いつも通りに僕のお店、香霖堂には閑古鳥が鳴く。
日記に綴るまでもないほどの変わらない日々を僕は過ごしている。
とんでもない何かを見過ごしているようで気が気でないが、そんなことすらも忘れてしまうのだから、何も気にせずとも良いのだろう。
異変続きの幻想郷だからこそ、どんなことにも「異変だ、異変だ」と敏感になってしまう。
たまには異変のない日々でも、さもありなんということだ。
——菫子君曰く、異変がないへん。
僕のお店の従業員、宇佐見菫子は退屈が祟ったのか、駄洒落を装った愚痴を零している。
よく店のカウンター越しに話題を振ってくる彼女は、最近はパタリと話題が尽きたように受け取れた。
そういう日もある。
特に変わったことはない。
日記に綴るほどのことでもない。
こうして、今日も一日を終えていくのだろう。
……ああ、確か変に話題を振られたことがあった。それは最近のことだったかな……?。
「というわけで、異変探しの散歩に出てた、私! 霖之助さん!」
「そ、そうかい」
こんな具合に話題を振られたんだ。
それから……?
「本命は散歩をスマホで録画して、それを取材に使ってもらうって話なんだよ」
「急に怪しくなったね。その取材とは天狗が背景にいるんだろう?」
「そうそう。バックに天狗の文さんがいるから行き易い場所が増えるってね」
「ウィンウィンな関係だね……まぁ、危険はなさそうだから良しとするか」
「安心安全のバイオロギング! 代わりに異変はなかったけどね」
「ここは幻想郷だから次は何がしか異変は……」
僕としたことが若干、記憶が曖昧なものになった。
変な話題だからといって日記に書かなかったせいか?
決して日記を怠っている訳ではない。
「何を物憂げに考え込んでるの? 霖之助さん」
「君の駄洒落が寒過ぎて何か異変が起こったのかとヒヤヒヤしていたんだよ」
何事もなかったかのように僕は嘘をついた。
これは真実のない曖昧な嘘だ。
「異変だって? それは大変だよ!」
「なんてことはない。ただの寒い駄洒落だった」
「天丼だけど異変がないへん」
「そういう日もあるさ」
異変の代わりに駄洒落かな?
たまには誤魔化しめいたことに、価値を見出すこともあるのだろう。
「真面目に返された。こうなったら私が異変を起こさなきゃ」
「どうしてそうなるんだい?」
「気分だけでも異変が起きたことにしようって話~」
「それなら……まぁ」
菫子君のことだからと、また何か仕出かすのではと身構えてしまった。
最近の菫子君は比較的大人しくしていると評せる。
翻ってみれば最近の幻想郷が静かなだけであって、もっと異変が起こったとしても僕は構わない。
差し当たって僕は天狗同様、日記を綴るネタになってくれるというのなら一向に構わないというものだ。
——たわいのない話が続く。
今日が暑いからとて夏ではない。
異変を企てているからとて本気ではない。
菫子君の相手をしているからとて、それを日記に綴るわけでもない。
「異変といえば博麗神社に襲撃!」
「変な学生独りでは返り討ちで即異変解決だろう」
「変とは~? 変だけど~」
「そこに拘るのかい」
「じゃあ、霖之助さんも襲撃してよ」
「僕が参加してどうする。それこそ変じゃないか」
「変~? 強そうだけど。ダメか~」
「別の案にしてくれ給え」
僕のお店が徒党のたまり場のようだ。
言葉遊びの段階でとどまっている内は、まだ菫子君を泳がせておいてもいい。
「ん~、次の案ね。誰かを行方不明にするのがいい!」
「僕は行方不明にならないからね」
「早い! まだ何も考えてなかったのに」
「何も考えてないのかい」
「行方不明なら探偵が来ることで異変解決って安直な考え」
「異変じゃなくて事件だろう」
「鋭い! それじゃあ、かくれんぼミステリー事件?」
「色々と遠ざかってないかい? 次を考えよう」
次……最初は何だったか。
覚えておく必要のない小さな企てだが、それにしても物忘れが多い。
「次? この幻想郷自体のドッペルゲンガーを作ろう!」
「スペアという考え方かい? ……異変?」
「いやいや、ドッペルゲンガーの方でのみ異変が起こり出すっていう? 盛大な?」
「異変より荒唐無稽の方が合ってるよ」
「いいじゃない。どうせ起こさないんだから」
「そう言われてみればそうだね。であれば一層、荒唐無稽な異変に振り切ったらどうかな」
異変を煽るなんてこれっ切りだろう。
ましてや企てを手伝うなんてことも然りだ。
どこか自分を見失いがちでいる。
妙に安心を感じるからかな……?
