Coolier - 新生・東方創想話

暑いと色々大変なのです

2010/07/09 19:51:05
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 この話は作者の過去作品の設定を引き継いでおります。
 独自設定などが盛り込まれておりますのでご注意ください







 ここ最近暑い日が続いていた。
 連日変わらずに、容赦なく照りつける太陽の光が地面を焼いている。

 じわじわと響く蝉の鳴き声。
 辺りに立ち込めるゆらゆら揺れる陽炎。

 門扉の前に立ち、主人よろしく日傘をさした美鈴も流石にバテ気味であった。

 もともと体の丈夫さには自信があるが、それでもここ最近の暑さには辛いものがある。
 昼は昼で暑く、とても昼寝が出来るものではない。夜は夜で非常に蒸し暑く、やはり眠りが浅い。

 如何に妖怪とは言えきちんと休みを取れねば、その身体能力を発揮することはできないのだ。

「なまったかしらねえ」

 うだるような暑さと、流れる汗。
 そんな不快さの中、美鈴は誰ともなく呟いた。

「昔はこれくらいの暑さ、全然大丈夫だったはずだけどなぁ」

 昔……それはまだ幻想郷に来る前の事だ。

 四六時中敵の襲撃を警戒し、神経を尖らせていたあの時。
 逃げ回る故に環境は保証されずに時には吹雪の中、また時には砂漠の熱砂の中で休息を取った。
 その時は問題なく休めたし、また休まなくてはいけなかった。
 
 極限の環境の中で、それでも体の体調だけは万全を保っておかねばならなかった。
 ……そうしなければ守れなかったから。だが……

「平和ボケかしらぁ」

 今はそれが無い。敵も居ないし、呆れるほどに平和だ。
 ときたま来る侵入者にしても命のやりとりをするでも無し。
 それ故にそもそも神経を尖らせる必要もあまりない。

 極限とは程遠い状況。そうすると体が意識するのだ。
 すなわち周りの環境を、暑くて不快、寒くて不快、そんな意識。

 そうしたらもうそれを抑える事は出来ない。
 故に今は暑くて不快を意識して、それ故に眠れなくなって……。

「辛そうだな」
「ええ、まったく。暑くて寝不足なのよ」

 頭上から降ってきた声に、美鈴は溜息を吐いた。
 聞き覚えのある声に美鈴は億劫気に顔をあげる。

「まあ、こう暑いんじゃな」

 案の定、そこにいたのは魔理沙であった。だが……

「あら、その格好……」

 何時もの三角帽子こそ変わらない。
 だが、黒いローブ姿ではなく袖なしの空色のワンピースだ。

「ああ、何時ものローブじゃ流石にな。熱で参って落下でもしたら洒落にならないからな」

 少々照れた様子の魔理沙が地面へと着地する。

「ほかの涼しげな服はこれしかなかったんだ、だから仕方なく……」

 言い訳がましい言葉は、美鈴のにやけ笑いを見てしおれていく。
 熱の所為以上に顔を赤くして魔理沙が美鈴を睨みつけた。

「笑うなよ!」
「ああ、ごめんごめん。でもまだその服、取っておいてくれたんだ」
「捨てる必要もないからな」

 紅い顔のままそっぽを向いて魔理沙がそう呟いた。

 今、魔理沙の身につけている空色のワンピースは以前、ひょんなことから美鈴が魔理沙に見繕ったものだ。
 もう大分前になるがあの時の魔理沙の様子を今でも美鈴ははっきりと覚えている。

「可愛いかったわねぇ~」
「何を思い出しているんだよ!」
「べっつに~」

 にやけ笑いで呟く美鈴にばつの悪そうな魔理沙。
 やがて魔理沙が溜息を吐いて、頬のあたりを指で掻いた。

「ともかく、こんな暑いんじゃドンパチやる気も起きないぜ」
「まったくね」
「と言うわけで、図書館に用があるんだ、通して欲しい」
「はいどうぞ」
「あっさり通すんだな」
「正式な来客ですもの、次からもお願いするわ」
「考えとく」

 お互いに笑いあって、魔理沙が門扉を潜って進んでいく。

「ああ、そうだ」

 去り際にふと思い出したように魔理沙が足を止める。

「人里で、永遠亭の兎が面白いものを売っていたぞ」
「面白いもの?」
「ああ、たしか安眠竹シーツとか。寝不足なら後で買いに行ったらいいんじゃないか?」
「そうね、ありがとう」

