夏、とある日、博麗神社の縁側、
その神社の巫女である博麗霊夢は、お茶を飲みながら考え事をしていた。
今飲んでいるお茶は出がらしも出がらし、味もロクになく、白湯の様な物である。
では、何故そんなものを飲んでいるのか、
茶葉がないからだ、
では、何故茶葉が無いのか、
お賽銭が無いからだ、
では、なぜお賽銭が無いのか、
「参拝客が…ちっとも来ないからよ!」
ついに霊夢は立ち上がり叫ぶ、
「そろそろなんとかしないと、いい加減不味いわ…!」
そう、もう神社には茶葉どころか食料すらロクに残っていない、せいぜいあるとしたら貰
いものの素麺くらいか、そしてその素麺も、ここ一週間ほど連続なので、いい加減飽い
た。
しかし、
「どうにかと言っても…どうしようかしら…」
縁側をウロウロしながら一人熟考する、傍から見ればどう見ても挙動不審だがどうせ
人は来ないから気にしない。
霊夢はとりあえず居間に入り、棚から素敵な賽銭箱の鍵を取り出す。そのまま賽銭箱
まで行き、鍵を使って、賽銭箱の中身を確認する。賽銭は無い、代わりに虫が出て来
た、躊躇いなく叩き潰す。
ため息をつきながら鍵を閉め、再び今の棚に鍵を収納している時だった。
霊夢の目に、日めくり式のカレンダーが飛び込んできた。本日、7月20日。
「そうか…フフ、フフフ」
傍から見れば怪しい事この上ない微笑みを漏らし、霊夢は気付く。
「そう、そうよ!来月は…」
霊夢は既に一つの事に囚われていた、それは、来月半ばの盂蘭盆会、つまり、
「お盆よ!」
こうして、霊夢の生活を掛けた、博麗神社のお盆は始まった…
『博麗神社のお盆で大商戦!!』
「さて…」
(お盆でひと儲けを狙うとして、なにをしようかしらね…)
お茶を淹れなおしながら、霊夢はそんな事を考えていた。
正直お盆と言ってもやることはそんなにない、こちらから何かするとしたら盆踊りの準
備くらいか、
そう言えば、
(他の所は何かするのかしらね…)
だがいくら考えても解らない、これは後でそれとなく聞きに行くことにして、再びひと儲
けの為、思考に埋没する。
とりあえず、盆踊りを開催して、それに合わせて客を呼ぶ、あとはいつも通り、お賽銭や
お守りなどで収入を図るのが、まぁ無難な方針か。
そう、結論を出した霊夢はお茶を一気に飲み干し、先ずは守矢神社へと向かう事にし
た。
「え?お盆、ですか?」
守矢神社の境内を掃除していた巫女、東風谷早苗を捕まえた霊夢は、ただで、出がら
しではないお茶を飲みながら、お盆の事について尋ねてみた。
(早苗なら何かやろうとしているはず、だったらそれを参考にしてやろう)
「う~ん、ウチはこんな場所にありますし、妖怪の皆さんはご先祖を偲ぶ事などなされま
せんし、なにもしないんじゃないですかねぇ…」
(参考にならないなこの巫女は!)
しかし、これでとりあえずライバルが一つ減ったと思うべきか、その点では僥倖だろう。
もう聞くべきことはない、が、
(お茶が美味しい!しばらく無駄話でもしながら楽しみましょう。)
そんな外道な事を考えながら、霊夢はひたすら無心にお茶を飲み続ける。早苗の話は
右から左へ、返事は全て生返事でOK
そのまま数時間どうでもいい事を話し込んでいたが、日が傾きかけていたのでそろそ
ろお暇することにした。すると、
「あ、霊夢さん、よかったらお魚持って行きませんか?河童の方から貰い過ぎてしまい
まして…」
勿論、遠慮なく貰う、これで今日は天麩羅素麺だわ!