「なぜか起こったことになっている異変。実態がない故に誰を倒しても終わらない!」
「確かに荒唐無稽だ。ただ、具体的には何が起こるんだい?」
「起こったこととして記憶に刻まれるだけ? 壊滅的な異変が、なぜか解決されたことになっている……で、具体的には二千二十五年七月五日に幻想郷が大津波に襲われたって話ね?」
「海がないのに大津波? 荒唐無稽が極まってきたね」
「それで~いい……寝てる人に念話で刷り込んでいくよ」
「急に具体的だ」
「幻想郷の皆に念話するとしたら?」
「全員にできればの話だろう? 人妖全てにするのであれば途方もない……荒唐無稽な話だ」
「噂話として一人歩きするにはピッタリ!」
「また急に具体的な方へと近づくね。本当に気分だけだったかい?」
「そんな欲求は今のところ持ってないかも」
「まぁ、実際に事を起こすなら程々にしておき給え」
ある程度の異変なら起こしてくれても、やぶさかではない。
日記を綴るのが捗って、それもまた一興ということだ。
ただ、できれば手の届く範囲内で異変を起こしてほしい。
擁護できない異変を起こすようでは目も当てられないからだ。
「実は霖之助さんが異変を起こしてない?」
「もしそうだとしたら、ここでは話せないね」
「うんうん……香霖堂には地下があって、それが誰からも触れられないよう隠されてて?」
「それは異変の内に入るのかい?」
「入らないかも? ……ん? 霖之助さんが異変を起こしてるのがいいんだよ」
「そうかい。とりあえず丸投げは遠慮してほしい」
「大丈夫、大丈夫! 最後には私が鎮座するから!」
「ふむ……なんとも可愛らしい主張だね」
「異変だよ! 大変なんだよ!」
「声が大きいだけじゃないか。もう異変の話は仕舞いだよ」
この日は従業員、菫子君と話をするだけで一日を終えた。
日記に綴るようなことは何もない。
大事を望んでいる訳でもないのに違和感だけがくすぶっている。
日記の意義を問う必要がある……が、それは今日ではない。
——後日、日記を綴る。
最近、何を綴ろうかと意気込んでも覚えていないことが多々ある。
であるからして、目の前で起こっている後々に書くであろう出来事を綴っている。
人物の構成は菫子君と、霊夢と天狗の三名がいる。
彼女らは店の外で、例の弾幕ごっこをしているようだ。
犯人役の菫子君を霊夢が退治する形を取り、その光景を天狗がカメラに収めている。
「異変を起こした犯人になっている私に何か質問ある? ただいま絶賛やられている最中だよ」
「それは大変だ。ちなみに、どんな異変を起こしたんだい?」
「よく分からない。予想するなら先日に企んでたことが漏れたとか?」
「念のため僕が横流しすることはないからね。決して日記に綴るためなどという理由では動かない」
「ホント? 自白するなら今の内。心、覗いちゃうからね」
「やられながら覗こうとするなんて器用だね……日記に綴ってみよう」
目の前の情景を綴ることには、なんら畏まることはない。
日記を文学のように仰々しく見做しているからだろうか。
この憂慮は日記の意義を意識した辺りから始まっている。
「天狗の文さんが私が倒されるだけじゃ大したネタにならないって」
「俗に言うバラエティ番組かい? 読者の大勢が相手だから大味なのだろう」
「派手! スーパー! ルナティック! ってね?」
「新聞は比較的新しい。外来品を扱う身としては、それもまた良しだ」
「それなら、ついでに電化製品も爆発させちゃう?」
「君だけにしてくれ給え」
日記は新聞とは違う。
ちなみに、外の世界では大日本史が完成したと聞く。
翻ってみれば僕の日記は……外来品や食事と同じで嗜みなのかもしれない。
