ここは冥界の白玉楼。
生きてた時は歌姫だったゆゆしゃま(年齢不詳)が庭師の妖忌(84)、そしてその孫妖夢(5)と暮らしている場所です。
「甘い物が食べたいわ~」
ゆゆしゃまは何時もお腹を空かせていました。今の様に不意に何かが食べたいという事は日常、というよりは一時間に5回は見られる光景です。
「妖忌~」
「御呼びでしょうか、御嬢様」
ゆゆしゃまの呼び声で庭師の妖忌(84)が縁側に一瞬で現れます。とても齢84とは思えない速さです。
「甘い物が食べたいわ」
「はぁ、では羊羹等如何で御座いましょうか?」
「羊羹……良いわね~。妖忌、お願いね」
「承りました。すぐに下界より買って参ります」
そう言って妖忌(84)が立ち上がりますが、ゆゆしゃまは思い直したように言いました。
「あぁ妖忌」
「はい?」
「妖夢は何歳だったかしら?」
「五つですが?」
「あぁ、そうだったわね。成長は早いわね~……」
「はぁ……」
「だから、私思ったのよ」
「はぁ」
「妖夢は剣の腕も五歳にしては中々だわ。庭師としての実力も……貴方程では無いけど、それなりに身についてきてる」
「………………」
妖忌(7×6×2)は内心焦りました。ゆゆしゃまが仕事関係の話をして、自分と孫を比較している。これはリストラの危機ではないかと思っていたのです。
「でも」
「はい?」
「でもそれだけで生きていける程、世の中は甘くはないわ」
「まぁ、そうでしょうが……」
「でしょ?だから私思ったのよ」
「はぁ」
「題して!『はじめてのおつかい in 白玉楼!!ちびっこよーむの大冒険!』……どうかしら?」
「御嬢様……」
それを聞いた妖忌((2+2)×21)はいきなりゆゆしゃまの手を掴むと、
「やりましょう!是非!!」
清清しい笑顔で言い放ちました。
「よね~!?妖夢可愛いものね~!」
「えぇそうですとも!初めての事に右往左往する妖夢……可愛いではありませんか!」
「よねー!?絶対可愛いわ!」
ゆゆしゃまと妖忌((2√21)(2√21))は手を取り合って喜びます。この孫馬鹿どもめ。
「そうと決まれば即実行よ妖忌!」
「妖夢には私から言っておきます!御嬢様は機材の準備を!!」
ちなみに機材とは、香霖堂で妖夢を撮影するためだけに購入したカメラである。現像?殺すぞって天狗脅せば何とかなるらしいです。
「じゃあお願いね妖忌!ふふ、楽しみだわ!」
「承りましたァ!」
そう叫ぶと妖忌(捌拾肆)は庭へと飛び出して行きました。ホント元気な爺さんだ。
ゆゆしゃまはそれを確認すると、カメラを取りに行きます。
(親側は)楽しい楽しいはじめてのおつかい。さてさてどうなる事や「紫様?隙間に向かって何を呟いているんですか?」
あ、藍。いやこれは違うのよそうこれは親友が少しでも楽しめるようにと思ってやってるだけで決して普段からこんな事してるわけじゃないのよ何時も幻想郷を見守る振りして天の声みたいな事してるわけじゃないのお願い信じて頂戴私の可愛い可愛い式よ
「聞いてない事まで親告どうも。前々から駄目妖怪とは思ってましたがここまでとは」
何を言ってるのよ藍私が駄目妖怪って事はそれに使える貴女はそれ以下なのよしかもそうなると貴女の式はもっと下級という事になるのよだから早く撤回しなさいしないとスキマ送りよさぁ早く撤回しなさい
「それ以上言い訳するなら本当の年齢バラしますよ?」
ごめんなさい藍私が間違ってたわ
「やれやれ……」
……まぁ、そんなこんなで始まるわよ!
「矢張り駄目妖怪か……」
んだとコラァ!表出ろクソ狐!!