お茶と、魚の事に礼を言って、霊夢は今度こそ博麗神社に戻ることにした。
戻った後、直ぐに貰った魚を天麩羅にして素麺と一緒に食べた。久しぶりの充実した夕
餉だったが、素麺じゃなく白米だったらどれほど良かった事か。
お盆の計画を成功させることを固く誓った霊夢は、夕食の片づけをした後、お守りの制
作作業に取り掛かる事にした。
そして、作業を開始してから一時間ほどした頃、
「お邪魔するぜ~」
そんな声と共に、友人である魔法使い、霧雨魔理沙がやってきた。が、私の方を見ると
、
「な、正月前でもないのに霊夢が仕事だと…?明日は雪でも降るか…?」
「降らないわよっ!!私が仕事しちゃいけないっていうの!?」
「冗談冗談、でもホントにどうしたんだ?いきなり仕事なんて…」
「最近生活がピンチでね、お盆で何かしようと思っただけよ」
そう霊夢が言うと、魔理沙は考え込むようなしぐさをした後、一言「邪魔したな」とだけ言
って博麗神社を後にした。
それを見ていた霊夢が一人ごちる、
「何よ…あんたが神社に来てこんなに早く帰るのだって中々無いじゃない…」
気を取り直して作業に戻る霊夢だったが、先ほどまで魔理沙がいた位置に、未開封の
一升瓶が置きっぱなしになっている事に気がついた。
「これは、魔理沙が次来た時にでもあけましょうか」
そう決めると、一升瓶をしまうために、台所へと向かった。
翌日、霊夢は人里近くにできたお寺、命蓮寺を訪れていた。
目的は勿論昨日の守矢神社と一緒でおty…じゃなくてお盆の件について聞き込みだ。
客間に通され、美味しいお茶に舌鼓を打ちながら尋ねると、興味深い答えが返ってき
た。
「お盆…そうですね、こちらでは特に何か企画しているわけではないですが、人里で盆
踊りがあるそうですよ」
命蓮寺で企画が無いのは一安心だったが、人里でそのような企画があるのは予想外
だった。
これは、何か手を打っておくべきだろうか…
そう思った霊夢は美味しいお茶に袖を引かれつつも、早々に命蓮寺を後にすることにし
た。
「確かに、そのような企画が立っているな」
命蓮寺から人里へと出て来た霊夢は、人里の事に詳しい、上白沢慧音を捕まえて話を
聞いていた。
やはり人里で盆踊りが開かれるという話は確かなようだ。
「で、それがどうかしたのか?」
「いやね、家も盆に合わせて何かやろうと思ってたから周りにも聞いてみてるのよ」
「成程、だがこちらの企画も既に決まった事だしな、中止にはできないぞ?」
と、彼女はそこで一息つき、
「いや、そもそも博麗神社では中々人は行けないしな、妖怪相手の盆踊りでも開催す
るか?」
それだと身入りがない、話にならない、私は慈善事業でやるのではなく、あくまでひと
儲けの為に企画しているのだ。
霊夢は慧音に一言「ありがと」とお礼を言って、神社へと帰る事にした。
結局神社に帰っても具体的な案は出ず、霊夢はそのまま、お盆の期間を迎えた。
そして盆踊りが開催される8月16日、夕方、博麗神社の境内で彼女は途方に暮れて
いた。
「中々、上手くいかないもんね」
そう一人ごちて、彼女は境内の掃除を再開した。
境内はいつも掃除をしているので、今更掃除する必要もないのだが、だからと言って他
にすることもない。
「はぁ…」
さっきから口を突いて出てくるのはため息だけだ、今頃人里では楽しく盆踊りが開催さ
れている頃だろうか…
と、そんな時だった、
「なんだ?元気ないな」
頭上、夕陽を背に箒に跨って飛んでいるのは魔法使い、霧雨魔理沙だ。
が、彼女の後ろには珍しい人物が乗っている。
「萃香と、勇儀?」
「聞いたよ霊夢、盆踊りやるんだって?」
「盆踊りにゃ、櫓がいるだろう?あたしたちはその建築要員ってやつさね」
勝手なことを言ってくれる、どうせ、どうせ、
「どうせ、やったって人は来ないじゃない、だからもう、いいわよ」
霊夢がそう言うと魔理沙は静かな顔で、しかし音が聞こえるほどの挙動で
霊夢を指さし、言い放つ。
「霊夢、お前には商才が無い!!」
「なっ!!!!!」
いきなり衝撃の事実を告げられてくず折れる霊夢、かなりダメージを受けたようで若干
涙目になって魔理沙を見ている。
同じように魔理沙も涙目+上目遣いのコンボでダメージ!鼻血をボタボタ垂らしている
。
その様子に鬼2人も、
(駄目だこいつら!!)