少し思い詰めすぎかな。
「巫女のムッチさん、とりあえず異変を起こしそうな私を退治しに来たんだって」
「叩けば異変が出てきそうではあるね。程度はあるものの概ね同意だ……お御籤?」
「色んなのを揃えなくちゃ!」
「なぜだか判らないが退屈しなさそうだ……日記も捗る」
「霖之助さんも退治され仲間だよね?」
「それは遠慮させてもらおう」
辺りが静まり返った。
これ以上倒しても仕方がないからとして霊夢が帰り、記事になるようなネタではないとして天狗も帰ったからだ。
菫子君に関しては何度倒されても、何事もなかったかのように元気にしている。
つまりは日記に綴るようなことは何も起こらなかったとも受け取れる。
嗜みとしては十分だが、僕の日記は日次業務ではない。
いうなれば日次記とは別の扱いをする日記に位置する。
幻想郷の歴史を日記に綴っていく上では、その日の良し悪しを綴るものではないのだ。
ただ、以前から思うことがある。
いつしか僕の日記が、他の日記に取って代わられるのではないかと。
正直、僕の日記は公の日記ではない。
嗜みでしかないと受け取れる。
かつて朝廷が綴ってきた多くの日記と同じ運命になり兼ねない、そのように危惧ができる。
であるからして……ここは幻想郷の歴史を綴る、ありとあらゆる日記の中心に、僕の日記があると銘を打とう。
……熱くなり過ぎた。
「近い将来、霖之助さんから物凄い異変が?」
「さては心、覗いたな? 否だ。今日も明日も明後日も、今日も何もない素晴らしい一日だった……だ」
日記に綴るまでもないほどの変わらない日々を僕は過ごしている。
とんでもない何かを見過ごしているようで気が気でないが、そんなことすらも忘れてしまうのだから、何も気にせずとも良いのだろう。
異変続きの幻想郷だからこそ、どんなことにも「異変だ、異変だ」と敏感になってしまう。
たまには異変のない日々でも、さもありなんということだ。
——菫子君曰く、異変がないへん。
僕のお店の従業員、宇佐見菫子は退屈が祟ったのか、駄洒落を装った愚痴を零している。
よく店のカウンター越しに話題を振ってくる彼女は、最近はパタリと話題が尽きたように受け取れた。
そういう日もある。
特に変わったことはない。
日記に綴るほどのことでもない。
こうして、今日も一日を終えていくのだろう。
……ああ、確か変に話題を振られたことがあった。それは最近のことだったかな……?。
「というわけで、異変探しの散歩に出てた、私! 霖之助さん!」
「そ、そうかい」
こんな具合に話題を振られたんだ。
それから……?
「本命は散歩をスマホで録画して、それを取材に使ってもらうって話なんだよ」
「急に怪しくなったね。その取材とは天狗が背景にいるんだろう?」
「そうそう。バックに天狗の文さんがいるから行き易い場所が増えるってね」
「ウィンウィンな関係だね……まぁ、危険はなさそうだから良しとするか」
「安心安全のバイオロギング! 代わりに異変はなかったけどね」
「ここは幻想郷だから次は何がしか異変は……」
僕としたことが若干、記憶が曖昧なものになった。
変な話題だからといって日記に書かなかったせいか?
決して日記を怠っている訳ではない。
「何を物憂げに考え込んでるの? 霖之助さん」
「君の駄洒落が寒過ぎて何か異変が起こったのかとヒヤヒヤしていたんだよ」
何事もなかったかのように僕は嘘をついた。
これは真実のない曖昧な嘘だ。
「異変だって? それは大変だよ!」
「なんてことはない。ただの寒い駄洒落だった」
「天丼だけど異変がないへん」
「そういう日もあるさ」
異変の代わりに駄洒落かな?
