春は恋の季節である。
誰がそんな事を言い始めたのかは知らないが、とにかく世間一般ではそう言われているのである。
幻想郷にも春がやってきた、ここの住人たちはそんな事には流されず、普段と同じように暮らしていた。ある二人以外は…
「うーん、何もすることがないぜ」
魔理沙は暇を持て余していた。
店には誰一人としてこない。異変も解決してしまった今、魔理沙にはすることがないのだ。
「一人でいるのもつまらないし、アリスと出かけるかな」
アリスと出かけるのは久しぶりだった。
早速アリスに家に来るように伝えた。
一時間ぐらいして、呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。
「あ~誰だよ」
「ちょっと、アリスよ!あなたが呼んだんでしょ」
「待て今開ける」
ドアを開けると、いつもよりちょっとおめかししたアリスが目の前に立っていた。
「どう?ちょっと服をいつもと変えてみたんだけど?似あうかしら」
「あ、ああ、似合ってるぜ」
「なんでそんな無愛想なのよー、ほらもっと見てよ」
「しつこい奴は嫌いだぜ」
「もー」
二人は春爛漫の道を歩いていった。
二人はしばらく何も話さなかった。話すことがないわけではない、話したいことが一杯ありすぎて、どれから話していいか見当もつかなかったのだ。それに、そんな話は二人っきりでした方がいいと、お互い考えていたのだ。
すると、近くで妖夢の姿が見えた。一人で何かしているようだ。
「あいつ何やってるんだ?」
「聞いた話だと、何でも紫様を呼び捨てしたとかで、罰として掃除をさせられてるらしいわよ」
「私たちも手伝ってやるか、おーい妖夢―」
「私の意見を聞いてないでしょ!全く勝手なんだから」
というわけで、二人は一緒に掃除を手伝うことになった。
「あなたは箒があるからいいけど、私はどうするのよ」
「もう一本ありますから、アリスさんはこれを使ってください」
渡されたもう一本の箒はとても短く、所々が色あせていて、しかも毛の部分が非常に短かった。
「なんなのよこれ、すごくボロボロじゃない」
「それしかないので我慢してください」
「なんで私ばっかり~」
それでもアリスは懸命にその箒で仕事を全うし、辺りは二人の手伝いもありだいぶ綺麗になった。
「じゃああなた達はあちらの建物の中を掃除してください、私はあちらのほうを片付けてきますから」
「こっちの方はあまり行ったことがないぜ」
「なんだかすごく不気味ね」
(くくく…計画通り。二人がすごく仲がいいのは知っています…あそこには私がたくさん幽霊を集めておきました…一体二人はどんな顔をして返ってくるのだか…)
建物の中は、かび臭い匂いが充満していた。
窓には蜘蛛の巣が張っていて、いかにもなにか出てきそうな場所であった。
「こんな所早く出ましょ」
魔理沙は気にせず掃除をしているようだった。
「大して自宅と変わらないぜ」
その時、アリスの後ろで何か物音がした。
(うわっ!やめてよこういうの苦手なんだから)
アリスは幽霊の類は苦手だった。今すぐにでも大声を上げて叫びたい。しかしアリスは必死でこらえた。そばには魔理沙がいる、こんな格好悪いところは見せられない。そう思うと、ここは必死で堪えるしかないのだ。
(ここは集中するんだ、集中)
アリスは掃除に集中することにした。人間(と言ってもアリスは魔法使いなのだが)集中すると、周りの声は聞こえなくなるものだ。こうすれば絶対に音は聞こえない、これで大丈夫、アリスは確信した。
しかし今度は、目の前を白い影が横切っていった。
流石に視界に現れると思っていなかったアリスは、つい叫びそうになった。
(今度こんなことあったら…出ちゃう…)
もうどこから恐怖が襲ってくるかわからない、アリスは激しく動揺した。
すると、何かがアリスの肩をとんとんと叩いた。
「うわーっ」
アリスは失神した。
「どうしたんだ?後ろから声をかけたのに。妖夢のところまで持っていかないと」
魔理沙はアリスを抱き上げた。その時、アリスの意識が戻った。
(これ、お姫様だっこじゃない!)
