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第14回稗田文芸賞

2018/01/16 23:25:26
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第6回パチュリー・ノーレッジ賞に厄井和音さん

 スカーレット・パブリッシングは25日、第6回パチュリー・ノーレッジ賞受賞作が、厄井和音さんの『目がまわる本がまわる』(鴉天狗出版部)に決定したと発表した、
 選考委員のパチュリー・ノーレッジさんは、「タイトル通り、横組みの文章が途中で縦組みになり、また横組みになり、という形で渦を巻くようにページの中心に向かっていき、また逆回りに……という極めて特殊な文字組で書かれた小説で、本自体も回しやすいように正方形になっているわ。それが趣向だけの趣向に終わらず、本をぐるぐる回しながら読むという他にない読書体験の生む酩酊感が、渦巻き状の迷宮を彷徨うような物語とマッチして、本という形態そのものまでも作品に奉仕させた一級の実験小説に仕上がっているの。まさか彼女がこんな小説を書くとは思わなかったわ」とコメントした。
 パチュリー・ノーレッジ賞は第126季に設立。作家のパチュリー・ノーレッジさんが一年間に刊行された小説の中から既存の価値観では計り得ぬ作品をひとりで選定する。受賞作はその特殊な文字組のため、鴉天狗出版部に「乱丁ではないか?」という問い合わせが相次いだという。

(文々。新聞 睦月26日号一面より)



第6回八坂神奈子賞に因幡てゐ氏、小松町子氏、堀川雷鼓氏

 第6回八坂神奈子賞(鴉天狗出版部主催)は19日、守矢神社にて小説部門・ノンフィクション部門の選考が行われ、小説部門は因幡てゐ氏の『スラムラビット』(竹林書房)と小松町子氏の『たそがれ銭平』(是非曲直庁出版部)、ノンフィクション部門は堀川雷鼓氏の『付喪神の生存戦略』(稗田出版)がそれぞれ受賞作に決定した。授賞式は来月4日、守矢神社にて行われる。
 因幡てゐ氏は、迷いの竹林に暮らす妖怪兎。幻想郷におけるドンデン返しミステリーの第一人者。『スラムラビット』は、人間に捨てられたウサギたちが暮らすスラム街で、ウサギ殺しの冤罪を着せられた主人公が、複数の勢力に追われながら濡れ衣を晴らすため真相を探るハードボイルド調のミステリー。
 小松町子氏(本名…小野塚小町)は、三途の川の渡し守をしている死神。人間の里や中有の道を舞台にした人情小説に定評がある。『たそがれ銭平』は、氏の代表作である《銭投げ捕物帳》シリーズに登場する悪役である金貸しの銭平を主人公にしたスピンオフで、銭平があくどい金貸しになるまでの半生を描く。選考委員の伊吹萃香氏は、「『スラムラビット』に関しては、稗田文芸賞の方で指摘された欠陥が意図的なものだったことも判明したことだし、そこが問題ないなら他に文句はつけようもないだろうってことで、ほぼ満場一致で受賞に決まった。『たそがれ銭平』は、長寿シリーズの本編じゃなくスピンオフに賞をあげるのはどうかっていう声もあったけど、絶対にこれに賞をやるんだって神奈子が言い張るもんだから(笑)、さとりと衣玖も同意したことで二作受賞ってことになった次第だよ」とコメントした。
 堀川雷鼓氏は、付喪神のドラマー。近年、プリズムリバー騒霊楽団にドラマーとして協力していることで知られ、また『ハートビート・ドリーマー』など音楽小説も発表している。『付喪神の生存戦略』は、第一二八季の付喪神異変で誕生した付喪神たちが消滅の危機に立ち向かう様を記録したノンフィクション。選考委員の八坂神奈子氏は「付喪神異変はウチは蚊帳の外だったんだが、異変の首謀者側でも、解決に向かった側でもなく、直接にその異変の影響を受けた存在の側から描いた異変の記録として貴重であり、読み応えのある本だね」と評した。
 小説部門受賞者には賞金六十貫文、ノンフィクション部門受賞者には賞金二十貫文がそれぞれ贈られる。