***
「妖夢よ」
「はい!おししょーさま!」
妖忌の呼び声に反応し、妖夢がやってきます。楼観剣と白楼剣を抱えてよちよちとおぼつかない足取りで此方にやってくる姿はとても可愛い。妖忌も冷静を装っていますが、内心は孫への愛という名の鼻血がマスタースパークです。
「妖夢、お前に一つ頼み事がある」
「はい!おししょーさまの弟子として、がんばりましゅ!」
舌足らずな言葉使いに、妖忌の孫への愛が心の中でダブルスパーク。
「御嬢様が甘露……羊羹を所望している」
「おようかんですか?」
「うむ。しかし今白玉楼に羊羹は無い」
「おじょーさまがおようかんを食べれません!」
「そうじゃ。故、お前に里で買ってきてもらいたい!」
「わ、私ですか!?」
「そうじゃ」
「お、おししょーさまは?」
「ワシは庭の手入れがあるでな」
勿論そんなのは真っ赤な誓……真っ赤な嘘です。
庭の手入れは昨日済ませたばかり。そうでなくとも庭の手入れなんぞ妖夢のはじめてのおつかいの前にはどうでもいい事と化すのです。
「分かりました!こんぱくよーむ、おししょーさまの弟子として行ってまいります!」
「ウム!」
こうして、妖夢のはじめてのおつかいが始まりました。
***
「ではおししょーさま、おじょーさま、行ってきます!」
「道中気をつけてな」
「頑張るのよー」
「はい!」
妖夢はニッコリと満面の笑み。それ見て二人は心の中で愛がトリニティスパーク。吐血が追加である。
「大きくなったわね……」
「えぇ、魂魄流剣術を正式に継承できる日もそう遠くないでしょう」
階段まで走ってゆく妖夢の背中を見ながら、二人は嬉しそうに呟きます。
「「あ」」
二人の声が重なります。そりゃあそうでしょう。
妖夢が階段の手前で転んでしまったからです。
「う、うぅ……」
転んでも泣きません。お師匠様に泣いちゃ駄目だと何時も言われているからです。
それでも矢張り痛いのでしょう。目に涙が溜まります。
「涙目の妖夢……」
「これは……無理、ね」
そう呟き、二人の精神と言う結界をブチ破り心の世界から愛がトワイライトスパーク。
「ぐふっ」
「かはっ」
しかし二人は亡霊と半人半霊。妖忌はともかくゆゆしゃまに血なんて通っている筈がありません。
結果、むせて倒れるまでに終わりました。息もしてないのに。
そして馬鹿二人がそんな事をしてる間に、妖夢は階段を下り始めていました。
はじめてのおつかい。これから何が起こるや「紫様?何してるんですか?」
あら橙。これは幻想郷を見守ってるだけなのよ。貴女は藍みたいに変な事を聞かないでね。
「は、はぁ……あ、藍しゃま」
あ、ら、藍。何時からいたのかしら?
「ずっとです。橙、この人は紫様じゃない。紫様に化けた駄目妖怪だ。口を聞いたら馬鹿になるよ」
こら藍!子供になんて事教えるの!
「すいません、藍しゃま」
橙!普通に信じないで!
