、ネタを考える。このときドアを閉めるのを忘れてはいけない。
そしてネタを考え終えたら部屋の中にいきなり入って、披露する。』
コピペ。
「さあ霊夢、こいつの前からは逃げられないぜぇ…?」
「霊夢、この前のリベンジよ」
「あれは傑作だったね~」
紫と萃香がちょっかいをかけてくる。
くっ、よりによって宴会でパンダをやらなければならないなんて…。
「あーあーキコエナーイ…っていうかそれ処分したって言ってたでしょ」
「私が同じ色の同志を処分するとでも思ったか?みろ、この愛くるしい顔を」
「おーかわいいかわいい。そんじゃあね」
バイバーイ。
「おう、またな!…ってそんなのに騙される私ではなーいw」
うぜえ!
「さぁ霊夢、パンダ。はやくやらないと大変なことになるぜぇ~?」
P野郎がこっちを睨みつけてきた。あぁ、これがP野郎の呪いの合図なんだろう。
もうやるしかないのか…。私は宴会会場からは見えなくなる、いつもの縁側に来た。
魔理沙曰く、ドアとかが無くても、とりあえず見えないところからいきなり現れればパンダをやってることにになるらしい。
(行ってらっしゃい、霊夢~)
(期待してるわー)
はぁ…。
「おや、霊夢さんじゃあありませんか。宴会中に一人でこんなところに突っ立って、めずらしいですねえ」
こいつは私のパンダを狙ってるんじゃないの?宴会には来ていなかったというのに。
「文…実は私ね…ここに突っ立っているのが日常なの」
「ふむふむ、それは興味深いですね…詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
「直接口に出すのはちょっと…理由は早苗あたりが知っているから聞いてきなさい」
宴会に来ていない遠めな奴にしておいた。
「ほう、そんなに深刻な悩みなのですね…では、早速行ってきます、最速で」
そう言うと文は文字通り目にも止まらぬスピードで恐らく山の方向へと飛んでいった。
くっくっく、計画通り…!
(おーい、誰か居るのかー?)
(霊夢のパンダの邪魔になったら悪いからこっち来なさい、馬刺しはもう無くなってしまったけど)
「誰も居ないわよ~?」
ふっ、前回の私とは違うのさ…。っていうかこんな下らない事している間に私の馬刺しが無くなってしまったのか…。
「誰が居ないんですか?ちなみに早苗さんは何も知らないと仰っていましたが」
「えっ」
ちっ、こいつの速さをなめたらいけなかったか…!
(やっぱり誰かいるんじゃない)
(こっち来いよー、霊夢がパンダをやるぜー)
チィィィッ!!
「お?まさか今は霊夢さんがまさにパンダをやろうという所だったのですか?
いやあ何て良い所に出くわしたのでしょう……今そっち行きますねー!」
「ちょ待っ…」
天狗は一瞬にして目の前から姿を消した。そんな速さで宴会会場に突っ込んで大丈夫なの?
(おーい霊夢、あと30秒以内にパンダやらなかったらパンダになってしまうぞー)
あぁ、またもやパパラッチのおかげで時間が少なくなってしまった…。
ここは連想ゲームで面白い事を考えて乗り切るしかない。
(20秒~)
パンダ。面白いパンダ…それは野生のパンダ。
野生…発狂したパンダ。発狂。狂気。兎。うぎぎ。
(残り10秒だ)
うぎぎ。うなぎ。うなぎのぼり。
こいのぼり。こい。恋。魔理沙。白黒。パンダ。あ、戻った。
(5、4、3、2…)
「ああもう行くしかない!」
悩みぬいた末に、私、楽園の素敵な巫女・博麗霊夢のとった行動はこれだった。
「パンダパンダうぇーい!!パンダパンダうぇーい!!!」
それから一週間の間、霊夢パンダを一目見ようと神社には絶え間なく行列ができるのであった。
めでたしめでたし。
霊夢がいつもの場所でいつものようにお茶を飲んでいると、
いつもの魔法使いがいつもとは違う事を言いながら霊夢の隣に着地した。
「シマウマって動物の?実際に見たことは無いけどあんたに色は似てるらしいわね」
「違うぜ霊夢。私の言っているシマウマとは外の世界で昔流行したお遊びだ。
幻想郷で知らない奴がいるとは驚いたな。…これを見てくれ」
あらかわいらしい。魔理沙が帽子からシマウマのぬいぐるみを取り出した。
「シマウマだ」
「シマウマね」
今夜は馬刺しね。
「おいおい、私のUMAXは食べられないぜ」
「冗談よ冗談」
なにやらこのシマウマのぬいぐるみはUMAXという名前らしい。
ウマックス。何故か馬糞という言葉が思いついた。
「バフンウニって何でバフンウニって言うのかしら?」
「あんまりな名前だよな。私の推測だと食欲を無くすような名前を付けて、最初にバフンウニのおいしさに気づいた奴が独り占めしようとしたんだろうよ」
「きっとそれね」
本当は見た目が似ているとか、そんな下らない理由なんだろうけどね。
あぁ、幻想郷には海が足りない。ウニ食べたい。
「おっと、忘れるところだったぜ」
「何を?」
「シマウマ」
「ああ」
外の世界のお遊びねぇ…。正直興味が沸かない。
「今日は空が青いわね」
「そうだな。それでそのシマウマのルールだが…」
余程シマウマについて語りたいらしい。…馬刺しって誰に頼めば調達してくれるかしら。
「4人で競うゲームなんだがな」
里に下りるのも面倒だし…。第一、最近は異変も無くて大して里の平和に貢献してないからいきなり「くれ」とか言われたらドン引きするでしょうねぇ。
ますますお賽銭が少なくなりそうだ。しかしここで私の頭は光の速さで計算を始めた。
かっぱらった馬刺しの値段>>>>>>>>少なくなるお賽銭
…やめた。悲しくなる。あれ、そもそも私は里の人から馬刺しをタダで手に入れようとしてたのか。なんと図々しい。
ああ、タダでくれそうな人はいないものか。
「まずは使うものだ。このゲームでは20枚のカードを使う」
霖之助さんとかどうだろう。…どうせ馬刺しについてのウンチクを延々と披露されて時間を無駄に過ごすだけか。
馬刺しについてのウンチク。バフンウニ食べたい。
「…おーい霊夢?聞いてるかー?」
あぁ、紫なら両方もっているかも。最近あいつは何もくれないからそろそろねだってみるかな。
「……グスン」
「ちょ、魔理沙なんで泣いてるのよ」
「あらあら、女の子を泣かしちゃいけないわよ霊夢」
「あ、馬刺しとバフンウニ」
「な、なんのことかしら?」
ちょうどいい所に我らが隙間妖怪八雲紫様がいつもの様に唐突においでなすった。
「外の世界からでもかっぱらって来てよ。あんたそういうの得意でしょう?」
「紫、これ見てくれ。シマウマだ」
「あなたには3日前にパンダの毛皮をあげたでしょう?あれ手に入れるのに苦労したのよ」
「ああ、UMAXはかわいいぜ。パンダと同じくらい」
「あれはどうみても偽者だったわ。茶色いパンダなんて居るわけ無いじゃない」
「UMAX『マリサノホウガカワイイヨ』魔理沙『て、照れるぜ///』」
「パンダには2種類居るのをあなたは知っているかしら?」
「私知ってるぜ!」
「きれいなパンダと薄汚いパンダ?野良パンダって結構汚いらしいわね」
「ははっれいm」
「ジャイアントなパンダとレッサーなパンダよ」
「…」
「その劣化パンダ?とやらの毛皮だと言うの?」
「紫、シマウマやろうぜ!」
「あら、シマウマね。懐かしいわ」
魔理沙が大事な交渉中に割り込んできた。ずっとぬいぐるみと遊んでいればいいのに。
っていうか紫もシマウマとかいう遊び知ってるの?
