吸血鬼の館、紅魔館。その地下には幻想郷でも随一と言っても過言ではない大きな図書館がある。その主こと、私――パチュリー・ノーレッジは自慢じゃないが、こと知識に関しては多大な自信を持っていた。
現に親友であり、紅魔館主のレミリア・スカーレットの我侭としかいえないような頼みを、この知識を持って達成してきたのだ。だが、しかし今のこの状況ではそれは何の自慢にもならない。
「パチュリーさん、まったく私達の話を聞いてませんね。そうですか、負け組みの愚痴なんて聞きたくも無いですか。けっ、リア充爆発しろ!」
ダンッと勢いよくティーカップを机に叩きつけて、目の前の紫色の髪の少女……古明地さとりは、いつもの落ち着いた雰囲気を捨て去り、完全にやさぐれていた。
「しょうがないわよ、さとり……むしろ、わざわざ私達負け組みのために時間を割いてくれてるんだから、パチュリーには感謝しないと。爆発はして欲しいけど」
さとりの隣に座っていた金髪の少女――アリス・マーガトロイドはそう言って、さとりの肩にポンと手を置くと人形を握り締めて、光のない瞳を私に向ける。ちょっと、爆発とか言ってるけど、それ投げつけてきたりしないわよね?友達だもの、大丈夫よね?
一旦、状況を整理しよう。ここは図書館、私がいつものように本を読んでいたら、アリスとさとりという珍しすぎる組み合わせが、相談があるとやってきた。そして今に至る、と……うん、整理しても何一つ解決しないことが分かったわ。
「その、話を聞いていなかったのは謝るわ。折角相談に来てくれたのにごめんなさい。今度はちゃんと聞くから、もう一度話してくれない」
そこまで口にして、私はある疑問に思い当たった。そう言えば、前にもこの顔ぶれで同じようなことがあった気がする。というよりも、アリスとさとりって普通に考えれば接点ゼロじゃない。どうして私は珍しいと思うだけで、すんなり受け入れた?
待て、私は何か大事なことを忘れてるような気がする。そもそも、つい先程まで話していた内容が、全く記憶にないなんて事あるのか?もしあったとしたら、それは……
「それじゃもう一度言いますけどね……最近パルスィが一緒にお風呂に入ってくれないんです!」
「さとりはまだマシよ!私なんか布団どころか部屋も別々なのよ!?一週間に4日しか泊まらないのによ!?」
……ああ、思い出したわ。そうか、もう一週間経ったのね、早いものだわ……軽い眩暈と頭痛を感じながら、そもそもの原因を思い出す。だいたい、一ヶ月くらい前だったかしら。
一体何のためのものだったかは忘れたが、一ヶ月くらい前に大規模な宴会があった。私はあまり能動的に動くタイプではないし、人が多いところも得意ではないから断ろうとしたが、いつも通りのレミィの強弁に嫌々参加した。(まぁ、条件としてフランも参加させることにしたので、よかったといえばよかったのだが)
で、何があったのかいつもよりも急ピッチで飲んでた咲夜がすっかり出来上がって、突然隣にいた魔理沙を抱き上げて、机の上に上ってこんなことを言い出した。
「いいですか、皆さん!好きな人には遠慮なんかしちゃ駄目なんです!羞恥心なんかも全部捨て去って、とにかく押して押して押し通すことが大事です!この恋愛マスター、さっきゅんが言うんだから間違いありません!」
その場にいたほとんどは、「変な酔っ払いが出たなぁ」程度の認識だったが、厄介なことにその酔っ払いに同調する輩も何人かいた。目の前の馬鹿二人がそうである。
で、実践してはみたものの、上手く行かずに文句を言いに来て、黒歴史を抉られた咲夜が、大本は私と苦し紛れの言い訳をしたのである。
「絶対におかしいでしょう!?霊夢の布団に潜り込もうとしたら、凄い反応で私から離れて、『わわわわわわ、私まだやることあった!』って言って、部屋から飛び出していくのよ!?」
ああ、そう言えばあの紅白は、俗に言う”ヘタレ”だって、小悪魔が言ってたわね。