そう思わずにはいられない。
そして、魔理沙の膝がガクガク言い始めた時、
「いい加減にしろ!!!」
魔理沙の後ろ上空から飛び膝蹴りが飛んできた、
それを放った人物は、
「アリス…?」
そんな霊夢の視線を受けても微動だにしないアリス、
(ようやくまともな奴が来たか!)
と、鬼2人も安心していたが、アリスは鼻血を出しながら倒れている魔理沙を見ると何
故かハァハァ息遣いし始める、
(やっぱりこいつもだめだな!!)
鬼2人はもう諦めの境地でそそくさと櫓の建築に取り掛かる事にした。
「で、一体どういう事なのよ!」
ようやくショックから立ち直った霊夢がアリスに詰問するが、
「ふ、お前がもうやる気を無くしちまったんなら、私達が完遂してやるだけだぜ」
これに応えたのは立ち上がった魔理沙だった。
「ふん、私がこの子を出した以上、絶対成功させなきゃ許さないわよ」
そう言ったアリスが片手を上げた瞬間、彼女の後ろに巨大な人影が浮かび上がる。
ゴリアテ人形…彼女が少し前に作った巨大人形だ、
そのゴリアテ人形は何か巨大な球を抱えていたが、
「そこの鬼達!行くわよ!」
アリスが叫ぶと、
「「応さ!」」
鬼もそれに応える、
そしてゴリアテ人形が持っていた球を鬼達に投げた。
一方鬼達は2人で手を繋ぎ、向かい合い、それをレシーブする姿勢だ、
そして放たれた球は狙い澄ましたように鬼達の真ん中へと落ちる、
「流石アリス!」「ドンピシャ!」
鬼達はその弾を一瞬受け止めるようにして衝撃を殺し、直後頭上高くへと一気に放つ。
「「「魔理沙!!!」」」
三人が魔理沙に合図を送ると魔理沙は笑みを作り、見えない場所へと登って行く弾へ
と手をかざす、
そこから放たれるのは弱いホーミング性の光弾だ、
そして、球に弾が追いつき、空高くで爆発を起こす、
そこに咲くのは、七色の大輪の花。
「花…火」
霊夢がそれを見ながらぽつりと呟くと、それに応えるように更に一発、もう一発という風
に四人は抜群のコンビネーションで次々と花火を打ち上げて行く。
「でも、これだけじゃ集客できないんじゃない?」
霊夢がそう魔理沙に聞くと、
「心配するな、既にブン屋に号外を刷ってもらって、ばらまかせてる。宣伝は完璧だ」
すると今度は彼女の後ろから3人の影が見える、
そしてその3人は三者三様の楽器を宙に浮かべていた、掻霊、プリズムリバー三姉妹
だ。
「当然、樂奏隊もいるだろ?それだけじゃないぜ?」
魔理沙がそう言うと、今度は屋台を引いた夜雀、ミスティア・ローレライがやってきた、
そして、日が完全に沈む頃には櫓も出来上がり、神社はすっかりお祭りモードだ。
「よく出来ましたー」
櫓を見上げていた皆の背後から声を掛けたのはスキマ妖怪、八雲紫だった。
彼女は今、彼女の能力であるスキマから半身だけ乗り出し、拍手をしている。
「じゃあお姉ぇさんからサービスをあげちゃいましょー」
呑気にそんな事を言った瞬間、全員の足元にスキマが展開され、一瞬後に上から落と
される、何故か皆の服は浴衣に変えられていた。
「さらに特別出血大サービス~」
今度は宙に大きなスキマが開くとそこから何時もの妖怪の面々が次々と落ちてくる、
全員浴衣で。
「なんか知らんが助かったぜ紫」
魔理沙が「それじゃぁ」と辺りを見回して強く言い放つ、
「博麗神社盆踊り大会、開催だ!!!!」
神社は、盆踊りのリズムに支配されていた、
今や、踊るあほうに見るあほう、呑むあほうに食うあほう、それぞれの楽しみ方で、祭
を満喫していた。
霊夢も、笑顔で、その輪の中に入って踊っている。