 言葉に右手を振って、振り返らずに魔理沙が紅魔館へと消えていく。
 その姿が見えなくなるまで見送ると、再び日傘をさして美鈴は門扉の前へと立った。

 辺りは相変わらずむせかえる様な熱気が立ち込めている。
 これが夜になっても残り、時期特有の湿気とも相まって熱帯夜となる。

 非常に蒸し暑くて、窓を全開にしても吹き込むのは生ぬるい風ばかり。
 それを思い出して美鈴は再び溜息をついた。

「夜になったらあの子……チルノって言ったっけ。あの子を捕獲しに行こうかな~」

 近くの湖に住みつく氷の妖精。きっと冷たいだろう、案外悪くない考えかもしれない。
 なにかお菓子でも持って行って、うまい事誘い出すのだ。

 門番業務は本日は五時まで。それが終わったら先ほど魔理沙が言っていた安眠竹シーツを買いに行くつもりだ。
 竹シーツがどんなものか、また効果はあるか分からないがせっかく教えてくれたのだ。試してみるのも悪くない。

 そして人里までの往復の途中に、丁度良くチルノの住みかである湖を通りかかるのだ。

「良し決めた」

 今日の予定はこれで決まりと。
 体がだるいし億劫なのは否めないが、安眠の為に仕方ないと。

「何を決めたの?」
「あら?」

 再び頭上から掛けられた声に美鈴が顔をあげると影が差した。
 そこにいたのは真っ赤な洋服、枯れ枝の様な羽、日傘をさした蜂蜜色の髪の少女。

「こんにちわ、妹様」
「こんにちわ、美鈴」

 フランドールは音もなく美鈴の前へと着地する。
 それから彼女の差している日傘を見ると嬉しそうにおそろいだねと日傘を回して見せた。

「ねえ、さっき魔理沙にあったよ」
「ええ」
「なんだか可愛い恰好をしてたよ」
「はい、可愛いですよね」
「うん。美鈴が選んであげたんだってね」
「ええ、ちょっとしたきっかけがありまして」
「そうなんだ」