「あら知らないの?霊夢。今度はシマウマの毛皮をプレゼントするわね」
「それはちょっと見てみたいわね」
そう言ってアリス・マーガトロイドがゆっくりと私たちの前に着地した。
いつの間にやって来たのだろうか。
ああ、そういえば皆にお茶の一つもまだ出していない。
私はいそいそとお茶を淹れて三人に出した。馬刺しとお茶って合うのかしら。
「ようアリス、珍しいな」
「魔理沙の泣き声を聞いて飛んで駆けつけてきたわ!(貴方達の会話があまりにもアホだからつい立ち寄ってしまったわ)」
「本音と建前が逆だぜ…」
「あら、これで合ってるんじゃないの?」
「ああ、そういえばアリス」
「何?」
あんな事言ったのに良く平然としていられるな。
「今からシマウマをやろうと思っていたんだ」
どうか通じないで欲しい。
「ああ、そういえばあったわねそんなの」
あーあ。
「おおぉ?これはシマウマが始まっちゃうのかい?そうなのかい?」
すっかり元気になったな、魔理沙。
「私はパス」
「私も興味ないわ」
「右に同じ」
皆興味が無かった。
しかし魔理沙の瞳からシマウマに対する情熱の炎が消えることも無かった。
「お前らそんなこと言っていていいのか?
今回は勝った奴には大奮発…このUMAXを進呈するぜ!」
いらん。
「え…!?」
「それ…くれるの…!?」
「ああ、私が負ける気はしないがな」
二人が異常に食いつく。え?それってそんなに凄いの?
「霊夢…これは参加するしかないわね」
「え、ええ」
なんか自分が物の価値が分からない人みたいな雰囲気になる前に参加することにした。
「しかし最下位には…罰ゲームだ」
「な、何をすると言うの…?」
「パンダだ」
パンダ…これは前に魔理沙から聞いたことがある。外の世界のちょっとした一発芸だ。
この一発芸にはちょっとしたルールがある。まず、一回部屋の外に出て、ネタを考える。このときドアを閉めるのを忘れてはいけない。
そしてネタを考え終えたら部屋の中にいきなり入って、披露する。それだけ。
実は前に私はパンダをやらされたのだが、その時は逃げたりつまらなかったりしたらパンダにされるという悪夢のマジックアイテムがあったため本気になってやったものだ…。
え?結果はどうなったかって?私は知らない。何も。
「ふーん、パンダねぇ…」
「勝ったらUMAXをくれるんでしょ?それくらいのリスク、余裕ね」
「えー、私はあれ苦手だなぁ…」
「ってことで決まりだな。始めようぜ…このシマウマゲームを…!」
勝手に決めるな…。
……
私達は縁側からすぐそばの居間に移動して、私の左に魔理沙、正面に紫、右にアリスと言った配置で4人でちゃぶ台を囲んだ。
そして魔理沙はカードを配り始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。私は何をするか全く分からないわよ?」
そもそも勝っても訳の分からないぬいぐるみしかもらえないのだからこのゲームには乗り気じゃない…。
これで最下位になってはたまらないからせめてルールくらいはしっかり説明して欲しい。
「あら、霊夢はシマウマを知らなかったのね」
「ああ、幻想郷人だとは思えないだろ」
「私抜けるわね」
「あー!私が悪かった!うん、シマウマなんて知ってるほうがおかしい!ほら、座って座って」
そう言って、魔理沙はごそごそと帽子をまさぐり始めた。
そして、お、あったあったと言いながら私に一冊の冊子を差し出してきた。
「ルールを簡潔にまとめた冊子だぜ」
「霊夢、それ読み終わったら私に回して。前にシマウマをやったのが六十一年くらい前だったから記憶が曖昧だわ」
その冊子には魔理沙の字とは違う字でルールが書かれていた。
☆シマウマのバサシゲエム★
・4人で遊ぶきっと楽しいゲームです。
・用意するものは、20枚の『シマウマのバサシ(同梱)』カード(以下バサシ)のみです。
馬刺し食べたい。
☆ルール・目的★
・4人にそれぞれ5枚ずつ配られた『バサシ』を駆使して、最終的に自分の『バフンポイント(以下バフン)』を少なく済ませるのが目標です。
・ゲームはターン制で進行し、1ターンに1枚のバサシを必ず使わなければなりません。
・5ターンの試合を最初に決めた回数行って、総合で溜まった『バフン』が一番少ないプレイヤーが人生の勝利者です。
・このゲームではバサシを使用することを『食べる』、プレイヤーの事を『ジョッキー』、ターンのことを『○食目』と言います。
よくある感じのカードゲームね。用語以外は。
☆カード説明★
・このゲームには様々な種類のバサシがあります。色々なバサシを上手く駆使して、相手に『バフン』を溜めてやりましょう!
1、『シマウマ』『シマント』『シマンチュ』/チャージ系バサシ
・食べると『シマウマ』は『1シマシマ』、『シマント』は『2シマシマ』、『シマンチュ』は『3シマシマ』を溜めることが出来ます。
・『シマシマ』は攻撃するために必要になります(後述)。
四万十?島人?なんかシマウマから離れて行ってない?
2、『タケユタカ』/アタック系バサシ
・『シマシマ』を消費して攻撃することが出来ます。
・チャージ系バサシもしくはアタック系バサシを食べているジョッキーに、消費した『シマシマ』と同じ分の『バフン』を溜めます。
・『シマシマ』が無い時にも食べることはできますが、不発となり、何も起きません。
バサシを見てみると外の世界の人間が馬の上に乗っている絵が描かれていた。
ふーん、こんな格好で外の世界では馬に乗るのねぇ。
バサシになるくらいだからきっとこの人の乗っている馬の名前がタケユタカなのだろう。
3、『シマジロウ』/アタック系バサシ
・『5シマシマ』を消費して食べます。
・ガード系バサシを食べているジョッキーに『2バフン』、チャージ系バサシもしくはアタック系バサシを食べているジョッキーに『6バフン』を溜めます。
・『シマシマ』が4以下の時にも食べることはできますが、不発となり、何も起きません。
「当たり前かもしれないけどこういうのって全員にバフンを溜めるのよね?」
「ああ。ちなみに次のガード系バサシは全員のアタックを防ぐことが出来る」
4、『ハルウララ』『マキバオー』/ガード系バサシ
・アタック系バサシの攻撃を防ぐことが出来ます。
・『マキバオー』は食べる時に『1シマシマ』と『1バフン』が溜まります。
マキバオーのバサシは私には馬というより牛に見えた。
☆カード構成★
シマウマ×4
シマント×3
シマンチュ×1
タケユタカ×5
シマジロウ×1
ハルウララ×4
マキバオー×2
「なんだか食べるとかジョッキーとかって表現が分かりにくくしている気がするわね…」
「ああ、これを書いた奴は間違いなく説明下手だ」
☆特別なルール★
1、馬鹿力シャッフル
・5食目の最初に、『オグリキャップ(同梱)』を使って残った4枚のバサシをシャッフルします。
2、パラパッパッパラパラダイス
・最初に配られたバサシが『シマウマ×4』『シマジロウ×1』だったジョッキーがいた場合、宣言すればバサシを配りなおすことが出来ます。
「2つ目いらなくない?」
「考えられる手札の中では最悪の組み合わせだ。まぁそれだけに救済策があるのも確かにアレかもな」
「…まぁ大体分かったわ。はい紫」
紫に冊子を手渡すと、私は作戦を考え始めた。私らしくない。
…でもきっと紫は私に考える時間をわざと与えてくれたんだと思う。あいつなら六十一年前どころか百年前の事も覚えてそうだし。
アリスは魔理沙とUMAXの素晴らしさについてなにやら語り合っている。あんなのあんたなら一晩で作れそうなのに。
…恐らく、このゲームで一番重要なのはガード系バサシだろう。間違いなく。
そもそも目的が『いかに相手にバフンを溜めるか』ではなく『いかに自分にバフンを溜めないか』だから。冊子の表現は少々語弊を生む。