それを遠目に見ていた魔理沙だったが、
「ねぇ魔理沙、なんで霊夢に協力なんかしたの?」
そう聞いたのはアリスだった、それに対して魔理沙は、
「だって、私は人里の祭りには参加できないし、せっかくだから楽しみたいじゃないか」
そう、よどみなく答えるが
(嘘のくせに…)
アリスはそう思う、そう、本当は分かっているのだった、
彼女はただ、純粋に霊夢の為に…
そんな考えを振り払い、アリスは自分も踊りに参加するべく、櫓のへと向かった。
(でも、これじゃぁ結局来てるのは妖怪ばかりだし、お金にはならないわよねぇ)
アリスはそうも思う、そしてそれは事実で、肝心の霊夢がそれに気づくのは、祭が終わ
って、寝るときになってからだった。
お終い。
その神社の巫女である博麗霊夢は、お茶を飲みながら考え事をしていた。
今飲んでいるお茶は出がらしも出がらし、味もロクになく、白湯の様な物である。
では、何故そんなものを飲んでいるのか、
茶葉がないからだ、
では、何故茶葉が無いのか、
お賽銭が無いからだ、
では、なぜお賽銭が無いのか、
「参拝客が…ちっとも来ないからよ!」
ついに霊夢は立ち上がり叫ぶ、
「そろそろなんとかしないと、いい加減不味いわ…!」
そう、もう神社には茶葉どころか食料すらロクに残っていない、せいぜいあるとしたら貰
いものの素麺くらいか、そしてその素麺も、ここ一週間ほど連続なので、いい加減飽い
た。
しかし、
「どうにかと言っても…どうしようかしら…」
縁側をウロウロしながら一人熟考する、傍から見ればどう見ても挙動不審だがどうせ
人は来ないから気にしない。
霊夢はとりあえず居間に入り、棚から素敵な賽銭箱の鍵を取り出す。そのまま賽銭箱
まで行き、鍵を使って、賽銭箱の中身を確認する。賽銭は無い、代わりに虫が出て来
た、躊躇いなく叩き潰す。
ため息をつきながら鍵を閉め、再び今の棚に鍵を収納している時だった。
霊夢の目に、日めくり式のカレンダーが飛び込んできた。本日、7月20日。
「そうか…フフ、フフフ」
傍から見れば怪しい事この上ない微笑みを漏らし、霊夢は気付く。
「そう、そうよ!来月は…」
霊夢は既に一つの事に囚われていた、それは、来月半ばの盂蘭盆会、つまり、
「お盆よ!」
こうして、霊夢の生活を掛けた、博麗神社のお盆は始まった…
『博麗神社のお盆で大商戦!!』
「さて…」
(お盆でひと儲けを狙うとして、なにをしようかしらね…)
お茶を淹れなおしながら、霊夢はそんな事を考えていた。
正直お盆と言ってもやることはそんなにない、こちらから何かするとしたら盆踊りの準
備くらいか、
そう言えば、
(他の所は何かするのかしらね…)
だがいくら考えても解らない、これは後でそれとなく聞きに行くことにして、再びひと儲
けの為、思考に埋没する。
とりあえず、盆踊りを開催して、それに合わせて客を呼ぶ、あとはいつも通り、お賽銭や
お守りなどで収入を図るのが、まぁ無難な方針か。
そう、結論を出した霊夢はお茶を一気に飲み干し、先ずは守矢神社へと向かう事にし
た。
「え?お盆、ですか?」
守矢神社の境内を掃除していた巫女、東風谷早苗を捕まえた霊夢は、ただで、出がら
しではないお茶を飲みながら、お盆の事について尋ねてみた。
(早苗なら何かやろうとしているはず、だったらそれを参考にしてやろう)
「う~ん、ウチはこんな場所にありますし、妖怪の皆さんはご先祖を偲ぶ事などなされま
せんし、なにもしないんじゃないですかねぇ…」
(参考にならないなこの巫女は!)