アリスは顔が真っ赤になった。こんなことをされるのは生まれて初めてだったからだ。
「やめてよ、恥ずかしいじゃない」
「良かった、意識が戻ったのか、心配したぜ」
「余計なお世話よ、ちょっと寝てただけだもん」
本当は嬉しかったのに、つい言葉では反対のことを言ってしまった。
なんでいつも反対のことを言ってしまうのだろう、本当は素直に気持ちを伝えたいのに。本当の自分を見て欲しいのに。アリスは少し自分のことが嫌いになった。
「あそこの掃除はおわったぜ」
「そうですか、ありがとうございました」
掃除も終えた二人は、また春の道を歩いていった。
アリスは一人考えた、自分には勇気が足りないのだ。いつも相手がどんな反応するかが怖くて、受け身でばかりいた。そんなことではいけないのだ。ちゃんと自分の気持ちを伝えないと、自分はずっとこのままだ。
「ねえ、あそこで一緒にお弁当食べない? 」
「アリスからそんな事を言うなんて珍しいな、いいぜ」
良かった、心からアリスは思った。
ここは辺りに桜が咲いていて、風光明媚な場所だ。
二人は木陰に座ることにした。木漏れ日が二人を優しく照らした。
「こうやってずっと二人でいられたらいいのにな」
突然魔理沙が言った。
「自分はアリスと違って人間だから、すぐに寿命が来て死んでしまう、アリスに与えられた時間はすごく長いけど、自分に与えられた時間はとても短い。だから自分はとても不幸な存在なんじゃないかって。」
「でもこうも思うんだ、与えられた時間が短いからこそ、いろんなことに気づけるんじゃないかって。時間が短くても、一分一秒を大切に過ごせたら、きっとそれは幸せなんじゃないかって」
アリスは気づいた、いつか魔理沙はここからいなくなってしまうのだ。今目の前で話している、世界で一番いとおしい存在が消え去ってしまう。
「ねえ、魔理沙、言いたいことがあるの」
「何だ?」
「今までずっと言えなかったんだけど、私、魔理沙のことが好きなの。ほんとに今までずっと思ってたの。だから、そんな悲しい顔しないで…」
そう言って、アリスは静かに口付けをした。
二人の間を、桜が優しく包んだ。
誰がそんな事を言い始めたのかは知らないが、とにかく世間一般ではそう言われているのである。
幻想郷にも春がやってきた、ここの住人たちはそんな事には流されず、普段と同じように暮らしていた。ある二人以外は…
「うーん、何もすることがないぜ」
魔理沙は暇を持て余していた。
店には誰一人としてこない。異変も解決してしまった今、魔理沙にはすることがないのだ。
「一人でいるのもつまらないし、アリスと出かけるかな」
アリスと出かけるのは久しぶりだった。
早速アリスに家に来るように伝えた。
一時間ぐらいして、呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。
「あ~誰だよ」
「ちょっと、アリスよ!あなたが呼んだんでしょ」
「待て今開ける」
ドアを開けると、いつもよりちょっとおめかししたアリスが目の前に立っていた。
「どう?ちょっと服をいつもと変えてみたんだけど?似あうかしら」
「あ、ああ、似合ってるぜ」
「なんでそんな無愛想なのよー、ほらもっと見てよ」
「しつこい奴は嫌いだぜ」
「もー」
二人は春爛漫の道を歩いていった。
二人はしばらく何も話さなかった。話すことがないわけではない、話したいことが一杯ありすぎて、どれから話していいか見当もつかなかったのだ。それに、そんな話は二人っきりでした方がいいと、お互い考えていたのだ。
すると、近くで妖夢の姿が見えた。一人で何かしているようだ。
「あいつ何やってるんだ?」
「聞いた話だと、何でも紫様を呼び捨てしたとかで、罰として掃除をさせられてるらしいわよ」
「私たちも手伝ってやるか、おーい妖夢―」
「私の意見を聞いてないでしょ!全く勝手なんだから」
というわけで、二人は一緒に掃除を手伝うことになった。
「あなたは箒があるからいいけど、私はどうするのよ」
「もう一本ありますから、アリスさんはこれを使ってください」
渡されたもう一本の箒はとても短く、所々が色あせていて、しかも毛の部分が非常に短かった。
「なんなのよこれ、すごくボロボロじゃない」
「それしかないので我慢してください」
「なんで私ばっかり~」
それでもアリスは懸命にその箒で仕事を全うし、辺りは二人の手伝いもありだいぶ綺麗になった。
「じゃああなた達はあちらの建物の中を掃除してください、私はあちらのほうを片付けてきますから」
「こっちの方はあまり行ったことがないぜ」
「なんだかすごく不気味ね」
(くくく…計画通り。二人がすごく仲がいいのは知っています…あそこには私がたくさん幽霊を集めておきました…一体二人はどんな顔をして返ってくるのだか…)
建物の中は、かび臭い匂いが充満していた。
窓には蜘蛛の巣が張っていて、いかにもなにか出てきそうな場所であった。
「こんな所早く出ましょ」
魔理沙は気にせず掃除をしているようだった。
「大して自宅と変わらないぜ」
その時、アリスの後ろで何か物音がした。
(うわっ!やめてよこういうの苦手なんだから)
アリスは幽霊の類は苦手だった。今すぐにでも大声を上げて叫びたい。しかしアリスは必死でこらえた。そばには魔理沙がいる、こんな格好悪いところは見せられない。そう思うと、ここは必死で堪えるしかないのだ。
(ここは集中するんだ、集中)
アリスは掃除に集中することにした。人間(と言ってもアリスは魔法使いなのだが)集中すると、周りの声は聞こえなくなるものだ。こうすれば絶対に音は聞こえない、これで大丈夫、アリスは確信した。
しかし今度は、目の前を白い影が横切っていった。
流石に視界に現れると思っていなかったアリスは、つい叫びそうになった。
(今度こんなことあったら…出ちゃう…)
もうどこから恐怖が襲ってくるかわからない、アリスは激しく動揺した。
すると、何かがアリスの肩をとんとんと叩いた。
「うわーっ」
アリスは失神した。
「どうしたんだ?後ろから声をかけたのに。妖夢のところまで持っていかないと」
魔理沙はアリスを抱き上げた。その時、アリスの意識が戻った。
(これ、お姫様だっこじゃない!)
