今日は寒くなるかな。
ベッドからもぞもぞと出た私はまずそんなことを考えた。寒いのはいやだな。暑いのも、もちろんいやだが。
こうなったら暖房が効いた部屋の中でぬくぬくするのが一番いいだろう。
どうせ暇な身分なわけだし。とは言ったものの、さて何をすればいいのだろうか。
私が思うに、極度の満腹感と暇なことほどいやなことはな…いやいっぱいあるか。
まぁ何が言いたいかといえば、暇とは幸福と苦痛を一緒にはらんだ厄介なものだということだ。
こんなときには二度寝が一番一番♪…なのだが、なぜか今日は眠くない。
なんでだろう?昨日はやく寝すぎたかな?まぁいい。
はてさて、どうしたもんか。暇なときにすることといえば、霊夢にお茶をたかりに行くか、
パチュリーのところに本を借りに(本当に借りにだぞ。幻想郷のみんなは誤解してるぜ)行くのだが…
先ほど私は外に出ないと決めてしまった。一度決めたことを破るなど一流の魔法使いがすることではない。
それに無性に負けた気分になる。
というわけで私は魔法の研究をしようと思う、てかすることに決めた。
きのこの試食会もいいかと思ったが…、
2,3ヶ月前に毒キノコを引き当てて、その場で冥界への片道旅行へgoしかけたことを思い出してやめた。
あの試食会にアリスがいなかったら終わってたぜ。
あんな目は二度とごめんだな。まだ幽々子の世話になるような歳でもないわけだし。
さてさて、まずは何をしよう…。とりあえずは原料のきのこのスープ作りでもするか。
っと、一段と冷え込んできたと思ったら雪が降ってきた。こりゃ一刻を争う事態だな。予定変更。まずは暖房をつけるか。
暖房をつけた後、朝食を作り、これまた暖を取るために紅茶を飲んでいると、アリスがやってきた。
なにもこんな日にこんでも良かろうに。
「でっ?なにしにきたんだ?」
「そんなつれないこと言わないでよ~べつにほぼ毎日来てるんだから」
ほんと暇だよなこいつは。まぁいいだろう。せっかくだ、アリスにも魔法の研究を手伝ってもらおう。
本来ならば、魔法使いが魔法の研究を他人に手伝ってもらうなんて言語道断だろう。
だが、アリスは魔法使いという種族の妖怪であり、職業として魔法使いをしている人間の私がかなう道理など無い。
ならば手伝ってもらうのが一番だ。私の研究を手伝えるなんて人の身にあまるほどの光栄だぜ。
妖怪になってよかったな、アリス。
「じゃあ、今からすることを手伝ってくれ。いい暇つぶしにはなるぜ」
「はほう~?ひひはほ~」
っていきなり私の朝飯食べるなよ!
さて、まずは材料となるきのこの下ごしらえでもするか。
アリスには家の外にある倉庫からきのこを取ってきてもらった。
雪降っているのに人を外に出すなだって?
言っておくがアリスは暇つぶしに来てんだ。迷惑をかけてんだからこれくらいして当然。
それにアリスは人形を動かしてるだけだぜ?
だいいち、アリスは人じゃなくて妖怪だ。
「まずはきのこを細かく切ろう。よろしく頼むぜアリス」
「わかったわよ。まったく面倒ね」
と言いつつ、なんでこいつはこうもうれしそうなんだ?妖怪ってのはときどき意味わからん。
とにもかくにも早速はじめよう。
こう見えて、私はいつもこういうことをしているんで包丁捌きはなかなかのもんだ。
手際もいいぜ。この光景を見せられないのが残念だ。
っ!