しかし、これでとりあえずライバルが一つ減ったと思うべきか、その点では僥倖だろう。
もう聞くべきことはない、が、
(お茶が美味しい!しばらく無駄話でもしながら楽しみましょう。)
そんな外道な事を考えながら、霊夢はひたすら無心にお茶を飲み続ける。早苗の話は
右から左へ、返事は全て生返事でOK
そのまま数時間どうでもいい事を話し込んでいたが、日が傾きかけていたのでそろそ
ろお暇することにした。すると、
「あ、霊夢さん、よかったらお魚持って行きませんか?河童の方から貰い過ぎてしまい
まして…」
勿論、遠慮なく貰う、これで今日は天麩羅素麺だわ!
お茶と、魚の事に礼を言って、霊夢は今度こそ博麗神社に戻ることにした。
戻った後、直ぐに貰った魚を天麩羅にして素麺と一緒に食べた。久しぶりの充実した夕
餉だったが、素麺じゃなく白米だったらどれほど良かった事か。
お盆の計画を成功させることを固く誓った霊夢は、夕食の片づけをした後、お守りの制
作作業に取り掛かる事にした。
そして、作業を開始してから一時間ほどした頃、
「お邪魔するぜ~」
そんな声と共に、友人である魔法使い、霧雨魔理沙がやってきた。が、私の方を見ると
、
「な、正月前でもないのに霊夢が仕事だと…?明日は雪でも降るか…?」
「降らないわよっ!!私が仕事しちゃいけないっていうの!?」
「冗談冗談、でもホントにどうしたんだ?いきなり仕事なんて…」
「最近生活がピンチでね、お盆で何かしようと思っただけよ」
そう霊夢が言うと、魔理沙は考え込むようなしぐさをした後、一言「邪魔したな」とだけ言
って博麗神社を後にした。
それを見ていた霊夢が一人ごちる、
「何よ…あんたが神社に来てこんなに早く帰るのだって中々無いじゃない…」
気を取り直して作業に戻る霊夢だったが、先ほどまで魔理沙がいた位置に、未開封の
一升瓶が置きっぱなしになっている事に気がついた。
「これは、魔理沙が次来た時にでもあけましょうか」
そう決めると、一升瓶をしまうために、台所へと向かった。
翌日、霊夢は人里近くにできたお寺、命蓮寺を訪れていた。
目的は勿論昨日の守矢神社と一緒でおty…じゃなくてお盆の件について聞き込みだ。
客間に通され、美味しいお茶に舌鼓を打ちながら尋ねると、興味深い答えが返ってき
た。
「お盆…そうですね、こちらでは特に何か企画しているわけではないですが、人里で盆
踊りがあるそうですよ」
命蓮寺で企画が無いのは一安心だったが、人里でそのような企画があるのは予想外
だった。
これは、何か手を打っておくべきだろうか…
そう思った霊夢は美味しいお茶に袖を引かれつつも、早々に命蓮寺を後にすることにし
た。
「確かに、そのような企画が立っているな」