初手に攻撃は出来ないこと、最後にシャッフルがある事を考慮に入れて、ガード系バサシが3枚以上あるのが最善の手札だ。
そんなに都合よく手札が揃うとは限らないけれど。
後はやっている内にどうすればいいか見えてくるだろう。正直、作戦を立てるのは苦手だ。
私が頭の中を整理したのを見計らったかのように、紫も冊子を読み終わった。
「ありがと、魔理沙。いつの間にか特別なルールなんてものが出来たのね」
「あぁ、それは最近出来たからなあ。…さて、そろそろ始めようぜ」
「ええ」
魔理沙はバサシを慣れた手つきでカット&シャッフルしている。
あぁ、何だこの何ともいえない緊張感は…。
始めてやるゲームという物は最初は誰でも緊張してしまうものである。
いざ始まってみるとそんなものはいつの間にか無くなってしまうのだけれど。
魔理沙がカードを弄りつつ話し始めた。
「一応今回のルールを確認するぜ。特別ルールは両方あり、アリアリルールだ」
アリスとアリス?ちょっとアリスの顔が赤くなった。
「今回のレースは三周とする。三周目終了後にバフンが一番溜まってない奴が勝者だ」
「文句無いわ」「右に同じ」
ああ、最初に何回戦か決めるんだっけ?きっとそれのことか。
…なんという私の理解力。
そんなことを話しているうちに魔理沙がバサシを配り終えたみたいだ。
「さーて…今回のバサシはどんなもんかな」
「ふふっ、悪くないバサシだわ」
この会話を聞いて誰がカードゲームをしていると思うだろうか。
そして私はゆっくりと、緊張を隠す様に余裕を持った動作で自分のバサシを確認した。
シマウマ×1,ハルウララ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1…良いバサシだ。
これこそ私の考える最強の手札に近い。
私は歓喜した心を悟られないようにしつつ、ゲームの開始を待つのであった…。
……
(あちゃー、こりゃ最悪だぜ)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×2,タケユタカ×2
これは殴り合いになる…と言えば聞こえはいいが、やはりガード系バサシが無いのは痛い。
(まぁまぁね。不本意だけど相手次第と言ったところかしら)
紫:シマウマ×1,シマント×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
使えもしないシマジロウのバサシがあるのが唯一の欠点である。
(悪くない…むしろ良い手札だわ)
アリス:シマウマ×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1。
シマンチュのバサシがある事が大きい。
さあ、記念すべき一周目の一食目が始まる…!
「さーて、みんな準備は良いか…?」
「「「セットバサシカード…」」」
「え?え?」
霊夢は何のことだか分からず困惑している。
とりあえず3人を真似てカードをちゃぶ台の中央に伏せた。
「「「実食!」」」
「ちょっと、掛け声があるなら最初に言ってよね」
最初の4枚のバサシが食された。
霊夢:シマウマ 魔理沙:シマント 紫:シマント アリス:シマンチュ
「あらあら…霊夢、貧しいわねえ」
「相当運が無かったようね、貴方らしくない」
(勝手に言ってなさい…私が痛い目にあわないことが、あんたらへのダメージになる)
まずは全員定石通りチャージ系バサシを使う。
掛け声が出来なかったのもあり、霊夢は遅れをとっているかに見えた…。
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:2シマシマ0バフン 紫:2シマシマ0バフン アリス:3シマシマ0バフン
「よし、二食目いくぜ」
(ここからは私は何も考えずにガード系バサシを食べていれば良い…なんて簡単なんでしょ)
霊夢:ハルウララ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1
ガード系とは、ハルウララとマキバオーのこと。
(タケユタカのバサシを食べ切ったほうが得、だな)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,タケユタカ×2
今回は、5ターン目の馬鹿力シャッフルでタケユタカのバサシを誰かに渡すのは危険…そう魔理沙は考えた。
(迷う場面ではありませんわね)
紫:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(どのタイミングでタケユタカのバサシを食べるが鍵ね)
アリス:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
シマンチュのバサシを使ったことによる有利はあるのだが、悩ましい手札である。
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
二食目…!
「私のバサシはこれだぜ…」
魔理沙、ここで2シマシマを消費しタケユタカのバサシを食す…!
「あらあら…早いわね(魔理沙はチャージ出来なくなったのかしら?)」
紫、シマウマのバサシを食す。合計3シマシマ。しかし魔理沙のタケユタカにより2バフン…!
「くっ、やるわね」(チャージできなくなった可能性もあるけど…)
アリス、シマウマのバサシを食す。合計4シマシマ。しかし同じく2バフン…!
「あらみんなして汚いわね」
霊夢、ここでマキバオーのバサシを食す…!!1シマシマと1バフンが溜まり、2シマシマ1バフン…!魔理沙の攻撃を防ぐ!
「ほう、堅実と言うかなんというか」
「こんなに早くガード系バサシを食べて良いのかしら、霊夢…?」
霊夢はこのゲームに関しては素人である。紫とアリスは、2シマシマしかない(今後も増えそうに無い)霊夢は眼中に無かった。
それは置いといて、魔理沙がここでタケユタカのバサシを使った理由は二つ考えられる、と二人は考えた。
一つはチャージ出来なくなった可能性。残りの馬刺しでガード、もしくはもし魔理沙に不発になるアタック系バサシが2枚あった場合は絶好の的になる。
もう一つはタケユタカのバサシがもう一枚と、チャージ系バサシが一枚あるため、タケユタカのバサシを使い切りに来た可能性。
こちらの場合は次にチャージ系を使ってくる可能性が高いため、次のターンが狙い目になる。
二人の手札からはどちらの可能性もあるかに見えた…。
ちなみに霊夢は全く悩んでいなかった。悩む必要の無い手札だから。
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:3シマシマ2バフン アリス:4シマシマ2バフン
「三食目ね」
(計画通りね)
霊夢:ハルウララ×2,タケユタカ×1
(くっ、なんてつまんない手札なんだぜ)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,タケユタカ×1
(虎視眈々とはここまでよ)
紫:ハルウララ×1,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(分岐点ね)
アリス:ハルウララ×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
三食目、開始…!
「シマシマを溜めるぜ」
魔理沙、シマントのバサシを食す。2シマシマ…!
「ふふっ、バレバレよ、魔理沙」
「ふん、覚悟はしてたさ」
紫、ここで3シマシマを消費しタケユタカのバサシを食す。魔理沙に3バフン溜める…!
「これまた予想通りね」
アリスが食したのはハルウララのバサシ…!紫の攻撃を防ぐ。
「魔理沙、汚くなったわね」
霊夢、ハルウララのバサシを食す。またしてもガードっ…!!