たまには誤魔化しめいたことに、価値を見出すこともあるのだろう。
「真面目に返された。こうなったら私が異変を起こさなきゃ」
「どうしてそうなるんだい?」
「気分だけでも異変が起きたことにしようって話~」
「それなら……まぁ」
菫子君のことだからと、また何か仕出かすのではと身構えてしまった。
最近の菫子君は比較的大人しくしていると評せる。
翻ってみれば最近の幻想郷が静かなだけであって、もっと異変が起こったとしても僕は構わない。
差し当たって僕は天狗同様、日記を綴るネタになってくれるというのなら一向に構わないというものだ。
——たわいのない話が続く。
今日が暑いからとて夏ではない。
異変を企てているからとて本気ではない。
菫子君の相手をしているからとて、それを日記に綴るわけでもない。
「異変といえば博麗神社に襲撃!」
「変な学生独りでは返り討ちで即異変解決だろう」
「変とは~? 変だけど~」
「そこに拘るのかい」
「じゃあ、霖之助さんも襲撃してよ」
「僕が参加してどうする。それこそ変じゃないか」
「変~? 強そうだけど。ダメか~」
「別の案にしてくれ給え」
僕のお店が徒党のたまり場のようだ。
言葉遊びの段階でとどまっている内は、まだ菫子君を泳がせておいてもいい。
「ん~、次の案ね。誰かを行方不明にするのがいい!」
「僕は行方不明にならないからね」
「早い! まだ何も考えてなかったのに」
「何も考えてないのかい」
「行方不明なら探偵が来ることで異変解決って安直な考え」
「異変じゃなくて事件だろう」
「鋭い! それじゃあ、かくれんぼミステリー事件?」
「色々と遠ざかってないかい? 次を考えよう」
次……最初は何だったか。
覚えておく必要のない小さな企てだが、それにしても物忘れが多い。
「次? この幻想郷自体のドッペルゲンガーを作ろう!」
「スペアという考え方かい? ……異変?」
「いやいや、ドッペルゲンガーの方でのみ異変が起こり出すっていう? 盛大な?」
「異変より荒唐無稽の方が合ってるよ」
「いいじゃない。どうせ起こさないんだから」
「そう言われてみればそうだね。であれば一層、荒唐無稽な異変に振り切ったらどうかな」
異変を煽るなんてこれっ切りだろう。
ましてや企てを手伝うなんてことも然りだ。
どこか自分を見失いがちでいる。
妙に安心を感じるからかな……?
「なぜか起こったことになっている異変。実態がない故に誰を倒しても終わらない!」
「確かに荒唐無稽だ。ただ、具体的には何が起こるんだい?」
「起こったこととして記憶に刻まれるだけ? 壊滅的な異変が、なぜか解決されたことになっている……で、具体的には二千二十五年七月五日に幻想郷が大津波に襲われたって話ね?」
「海がないのに大津波? 荒唐無稽が極まってきたね」
「それで~いい……寝てる人に念話で刷り込んでいくよ」
「急に具体的だ」
「幻想郷の皆に念話するとしたら?」
「全員にできればの話だろう? 人妖全てにするのであれば途方もない……荒唐無稽な話だ」
「噂話として一人歩きするにはピッタリ!」
「また急に具体的な方へと近づくね。本当に気分だけだったかい?」
「そんな欲求は今のところ持ってないかも」
「まぁ、実際に事を起こすなら程々にしておき給え」
ある程度の異変なら起こしてくれても、やぶさかではない。
日記を綴るのが捗って、それもまた一興ということだ。
ただ、できれば手の届く範囲内で異変を起こしてほしい。
擁護できない異変を起こすようでは目も当てられないからだ。
「実は霖之助さんが異変を起こしてない?」
「もしそうだとしたら、ここでは話せないね」
「うんうん……香霖堂には地下があって、それが誰からも触れられないよう隠されてて?」
「それは異変の内に入るのかい?」
