++++
パチュリーが好きすぎて仕方ないのでハロウィンSS
下手の横好きだろうが黒歴史だろうが長すぎだろうが、自重しない!
++++
ーーMorning
紅魔館
私の図書館は今日も知識と静寂を提供してくれる……はずだった。
「パチュリー!とりっく、おあ、とりーと!」
「お菓子が欲しいのかー」
「二人とも、図書館では静かにしなきゃだめだよ~」
「えっと、ごめんなさい……」
「・・・・」
静寂を打ち破ったのはたまに絵本や図鑑を読みにくる4人組。
どこで見つけたのかは知らないが、来館者が新しい知識を身につけてゆくのは喜ばしいことだ。
特に彼女達は覚えたての知識や経験を”おしゃべり”という形で私に提供してくれる。
幻想郷中を遊び回っている彼女達の知識は、私にとっては新鮮で、とても興味深い。
「小悪魔」
「はいっ!パチュリー様!ただいまお持ちします!!」
いい返事だ、何もいいつけた覚えはないがあらかじめ準備していたらしい。
だが、台車に山積みのキャンディというのはいささか多すぎるのではないだろうか?
「うお~ スゲー!」
「たくさんあるのかー!」
「わざわざすいません……」
「あれ?この香りは幽香さんの……?」
「はい、風見さんにいただいた花の蜜を混ぜてあるんです。大変だったんですよー 死ぬかと思いました。」
胸をはってドヤ顔の小悪魔、そういえば昨日は早朝から出かけていて、帰って来た時は燃え尽きたような顔をしてたわね。
ハロウィンのキャンディに命をかけるのは幻想郷広しといえどこの子くらいなものだろう。
「どうぞパチュリー様、あなたの小悪魔からのプレゼントです!この子達にはパチュリー様から渡してあげてください」
「あなたが渡せばいいじゃないの」
「そ、そんな!それじゃ私が貰えません!?あっ、トリックが希望ってことですか?では久しぶりにそ、添い寝なんてどうでしょう?」
どうにも間違っているが、たしかに今からこの子達の分までお菓子を用意するのは面倒だ。
それにしても、添い寝はイタズラにはいるのだろうか?そもそも一昨日も一緒に寝たのに……
「小悪魔、手を出しなさい」
「はいっ!ってあれっ?え?……こ、これはまさかの手作りお菓子!? こあぁぁ~」
昨日作っておいたカルメ焼き(湿気らないように魔法をかけてある)をわたすと、小悪魔は陶然とした顔でへたり込んでしまった。
大妖精とリグルは心配しているが、毎年のことなので気にしないでおこう。
「チルノ、両手をだしなさい」
「はい!うわぁ~ ありがとうパチュリー!」
「作ったのは小悪魔よ」
「うんっ、ありがとう小悪魔!」
両手いっぱいのキャンディに目を輝かせるチルノ、他の三人も目を輝かせて待っている。
ルーミアにいたってはよだれまで垂らして……仕方のない子ね、風の魔法でぬぐってあげましょう。
「ほらルーミア、よだれがたれてるわよ。はいお菓子、ちゃんと味わって食べるのよ」
「ありがとう!おいしそうなのかー」
「大妖精、ちゃんと歯磨きするように見といてあげてね」
「はい、わかりました!うわぁこんなに、ありがとうございます!」
「どうぞリグル、悪いけど幽香のところにお使いをお願いしてもいいかしら?」
「もちろんです。ありがとうございますっ!」
幽香宛のお礼状とカルメ焼き(小悪魔の好物、”カルメ”という響きがいいらしい)をリグルに持たせて送り出す。
あの子達は元気が溢れすぎてダダ漏れになっているが、図書館のルールはまもってくれる。「静かに」意外は、だが。
さて、あそこをフラフラ飛んでくるのはレミィとフランかしら?