「さて、ここまで来ると大方次の貴方達の一手…いえ、一食が見えてくるわね」
「私達の食べられるバサシは限られてくるからな」
そう、ここまで来ると次の一食は大体限られてくる。
シマシマの残っているジョッキーはアタック、無い者はガード。
このゲームの一周目は大体の場合、4ターン目に自分の戦略が完結するように作戦を立てることが基本だ。
それは最後に馬鹿力シャッフルがある所為である。まだ一周目であるため、今回は全員様子見で行くかに見えた。
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:2シマシマ3バフン 紫:0シマシマ2バフン アリス:4シマシマ2バフン
「四食目っ…」
(まぁ一択でしょう)
霊夢:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(待てよ…どうせ私はバフンが溜まってしまうんだ…それなら)
魔理沙:シマウマ×1,タケユタカ×1
(まぁ、ここでシマジロウのバサシを食べるほど私はパンダやりたくないわ)
紫:ハルウララ×1,シマジロウ×1
5ターン目にシマジロウのバサシを食べられる可能性があるが、この4ターン目に攻撃される可能性が高い以上、シマジロウのバサシを食べるのは相当危険である。
(最後にマキバオーを送りつける…痛快ね)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×1
アリスは定石どおり霊夢と魔理沙が攻撃、
タケユタカが全て使われた以上、最後に攻撃するものは居ないのでシャッフルでマキバオーを手にしたジョッキーは1バフン、発動しただけ損…そう読んだ。
四食目…。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食っ…!」」」」
「ふふっ、貴方達は攻めてくるのでしょう…?」
紫、ハルウララのバサシを食す…!ガード…!
「ふん、貴方は予想通りね」
アリス、4シマシマを消費したタケユタカのバサシを食す!強力無比の一撃…!
「おお、危ない危ない」
「…!」
霊夢、またしてもハルウララのバサシを食す…!アリスのタケユタカをガード…!
「私のカードはこれだぜ…!!(急な予定変更だったがな…!)」
「…最初から賭けに出たわね、魔理沙…!」
「魔理沙ばっちぃわねえ」
魔理沙、ここでシマウマのバサシを食す!!アリスのタケユタカ、直撃!4バフン!!!
魔理沙、合計7バフン…!
「最初から波乱の展開になってしまったわね…」
「やっぱりシマウマはこうでなくっちゃな!」
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:3シマシマ7バフン 紫:0シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
霊夢、圧倒的有利…!
そして残ったバサシは、タケユタカ×2,マキバオー×1,シマジロウ×1。
(ふーん、なかなかやるわね、霊夢…。このゲームの攻略法を自分なりに見つけたようね、それが合っているかは最後に分かるでしょうけど)
(…マキバオーのバサシが大当たりになってしまったわ…あの場面ではタケユタカのバサシしか選択肢は無かったのかしら…)
アリスは最初のバサシが良かっただけに、読みが外れたのは勿体無い。
ここでは最後のシャッフルでタケユタカのバサシを食べられるような立ち回りが最善だった…!
(さぁ、最後にタケユタカのバサシを食べられるかだな…!)
(まぁどのバサシが来ても大丈夫ね、ある程度)
シマシマを残した二人のジョッキーは勿論タケユタカのバサシが食べたい…!当然の心理…!
そしてシマウマは5食目へと突入する…!
「で、どうやってシャッフルするんだっけ?」
「こいつだ。『オグリキャップ』。コイツの口にバサシを入れてくれ」
魔理沙がちゃぶ台の中央にオグリキャップを置くと、4人のジョッキーがそれぞれ一枚、オグリキャップと呼ばれる馬の形をした合成樹脂製の何かの口の中に入れた。
すると爆音と共にすごい勢いでオグリキャップが回転し始めた。
「おーおー、よく回ってるな。紫の所の狐より回ってるんじゃないか?」
「私の藍も甘く見られたものですわね…藍はこの馬の1029倍の速さはあるわ」
心底どうでもいい会話が終わるのと同時にオグリキャップは霊夢の方を向いて動作を停止した。
「なんでこいつは吐きそうな顔をしてこっちを向いているのよ」
「きっとお前の顔があまりにも気持ちわr…痛いぜなにすんだよ」
霊夢はお祓い棒で魔理沙を思いっきり殴ってやった。
するとオグリキャップの顔がいきなりぱっと明るくなった。
「ウェーイウェーイwwwオグリギャルwwwww」
「うぇ、なにいってんのこいつ…わ、バサシを吐き出したわ」
続けて魔理沙、紫、アリスの目の前へとバサシを吐き出していく。
4人のジョッキーにバサシを配り終えたオグリキャップは魔理沙の手によって3次元帽子の中に入れられた。
「まだ見ちゃだめよ、霊夢」
「確認しないでいきなり実食するんだぜ」
「ふーん、分かったわ」
「さあ、始めようぜ…!」
残ったバサシは、タケユタカ×2,マキバオー×1,シマジロウ×1…!
タケユタカのバサシの食べたい魔理沙と霊夢、マキバオーのバサシが食べたい紫とアリス…!
五食目っ…!
「「「「セットバサシカードっ……!」」」」
(頼む、来てくれタケユタカ…!)
「「「「実食っ……!!!」」」」
「やったっ…!」
「…!」
魔理沙、なんという強運…!3シマシマを消費し見事タケユタカのバサシを食べることに成功っ…!
「ふーん、まぁ最低限ね」
霊夢、マキバオーのバサシ…!1バフンが溜まるが魔理沙の攻撃を防ぐ!
「あらあら、魔理沙の強運に乾杯といったところかしら」
「くっ、ついてないわね」
「ふふふ、紫、アリス、ばっちぃわねぇ」
紫、タケユタカのバサシ。アリス、シマジロウのバサシ。紫、アリス、魔理沙の攻撃により3バフン…!
一周目の総合バフン
霊夢:2バフン 魔理沙:7バフン 紫:5バフン アリス:5バフン
魔理沙、最後に一矢報いるが依然不利。霊夢、圧倒的有利…!
……
「なかなかやるわね、霊夢…」
「それでこそ私の好敵手だぜ」
「まぁ今回は配られたバサシが良かったわねぇ」
そう、今回は私はほとんど考えることも無く一週目を終わらせた。
魔理沙のような手札だった場合はどうなっていただろうか…。
「とりあえず休憩にしようぜ」
「そうね、久々にシマウマをやったら疲れたわ」
「そんなに涼しそうな顔で言われてもねぇ…」
どうやら休憩らしい。休憩時間を取ると私のおやつが減っていくのだけれど。
そんなことを考えてるうちに言わんこっちゃ無い、魔理沙が勝手に私の煎餅を台所から持ってきた。
「差し入れだ、感謝しろよ」
「あら気が利くわね」
「有難う魔理沙」
いや私に感謝しなさいよ。
「どうした霊夢。そんなにプンスカして。煎餅の気分じゃないなら羊羹もあるぜ」
あぁ、私のおやつが減っていく…。
しかし出されたものは仕方が無い。私もみんなと一緒にオヤツタイムにすることにした。
「ああ、それにしてもこのUMAXは素晴らしいわあ」
「ふふふ、そうだろうそうだろう」
…この良く分からないシマウマのどこがいいのだろうか。
私はこれの価値をそれとなく聞いてみようと思った。
「そんなもの何処で手に入れたの?」
「ああ、無縁塚の上を飛んでいたらたまたま見つけたんだ」
「無縁塚…確かにあそこでは何が起こるか分からないけど」
「それでな。拾ったときに香霖にみつかって何故か馬刺し1kgと交換を迫られたんだが、当たり前のように断ってやったぜ」
「え!?」
三人が「?」みたいな顔をしている。思わず声が出てしまった。
なんと…そんなに価値のあるものだったのか、少なくとも霖之助さんにとっては。
私はシマウマの目標をビリにならない事からTOPを狙うことにスイッチした。
「ん?今カチッて音が聞こえなかったか?」
そのスイッチじゃない。スウィッチ。
「…あら、お煎餅が最後の一枚だわ」
あの、私全然食べてないんだけど。
「これは…アレで食べる奴を決めるしかないな」
「アレね…魔理沙…激しい戦いになりそうね」
アレか。アレをやるというのか…!アレならば仕方あるまい…!