「さぁ行こう橙、此処に紫様はいない。いるのは駄目妖怪だけだ」
……屋上に行きましょうか。ふふ……久しぶりにキレちゃったわ。
***
「がんばらなきゃ……」
呟き、妖夢は階段を下って行きます。手すりが無いので危ない階段です。空を飛べば良いのでしょうが、妖夢はまだ上手く飛ぶ事が出来ません。
「ん?」
その時、妖夢の耳に激しい音が聞こえてきました。
「何でしょうか……?」
音は隣りの雲の向こうから聞こえてきます。
もしかすると、白玉楼を狙う悪い奴かも知れません。妖夢はそう考えました。
だとすれば、御嬢様もお師匠様も危ないです。
「……私がみんなを守るんです」
手には護身用にとお師匠様に借りた楼観剣。五歳の妖夢が持つとまるで大剣のようです。
「こんぱくよーむ!まいる!」
そう言って、妖夢は雲に斬りかかりました。
「ヒャッハー!効くかぁ!」
そんな声と共に、妖夢の攻撃は弾かれてしまいました。
それと同時に、衝撃で雲が晴れます。
「あ」
そこにいたのは、三体の騒霊。プリズムリバー幽霊楽団の三人です。
「ヒャッハー!冥界の餓鬼かぁ!丁度良い!私の演奏を聞けぇぇぇぇえええ!!!」
そう言って、長女はヴァイオリンを弾き鳴らします。
もう一度言います。そう言って『長女』はヴァイオリンを弾き鳴らします。
「る、るなささん……?」
妖夢は戸惑います。そりゃあそうさ、おかしいにも限度ってものがありますからね。
妖夢が記憶するルナサ・プリズムリバーは大人しい性格だった筈です。何時もどんよりとした空気を纏っていて、こんなに明るい性格ではなかった筈です。
とその時。妖夢は視界の隅にあるものを捉えました。ルナサの妹であるメルランとリリカです。
「やったわリリカ!遂に姉さんを躁状態にする事に成功したわ!」
「キャラ崩壊とかそういう時限じゃないと思うけど……」
どうやら、ルナサがおかしくなったのはメルランの所為らしいです。
しかし、幼い妖夢にはそんな事は分かりません。
「くくく……くはは……クハハハハハハハハハハハァッ!!最高にhighってやつだ!!!」
「るなささん!元に戻って下さい!」
「そいつぁ無理な相談だ……。私はこのテンションで生きていくッ!霊だけどなぁ!フハハハハハハハハハァ!」
何言ってんだコイツ。妖夢はそう思いました。
「フハハハハァ!我が妹よ!共に奏でようじゃないか!?」
「姉さんの提案なら望む所よぉ!」
「私はいいや……今の貴女達の音を纏められる気がしない」
リリカちゃんはまともでした。この時妖夢は心底ホッとしました。この場に自分以外の真面目な人がいたからです。
「フン、詰まらないな……やるぞ、メルランッ!」
「おうよ、姉さんッ!!」
「がんばれー」
「………………」
「「ヒャッハー!」」
二人だけの演奏会が始まりました。リリカちゃんは手拍子をとって楽器には触れようともしません。
「……ハッ!こんな事してるばあいじゃないです!おじょーさまのおようかんを買いに行かなければ!」
妖夢は目的を思い出した!
レベルが1上がったような気がしたがそんなことは無かった!
「りりかさん、絶対にお二人を助けてあげてくださいね!」
「へ?え、えぇえ!?」
しかし心配性な妖夢。三女のリリカちゃんに全てを託しました。これで安心して羊羹を買いに行けます。
「おじょーさま、待っていて下さい!必ずおようかんを買ってきます!」
決意新たに、妖夢は階段を一段また一段と下って行きました。
◇◇◇
「ちょっと妖忌!聞いた今の!?」
「何と健気に育って……おじいちゃんは嬉しいぞ」
「泣かないでよ……あ、もうすぐ幽冥結界ね」
「下界に下りるのですな……」
「下界デビューね」
「えぇ。御嬢様、カメラのほうは?」
「抜かり無いわ」
「では」
「いざ!下界!」
◇◇◇
妖夢は迷う事無く里に着きました。人が沢山です。
「わー……賑やかです」
妖夢は初めての下界に少し興奮気味の様子。それを喜々としてカメラに収める馬鹿二人。
「はっ!こうしてはいられません!おようかんを買わなければ!」
思い出した! 妖夢は人の間を縫う様に走っていきます。それを急いで追う孫馬鹿二人。
「着いた!」
着きました! お師匠様に言われた和菓子屋さんです。
「すいませーん」
妖夢が和菓子屋さんに入っていきます。馬鹿二人は店の外で待機です。見つかっちゃいますからね。
「はい、何でしょうか?」
「あの、おようかんを一ついただけますか?」
ちゃんと言えました。
「あ~……御免ねおじょうちゃん。羊羹はさっき売り切れちゃったんだ」
「え……」
なんという事でしょう。羊羹が売り切れていては話になりません。店の外の馬鹿二人もどうしてこうなったと頭を捻っています。
「御免ねおじょうちゃん。他のはあるんだけど……」
「いいえ、おようかんです。おじょーさまはおようかんが食べたいと言ったのです。他のものを買っていったら叱られちゃいます!」
御嬢様の希望に何としても応えたいという妖夢の気持ちが分かる一言です。馬鹿二人は……あらら泣いちゃった。
「そうか……じゃあちょっと待っててね」
「?はい」
店員のお兄さんが紙と筆を取り出し、何か書いています。
「……はい。此処にも和菓子屋はあるから、此処なら羊羹が売ってるかもしれないから」
「あ、ありがとうございます!」
「いいよ。さ、売り切れない内に行っておいで」
「はい!」
そう言って、妖夢は店を飛び出しました。
この先、何が起こるや「おいコラ駄目妖怪」
ねぇ藍?せめて名前で呼んでよいきなりおいコラは無いんじゃないのって何よその蔑むような目線は止めなさいよ
「私は仕える主を間違えましたね……」
何よそれ私は妖怪の賢者よ賢者なのよってコラ目を合わせなさいよ耳に当ててる手を除けなさいよ藍!狐!スッパテンコー!