大方夜まで待てなかったんだろう、我らがお嬢様は何年経っても子供心が抜けないらしい。
「パチュリー トリック・オア・トリートッ!」
「ぱちぇ~ トリート・オア・トリート」
「フラン、レーバティンを置くかレミィの手を離すかしないとお菓子が持てないわよ?あとレミィ、それじゃ選択肢がなくなってしまっているわ」
「夜の王たる私の言葉よ?選択肢なんてはじめからあるわけないじゃふぁいぃ~」
「今は昼間よ?それにそんな大あくびしながらじゃ威厳がないわ」
「フランに起こされたのよ、まったく子供なんだから」
「え~ でもお姉様だってお洋服着たまま寝てたじゃない」
「あら?可愛い妹が起こしにきてくれる運命が見えたらおめかしして待っているのが当然じゃない」
この姉妹の仲良しっぷりといったら、紅魔館がカップルの聖地になるほどだ。
門番の美鈴が恋愛成就のお守りを作って発売したところ飛ぶように売れ、いまや紅魔館の収入の一部を担っている。
ちなみに当人達はその事実をまだ知らない。
「はい、二人とも。これが小悪魔お手製のキャンディね。で、こっちが私の作ったカルメ焼き」
「パチェ、私のはフランに渡してちょうだい。それからフランのは私に」
「え?お姉様、なんでそんな…… あっ!さては私用のお菓子作り忘れたわね!だから取り替えっこでごまかそうとっ!」
「何言ってるのよフラン、あなた用はちゃんと用意してあるわ」
「じゃあなんで?」
「そんなの、食べさせ合いっこするために決まってるじゃない」
「わ~い!楽しみ~!」
「それよりフラン、あなたはちゃんと用意してくれたのかしら?」
「え?もうあげたじゃない」
「?まだ貰ってないわ」
「そんなことないよ、ちゃんと口移しであげたよ?お姉様が寝てる間に」
「え?く、口移し?そそ、それってもしかしなくてもキキキキス?」
「うんっ!おいしいって言ってくれたよ!寝言で」
「ちょっ それじゃ今日が私の初ちゅ~記念日!?」
「ん?ファーストキスなら400年前に貰ったよ?お姉様の舌、やわらかくておいしかったなぁ~」
「えぇっ?!そそそそれってディー…… あふぅぅ……」
我が親友は顔を真っ赤にして気絶してしまった、いつもはリードしている(つもり)なのに一線をこえるととたんに弱くなるんだから……
この分だとフランが幽閉される原因になった暴走の真相はまだ黙っていた方がよさそうね、
フランから聞いたときに口止めしといてよかったわ。
お姫様だっこしたレミィのお腹にお菓子を山積みにして、鼻歌を歌いながら帰って行くフラン。
あら?咲夜に人払いを頼んでる……あ、小悪魔が蜂蜜渡してる、あんな量いったい何に……
まぁレミィは吸血鬼なんだし、蜂蜜で溺れたって死にはしないわね。
ーーーAfternoon
日付はハロウィン、時間はお昼、場所は私の大図書館。
小悪魔には用事を言いつけてあるので戻ってくるまで私はのんびり読書を……と思ったけど来客のようね。
意気揚々とやって来たのは紅白、白黒、青白の三人組、チルノ達とは別の意味で騒がしい、姦しいのほうが適当?
前後の二人はあまり図書館にはこないが、本自体は好きらしい。ラノベがどうとか言ってたけどどんな本なのかしら?
「パチュリー、ブック・オア・トリートだぜ!」
「パチュリーさん、私もいいですか?」
「お賽銭でもいいわよ?」
「はい、早苗と霊夢にはキャンディーとカルメ焼き。魔理沙にはちょうど読み終わったこの本をあげるわ」
「わあぁ ありがとうございますパチュリーさん!諏訪子様たちと一緒にいただきますね」
「なんでカルメ焼きなの?まぁいいか、ありがとう、これは私から、おせんべいよ」
「あらありがとう、小悪魔がカルメ焼き好きだから毎年作ってあげてるのよ」
「な、なんで私だけ本なの?」
「もしかしてカルメ焼きはパチュリーさんが作ったんですか?」
「えぇ、簡単だしね」
「え?パチュリーが作ったのか?めずらしいじゃないか~」
嬉しそうな早苗、ぶっきらぼうだがわざわざお菓子(?)を持ってきてくれた霊夢、私の手元を見つめる魔理沙。
巫女二人(正確には片方は風祝)はおそらく魔理沙にひっぱり出されたのだろう、普段はあまりこないし、霊夢のせんべいなんて包まれてすらいないし。
「ところで 「すいません、私も何か持ってくればよかったですね。それともいたずらします?」
