「犯人は……お前だろ!」
「違うわ」
「まじかー……」
私は今、ひょんなことから紅魔館で犯人当てゲームをやっている。
何故って? うん。ひょんなことからだ。
間違ってもきのこの胞子が魔道書にかかっちゃって魔道書を傷めて、パチュリーが本気で怒ったとかそういうんじゃない。
いたって普通の娯楽だ。レミリアが勝手に始めた。
犯人を当てなきゃ帰してもらえないそうだけどな。
さっき逃げたけど咲夜に捕まった。
要するに犯人ことUNオーエンとやらをこの六人の中から当てろ、ってことだな。
「魔理沙……もっとしっかりしてよ」
「いや、そんなヒント無しでなんて犯人当てられるわけないぜ」
「ふーむ、それもそうね……」
レミリアが腕を組んで考えている。
元から小さいのに頭を下に傾けているせいで余計小さく見える。帽子も相まってどんぐりみたいだ。
「じゃあ、なんとかヒントを作ってやるわ」
「だいぶありがたいぜ」
「もっとありがたがりなさいよ」
「結構ありがたいぜ」
どんぐりに感謝するのもなんなので、あんまり感謝しない。
そして、レミリアはこう言った。
「まずあなたはこの状況を整理しなさい。一分、時間をあげるから」
まぁせっかくだし、見たまんまの風景をそのまんま情報化してみる。
六人とも椅子に座っている。おそらくあっちから引っ張ってきたのだろう。
レミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔、フラン、美鈴の順に座っている。
そしてなぜか円形だ。私を囲うように座っている。どことなくシュールだ。
そんでもってパチュリーの視線が痛い。魔道書の件は悪かったって。関係ないけど。
そんなパチュリーを小悪魔は観察してる、美鈴は寝てる、咲夜は興味なさそう。
うん、こんなとこかな。
「時間よ」
「ぴったりだぜ」
「じゃあ早速、1つ目のヒント」
待ってました。それがなきゃ先に進めないからな。
足踏しても変わらないし、ベルトコンベアを逆走したくもない。
「UNオーエンはUNオーエンである」
「いっ……言われんでもわかっとるがなァ!」
これは酷い。本当にヒントを出す気があるのだろうか。
「渾身のヒントなのに……」
「1+1=1くらい自明の理だろうが!」
「魔理沙……あなた頭大丈夫?」
ちょっとしたミスだぜ、そんなヒントを出すどんぐりに言われるようなことじゃない。
それに1+1=1なんてシナジー効果を使えばどうにでもなるだろ。
「シナジー効果って……何?」
「思考を読むな。……まぁ、周りのみんなが言ってることが常識になる的な何かだ」
よく知らん。
まて、落ち着こう、考えるんだ。
今のヒントは犯人=犯人、ということだけを意味することなのだろうか。
オーエンはオーエンである……他に何か図式化できるのか?
一番オーエンらしきフランはさっき聞いたけど違ったからな……。
犯人はオーエン、うぅ、まさにUnknownだぜ。
1=x……でもだめか……。
「はーい、時間切れ」
「待て」
「嫌よ、次のヒントだしてあげるから」
「それなら待たなくていい」
ヒントならヒントと早く言ってくれよ。
「じゃあヒント2、犯人はスペルカードを持っている」
「ほぅ……」
「わかったかしら」
「なるほど、わからん」
「もうギブアップ?」
なんかこいつムカツクな……、あざ笑うような顔でこっちを見てくる。
どんぐりの帽子が取れたって大して味は変わんないんだ、でかい顔するんじゃないぜ。
「仕方がないから次のヒント」
「ずいぶんとハイペースだな」
「ヒント3、咲夜と小悪魔に挟まれている者である」
私のツッコミを川に流れる葉のようにスルーしつつ3つ目のヒントを貰う。
と、なると。
犯人は一人に……?
なった? なったぜ。
「そうか、分かった」
「そう、推理を聞かせてちょうだいな」
「思えば道も長かった。図書館に立ち寄って、本を開いてきのこを取り出して、気づいたらここにいるんだもんな」
「……」
「そう、さっきからずっと私のことを刺すように見ているお前がオーエンだったとはな……」
「……」
「パチュリー、お前が犯人だな」
沈黙が訪れる。
何日も何も食べていない時の霊夢くらいの静けさだ。
その沈黙をパチュリーが破る。
パチュリーが、パチュリーが立った。
「そう。私が……」
私は私に用意された椅子に腰を掛けようとする。
もちろん足を組んだ姿勢で座るために準備は万全だ。
私は体を重力に任せる。
「と見せかけて、犯人じゃないのよね」
椅子と接触した瞬間、椅子が壊れた。
決して私が重いとか言うわけじゃなく、ただ、壊れた。
その結果、私は床に臀部を打ち付け、とてつもなく間抜けな姿勢をとっている。
推理を外したことも相まって、とっても格好良くない。
「もったいぶるなよ……」
「ごめんごめん、盛り上げたくて」
私が腰をさすりながら立ち上がると、すでにパチュリーは本に視線を注いでいた。
何のために私を見てたんだ。
それと、もう私のこと怒ってないみたいだな……よかったぜ。
「魔理沙……滑稽よ、あなた最高だわ……」
どんぐり化したレミリアがうめき声を漏らしながら言った。
むっかつくぜ……。
「ひぃ、はぁ、も、もう大丈夫、次のヒント行くわよ」
「……おぅ」
今の私はだいぶ機嫌が悪い。
食べかけのアイスを、太陽に溶かされて、道に落としちゃった時くらい不愉快だ。
推理当たれよ。
「ヒント4、私の隣に座っているものは犯人ではない」
「……」
……そうか。
こんどこそ、こんどこそ犯人は一人に断定できた。
これだけヒントを貰って当てられないのも恥ずかしいよな。
いや、でも待てよ……、これで間違ってたら恥ずかしいな……。
「とりあえず、少し考えさせてくれ」
「いいわよ、時間ならいくらでもあるし」
咲夜が笑っていた。
それに私も笑った。
なんだ簡単じゃないか。
「犯人は――」
……そういえば誰だ。
…あれっ?あれっ?
裏をかいて、『UNオーエン』という者は元々六人の中にいないのだから、『(六人の中に)存在しない』という意味合いで、答えは七人目である『魔理沙』である、という風にとれるし、裏の裏をかいて、実はヒント5が存在していて『実はUNオーエンはいなかった』みたいなことを言われれば、答えは『(犯人は誰も)いなくなった』という風にもとれる。
う~ん、考えすぎかなぁ・・・。
まあそういうことでしょう。
でもこれヒントの見方しだいで幾らでも別解答があるように見えるけど
後書きであれほど簡単だと主張してるので誰もが納得出来る解答があるのだと期待してます。
>UNオーエンはUNオーエンである
犯人はUN(国連)応援である。
現在、国連の行動を実質的に決定しているのは、常任理事国の米国、英国、仏国、露国、中国である。
>犯人はスペルカードを持っている
説明不要。
>咲夜と小悪魔に挟まれている者である
頑張ってる巨乳と自然体の美乳の間……
すなわち、自然体の巨乳である。
>私の隣に座っているものは犯人ではない
すなわち、普段は立ちっぱなし。
アンタ天才だwwwwwwwwww