「行くぜ…私からで良いな…?」
「ええ…」
「異論は無いわ…」
「右に同じ」
「「「「せーのっ…!!」」」」
「「「「マリから始まるリズムに合わせてっ…!!」」」」
ドンチャッ
「ゆか2!」
ドンチャッ
「ゆかゆか!」
ドンチャッ
「アリ4!」
「アリアリアリアリ!」
ドンチャッ
「マリ3!」
ドン
「マリマリマリ!」
ドンチャッ
「れい1!」
ドンチャッ
「「「うーれい!」」」「れ…えっ?えっ?」
霊夢、痛恨のミス…!
「なによそのルール…はじめて知ったわよ?博麗神社ではそんなルール認めないわ」
「ははっ、霊夢遅れてるなあ」
「このルールって何時から始まったんだっけ?」
「結構早い段階からあったような気がするんだけど」
「…」
「…で?」
「…」
「…私食べて良い?」
「ええ、どうぞ…」
「さて…そろそろ二週目を始めようぜ」
「ゾクゾクするわぁ…」
遂に二週目が始まってしまうと言うのか。
魔理沙がバサシをシャッフルし始める。
現在の状況は…私がトップで2バフン、続いてアリスと紫が5バフン、魔理沙が7バフンね。
正直、余程バサシが悪くない限りこのまま私が勝ちそうなのだけれど。
「さァて…配り始めるぜ…!」
……
(少なくとも大敗はなさそうね)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×2,タケユタカ×1,シマジロウ×1
ガード系バサシ・ハルウララのバサシが2枚あるのが大きい。
(今日は厄日だぜ…この手札でタケユタカのバサシがないとはな…)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×2
チャージ系の三枚をいかに使うか。
(霊夢はいつも通りのすまし顔…魔法使い二人の表情は良くないわね)
紫:シマウマ×2,シマント×1,マキバオー×1,タケユタカ×1
紫の手札もあまり良いものとは思えなかったが…。
(3枚もタケユタカが来るなんて…)
アリス:シマント×1,マキバオー×1,タケユタカ×3
ひどい。
「さて、まずは一食目だ…」
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
霊夢:シマウマ 魔理沙:シマンチュ 紫:シマント アリス:シマント
「あら霊夢…毎度貧しいわね」
「うっさいわねー」
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:3シマシマ0バフン 紫:2シマシマ0バフン アリス:2シマシマ0バフン
「二食目ね」
(うーん…今回は3枚もガード系バサシが無いのよねえ)
霊夢:ハルウララ×2,タケユタカ×1,シマジロウ×1
(まぁ…今回も最後に賭けるか…!)
魔理沙:シマウマ×1,シマント×1,ハルウララ×2
5ターン目に運よくアタック系バサシが来ることを願うしかない。
(霊夢は置いておいて、魔法使い二人は悪くなさそうに見えるのだけど…このターンで分かるわね、少なくとも片方は)
紫:シマウマ×2,マキバオー×1,タケユタカ×1
(うーん、さっきの魔理沙みたいねえ)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×3
二食目…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
(二食目は攻撃が通りやすい…どうせチャージできないのだからここで食べるわ)
霊夢、二食目にしてタケユタカのバサシを食す…!1シマシマを消費…!
(どんな手札かばれてしまいそうではあるけれども)
アリスも2シマシマを消費しタケユタカのバサシ…!霊夢から1バフン受けるが、霊夢に2バフン!
「くっ、ちまちま攻めてきやがるなあ」
魔理沙、シマントのバサシ!2シマシマ溜めて合計5シマシマ…しかし二人の攻撃を直撃し、3バフン!
「あらあら魔理沙、無用心ねえ…」
紫、マキバオーのバサシを食す。1シマシマと1バフンを溜め、ガード!合計3シマシマ…!
(ふふっ、アリスはさっきの魔理沙みたいな感じね。魔理沙は一見調子良さそうだけれど…)
魔理沙、早くも5シマシマ。この5シマシマを使うことが出来れば魔理沙にも勝機があるのだが…。
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:3シマシマ1バフン アリス:0シマシマ1バフン
「三食目ね…」
(魔理沙が危険ね。次にでも打ってきそうだわ…)
霊夢:ハルウララ×2,シマジロウ×1
(このターンは紫のみ警戒ではあるが…一つ作戦はある)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×2
(ここで全員の手札が分かりそうね)
紫:シマウマ×2,タケユタカ×1
(もうタケユタカのバサシは2枚食べられてしまったから、私のを引いてあと1枚…魔理沙と紫のどちらかが持っていたら危険ね。いつマキバオーのバサシを食べれば…!)
アリス:マキバオー×1,タケユタカ×2
アリス、苦しい手札…!
三食目が始まろうとしている…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
「あら…魔理沙、じらすわね」
アリス、マキバオーのバサシを食す。1シマシマと1バフンが溜まる。合計2バフン…!
「魔理沙、撃ってこないの?動いたら撃つのかしら」
霊夢、ハルウララのバサシを食す。
「撃ってこないと言うよりは撃てないんじゃないかしら…?」
紫、ここでシマウマのバサシを食す!合計4シマシマ…!
「うっせぇやい…タイミングってものがあるんだぜ」
魔理沙、ハルウララのバサシ…!
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:4シマシマ1バフン アリス:1シマシマ2バフン
このやりとりで、紫が圧倒的に得している…かに見えた…!
「四食目…今回は穏やかね」
「このまま何も起きないで欲しいのだけれど」
(全体での残りのタケユタカのバサシは3枚。アリスはどうでもいいとして、紫か魔理沙はここで十中八九撃ってくるわ)
霊夢:ハルウララ×1,シマジロウ×1
そう、霊夢の手札からはそう見えざるを得なかった…。
(紫には気づかれちまったか…?まぁいい、私の作戦は成ったようだ)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×1
(私の読みだと…)
紫:シマウマ×1,タケユタカ×1
(これはひどい)
アリス:タケユタカ×2
四食目…!
「「「「セットバサシカード…」」」」
「「「「実食!」」」」
ここで霊夢は初めて危険に気づく…!
「え?え?魔理沙も紫も撃って来ないの…?」
霊夢、ハルウララのバサシを食す!
「くくっ、これでガード系バサシは全て無くなったぜ…!」
魔理沙、同じくハルウララのバサシ…!
「あらあら…霊夢、あなたはまだ理解していないようね」
紫、シマウマのバサシを食す…合計5シマシマ!
「あら、私は助かってしまったわね」
アリス、タケユタカのバサシ。紫のみに1バフン…!
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:5シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
霊夢がハルウララを使うのも無理は無い…何しろ先程の状態で魔理沙と紫の直撃を受けると、9バフン。これは負けである。
しかし紫と魔理沙はそれぞれの思惑で霊夢の予想の上を行った。
結局はここで霊夢はシマジロウを不発させるのが正解ではあった。五食目を安全にするために。
紫は魔理沙がアタック系バサシを持っていないことに賭けた…!