「痛って~」
「どうしたの?」
「いや…指を切ってな」
たいしたことじゃないんだが…。いつもはこんなこと絶対に無い。
今日はどうしたんだろう。ついてないぜ。
気を取り直してっと、下ごしらえは済んだから鍋に入れてスープを作ろう。
水をいれ、きのこをいれて、っと後は暖炉に持ってってじっくり煮るだけだ。
あまりにも多くなってしまったので、アリスと半分に分けて運ぶ。
それでもこれはかなりの重さだ。慎重にそ~と、そ~と……。
「って、うわ!!!」
「どうしたの!って、だっ大丈夫?」
アリスがキッチンから走ってきた。あ~あ、コケちったぜ。
しかも後ろ向きに倒れたから服がびっちゃびちゃだぜ。幸い頭は打たなかったがな。
…なぁアリスさんよ。なんで鼻血出してんだ?
ったく、さっきといい今といい今日は本当についてないぜ。
びちゃびちゃになった服を乾かし、アリスが持ってた分を暖炉で煮ている間、
暇なんでソファーに座りながら話をすることにした
「そういえば、アリスは人間だったんだよな」
「そうよ。忘れてたの?」
「いやぁ、忘れたわけじゃないんだがな。何で人間をやめたのか気になってな」
「ジョナサン・○ョースターという強い敵が現れた…じゃなくて妖怪になったほうが色々と都合が良かったのよ」
「へ~そうだったんだな。知らなかったぜ」
「まぁ大変なことも多いけどね」
「ところでさ、妖怪になって良かった事って何だ?ぜひ知りたいぜ」
「そうね…とりあえずは純粋に強くなったことかしら」
「?どういうことだ」
「こう見えても私は、戦いは嫌いじゃないのよ」
「…より強い敵と戦えるようになれたってことか?」
「え~と、まぁそんなとこかな」
「なるほどな、でも結局お前は何もしてないんじゃないのか?攻撃も全部人形がやってるみたいだし」
「その人形は私が操ってんのよ」
「うそ臭いぜ~」
「なんなら試してみましょうか?この場所で」
「…なんで私の目の前に上海がいるんだよ」
私が後ずさる代わりに、私の体がズルッとソファーから下にずれる。その瞬間
シュッ!
「「えっ?」」
私の頭の上を何かが通った。頭に手を当てるといつも被ってる帽子が無い。まッまさかな…。
ぎこちなく後ろを振り返ると帽子が壁に留められていた。ナイフによって。
「えっ!?あっああの!ごっごごおごごおっごごめんなさい!!
本当に打つ気は無くて!えっとそのあの本当にごめんなさい!」
アリスは慌てふためいている。あの時、私の体が下にずれていなかったら…。ごっくり。
「まっまままっまぁ、わわざとじゃないんだったら、いっいいぜっ、ききっきき気にしなくて」
どうやら誤射だったらしい。…本当に今日はついてないぜ。
帽子は新しいものを出したが…重い空気はどうにもならなくなってしまった。
こんなことなら、はじめから外に出ときゃ良かった。
「もう気にするなって。あれは事故だったんだよ。ほらッ私はなんともないぜ!」
若干手が震えてるのは気のせいだろう。うん、気のせいだ。気のせいにしておこう。
「でっでも~」
アリスは本当にすまなそうにしている。もうこっちの頭も冷えたし別にいいんだが…。何と言うのだろう、こう…。
可愛い。めっちゃ可愛い。ものすごく可愛い。
かといって、そんなことを今の状況で面と向かって言えるはずも無く。
とりあえずは、話を変えていこう。
「ところで、もうスープは出来たのか?楽しみだぜ」
別に食べるわけじゃないんだがな。暖炉の方へ確認へ向かう途中、またまた私はこけてしまった。
ついてね。しかも結構急いでたからこれまた派手に転んでしまった。っていうかこれはもう跳んでしまった、だな。
そしてさらに、着地地点にはアリスがいる!
「えっ?っきゃああああ!!!」
ドグシャッ!
はい、顔面にきれいに右ストレートが入りました。
…ひとつ皆さんに質問があります。
私はいったいなぜ殴られなければならないのでしょうか?