アリスは顔が真っ赤になった。こんなことをされるのは生まれて初めてだったからだ。
「やめてよ、恥ずかしいじゃない」
「良かった、意識が戻ったのか、心配したぜ」
「余計なお世話よ、ちょっと寝てただけだもん」
本当は嬉しかったのに、つい言葉では反対のことを言ってしまった。
なんでいつも反対のことを言ってしまうのだろう、本当は素直に気持ちを伝えたいのに。本当の自分を見て欲しいのに。アリスは少し自分のことが嫌いになった。
「あそこの掃除はおわったぜ」
「そうですか、ありがとうございました」
掃除も終えた二人は、また春の道を歩いていった。
アリスは一人考えた、自分には勇気が足りないのだ。いつも相手がどんな反応するかが怖くて、受け身でばかりいた。そんなことではいけないのだ。ちゃんと自分の気持ちを伝えないと、自分はずっとこのままだ。
「ねえ、あそこで一緒にお弁当食べない? 」
「アリスからそんな事を言うなんて珍しいな、いいぜ」
良かった、心からアリスは思った。
ここは辺りに桜が咲いていて、風光明媚な場所だ。
二人は木陰に座ることにした。木漏れ日が二人を優しく照らした。
「こうやってずっと二人でいられたらいいのにな」
突然魔理沙が言った。
「自分はアリスと違って人間だから、すぐに寿命が来て死んでしまう、アリスに与えられた時間はすごく長いけど、自分に与えられた時間はとても短い。だから自分はとても不幸な存在なんじゃないかって。」
「でもこうも思うんだ、与えられた時間が短いからこそ、いろんなことに気づけるんじゃないかって。時間が短くても、一分一秒を大切に過ごせたら、きっとそれは幸せなんじゃないかって」
アリスは気づいた、いつか魔理沙はここからいなくなってしまうのだ。今目の前で話している、世界で一番いとおしい存在が消え去ってしまう。
「ねえ、魔理沙、言いたいことがあるの」
「何だ?」
「今までずっと言えなかったんだけど、私、魔理沙のことが好きなの。ほんとに今までずっと思ってたの。だから、そんな悲しい顔しないで…」
そう言って、アリスは静かに口付けをした。
二人の間を、桜が優しく包んだ。
展開を焦ると言うよりは、カメラ・アングルが動きすぎるんだと思いますね。カットごとの長さより、センスごとの安定感を追ってみた方が良い気がします。たとえば、アリス・マーガトロイドの視点で作品を捉える時、言葉の消費が少なすぎるので、ちょっと読者が付いていけないと思います。言葉は無駄遣いした方が良く映えるものです。尺を足そう、展開を伸ばそうとするのではなく、まずは1つの場面語り尽くす事から始めましょう。たとえば、幽霊がアリス・マーガトロイドの後ろを通り過ぎる場面を200文字で表すとかですね。
「そばには魔理沙がいる、こんな格好悪いところは見せられない。」
この1文からでも変えようはあると思います。
「右を振り返れば魔理沙の金髪がゆらりと暗闇に揺れて見え、場違いなほどのん気な鼻歌がカビくさい空気をふるわせている。もしここで叫び声を上げたら……そんなことは私のプライドが許さない!」
とかね。まあ、あくまで私観ですが、ちょっとでも参考になれば幸いと思ったまでです。ご容赦を。
とまれ、面白い作品でした。また会いましょう。では。
ですが、内容はほんのり甘くて、こういう雰囲気大好きですね。
恋の話は魔理沙にもってこいですね。
「聞いた話だと、何でも紫様を呼び捨てしたとかで」
アリスが紫様と呼ぶのに少しばかり違和感を感じました。
言いたいことは分かるのですが、少し違和感を感じたので……。
「計画通り」ってどういうことなの…
しかも、わざわざそんな計画を練っておいて、出てきた二人に対する反応が
「そうですか、ありがとうございました」だけってどういうことなの…
まず何故紫を呼び捨てにしたのか? そして手伝ってくれた二人をそんな場所に行かせたのか? しかも二人の反応に関心は無かったのか?
――です
せっかく作品に出したのですから、もう少し気を配ってあげて下さい^^;
アリス可愛いですね
最後の展開はかなり良かったです!b