「入らないかも? ……ん? 霖之助さんが異変を起こしてるのがいいんだよ」
「そうかい。とりあえず丸投げは遠慮してほしい」
「大丈夫、大丈夫! 最後には私が鎮座するから!」
「ふむ……なんとも可愛らしい主張だね」
「異変だよ! 大変なんだよ!」
「声が大きいだけじゃないか。もう異変の話は仕舞いだよ」
この日は従業員、菫子君と話をするだけで一日を終えた。
日記に綴るようなことは何もない。
大事を望んでいる訳でもないのに違和感だけがくすぶっている。
日記の意義を問う必要がある……が、それは今日ではない。
——後日、日記を綴る。
最近、何を綴ろうかと意気込んでも覚えていないことが多々ある。
であるからして、目の前で起こっている後々に書くであろう出来事を綴っている。
人物の構成は菫子君と、霊夢と天狗の三名がいる。
彼女らは店の外で、例の弾幕ごっこをしているようだ。
犯人役の菫子君を霊夢が退治する形を取り、その光景を天狗がカメラに収めている。
「異変を起こした犯人になっている私に何か質問ある? ただいま絶賛やられている最中だよ」
「それは大変だ。ちなみに、どんな異変を起こしたんだい?」
「よく分からない。予想するなら先日に企んでたことが漏れたとか?」
「念のため僕が横流しすることはないからね。決して日記に綴るためなどという理由では動かない」
「ホント? 自白するなら今の内。心、覗いちゃうからね」
「やられながら覗こうとするなんて器用だね……日記に綴ってみよう」
目の前の情景を綴ることには、なんら畏まることはない。
日記を文学のように仰々しく見做しているからだろうか。
この憂慮は日記の意義を意識した辺りから始まっている。
「天狗の文さんが私が倒されるだけじゃ大したネタにならないって」
「俗に言うバラエティ番組かい? 読者の大勢が相手だから大味なのだろう」
「派手! スーパー! ルナティック! ってね?」
「新聞は比較的新しい。外来品を扱う身としては、それもまた良しだ」
「それなら、ついでに電化製品も爆発させちゃう?」
「君だけにしてくれ給え」
日記は新聞とは違う。
ちなみに、外の世界では大日本史が完成したと聞く。
翻ってみれば僕の日記は……外来品や食事と同じで嗜みなのかもしれない。
少し思い詰めすぎかな。
「巫女のムッチさん、とりあえず異変を起こしそうな私を退治しに来たんだって」
「叩けば異変が出てきそうではあるね。程度はあるものの概ね同意だ……お御籤?」
「色んなのを揃えなくちゃ!」
「なぜだか判らないが退屈しなさそうだ……日記も捗る」
「霖之助さんも退治され仲間だよね?」
「それは遠慮させてもらおう」
辺りが静まり返った。
これ以上倒しても仕方がないからとして霊夢が帰り、記事になるようなネタではないとして天狗も帰ったからだ。
菫子君に関しては何度倒されても、何事もなかったかのように元気にしている。
つまりは日記に綴るようなことは何も起こらなかったとも受け取れる。
嗜みとしては十分だが、僕の日記は日次業務ではない。
いうなれば日次記とは別の扱いをする日記に位置する。
幻想郷の歴史を日記に綴っていく上では、その日の良し悪しを綴るものではないのだ。
ただ、以前から思うことがある。
いつしか僕の日記が、他の日記に取って代わられるのではないかと。
正直、僕の日記は公の日記ではない。
嗜みでしかないと受け取れる。
かつて朝廷が綴ってきた多くの日記と同じ運命になり兼ねない、そのように危惧ができる。
であるからして……ここは幻想郷の歴史を綴る、ありとあらゆる日記の中心に、僕の日記があると銘を打とう。
……熱くなり過ぎた。
「近い将来、霖之助さんから物凄い異変が?」
「さては心、覗いたな? 否だ。今日も明日も明後日も、今日も何もない素晴らしい一日だった……だ」