「何処で何を如何すればこんな駄目妖怪に……」
もう怒ったわ。怒った。
今までご苦労だったといいたいところだけど貴女には死んでもらうわ。
いよいよもって 死 ぬ が よ い
***
「う~……」
お店の人に地図を描いてもらったはいいものの、困った事になりました。
妖夢は下界に来るのは初めて。つまり言い換えれば白玉楼からは余り出ないのです。即ち地図の見方がわからないのです。
「早くしないと、おじょーさまのおようかんが売り切れてしまいます~」
そうはいっても此処が地図の何処なのかすら分かりません。
「……よし」
妖夢は頷き、お師匠様に教えてもらった『分からなかったら斬れば分かる』を実行する事にしました。
最初はそこの優しそうなお兄さんに聞いてみましょう。
「すいません」
「ん?何だい……ってうぉわぁ!?」
お兄さんは振り返ると同時に後ろに飛び退きました。そりゃあそうです。振り返ったら五歳ぐらいの女の子が幽霊連れて刀持ってそこにいたら誰だって吃驚しちゃいます。
「道を……」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!?」
「あ……」
お兄さんは余りの当然過ぎる出来事と、妖夢が刀を振り被ったのに対応しきれず逃げてしまいました。
「……うぅ」
あらら泣いちゃった。それを見た孫馬鹿二人。
「「殺す」」
後日里の若者が着物美人と辻斬り爺に襲われたそうな。
「……いや!こんなことでめげません!私はおじょーさまのおつかいで来たんです!おようかんを買うまでは帰れません!」
そう言うと、妖夢は刀を仕舞います。斬れば分かるようになるのはまだ先の様です。
取り敢えず妖夢は、ゆゆしゃまから聞いた『分からなかったら人に聞くって慧音が言ってたっててゐが言ってたという夢だったのサ』を実行する事にした。
今度は同年代ぐらいの女の子に聞くことにしたようです。
「あの~……」
「ん?何?」
「道を教えて欲しいんですけど」
「あぁ、はい。いいですよ」
「えっと、ここに行くにはどうすれば……?」
「あー!ここならそこを曲がってまっすぐ行ったところにありますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「別にいいですよー」
なんとも優しい女の子。将来はきっとお嬢さんになれるでしょう。
と、その時です。
「痛っ」
「キャッ」
女の子に鞠が投げられました。
投げられた方向には、五六人の子供達。
「おーい!当たったからお前が鬼だぞー!」
「な、今は道を教えて……!」
「当たったのは当たっただろー?マヌケなだけじゃんか!」
そう言うと、子供達はそうだそうだと騒ぎ立てます。
「……ふふ。いいですわ」
「え……?」
「私を怒らせた事をこうかいしなさい!」
そう言うと、女の子は片手に投げられた鞠を、もう片手には砂と小石を握りました。
「くらえ!」
そして、それを一斉に子供達に投げつけたのです。
「痛っ!石なんか投げるなよ!」
「うわっ!砂がっ目にっ!」
「煩い!私をおこらせたお前たちが悪いのよ!」
「だからってこれは無しだろ!?」
「煩い煩ーい!弾幕はぱわーなのよ!」
「なんだよそれー!?」
「もう逃げろー!」
そう言うと、子供達は蜘蛛の子を散らす様に逃げていきます。それを追う大量の小石を持った女の子。
「くらえっ!」
「痛っ!コブできた!」
「ざまーみなさい!うふ、うふ、うふふふふふふふふ!!!」
「ひきょーだぞそんなの!」
「私がサイキョーよ!きゃははははは!!!」
「………………」
妖夢は此処までで一つの事を悟りました。
人は誰しも『きゃら』というものがあり、それが壊れた時、大変な事になるのだと。
「はっ!こんな事をしてるばあいじゃありません!」
妖夢は目的を思い出すと、その場所に向かって猛ダッシュ。
早くしないと売り切れちゃいます。
***
「見つけた!」
ありました!和菓子屋さんのお兄さんに教えてもらった和菓子屋さんです!
