草木も眠るらしい丑三つ時
既に幻想郷中の人間達は眠りにつき
逆に妖怪達が活発に動き出す時間
そして、今日は満点の満月が外に綺麗に見えていた
誇り高き吸血鬼の末裔である私はその満月を見て不敵につぶやいた
「お腹減った~」
……うん、お腹減った
今が夜中だと言うことはよくわかっているし
そんな時間に物を食べてたらダメだという事もわかってる
それに、そんな事で普段の過酷な労働から解き放たれて
家の門番にそっくりな人形を胸に抱きしめて眠りに着いている
メイドの咲夜を起こす訳にもいかない
……夜中に何か食べる事知ったらそれを
最大限に使って嫌いな食べ物を用意するぐらいしてくれる
だからまあ、そのまま眠るのが正しいことなのだろうが
「……あ~駄目だ、眠れん」
お腹が減った事を意識した途端
猛烈に何か食べたくなってきた
全く、こんな時は普段門の前ですぐに眠れるあの門番が羨ましい
(どうしようかしら?)
って、考えてなんとかなるようだったら私はもう少し良い子である
「まあ、普段から良い子って訳じゃあるまいし」
思い立ったらすぐ行動、なにか食べる物を探しに行こうかしら
……咲夜に見つからないようにしないといけないのが辛いところね
さて、まずはベッドにこの大きめの枕を詰めて……
よし、工作オッケー!
さあ、屋敷を散策することにしましょう
「……で、一番初めにやってきた所がここなんですか?」
「何かお菓子でもないか?美鈴」
とりあえず、こんな時間に何か食べる物が簡単に手に入りそうな所と言えば
門の前で仕事している門番達の夜食かな?と判断して私は門の前にやって来た
ふっふっふ、流石に自分の計算に惚れ惚れしそうね
「お嬢様、残念ですが今日は夜食は出ませんよ」
「な、なんだと!?」
計算外の事実に私は軽く驚いた
「ほら、この前お嬢様が気まぐれに経費削減とか言って減らしたじゃないですか」
「ぬ、ぬかったわ!」
くぅ、まさか自らの気まぐれが首を占めることになろうとは
結構楽しみにしていたのに!
「……お嬢様、お腹が空いてるんですか?」
「えっ?」
む?こ、これは美鈴が夜食作ってくれるフラグかしら!?
「ええ、実は少し小腹が空いて」
「ではこれを」
むぅ、夜食を作ってくれる訳じゃないのね
まあ良いわ、さて美鈴がくれたものは……
「……白い玉?」
「一応『バクダン』って名前の御握りなんですけどね」
いや、玉っていうかものの見事に丸い御握りね
「いやはや、申し訳ありませんが何分料理の方は不器用で」
「いや、かえって器用だと思うわ」
こんな打岩のように綺麗で丸い御握り見たのは初めてだわ
「あと、適当になにか入っているんですけどね」
「まあ、この際気にしないでおくわ」
という訳で頂きます
ムグムグ……うむ、素っ気ない御握りなんだけど
「むっ?これは魚?」
「あ、今朝釣った魚を焼いた余りです」
「むぐ、おっと?こんな所に唐揚げか」
「今日の晩ご飯の余りですね」
ただの御握りだと馬鹿にしてたけど
これはこれでなかなか……ムグムグ
「……これ結構大きわね」
「え~そうですか?」
そうか、美鈴が夜食に食べようとしていたからデカイんだ
っと、そこまでしていて気がついた
「でも良いのかしら?これ貴方の夜食なんでしょう?」
うむ、結構美味しい御握りなのはわかったけど
美鈴もこの夜食を楽しみにしていたはずである
「まあ、そうなんですけど……お嬢様お腹が空いていたんでしょ?」
「ええ、でも、貴方もこれを楽しみにしていたんじゃないの?」
「……あはは、実は少し」
美鈴もこの屋敷ではかなり食べる方だから
夜食も楽しみの一つだったに違いない
(う~ん、悪い事をしてしまったわね)
思えば私の我侭でとっちゃったような物だからね
「……よし決めた」
「何がですか?」
一応お腹も膨れたし、とりあえず半分残った御握りを美鈴に返す
「夜食をくれた分のお礼にある程度の我侭を聞いてあげるわ」
「我侭ですか?」
うむ、一宿一飯の恩義を忘れてはいけないって
パチュリーが言ってたしね
「さあ、なんでも言ってみなさい」
「なんでも良いんですか?」
世界征服とか下克上とかは流石に勘弁だけどね
「まあ、御握り一つ分位ならね」
まあ、一日主交代とかも少し考えても良いかもしれない
さあ、美鈴の願い事は一体なにかしら?
「でしたら……」
・・・
「さて、今日は美鈴のお願いを聞く日ね」
そして、私は美鈴が頼んだお願い事を聞くために
夜遅くに目を覚ました
「さあ、早速美鈴の所に行かないと」
美鈴が頼んだ願い事は一回で終わりではない
(全く、中々面白いお願い事をしてくれたものだ)
だが、頬が緩んでいる私がいるのもまた事実
誰にも気がつかれないように
こっそりと美鈴が夜勤をしている門の傍に向かうと背中から声をかけた
「夜食を食べに来たわよ美鈴」
「ああ、お待ちしてましたお嬢様」
門の傍で待機していた美鈴の姿に
あの時のお願い事を思い出す
「お嬢様の都合が良い時で構いませんので、お嬢様と一緒に夜食を食べたいんですけど、良いですか?」
あの日のお願い事以来、私は時々……度々美鈴と一緒に夜食を食べるようになった
「美鈴、今日はバクダン御握りかしら?」
「えへへ、今日は豚の角煮サンドイッチなんですよ」
「ふぉ!?楽しみだわ!」
今では月に何度かの楽しみになっている
めーれみは素晴らしいですね。
新作楽しみにしてます。
ひさびさの、脇役さんのレミリャ堪能させてもらったぜ
美鈴人形を抱いて寝てるのか、メイド長w
ダイエット中の俺にはきつい…
大好きな美鈴のお嬢様へのお願いが、奇しくも悩みの種になってしまっている咲夜さん……頑張って。