魔理沙が手札を配られて最初に見せた表情は、一周目の戦いを見る限り正直だ。
一見シマンチュとシマントがあって調子が良さそうに見えるにも関わらず表情が良くないと言うことは、攻撃手段がないと言うこと。
正直ここは紫らしくは無い、計算に基づいていない賭けではあった。あまりにも魔理沙が真っ直ぐだったので、思わず最初に見た表情を信じてしまったのだろう。
そこでアリスか霊夢がガードすることが濃厚な四食目より、ガードが使い切られるであろう五食目に賭けることにした。
これで実は全て魔理沙の思惑だった、みたいな事になっては人間不信になってしまう所だったので内心紫はほっとしていた。
魔理沙は、霊夢には持ち前の幸運があると分かっていた。
彼女はきっと理想の手札に近いものを毎回持ってくるだろう…と。
それは初戦を見る限り、ガード系バサシで固めた手札。
霊夢の強靭な守りを崩すには、5食目、霊夢がガード系バサシを引かないことに賭けるしかない。つまり狙いはガード系バサシを5食目までに使い切ること。
今回、自分にガード系が二枚来た。全体で6枚あるので、残る未確定のガード系は四枚。
さらに、二食目に紫がマキバオーを食したことにより、残り三枚。
さらにさらに、二食目の霊夢の行動は、1シマシマを消費でタケユタカというあまりにも消極的な行動。
これでは残りの手札でガードしますよと言っているようなものだ。
そして三食目、アリスと霊夢がガード系を使う。残り一枚。
これは嬉しい計画通り。魔理沙の持っている分を引いた残る一枚のガード系は、おそらくは霊夢が持っているだろう。
四食目、霊夢は魔理沙と紫を警戒して絶対にハルウララを使ってくる。そして魔理沙が手持ちのガード系を使ってしまえば…五食目にガード系は無くなる。
一番恐ろしかったのは最後にアタック系が無くなるのではないかということ。しかし実はこれはなかった。
四食目開始時、使われてないアタック系は四枚。そして魔理沙は唯一、アタック系を持っていなかった。
つまり他の三人が四食目に一斉に使ったとしても、五食目には一枚余る。
それでも最後に引ける可能性は低いけれども。結局は賭けである。
そんな訳で幻想郷の住人は適当であった。
…さあ、五食目が始まる…!
「さて、馬鹿力シャッフルだ」
「私はあいつ苦手なんだけど」
魔理沙が一周目と同じようにちゃぶ台の中央にオグリキャップを置くと、4人のジョッキーがそれぞれ一枚、オグリキャップの口の中にバサシを入れる。
またもや轟音と共にすごい勢いでオグリキャップが回転し始めた。
「どうにかならないの?これ正直うるさいんだけど」
するとまたもやオグリキャップは吐きそうな顔をして霊夢の方を向いて動作を停止した。
「なんなのよこれ…私何か悪いことでもした?」
「きっとお前の顔があまりにもきm…痛いぜ」
霊夢はお祓い棒で魔理沙を思いっきり殴ってやった。
するとオグリキャップの顔がいきなりぱっと明るくなった。
「ウェーイウェーイwwwwニワカハカエレwwwww」
「あんたが帰りなさいよ…うぇ、またバサシを吐き出したわ」
続けて魔理沙、紫、アリスの目の前へとバサシを吐き出していく。
「さあ…何が飛び出してくるかな」
オグリキャップの中のカードと4人のステータスは以下のとおりである。
シマジロウ×1,シマウマ×1,タケユタカ×2
霊夢:0シマシマ2バフン 魔理沙:5シマシマ3バフン 紫:5シマシマ2バフン アリス:0シマシマ2バフン
魔理沙と紫は攻めるため、アリスと霊夢は攻められないため、タケユタカとシマジロウのバサシを狙う…!
「運命の五食目だ…!」
「「「「セットバサシカード…!!」」」」
「「「「実食っ…!!!」」」」
「やったっ…!!!!!」
魔理沙、ここでまた強運を発揮…!引いたバサシは、シマジロウ…シマジロウのバサシを食す!!
「くっ…」「やられたわ…最悪は逃れたけど」
霊夢、アリス、ここでタケユタカのバサシを食す…魔理沙によって6バフンが溜まる…!
「なんということ…」
紫、不運にも引いたバサシはシマウマ…!5シマシマを残し、無念の6バフン、溜まる…!
「なんとか5シマシマ溜めたのだけれど…ついてないわぁ」
「ふふん、日ごろの行いが悪いからだぜ」
「そのネタにはもう突っ込まないわ…」
(まさか私のミスで魔理沙と同率になってしまうなんて…!あの時にシマジロウのバサシを消費しておけば…!)
この一戦は霊夢の考えに少なからず影響を与えたようである。
霊夢:0シマシマ8バフン 魔理沙:0シマシマ3バフン 紫:5シマシマ8バフン アリス:0シマシマ8バフン
二周目までの総合バフン
霊夢:10バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
魔理沙、健闘…!
霊夢と魔理沙がトップに並び、紫とアリスが3バフンビハインドのまま三周目に突入する…!
……
「休憩だ」
「そう」
休憩らしい。
「この神社は客に煎餅の一つも出せないのか?」
さっき出したじゃない…。
「あれは私が出してきたんだ。だから私の出した煎餅だ」
「そうよ、霊夢。さっさと持って来なさいな」
「貴方ならまだ沢山持っているでしょう?来るたびにいつも出してくれるんだもの」
ここぞとばかりに好き勝手言ってくる。切れたほうがいいかな。
「どうした霊夢、プンスカして」
「そりゃあプンスカもするわよ…大体あんたらはいつも土産の一つもよこしはしない」
「実は土産はあるぜ」
え!?早くそれを言って頂戴よ。
「しかしタダであげるのは面白くない。ここはアレで勝負しようぜ。アレで勝った方が土産、もしくは煎餅を手に入れる」
「アレね、魔理沙…私達の分まで頑張ってちょうだい…」
アレで勝負しようと言うのか…ふふっ、面白い…。
「いくぜ、霊夢…!」
「ええ、いつでも来なさい…!」
「「グーチョキパーで…!グーチョキバーで…!!何作ろう…!何作ろう…!!」」
軽快なリズムとは裏腹に顔はマジである。
「右手はパーで…!」「右手はパーで…!」
一戦目、引き分け…!
「左手はグーで…!」「左手もパーで…!」
「八方鬼b」「マスタースパーク!!!」
「きゃああぁぁぁっ!!!!」
負けた。
「はっはっはー霊夢ざまねえなー」
「勝手にお煎餅もらっておくわねー」
お前らはジャ○アンとス○夫か。
「あらあら、霊夢、あられもない姿になってしまって…」
なってないなってない。
「さてと、神社の食糧も尽きたことだし、三周目を始めようとするかね…!」
悪魔め…。
悪魔理沙がバサシをシャッフルする。
「これが最終戦…感慨深いわぁ」
そう、これで誰がリアル馬刺し…もとい、UMAXを手に入れるかが決まる。
魔理沙がバサシを配り始めた。
「さーて、最後にどんなバサシを引いたかね…!」
皆が手札を確認する。それを見て私も手札を確認し始める。緊張の一瞬である…。
その時、魔理沙がいきなり笑い出した。
「ははっ、みんな、これを見てくれ」
「これは…」
「よーし行くぜ!せーの、」
「「「パラパッパッパラ、パーラダイスー!!!」」」
「え?え?」
ああ、もうこういうわけの分からないのには付き合わないことにしよう…。
「おい霊夢、配りなおしだぜ」
「…あー、あったわねそんなルール」
渋々私は手札を魔理沙に返す。
パラッパラッパー魔理沙がバサシをシャッフルする。
「まさかパラパッパッパラパラダイスが起こるとはね」
もっと短い名前に出来なかったのだろうか。
「ああ、私も驚いているぜ」
魔理沙はそう言いながら、最後の手札を配り始めた…。
私はゆっくりと自分のバサシを確認する。今度こそ緊張の一瞬である…。
ハルウララ…マキバオー…シマウマ……マキバオー…!なかなかね…ん?
霊夢が最後に確認したバサシは、シマジロウであった…!!
二周目までの総合バフン
霊夢:10バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
……
(シマジロウのバサシ…)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×2,シマジロウ×1
(くくく、今日は私には苦しい勝ち方しか出来ないようになってるな…)
魔理沙:シマウマ×2,ハルウララ×1,タケユタカ×2
(この試合…きっと全員が同じ事を考えて動くわ…)
紫:シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×2
(そう…皆が五食目、最高の状態になるように動くわね…!)
アリス:シマント×2,シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
「さあ、長かった一日ももうすぐ終わるぜ…!」
一食目…!