因幡てゐ氏の受賞の言葉
 どっかでなんか変なミソつけられたから、こっちも候補の連絡来た時点で断ってやろうかなーと思ったけど、選考委員の見識を信じた甲斐があったってものウサ。にしし。

小松町子氏の受賞の言葉
 いやあ、あたいはこういうのには縁がないとばっかり思ってたからねえ。それもまさか『たそがれ銭平』で貰えるなんて思わなかったよ。だってこれ番外編だよ? いやま、くれるものは貰っておくけどさ。あんがとさん。

堀川雷鼓氏の受賞の言葉
 文章を書くのは本業の余技のつもりだったけど、評価してもらえるとやっぱり嬉しいわね。題材にさせてもらった九十九姉妹に感謝するわ。とりあえずこのあと一杯どう?

(花果子念報 卯月20日号より)



第6回稗田児童文芸賞に船水三波さん

 15日、第6回稗田児童文芸賞(幻想郷文芸振興会主催)選考会が人里の寺子屋にて行われ、船水三波さんの『幻想郷大水害』(命蓮寺)が受賞作に決定した。
 稗田児童文芸賞は、少年少女を対象とした児童文学作品の優秀作を表象する賞。選考委員は作家・歴史家の上白沢慧音、作家・数学者の八雲藍、命蓮寺住職の聖白蓮の三氏。受賞者には賞金二十貫文が贈られ、寺子屋にて推薦図書として生徒に配布される。
 受賞作の『幻想郷大水害』は、猛烈な豪雨に見舞われた幻想郷で、守矢神社にひとりで参拝に訪れていた少女が、様々な人妖の協力を得ながら、洪水に見舞われた人間の里の両親のところへ帰ろうと奮闘する物語。
 選考委員長の上白沢慧音さんは、「幻想郷を舞台にした緻密な災害シミュレーション小説として充分に大人の鑑賞に耐える作品であるが、それ以上に苦難に見舞われてなお立ち上がる人間の強さを子供の目線から描き、家族の絆、人間の絆、人妖の絆、全ての命が繋がって社会が成り立っているという様を平易に描いた、子供たちに読ませたい物語だ。船水氏の文体も、幼い少女の一人称として活き活きとしており、読んでいて快い」と語った。
 受賞した船水三波さん(本名…村紗水蜜)は命蓮寺で修行する船幽霊。『大海原の小さな家族』で第一回八坂神奈子賞を受賞している。受賞については、「え、児童文芸賞? 別に子供向けに書いたつもりでもなかったんだけど……まいっか」と語った。

(文々。新聞 葉月16日号一面より)