 くるくると日傘をまわしてフランドール。
 そのまま自然に美鈴の横へと移動する。

「私にも選んで欲しいな~」
「はい、喜んで」
「うん!」

 じわじわと蝉が鳴いている。
 陽炎がゆらゆらと立ち込めている。

 そんな光景をしばし眺めフランドールは美鈴へと視線を移す。

「ねえ……」

 それから少しだけ眉をしかめた。

「美鈴、汗だくだね~」
「ええ、暑いですからね」
「それに体調も悪いみたい。大丈夫?」

 心配そうに眉根を寄せるフランドールに美鈴が困惑を浮かべる。
 
「そこまで分かるのですか」
「うん……今日の美鈴、匂いが何時もと違うと言うか……」
「に、匂いですか?」

 きょとんとした表情の美鈴。不思議そうにフランドールがそれを眺めてしばし……

「あ!?」

 自分の言葉の意味を理解して、慌てて誤魔化すように言い繕う。

「違うの!そうじゃなくて美鈴が臭いとかじゃなくて、血の匂いが淀んでいると言うかね、そんな感じ……」
「は、はぁ……」

 誤解と分かり、とりあえず笑顔を浮かべる美鈴。
 毎日お風呂には入ってる訳で、ホッと胸をなでおろす。

 それでも流れ出した嫌な汗が頬を伝うのを感じたが。

 対するフランドールは汗一つ掻いていない。
 もともと不死者に属する吸血鬼は、新陳代謝がほとんどない為に気温の影響を受けにくいのだ。

「此処の所、寝不足気味でして」
「寝不足なの……暑くて眠れない?」
「はい、お恥ずかしながら……ですが、大丈夫ですよ」

 美鈴がフランドールに笑みを見せる。

「先ほど魔理沙にいい情報を教えてもらいましたし、後で氷の妖精を捕まえてこようかと思っているのです」
「うん、うまくいくと良いね」
「はい、ありがとうございます」

 フランドールがつられて笑顔になる。

「……でもね」

 だが、その顔が少しだけ歪んだ。
 不思議がる美鈴に、無言でフランドールは手を伸ばす。

「妹様……」

 日傘の握っていない方の手を取った。
 ためらう様に指を這わせ、それからしっかりと握り合わせる。

「ね、ねえ……どうかな?」

 握られたフランドールの手の感触。
 それは……

「冷たいですね」

 ひやりとした感触。かつて彼女の姉に何度も感じた冷たさだ。
 故に美鈴は既にそれを知っていて、だから驚きもせずに優しく握り返す。

 フランドールは不死者だ。
 新陳代謝がほとんどなく、血液は体を巡っては居ない。

 吸血鬼にとって血液は摂取の度に魔力に換算されて体に蓄えられるものなのだ。

 故に、体は冷たい。
 死者の体は冷たいのだ。

「あのね、私……」

 落ち着なさ気に俯いて、羽を揺らしながらフランドールが言葉を紡ぐ。

「美鈴にはお世話になってるし、力になりたいの」
「……はい」
「だからね、体調が悪いのなら無理に出歩かなくてもね、その、あの……」

 しばしの沈黙。

 じわじわと蝉が鳴いている。
 ゆらゆらと陽炎が揺れている。

 長いようで短い時間。
 やがてフランドールが固い声で続けた。

「私、冷たいから、寝苦しかったら今日から、私を抱きしめて寝ればいいと思うよ」

 美鈴の手に重ねられたフランドールの指に力が籠る。
 照れたように俯いて、落ち着きなく羽を動かして、フランドールは沈黙する。

「………妹様」

 驚いた様な美鈴の言葉に、動揺したフランドールの肩が動いた。
 それから何かを誤魔化す様に、俯いたままのフランドールの口から溢れる様に言葉が突いて出る。

「え、えとね、無理しなくていいんだよ。迷惑だったら断っても、美鈴に強制する気はないしねでも
 この前みたいに壊しそうになっちゃうかもしれないしもしかしたら血を吸おうとするかもしれない
 でもね私は抱きしめてくれてすごく嬉しかったんだだからお礼じゃないけど少しでも美鈴を助けて
 あげたいななんて馬鹿みたいだよねごめんね変だよねだからやっぱり無し……」

「妹様」

 あふれだした言葉は美鈴の言葉によって再び止まる。
 恐る恐るあげたフランドールの目に映ったのは優しい、大好きな笑顔。

「ありがとうございます。此方こそよろしくお願いしますね」

 照れたように。嬉しそうにフランドールは笑って。

「うん……」

 それから美鈴へと抱きついた。
 腕の中の冷たくても暖かい、そんなぬくもりに静かに美鈴は笑みを浮かべて。

 それから何時までも照りつける太陽を見上げて、これからは暑い日も悪くないかもねと、一人呟いた。




                                              -終-
     ノ `''=-="|`=''  | '` ''`''="|`ヽ
. -="' '" \   |  __ |  /  /   )
  \   ,, - ,. -''"`" 丶、, ---、_/ ヽ
  __,,.. -''"              ヽ  ノ
.._/    /          |.     \            今回あとがきにはネタは仕込んでないわ。
/ .ノ_, '´,.- ,三-_\ヽ\  〉| |>/ ノ /丶            もし警戒していたのなら残念でしたわね。
〈´//´| /'t-t_ゥ=、i |:| /://'ノヘ|/\ |
.     / :|  `"""`j// /くゞ'フ/i/ 〉ヘ  〉
.    :Y\ヽ、   ::::// -〉:  |/ 〈. | 丶,
::/|   l  ゝ     ヾ::::ノ  | |.│ヘ.  /
ヽ |   l      _,-ニ-ニ、,  | /\|/\
  ヽ :|      、;;;;;;;;;;;;;,. /| /   :|/│ ̄ ___,. -、
 | | \!、           .| | v ヽ  :/  ( ヽ-ゝ _i,.>-t--、
ヽ| ヽ v:|ヽ\    _,..:::::::. / .|  |      `''''フく _,. -ゝ┴-r-、
..|.|  |  ヽ ::::: ヽ<::::::::::::::::>゛ | `' 丶,  _,.-''"´ / ̄,./´ ゝ_'ヲ
..| |  ゝ v | _ ;;;;;;;_ ̄ ̄   |ヽ.,___| ̄ / _,. く  / ゝ_/ ̄|
:.ヽ‐'''!-|__〉:::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、_|::::|   / にニ'/,.、-t‐┴―'''''ヽ
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 お読みくださりありがとうございました。
みたらしいお団子
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コメント



0.2390簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
これは涼しいな
3.100名前が無い程度の能力削除
フランちゃんいとおしいし魔理沙ちゃんマジ乙女
めーりんが羨ましいなぁ、暑いの除けば


>あとがき
DIO長お疲れ様です
8.70コメントする程度の能力(ぇ削除
後書きネタじゃねーか!!!1!
それはそれとしてこれは良いほのぼの
9.80名前が無い程度の能力削除
めーりん乙
15.90名前が無い程度の能力削除
ウソだ……ネタを仕込んでいないなどと……
ウソを吐くなぁー!
17.90名前が無い程度の能力削除
うん、普通のあとがきだった・・・・嘘コケ屁ぇこけwww
18.90名前が無い程度の能力削除
めーふら可愛すぎる……後書きェ……
24.100名前が無い程度の能力削除
メイフラは希望の虹

後書きはネタの塊
25.100名前が無い程度の能力削除
夏のほわほわした暑さと、どこか爽やかさのある素敵ss
メイフラ乞いをしていた甲斐がありました
27.90名前が無い程度の能力削除
イイハナシダナーって思ったらあとがきで安心した
だがー10点だ
28.100名前が無い程度の能力削除
流石のみたらしさだった・・・
33.100名前が無い程度の能力削除
イイハナシダナー
35.100名前が無い程度の能力削除
ほのぼのいい話だなぁと油断した結果があとがきだよ!
38.100名前が無い程度の能力削除
これはいいメイフラ
なごむわ~

それからっあとがき自重っwww
63.100名前が無い程度の能力削除
いいほのぼのでした。
65.80暇神削除
和んだのにww
PADIO長ちくしょうww