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「…こういう感じになるとは思ったけど…あまりにも予想通りね…」
アリス、定石どおりシマントのバサシを食す。2シマシマ。
「さあ、もうどんな手札かが分かっちまうかねぇ…?」
「ふふ、どうかしら」
紫、魔理沙、なんと共にタケユタカのバサシ…不発っ…!不発っ……!!
(一食目から…。これが意味するものは…)
霊夢、シマジロウのバサシ…これまた不発っ…!はたまた…不発っ……!!!
「あら…霊夢、反省したわね?」
そう、二周目の戦いもこうすれば勝っていたのだ。もともと攻めっ気のない霊夢のスタイルでは、アタック系を残すことこそ愚か…!
一食目にはチャージ系を使う必要すらない…。
そして霊夢は考えた。紫と魔理沙の意味不明のバサシの意味を…!
紫は、3バフンビハインド…これは相当大きい。きっと馬鹿力シャッフルに勝負を賭けてくる。つまり、最後までタケユタカを使うことはない…!
魔理沙は、霊夢と同率。こちらは、霊夢と同じ、いわば穏健派…!馬鹿力シャッフルにはガード系を突っ込むだろう。
ここまでの霊夢の読みは大体当たっていた…!
霊夢:0シマシマ0バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:0シマシマ0バフン アリス:2シマシマ0バフン
「二食目ね…」
(さっきの読みどおりなら、悩む必要も無いわ…あれ?)
霊夢:シマウマ×1,ハルウララ×1,マキバオー×2
ここで霊夢は気づいた。マキバオーのバサシ…!
(まずい、私と魔理沙が完全に攻撃を防げたとして…最後にマキバオーのバサシの1バフンが仇になりえる…。
まぁもうこれは仕方ないのだけれど)
(さーて…今のところ私にはどうすることも出来なさそうだな…)
魔理沙:シマウマ×2,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(魔理沙は四食目までに仕掛けてくるわ…必ず)
紫:シマント×1,シマンチュ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(これはどうするか、分かりきっているわね)
アリス:シマント×1,シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
二食目…!
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「安全なんだもの…これしか無いわよね」
霊夢、シマウマのバサシを食す。1シマシマ。
「ああ、同感だぜ」
魔理沙、シマウマのバサシを食す。1シマシマ。
「ふふっ、余裕ねえ」
紫、シマンチュのバサシを食す。3シマシマ。
「…まあ、こうなるでしょうね」
アリス、シマントのバサシを食す。合計4シマシマ。
…アリスがここでタケユタカのバサシを使えば、高い確率で三人にバフンを溜められるだろう。
が、それまで。
霊夢と魔理沙に、現状の2シマシマで攻撃するだけでは追いつけない。やはり最後に賭けるしかない。
霊夢:1シマシマ0バフン 魔理沙:1シマシマ0バフン 紫:3シマシマ0バフン アリス:4シマシマ0バフン
「三食目だ…!」
(うーん、今回はもう悩む必要は無いわね)
霊夢:ハルウララ×1,マキバオー×2
(本来は悩む場面だが…)
魔理沙:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(今回も、霊夢にガード系が偏っているのは間違いないわ)
紫:シマント×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
(それを崩すには三人の結託が必要…!)
アリス:シマウマ×1,ハルウララ×1,タケユタカ×1
三食目…。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「ふふっ、みんな同じことを考えているわね」
紫、シマントのバサシ。合計5シマシマ…!
(紫がシマジロウを持っていたら終わっていたわ…)
アリス、シマウマのバサシ。これまた合計5シマシマ…!
「あー、私にも霊夢の貧乏がうつってしまったぜ」
魔理沙、シマウマのバサシ。合計2シマシマ…!
「ふん、みなさん仲のよろしいこと」
霊夢、マキバオーのバサシ。1シマシマと1バフンが溜まる…!
魔理沙はハルウララを五食目まで温存しておくつもりである。
なぜなら、魔理沙を狙って、万が一アリスと紫が同時に攻撃してきた場合、アリスは紫の、紫はアリスの攻撃を受けてしまう。
こうなってしまっては、おそらくガード系で固まっている霊夢を抜くことは、アリスと紫には不可能となってしまうだろう…。
なので魔理沙はハルウララを使う必要など無かった…!
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:2シマシマ0バフン 紫:5シマシマ0バフン アリス:5シマシマ0バフン
四食目…!
「心なしか進むペースが速いわね」
「きっと気のせいよ。焦っているんじゃないの?」
「そ、そんなことないわよ」
(しゃべることがないわ)
霊夢:ハルウララ×1,マキバオー×1
(ここで使うのは、もちろん…)
魔理沙:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(ガード系を五食目に残すのは点数的に不利な私達のすることではない)
紫:ハルウララ×1,タケユタカ×1
(同上)
アリス:ハルウララ×1,タケユタカ×1
四食目。
「「「「セットバサシカード…!」」」」
「「「「実食…!」」」」
「ほーら、ガードするんだろう?」
魔理沙、2シマシマを消費し、タケユタカを食す…!
「当然ね」
「当然よね」
「上に同じ」
霊夢、紫、アリス、ハルウララのバサシを食す…!魔理沙の攻撃をガード!
霊夢:2シマシマ1バフン 魔理沙:0シマシマ0バフン 紫:5シマシマ0バフン アリス:5シマシマ0バフン
ここで残ったバサシは、タケユタカ×2,ハルウララ×1,マキバオー×1。
総合バフンは、霊夢:11バフン 魔理沙:10バフン 紫:13バフン アリス:13バフン
幸か不幸か八百長か。これは全員に勝ち目がある。
まずは魔理沙。ハルウララもしくはマキバオーを手にした瞬間、勝利…!
次に霊夢。ハルウララを手にした場合、無条件勝利…!マキバオーを手にした場合、魔理沙以外がハルウララを所持していなければならない。
さらにタケユタカを魔理沙と共に食した場合も勝利となる…!
最後に紫とアリス。どちらかがマキバオー、どちらかがハルウララを手にした場合でなくては、二人に勝利はない…!厳しい…!
「あぁ…余興は終わりだぜ…!」
「えぇ、ここで人生の勝利者が決まるのね…」
「結局運g」
「霊夢、そういうことを言ってしまっては興が削がれてしまうわ」
さあ、魔理沙がオグリキャップをちゃぶ台の上に乗せた…!
……
私が勝つ確率は相当高い。ふん、最後には巫女が勝つものなのよ…。
この勝負に勝ったら、UMAXを霖之助さんの馬刺しと交換するんだ…。
「さて、みんなバサシを入れてくれ」
4人のジョッキーがバサシをオグリキャップの口の中に入れると以下略。
「…」
「なんで今叩いたんだよ霊夢…」
するとオグリキャップは『キリッ』という効果音が付きそうな顔をした。
「俺に賭けな…」
「あれ、今何かカッコいいこと言ったわよこの馬」
オグリキャップの口から運命のバサシが吐き出される…!
「ああぁ…緊張するぜぇ…」
4人がちゃぶ台の中央にバサシをセットする…。
この瞬間のために今日は頑張ってきたのね。
きっと今日の夜は馬刺しを囲んでみんなで…。
「五食目だぜ…!!!」
「「「「セットバサシカードっ…!!!」」」」
「「「「実食っ…!!!!!」」」」
「やったっ……!!!!!」
魔理沙、ハルウララのバサシを、食す、食す、食すっ…!!!!魔理沙、優勝っ……!!!!