「す……すいません」
「あぁ、いらっしゃいませ」
「あの、おようかんが欲しいんですけど」
「羊羹?あー……今日はもう売り切れちゃいましたね」
「そ、そんな……」
妖夢は困りました。羊羹が無いと御嬢様が悲しみます。
「あー……でもあそこなら……」
「え?」
「おじょうちゃん、このお店の向かいに大きなお店があるだろう?」
「あ……はい」
「もしかしたら、そこなら羊羹が売ってるかもしれないよ」
「ほ、ホントですか!?」
「あぁ。……御免ね。羊羹売り切れちゃってて」
「い、いえ!だいじょーぶです!でっ、では!」
妖夢はお店を飛び出します。向かうのは和菓子屋さんのお兄さんに教えてもらった和菓子屋さんのお兄さんが教えてくれた向かいの大きなお店です。
「す、すいません」
「……ん?あぁ、いらっしゃいませ」
眼鏡を掛けた銀髪の無愛想なお兄さんが来ました。
「あの、おようかんはありますか?」
「御羊羹……えぇ、ありますよ」
「ほ、本当ですか!?」
「えぇ。どうぞ、此方です」
お兄さんに案内されて妖夢は和菓子のコーナーに辿り着きます。
羊羹は……ありました!最後の一個です!
「おや、最後の一個ですね。お嬢さん」
「あ、はい」
「さ、どうぞ」
「はい!」
ねんがんの ようかん を みつけたぞ !
「あ、これお金……」
「……はい。確かに」
「で、では失礼します!」
「えぇ。またどうぞ」
妖夢は店を飛び出します。これで何回店を飛び出したのやら。
目指すは白玉楼。御嬢様の元です。
◇◇◇
「……ふぅ」
「おーい森近!」
「ん?あぁ、何ですか親父さん」
「お前、そんな所で何してたんだ?」
「いえ、昔を思い出していただけです。……あぁ、親父さん。これ」
「ん?金か?何で……」
「一つ商品が売れたんで。その売上です」
「ほー……昔を思い出してたってのはそういう事か」
「えぇ。久しぶりに客の相手をしましたよ」
「何だ、ちゃんと接客してないのか?」
「してますよ。……客が来たなら」
「あー……その、スマン」
「いえ、気にしないで下さい……」
◇◇◇
「や、やっとここまできました……!」
幽冥結界の向こうにある長い階段。あとはこれを上るだけです。
「いっきに行きます!」
そう言うと、妖夢は全速力で階段を駆け上がり始めました。
「姉さんっ、私は今っ!貴女を超えるッッッ!!!」
「来い妹よ!私の全てを見せてやるッ!!!」
「いけールナ姉メル姉!そこで押し倒せ!腕を抑えて組み伏せろー!!!」
横の茂みでなにやら訳の分からない事が展開されていましたが、今の妖夢にそんな事に構ってる暇は無いのです。
「あと少し……!」
もう白玉楼は目と鼻の先です。
「つ……着いたー!」
ただいま、白玉楼。ただいま、御嬢様。ただいま、お師匠様。
妖夢は無事、お使いをやり遂げました。はじめてのおつかい大成功です!