命蓮寺から人里へと出て来た霊夢は、人里の事に詳しい、上白沢慧音を捕まえて話を
聞いていた。
やはり人里で盆踊りが開かれるという話は確かなようだ。
「で、それがどうかしたのか?」
「いやね、家も盆に合わせて何かやろうと思ってたから周りにも聞いてみてるのよ」
「成程、だがこちらの企画も既に決まった事だしな、中止にはできないぞ?」
と、彼女はそこで一息つき、
「いや、そもそも博麗神社では中々人は行けないしな、妖怪相手の盆踊りでも開催す
るか?」
それだと身入りがない、話にならない、私は慈善事業でやるのではなく、あくまでひと
儲けの為に企画しているのだ。
霊夢は慧音に一言「ありがと」とお礼を言って、神社へと帰る事にした。
結局神社に帰っても具体的な案は出ず、霊夢はそのまま、お盆の期間を迎えた。
そして盆踊りが開催される8月16日、夕方、博麗神社の境内で彼女は途方に暮れて
いた。
「中々、上手くいかないもんね」
そう一人ごちて、彼女は境内の掃除を再開した。
境内はいつも掃除をしているので、今更掃除する必要もないのだが、だからと言って他
にすることもない。
「はぁ…」
さっきから口を突いて出てくるのはため息だけだ、今頃人里では楽しく盆踊りが開催さ
れている頃だろうか…
と、そんな時だった、
「なんだ?元気ないな」
頭上、夕陽を背に箒に跨って飛んでいるのは魔法使い、霧雨魔理沙だ。
が、彼女の後ろには珍しい人物が乗っている。
「萃香と、勇儀?」
「聞いたよ霊夢、盆踊りやるんだって?」
「盆踊りにゃ、櫓がいるだろう?あたしたちはその建築要員ってやつさね」
勝手なことを言ってくれる、どうせ、どうせ、
「どうせ、やったって人は来ないじゃない、だからもう、いいわよ」
霊夢がそう言うと魔理沙は静かな顔で、しかし音が聞こえるほどの挙動で
霊夢を指さし、言い放つ。
「霊夢、お前には商才が無い!!」
「なっ!!!!!」
いきなり衝撃の事実を告げられてくず折れる霊夢、かなりダメージを受けたようで若干
涙目になって魔理沙を見ている。
同じように魔理沙も涙目+上目遣いのコンボでダメージ!鼻血をボタボタ垂らしている
。
その様子に鬼2人も、
(駄目だこいつら!!)
そう思わずにはいられない。
そして、魔理沙の膝がガクガク言い始めた時、
「いい加減にしろ!!!」
魔理沙の後ろ上空から飛び膝蹴りが飛んできた、
それを放った人物は、
「アリス…?」
そんな霊夢の視線を受けても微動だにしないアリス、
(ようやくまともな奴が来たか!)
と、鬼2人も安心していたが、アリスは鼻血を出しながら倒れている魔理沙を見ると何
故かハァハァ息遣いし始める、
(やっぱりこいつもだめだな!!)