「あーあ、やられたわ…」
紫、マキバオーのバサシ…。
「UMAX欲しかったわ…」
アリス、タケユタカのバサシ…。
「全くだわ…今までのは何だったのかしら」
霊夢、タケユタカのバサシ…。
……
「はっはっはー、UMAXは私のものだぜー」
「まぁ勝負だし仕方ないわね…」
「次に勝負するときは絶対にいただくからね!」
ふぅ…今日は散々だった。神社の食糧をごっそり減らされた上に、馬刺しすら手に入らなかったのである。
さーて、そろそろ夕飯時ね…。
「ほらほら、夕飯までご馳走する義理はないわよ?さっさと帰った帰った」
「「「えっ?」」」
いや、えっ?じゃないでしょ。
むしろあんだけ食べたのにまだ食べるつもり?
「さっき言っただろ?土産だ、土産。そろそろ来るはずなんだが…」
そういって魔理沙は鳥居の方に向かって行った。
私たちも魔理沙に続く。そこには夏には嬉しい二人の姿が。
「あらあら、紫までいるのね」
「あら、幽々子に妖夢じゃない。何、土産って冥土の土産?」
「こ、これですよ。ここまで運んでくるの大変だったんですからね」
妖夢があまり目にしない白い箱(?)を置いた。
空けてみると…そこには馬刺しのブロックが沢山入っていた…!
「ど、どうしたのよこれ…?」
「なんか幽々子様が町で見かけた男性を脅したらくれたんですって」
「人聞きが悪いわね、妖夢。ちょっと美味しそうだったから分けてちょうだいって言っただけよ」
町は馬刺しブームなのだろうか。一人だけ馬刺しを持っている人物は思い当たるのだが。
「んで、魔理沙はなんでこの事を知っていたの?」
「香霖から聞いた。あいつ、奪われたみたいだな」
「え、さっき魔理沙はUMAXと交換を迫られたって…」
「そうでも言わないとお前は本気を出してくれないだろ?」
余計なお世話だ…。この事を知っていたら適当にやってたのに。
…あれ、適当にやってよかったんだっけ?何か忘れているような…。
「忘れるようなことはきっとどうでもいいことなのよ」
「幽々子はもうちょっと物覚えを良くして欲しいものだけれどもね」
まぁ、それはともかく。
「ってことで、今日はみんなを誘って宴会やろうぜ!」
「ええ、こんなに沢山の馬刺し食べきれないしね(さっき沢山おやつ食べたし)」
そうして、博麗神社でのもう何度目か分からない宴会が始まった。
幻想郷には珍しい馬刺しが振舞われると聞いて、種族問わず様々な者が集まった。
「馬刺し…前に食べたのはいつだったかしら」
「あぁ、肉なんて食べることはあまりないからな。兎や鳥の肉くらいで」
鈴仙が少し反応した。流石に耳の良い奴だ。
大丈夫、兎鍋は出さないから。今日のところは。
「あぁ、霊夢見ろよこの霜降り…なんて良い馬刺しなんだ」
「えぇ…口の中でとろけるようだわ」
妖夢特製のタレをつけて食べる馬刺しは絶品だった…。
「そういえば、霊夢」
「何?」
「これを見てくれ」
霊夢:16バフン 魔理沙:10バフン 紫:14バフン アリス:15バフン
「そ、それがどうかした?」
「ってことで霊夢、パンダ」
「あっ」
す、すっかり忘れていた…。
「ああ、そうだ。折角だからこいつも連れてきた」
「ひいいぃっ!!!」
魔理沙の四次元帽子から現れたのは、黒と白の死神…!P野郎っ…!
宴会に来た魑魅魍魎、有象無象もざわめき始める…。
P野郎はつまらないパンダを見るとそのパンダをやった人を一週間、パンダに変えてしまう恐ろしいパンダのぬいぐるみパンダ。
へ?『パンダをやる』って何かって?パンダはパンダよ。最初の方に説明したでしょ?え?もう忘れた?
仕方ないわね…。
『パンダとは外の世界のちょっとした一発芸だ。
この一発芸にはちょっとしたルールがある。一回部屋の外に出て、ネタを考える。このときドアを閉めるのを忘れてはいけない。
そしてネタを考え終えたら部屋の中にいきなり入って、披露する。』
コピペ。
「さあ霊夢、こいつの前からは逃げられないぜぇ…?」
「霊夢、この前のリベンジよ」
「あれは傑作だったね~」
紫と萃香がちょっかいをかけてくる。
くっ、よりによって宴会でパンダをやらなければならないなんて…。
「あーあーキコエナーイ…っていうかそれ処分したって言ってたでしょ」
「私が同じ色の同志を処分するとでも思ったか?みろ、この愛くるしい顔を」
「おーかわいいかわいい。そんじゃあね」
バイバーイ。
「おう、またな!…ってそんなのに騙される私ではなーいw」
うぜえ!
「さぁ霊夢、パンダ。はやくやらないと大変なことになるぜぇ~?」
P野郎がこっちを睨みつけてきた。あぁ、これがP野郎の呪いの合図なんだろう。
もうやるしかないのか…。私は宴会会場からは見えなくなる、いつもの縁側に来た。
魔理沙曰く、ドアとかが無くても、とりあえず見えないところからいきなり現れればパンダをやってることにになるらしい。
(行ってらっしゃい、霊夢~)
(期待してるわー)
はぁ…。
「おや、霊夢さんじゃあありませんか。宴会中に一人でこんなところに突っ立って、めずらしいですねえ」
こいつは私のパンダを狙ってるんじゃないの?宴会には来ていなかったというのに。
「文…実は私ね…ここに突っ立っているのが日常なの」
「ふむふむ、それは興味深いですね…詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
「直接口に出すのはちょっと…理由は早苗あたりが知っているから聞いてきなさい」
宴会に来ていない遠めな奴にしておいた。
「ほう、そんなに深刻な悩みなのですね…では、早速行ってきます、最速で」
そう言うと文は文字通り目にも止まらぬスピードで恐らく山の方向へと飛んでいった。
くっくっく、計画通り…!
(おーい、誰か居るのかー?)
(霊夢のパンダの邪魔になったら悪いからこっち来なさい、馬刺しはもう無くなってしまったけど)
「誰も居ないわよ~?」
ふっ、前回の私とは違うのさ…。っていうかこんな下らない事している間に私の馬刺しが無くなってしまったのか…。
「誰が居ないんですか?ちなみに早苗さんは何も知らないと仰っていましたが」
「えっ」
ちっ、こいつの速さをなめたらいけなかったか…!
(やっぱり誰かいるんじゃない)
(こっち来いよー、霊夢がパンダをやるぜー)
チィィィッ!!
「お?まさか今は霊夢さんがまさにパンダをやろうという所だったのですか?
いやあ何て良い所に出くわしたのでしょう……今そっち行きますねー!」
「ちょ待っ…」
天狗は一瞬にして目の前から姿を消した。そんな速さで宴会会場に突っ込んで大丈夫なの?
(おーい霊夢、あと30秒以内にパンダやらなかったらパンダになってしまうぞー)
あぁ、またもやパパラッチのおかげで時間が少なくなってしまった…。
ここは連想ゲームで面白い事を考えて乗り切るしかない。
(20秒~)
パンダ。面白いパンダ…それは野生のパンダ。
野生…発狂したパンダ。発狂。狂気。兎。うぎぎ。
(残り10秒だ)
うぎぎ。うなぎ。うなぎのぼり。
こいのぼり。こい。恋。魔理沙。白黒。パンダ。あ、戻った。
(5、4、3、2…)
「ああもう行くしかない!」
悩みぬいた末に、私、楽園の素敵な巫女・博麗霊夢のとった行動はこれだった。
「パンダパンダうぇーい!!パンダパンダうぇーい!!!」
それから一週間の間、霊夢パンダを一目見ようと神社には絶え間なく行列ができるのであった。
めでたしめでたし。
前回に引き続き、これはツボったw
だれかパンダ霊夢を(ry