「それは照れてるだけでしょう?私なんか同じ部屋でも物凄く距離取られてるし、一緒にお風呂に入ろうって言ったら、『手と目つきが厭らしいから嫌。死んで』ですよ!?」
うん、流石に死んでは言い過ぎだけど、概ね橋姫の言う通りだと思う。正直、橋姫の話題になった時のさとりは、私でさえも軽くドン引きだ。
「軽くドン引きって、矛盾してますからね!?」
「人の心にまで、わざわざ突っ込みご苦労様。というか、何度も言うけど、咲夜の言ったことに私は関係ないわ。何で毎週愚痴りに来るのよ?」
「そんなの決まってるじゃない。私達の知ってる中で、一番理想的な付き合いをしてるのがアンタだからよ」
アリスの言葉を聞いて、私の頭の中に『?』が浮かぶ。一番理想的な付き合いって……私別に付き合ってる相手なんていないわよね?そう思われるような相手もいないし。
そんなことを考えていると、静かに図書室の扉が開き、おずおずとフランが入って来た。あら、今日は随分遅かったわね。
「ごめんね、パチュリー。お客さんが来てるのは分かってたんだけど……その、今からお散歩についてきてくれる?」
「ええ、別に構わないわよ。私がフランのお願いを断ったことがあるかしら?それに今日は特別な日だしね」
私の言葉に、フランはキョトンとした表情で首を傾げ、アリスとさとりの二人は同時にペッと唾を吐いた。おい、お前等、常識をどこに置いて来た。そんなのは、どこぞの緑巫女だけで十分よ。まぁ、後で掃除させるとして、今はフランの疑問を解決させないとね。
「ええ、今日はフランが初めてデートに誘ってくれたじゃない。立派な記念日よ」
いつもは私がフランを誘うから、逃げるみたいに見えるのよね。今日はフランから誘ってくれたから、よかったわ。そう答えると、フランの顔は瞬く間に真っ赤になり、手を顔の前で凄い勢いで振り始めた。
「い、いや、デートとかそういうんじゃなくて!もう、いいから行くよ!」
「はいはい、それじゃアリスとさとり。帰る前にさっき唾を吐いた床を拭いときなさいよ」
小さく手を振りながら、フランに続いて図書館を出ようとした瞬間、地の底から這い出るような恨みがましい低い声で『リア充、爆発しろ!』とか聞こえて来た気がするけど、きっと気のせいね。
というか、リア充って何かしら?
現に親友であり、紅魔館主のレミリア・スカーレットの我侭としかいえないような頼みを、この知識を持って達成してきたのだ。だが、しかし今のこの状況ではそれは何の自慢にもならない。
「パチュリーさん、まったく私達の話を聞いてませんね。そうですか、負け組みの愚痴なんて聞きたくも無いですか。けっ、リア充爆発しろ!」
ダンッと勢いよくティーカップを机に叩きつけて、目の前の紫色の髪の少女……古明地さとりは、いつもの落ち着いた雰囲気を捨て去り、完全にやさぐれていた。
「しょうがないわよ、さとり……むしろ、わざわざ私達負け組みのために時間を割いてくれてるんだから、パチュリーには感謝しないと。爆発はして欲しいけど」
さとりの隣に座っていた金髪の少女――アリス・マーガトロイドはそう言って、さとりの肩にポンと手を置くと人形を握り締めて、光のない瞳を私に向ける。ちょっと、爆発とか言ってるけど、それ投げつけてきたりしないわよね?友達だもの、大丈夫よね?
一旦、状況を整理しよう。ここは図書館、私がいつものように本を読んでいたら、アリスとさとりという珍しすぎる組み合わせが、相談があるとやってきた。そして今に至る、と……うん、整理しても何一つ解決しないことが分かったわ。
「その、話を聞いていなかったのは謝るわ。折角相談に来てくれたのにごめんなさい。今度はちゃんと聞くから、もう一度話してくれない」
そこまで口にして、私はある疑問に思い当たった。そう言えば、前にもこの顔ぶれで同じようなことがあった気がする。というよりも、アリスとさとりって普通に考えれば接点ゼロじゃない。どうして私は珍しいと思うだけで、すんなり受け入れた?