話題の本 アガサクリスQ『全て妖怪の仕業なのか』(稗田出版)
 夏ごろから、一冊五十ページほどのごく薄い小説が、鈴奈庵で飛ぶように売れている。作者は年齢性別経歴が一切不明の覆面作家。全くの新人のデビュー作を、短編一本ずつ分売するという異例の販売方式で仕掛けたのは、鈴奈庵店主の本居小鈴さんだ。
「『全て妖怪の仕業なのか』は、外の世界で本格ミステリーと呼ばれるジャンルの作品です。名探偵が登場して、不可解な謎を推理で鮮やかに解き明かす、というものですね。外来本は結構入ってくるんですが、外の世界の常識に基づいた推理が幻想郷では理解しにくいところがあって、あまり読まれていませんでした。分売方式も最初から狙って仕掛けたわけではなく、試しに一話目を製本してみて読者の反応を見るだけのつもりだったんですが、予想を遥かに超える反応が得られたので、そのまま分売方式で販売することにしました」
 幻想郷にも、ミステリー小説の書き手がいないわけではない。〝どんでん返しの女王〟因幡てゐや、〝不死者の奇妙な論理〟を書き続ける富士原モコなどが代表的な作家だ。アガサクリスQ作品は、それらと何が違うのだろうか。
「因幡てゐや富士原モコの作品はとても凝っていて面白いんですが、そのぶんどうしても内容が複雑なんですね。その点、『全て妖怪の仕業なのか』は非常にシンプルで、名探偵Qのもとに奇妙な謎が持ち込まれ、証言と証拠を集めて犯人を指摘するという流れが決まっていて、小説を読み慣れない人にもわかりやすくて読みやすく、しかも不思議なことが綺麗に解明されてスッキリ納得して読み終えられることが魅力なんだと思います。また、作者は注意深く読めば名探偵Qの解決の前に読者にも犯人が指摘できるように書いています。作者と読者の知恵比べを楽しんでいる読者の方もけっこういらっしゃいますね」
 読者たちの間では、作者のアガサクリスQの正体が誰なのかも話題になっている。有名作家の変名説から、里の有力者説、はたまた妖怪の賢者説まで諸説紛糾の様相だ。
「作者の正体については知っていますが、絶対に明かさないという約束なので……。ヒントも出せません。すみませんが、たぶんそんなに意外な人物ではないと思いますよ。いつか正体が明かされたら、みんな『ああ、なるほど』と納得するんじゃないでしょうか」
 現在第三話まで刊行されている『全て妖怪の仕業なのか』だが、第一話は目撃された死体が消失したという謎が提示されただけで、解決編が書かれていない。
「作者によると、最後に一話の謎解きをして、全ての話が繋がる構成になるそうです。最終的に全何話になるのかは私もまだ聞いていませんが、これからも次々と不可解な謎と驚愕のトリックが名探偵Qの前に立ちふさがる予定です。どうぞ楽しみにお待ちください」
 『全て妖怪の仕業なのか』第四話は霜月刊行予定とのことだ。

(文々。新聞 神無月11日号 三面文化欄より)




第6回幻想郷恋愛文学賞受賞作決定

 去る霜月13日、博麗神社にて第6回幻想郷恋愛文学賞の選考会が行われました。白岩怜(作家)、風見幽香(作家)、本居小鈴(鈴奈庵店主)の三氏による選考の結果、候補四作の中から、九十九姉妹さんの『恋ひわびて愛しこと』(稗田出版)が受賞作に決定しました。

◆各選考委員の短評
 白岩氏「親に売られた遊女と肺病持ちの青年の悲恋の話だけれど、何より古風な文体が醸し出す退廃的な美にうっとりしちゃうわ~。遊廓の暗がりの中でしか輝けなかったふたつの小さな命のはかなさ、とっても滲みるわね~」
 風見氏「物語だけ取り出せば通俗の極みみたいだけれど、要所要所で遊女が奏でる琵琶と琴が、全編に通奏低音のように響いていて、その音色を紡ぐ文体が作品を一段格調高いものにしているわね。当然の受賞だわ」
 本居氏「ちょっと話がベタすぎるし、古臭い文体が読みにくいところもあるんですけど、おふたりとも熱心に推されてたのでまあ、いいんじゃないでしょうか」

◆受賞者プロフィール
 九十九姉妹(つくもしまい)…琵琶の付喪神・九十九弁々と、琴の付喪神・九十九八橋の姉妹による音楽ユニット。小説では受賞作がデビュー作となる。受賞作は、肺病を患った青年が遊廓で出会った遊女と惹かれあい、心中に至るまでを描いた恋愛小説。

◆受賞のことば
 どういう役割分担で書いたのかってよく聞かれるんですが、ご想像にお任せします。二人で書いたことだけは確かですよ。出版に際しては堀川雷鼓さんにお世話になりました。本当に何かとご迷惑をお掛けして……。ありがとうございました。(弁々)

(博麗神社月報 師走号より)

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