Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

餌付け

2010/07/28 02:09:03
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 私は深々と椅子に腰かけ、変わりなく本を読んでいた。文字の羅列を規則的に追っては、ページを捲る。時折使い魔の淹れた香りよい紅茶を飲み、これもまた使い魔が作った色のよいクッキーの欠片を零さないようにしながら本を読む作業を繰り返す。全ては知識の為に、魔女として貪欲に本を読み漁っていた。
 そこへ足音が近づいてくるのに気付いた。それは使い魔のものでもなければ、友人のものでも、その従者のものでもなかった。私は読んでいた本から顔を上げて足音の方へ目をやった。普段なら、そんなもの意に介さずに本を読み続ける筈なのに、その時は何故だか足音が気になって仕方がなかった。
 私の上げた視線の先には人間の少女がいた。少女は私と目が合うと、薄暗い図書館の中でやけに映える銀髪を翻して本棚の影へと隠れてしまった。私はさして声をかけることもなく、ただ少女の隠れた本棚を見つめていた。すると、少女が恐る恐るといった風に本棚から青い目を覗かせた。まるで猫の様なその仕草に、猫好きの私は好感が持てた。
 そうなると、もっとよく観察したいという好奇心が出てきた。しかし、そう簡単に少女は出て来る様子を見せない。相変わらず毛を逆立ててこちらの様子を窺っているばかりだった。そこで私は餌ででも釣れるだろうかと思い、まだ残っているクッキーを皿ごと少女に向かって差し出してみた。
 流石にこんなものでは無理だろうなとやっておきながら思っていたのだが、予想外にも少女は餌に食いついてきた。私から離そうともしなかった視線を差し出された皿の上のクッキーに一心不乱に注ぎだしたのだ。そして私は物欲しそうな猫に、おいでとようやく声をかけた。
 少女は私の声に驚いたように身を震わせてから、私とクッキーを交互に見るとゆっくりと本棚の影から出てきた。そうして歩を進めて私が差し出している皿に手を伸ばし、素早く目当ての物を取ると引っ込めた。けれど、すぐには口にせずに再度私とクッキーを交互に見てきた。私は少女の意図を直ぐに解して、皿からクッキーを取ると少女に見せ付けるようにして口に運んだ。それを見て少女も私を同じ様にクッキーを口に運んで食べた。
 少女はあまり表情を変えはしなかった。ただ目を少し、ほんの少し見開いただけだった。それこそよくよく観察していないとわからない変化だが、そうやって感情を隠そうとするところも猫じみていて、私は益々少女に好感が持てた。
 少女がクッキーを食べ終わるのを見て、私は皿をもう一度差し出した。少女はまた目をほんの少し見開いてから、おずおずとクッキーを取って食べた。それを二回ほど繰り返して、五度目に皿を差し出した私に少女は首を振って、クッキーを食べるのを止めた。
 そこで私は心の中で使い魔に林檎ジュースを持ってくるように頼むと、少女に手招きをした。少女は最初ほどではないものの、やはり警戒心を前面に押し出しながら手招きする私の傍に寄ってきた。警戒心を直ぐに解かないのも猫らしく、私は少女を気に入ってしまった
そして近くに寄ってきた少女を改めて観察してみた。銀髪の髪に青い瞳、すらりとした手足に細見の体躯。まさに猫としか言いようがない少女だった。友人が拾ってきたというのも頷ける。というか、譲ってもらいたい。この少女なら成長しても悪くなることもなく、逆に今よりもよくなりそうだ。恐らく可愛過ぎるから綺麗過ぎるといった具合に成長するだろう。

「はい、見つけましたよ」
「……あら」

 少女の成長に思いを馳せていると、友人の従者が相も変わらず暢気な顔をして現れた。
 少女が、大きくその声に反応した。振り向くその顔も、よく見ずともわかるほどに綻んでいた。

「っと、パチュリー様。すいません、読書のお邪魔をしましたか?」
「いいえ、私は猫ならいつでも受け入れるわよ。特に、こんなに可愛い猫なら」
「猫? あぁ、咲夜のことですか。確かに咲夜は犬というよりも猫ですねぇ」

 そう言って笑う従者に少女が走り寄っていった。躊躇なく、恐れもなく、少女は私の下から離れて従者に抱きついた。従者はタックルに近いそれを軽々と受け止めた。私には到底出来ないことだ。

「貴女によく懐いてるのね」
「えぇ、まぁ……頑張りましたから」
「あぁ、成る程……その手、この猫が」
「そうなんです。……でも、何故か私よりもナイフを食らってるお嬢様には未だ懐かないんですよねぇ」

 少女の頭を撫でながらしみじみと呟く従者。少女は何の抵抗もせず、むしろもっとと強請るように頭を従者の手に押し付けている。反則的な可愛さだ。
 これはなんとしてでも……。

「そう、ならレミィと勝負ね」
「へ、何の勝負ですか?」

 抱っこと手を伸ばす少女を抱き上げながら、従者が顔を青くして私に尋ねた。その顔には、館を壊すようなことは止めて下さい私が修理しなきゃいけなくなるんです面倒くさいことはしたくありません疲れることもしたくありません止めて下さい止めて下さいお願いしますパチュリー様、と書いてある。私は、それは従者としてどうだろうかと思いながら、従者に安心しなさいと声をかけて少女を指差した。

「私とレミィ、どっちが先に少女に懐かれでしょうか勝負」
「その勝負ノったあぁぁぁぁ!!!!」

 大きな声と共に図書館の扉を破壊して友人が現れた。それを見て従者は涙目になって、友人が現れたことに少女は驚いて従者にしがみついた。その様子からして、友人はよほど好かれていないらしい。その時点で私は勝利を確信した。

「ふふん、紫もやしになんか負けないわ!!」
「私も負けるつもりはないわロイヤルフレア」
「ぎゃぁ、燃える!!!」

 とりあえず友人とは思えない発言をする友人にスペルカードをぶちかまして、丁度良く林檎ジュースを持ってきた使い魔からそれを受け取って従者に渡した。少女は従者から薦められる林檎ジュースでも飲もうとはせずに、物欲しそうに見るだけだった。従者は苦笑いして、私に断りをいれると一口林檎ジュースを飲んだ。
 勝利は確信しても、長い道のりになりそうだと、床を転がって火を消す友人を余所に私は軽く溜息を吐いた。
その後、餌付け+絵本の朗読をした結果、一年くらいでパチュリーと小悪魔に懐きました。
お嬢様にはその半年後くらいに夜のお空の散歩をした結果、懐いてくれました。



・前作に引き続いて咲夜さんは犬じゃなくて猫だよっていう主張。
・それとパチュリーに対する咲夜の印象。
・一番大事なのが咲夜さんは蝶よ花よと可愛がられて育ってればいいよっていう願望。

この三つを書いてみた結果です。

とりま、前作で『咲→めーレミ』書くと自分で予告しておきながら完全無視ですね!
期待してくれてた方はいないと願いつつ、全力で土下座します。
これを期に予告なんてしないと心に決めます。


※誤字脱字の確認はしていますが、もしありましたらご一報をお願いします。
※甘口でも辛口でもよろしいです。ご感想をお聞かせ下さい、お願いします。
駄犬
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
なんだろ 起で終わってる感が否めない
2.名前が無い程度の能力削除
その願望は自分も同感です
その路線で頑張ってー。
3.奇声を発する程度の能力削除
その願望は私も同感!