「お帰り~妖夢」
「よくやったぞ妖夢!」
御嬢様とお師匠様が出迎えてくれました。二人とも妖夢を出迎える為に相当急いだのでしょう。肩で息をしています。
「おじょーさま、おようかんです!」
「ありがとう妖夢。さ、お茶にしましょうか」
「そうですな」
三人は屋敷に戻っていきます。
階段の下から何やら奇妙な声が聞こえてきます。「ね、姉さん、そこは駄目……」とか「うわ、メル姉ホントに大きい」とか「あぁ……次はコンチェルトグロッソだ……」とか。
特に気にする様な事でもない為、三人は気にしませんでした。
***
「さ、頂きましょうか」
「はい!」
「そうですな」
三人仲良くお茶の時間です。お茶請けは勿論妖夢が買ってきた羊羹。
先ずは妖忌((2√21)(2√21))が一口。
「うむ、美味い」
続いて、妖夢も一口。
「美味しいです!」
自分で苦労して買ってきたからでしょう。きっと何時もとは違う味の筈。
「じゃあ私も」
最後に、縁側に腰掛けたゆゆしゃまが一口。
「うん。美味しいわ~。有難うね、妖夢」
「よかったな、妖夢」
「はい!」
二人に褒められ、ご満悦の妖夢。
「でも……」
と、そこでゆゆしゃまが口を開きました。
「欲を言えば水羊羹じゃなくて栗羊羹が食べたかったわね~、秋だし」
「ちょえぇぇい!!!」
取り敢えず、妖夢は背中に蹴りを入れました。そりゃあそうでしょう。こんな小さな子供をパシらせといて何ほざいてんだって感じですよ。
「うわらばっ!?」
ゆゆしゃまはまるで世紀末覇者に秘孔を突かれ指を無くした自称天才が自ら飛び降りた時の様な悲鳴を上げ、それはそれは綺麗な弾道を描いて縦に三回転半。庭の池に綺麗に突き刺さりました。
「………………」
一方の妖忌(ヒャッハー)は、ずぶ濡れになってしまった御嬢様を見ながら、無言でお茶を啜っていました。
今日も幻想郷は平和だなぁ、と思いながら。
◆◆◆
「その時の妖夢の動きを元に妖忌が編み出した魂魄流剣術が『剣伎「桜花閃々」』よ」
「嘘だっ!!!」
いろんなネタがあって面白かったです!
……久しぶりにキレちゃったわ。がつぼったww
そこの騒霊三姉妹もぶった斬っとけ、孫馬鹿爺さんよwww
>捌拾玖
玖は4じゃなくて⑨だったような記憶が…。
久々にカオス書いてみよう。
二乗しないとお祖父ちゃん若返っちゃってますよ~
みょんは可愛いんです。えぇ。
>>エクシア 様
妖忌「ほう?ではワシの股にある三本目の刀で……」
幽々子「せいっ!」
妖忌「カハァッ!!??」
***
幽々子「その時の私の股間へのキックを参考に妖忌が編み出した魂魄流剣術が『断霊剣「成仏得脱斬」』よ」
妖夢「早苗さんの『常識に囚われない』という意味が分かった気がします」
こうですかわかりません
>>投げ槍 様
幼夢の可愛さの前にはあらゆるものが霞んでしまいます。
>>4 様
お腹一杯ですか。良かった……
>>奇声を発する程度の能力 様
実は一番悩んだ部分だったりしますw
それなのに計算間違いとか……
>>華彩神護.K
貴方は超せない壁だという事がわかりましたw
>>7 様
本当にうっかりしてました。報告有難う御座います。
読んでくれた全ての方に感謝!
えぇ、よくやりました。やりましたとも。
それはともかく、もう幼夢が可愛くて仕方ないww
やりますよね、やりますよね!?砂場でやったら犬の糞とか握って水道にダッシュしたりしましたよね!?
幼夢かわいいですよね!
読んでくれた全ての方に感謝!