待て、私は何か大事なことを忘れてるような気がする。そもそも、つい先程まで話していた内容が、全く記憶にないなんて事あるのか?もしあったとしたら、それは……
「それじゃもう一度言いますけどね……最近パルスィが一緒にお風呂に入ってくれないんです!」
「さとりはまだマシよ!私なんか布団どころか部屋も別々なのよ!?一週間に4日しか泊まらないのによ!?」
……ああ、思い出したわ。そうか、もう一週間経ったのね、早いものだわ……軽い眩暈と頭痛を感じながら、そもそもの原因を思い出す。だいたい、一ヶ月くらい前だったかしら。
一体何のためのものだったかは忘れたが、一ヶ月くらい前に大規模な宴会があった。私はあまり能動的に動くタイプではないし、人が多いところも得意ではないから断ろうとしたが、いつも通りのレミィの強弁に嫌々参加した。(まぁ、条件としてフランも参加させることにしたので、よかったといえばよかったのだが)
で、何があったのかいつもよりも急ピッチで飲んでた咲夜がすっかり出来上がって、突然隣にいた魔理沙を抱き上げて、机の上に上ってこんなことを言い出した。
「いいですか、皆さん!好きな人には遠慮なんかしちゃ駄目なんです!羞恥心なんかも全部捨て去って、とにかく押して押して押し通すことが大事です!この恋愛マスター、さっきゅんが言うんだから間違いありません!」
その場にいたほとんどは、「変な酔っ払いが出たなぁ」程度の認識だったが、厄介なことにその酔っ払いに同調する輩も何人かいた。目の前の馬鹿二人がそうである。
で、実践してはみたものの、上手く行かずに文句を言いに来て、黒歴史を抉られた咲夜が、大本は私と苦し紛れの言い訳をしたのである。
「絶対におかしいでしょう!?霊夢の布団に潜り込もうとしたら、凄い反応で私から離れて、『わわわわわわ、私まだやることあった!』って言って、部屋から飛び出していくのよ!?」
ああ、そう言えばあの紅白は、俗に言う”ヘタレ”だって、小悪魔が言ってたわね。
「それは照れてるだけでしょう?私なんか同じ部屋でも物凄く距離取られてるし、一緒にお風呂に入ろうって言ったら、『手と目つきが厭らしいから嫌。死んで』ですよ!?」
うん、流石に死んでは言い過ぎだけど、概ね橋姫の言う通りだと思う。正直、橋姫の話題になった時のさとりは、私でさえも軽くドン引きだ。
「軽くドン引きって、矛盾してますからね!?」
「人の心にまで、わざわざ突っ込みご苦労様。というか、何度も言うけど、咲夜の言ったことに私は関係ないわ。何で毎週愚痴りに来るのよ?」
「そんなの決まってるじゃない。私達の知ってる中で、一番理想的な付き合いをしてるのがアンタだからよ」
アリスの言葉を聞いて、私の頭の中に『?』が浮かぶ。一番理想的な付き合いって……私別に付き合ってる相手なんていないわよね?そう思われるような相手もいないし。
そんなことを考えていると、静かに図書室の扉が開き、おずおずとフランが入って来た。あら、今日は随分遅かったわね。
「ごめんね、パチュリー。お客さんが来てるのは分かってたんだけど……その、今からお散歩についてきてくれる?」
「ええ、別に構わないわよ。私がフランのお願いを断ったことがあるかしら?それに今日は特別な日だしね」
私の言葉に、フランはキョトンとした表情で首を傾げ、アリスとさとりの二人は同時にペッと唾を吐いた。おい、お前等、常識をどこに置いて来た。そんなのは、どこぞの緑巫女だけで十分よ。まぁ、後で掃除させるとして、今はフランの疑問を解決させないとね。
「ええ、今日はフランが初めてデートに誘ってくれたじゃない。立派な記念日よ」
いつもは私がフランを誘うから、逃げるみたいに見えるのよね。今日はフランから誘ってくれたから、よかったわ。そう答えると、フランの顔は瞬く間に真っ赤になり、手を顔の前で凄い勢いで振り始めた。
「い、いや、デートとかそういうんじゃなくて!もう、いいから行くよ!」
「はいはい、それじゃアリスとさとり。帰る前にさっき唾を吐いた床を拭いときなさいよ」
小さく手を振りながら、フランに続いて図書館を出ようとした瞬間、地の底から這い出るような恨みがましい低い声で『リア充、爆発しろ!』とか聞こえて来た気がするけど、きっと気のせいね。
というか、リア充って何かしら?
完全にのろけ話じゃないですかやだー
微笑ましい光景が浮かびますね~
さとりとパルスィのその後について詳しく。
パチュリーとフランは気になるけどあまーい話しか聞けなそうだから
詳しく。