派手にふっとんだ私を見てアリスは我に帰ったようだ、
「えっ?あっ、あああああああああああ!!!」
「なっなぁ、アリス…。私はいったい貴女に何をしましたか…?」
途切れつつある意識の中で私はアリスに尋ねる
「ごっごめんなさい!ごめんなさい!てってっきり、魔理沙が私を…ええっと…その…」
「なっなんで私がそんなこ…と……」
やばい意識が薄れてきた。
それでは皆さん永遠にさよなら~♪
今日は厄日だな…。
目を開けると目の前には幽々子がいた…ということは無く、ひとまずはほっとする。
「あっ、起きたのね」
横を見るとアリスがいた。思わず後ずさる。
「も、もう怖がらなくてもいいわ。本当にごめんなさい。貴女に危害を加えるつもりじゃなかったの」
ど、どうやらアリスも深く反省しているみたいだ。最初のは事故だろうし最後のは誤解だろう。
ただ単についてなかっただけのことだ。アリスは悪くない、と思う。
とりあえず今の大体の時間を聞くと、驚くことにもう次の日になっていたことに気づいた。
道理でお腹がものすごく減ってる訳だ。
そのことをアリスに話すと急いで豪華な食事を作ってくれた。
正直、うますぎて死にそうになった。まぁ、この料理に免じて許してやるとするか。
そのまま他愛も無い話をしているとパチュリーが来た。珍しい。
あの動かない大図書館がわざわざ私のところに来るとは。しかもいつもの仏帳面じゃなくて微笑んでいるのだ。
…どうやら今日が幻想郷の終焉の日らしい。
「どうしたのその顔、それよりも魔理沙、今日は自慢話をしに来たの」
「自慢話だって?お前大丈夫か?熱あるんじゃないのか?」
「うるさいわね、別にいいでしょ。ケホッケホッ」
「でっ?何を自慢しに来たんだ?」
「ちょっと前に魔界で大人気で、だけどあまりにも強力すぎて絶版になった魔道書があるって話したわよね」
「あぁしたな」
パチュリーいわく、ただ見るだけで職業としての魔法使いでも種族としての魔法使いに匹敵するくらいの魔力がつく本だそうだ。
ほしくて当然、逆に興味を示さない魔法使いなんて魔法使いじゃないとまで言われている。
実際私だって見るだけでいいから見てみたい。
ふとアリスを見たら喉から手が出ていた。いやまじで。
「でっ、それがどうしたんだよ」
「それがね、実は、昨日一日だけ魔界からその本を借りることが出来たのよ!」
なんかキャラ変わってないか、なんて突っ込みは出来なかった。
「「なっなんだってええええええええ!?!!!」」
二人して絶叫。しかも、昨日だけ!?
「じゃっ、今日は見れないのか?」
「もう魔界に返しちゃったわ。たぶん一生見れないんじゃない?」
あっあれ?なんだろう?目の前が霞む…。
昨日あんな目にあっていた私って…、いったい…。
私は前世で大罪でも犯したのだろうか。
二人が帰った後、私は言いようの無い怒りに見舞われた。私がいったい何をしたっていうんだ!
こんなときには派手にマスタースパークでも放てばすっきりする。
いてもたってもいられなくなり、私は外に飛び出して空に向けて叫んだ。
「恋符『マスタースパーク』!」
極太のレーザーは見ててスカッとするな。やっぱり弾幕は火力だぜ!
そんなことを思いつつふとレーザーの行く先を見るとレーザーがはじかれているのが見えた。
やッやばい!私は急いでレーザーを止めた。
しばらくすると、その方向からある妖怪が飛んできた。
そう、幻想郷では知らない人はいない、ありとあらゆる妖怪がいる幻想郷の中でも最強レベルの妖怪 フラワーマスター 風見幽香だ。
「あなたは普通に飛んでいる人に向けてレーザーを打てと教わったのですか?」
幽香さん、笑顔がめっちゃ怖いです。
「そんなにマスタースパークが好きなら見せてあげましょう。元祖の威力、体で味わいなさい☆」
…皆さん、本当に永遠にさようなら♪
光り輝く世界の中、意識が薄れる中で私はこう呟いた。
「今日は本当に厄日だ」
新作待ってましたよ!!面白かったですw