鬼2人はもう諦めの境地でそそくさと櫓の建築に取り掛かる事にした。
「で、一体どういう事なのよ!」
ようやくショックから立ち直った霊夢がアリスに詰問するが、
「ふ、お前がもうやる気を無くしちまったんなら、私達が完遂してやるだけだぜ」
これに応えたのは立ち上がった魔理沙だった。
「ふん、私がこの子を出した以上、絶対成功させなきゃ許さないわよ」
そう言ったアリスが片手を上げた瞬間、彼女の後ろに巨大な人影が浮かび上がる。
ゴリアテ人形…彼女が少し前に作った巨大人形だ、
そのゴリアテ人形は何か巨大な球を抱えていたが、
「そこの鬼達!行くわよ!」
アリスが叫ぶと、
「「応さ!」」
鬼もそれに応える、
そしてゴリアテ人形が持っていた球を鬼達に投げた。
一方鬼達は2人で手を繋ぎ、向かい合い、それをレシーブする姿勢だ、
そして放たれた球は狙い澄ましたように鬼達の真ん中へと落ちる、
「流石アリス!」「ドンピシャ!」
鬼達はその弾を一瞬受け止めるようにして衝撃を殺し、直後頭上高くへと一気に放つ。
「「「魔理沙!!!」」」
三人が魔理沙に合図を送ると魔理沙は笑みを作り、見えない場所へと登って行く弾へ
と手をかざす、
そこから放たれるのは弱いホーミング性の光弾だ、
そして、球に弾が追いつき、空高くで爆発を起こす、
そこに咲くのは、七色の大輪の花。
「花…火」
霊夢がそれを見ながらぽつりと呟くと、それに応えるように更に一発、もう一発という風
に四人は抜群のコンビネーションで次々と花火を打ち上げて行く。
「でも、これだけじゃ集客できないんじゃない?」
霊夢がそう魔理沙に聞くと、
「心配するな、既にブン屋に号外を刷ってもらって、ばらまかせてる。宣伝は完璧だ」
すると今度は彼女の後ろから3人の影が見える、
そしてその3人は三者三様の楽器を宙に浮かべていた、掻霊、プリズムリバー三姉妹
だ。
「当然、樂奏隊もいるだろ?それだけじゃないぜ?」
魔理沙がそう言うと、今度は屋台を引いた夜雀、ミスティア・ローレライがやってきた、
そして、日が完全に沈む頃には櫓も出来上がり、神社はすっかりお祭りモードだ。
「よく出来ましたー」
櫓を見上げていた皆の背後から声を掛けたのはスキマ妖怪、八雲紫だった。
彼女は今、彼女の能力であるスキマから半身だけ乗り出し、拍手をしている。
「じゃあお姉ぇさんからサービスをあげちゃいましょー」
呑気にそんな事を言った瞬間、全員の足元にスキマが展開され、一瞬後に上から落と
される、何故か皆の服は浴衣に変えられていた。
「さらに特別出血大サービス~」
今度は宙に大きなスキマが開くとそこから何時もの妖怪の面々が次々と落ちてくる、
全員浴衣で。
「なんか知らんが助かったぜ紫」
魔理沙が「それじゃぁ」と辺りを見回して強く言い放つ、
「博麗神社盆踊り大会、開催だ!!!!」
神社は、盆踊りのリズムに支配されていた、
今や、踊るあほうに見るあほう、呑むあほうに食うあほう、それぞれの楽しみ方で、祭
を満喫していた。
霊夢も、笑顔で、その輪の中に入って踊っている。
それを遠目に見ていた魔理沙だったが、
「ねぇ魔理沙、なんで霊夢に協力なんかしたの?」
そう聞いたのはアリスだった、それに対して魔理沙は、
「だって、私は人里の祭りには参加できないし、せっかくだから楽しみたいじゃないか」
そう、よどみなく答えるが
(嘘のくせに…)
アリスはそう思う、そう、本当は分かっているのだった、
彼女はただ、純粋に霊夢の為に…
そんな考えを振り払い、アリスは自分も踊りに参加するべく、櫓のへと向かった。
(でも、これじゃぁ結局来てるのは妖怪ばかりだし、お金にはならないわよねぇ)
アリスはそうも思う、そしてそれは事実で、肝心の霊夢がそれに気づくのは、祭が終わ
って、寝るときになってからだった。
お終い。
「」、!の多用、変な場所での改行が多いで読みにくい
声に出して読むと、どこで区切られるのか判らない悪文は改善できますよ。
ギャグにしては押しが弱い、かな?