「そうねぇ、じゃあトリートとして今度あなたの神社の歴史を教えてくれない?」
「はい、もちろんいいですよ!」
「なぁ、なんで私だけ 「このキャンディーおいしいわね」
「そう、幽香から貰ったはちみつをブレンドしたみたいよ?」
「あんたの従者は命知らずね……」
「なぁなぁ、私もおかs 「幽香さんって太陽の畑の?」
「ちょっとまって早苗……」
「ふぅ、なぁ、私としては本より「キャンディー落ちてるわよ、はい、袋もいる?」
「ありがとうございます、できればいただけますか?」
小悪魔に用意させておいた紙袋を渡しておく、あら?帽子を押さえつけてるわね。
しかたない、意地悪はこれくらいにしてあげる。
「どうかしたの魔理沙?」
とたんに顔を上げ目を輝かせる魔理沙、切り替えは早いのよね。
「わ、私としてはだな、いつも本ばかりだし、今日のところはお菓子で手を打とうじゃないかとこう思う訳だ!」
「あら?お菓子も死んだら返してくれるの?」
「え?……し、しょうがないなぁ、こんど魔理沙さん特製キノコケーキを持ってきてやるぜ!」
頬を少し赤く染め、うれしそうに帽子を差し出す魔理沙、そんなにお菓子が欲しいの?本当に子供っぽいんだから。
そんなんだからアリスに妹扱いされるのよ。。。
まぁまだたくさんあるし、わけてあげようかしら。
「はい、キャンディー」
「おぉ ありがとうだぜ」
「はい、キャンディー」
「ありがとう」
「はい、キャンディー」
「あ、ありがとう」
帽子いっぱいのキャンディー、人里の子供でもこんなには貰わないだろう。
でも魔理沙はまだ不満そうね、そんなチラチラ見られても…… はぁ、まったくもう。
「まだ足りないの?しょうがないわね」
「お、おお いただくぜ!」
「はい、キャンディー」
魔理沙は「うわ~ん」とか号泣しながら飛び出して行った、いったい何が気に食わなかったのかしら?
キノコキャンディーが気に入らなかったかしらね?包装は他と同じにしたから気づかれてないはずだけど?
早苗はおろおろしながら、霊夢はにやにやしながら帰って行った。
早苗は明日また来てくれるらしい、あの子は外の世界から来らしいし、明日はおもしろい話が聞けそうだわ。
そうこうしているうちに、お使いにやっていた小悪魔が妖精メイド達と美鈴と咲夜をつれてやって来た。
言いつけ通り、ちゃんと整理番号を配布して一列に並ばせている。メイド妖精は数が多いのでこうでもしないと大騒ぎになるのだ。
ちなみにいつもは魔法で食堂に巨大プディングを作ってあげている。
「はい咲夜、いつもご苦労様、甘い物で少しは疲れが取れるといいんだけど」
「いえ、ありがとうございます、パチュリー様」
「はい美鈴、いつもご苦労様、甘い物で少しは眠気が取れるといいんだけど」
「うっ ありがとうございますパチュリー様、精進します……」
さて、後はメイド妖精達ね。人数が多いから大仕事なんだけど、まぁ年に数回のことだし、頑張るとしましょうか。
ーーーーNight
ハロウィンも残り数時間で終わり、レミィとフランはまだ地下室から出てこない、おそらくそのまま一緒に寝るのだろう。
フランの部屋はレミィの部屋の隣に移っているけど、フランが閉じ込められていた地下室はまだ残っていて、フランはことあるごとにレミィを地下室に連れ込もうとしていた。
まぁレミィに取っては罪深い場所だけど、あの子にとっては思い出の場所だしね。いろんな意味で。
そうこうしていると、小さな影が近づいて来た。
「シャンハーイ!」
「あら上海、一人でどうしたの?」
「Trick or Treat!」
いつのまに言語機能をつけたのかしら?しかも流暢ね。
まぁいいか、まだお菓子はたくさん残っているし。
「ちょっとまって、袋に入れてあげるから」
「しゃんはーい」
「あら?しゃべれるようになったんじゃないの?」
「んーん、まだちょとだけ」
「そう?とても上手よ。はいお菓子」
「アリガトー!」
それにしても、いつも一緒にいるアリスはどうしたのかしら?
超遠距離操作の実験とか?
「Trick or Treat!」
「ん?」
「「「「Trick or Treat!」」」」
いつの間にか人形が行列を作ってる。これ、キャンディー足りるかしら?……
小さな紙袋にキャンディーを入れてあげると、人形はお礼を言いながら下がって行く、それを何度もくりかえし、なんとか全員に配り終えた。
もう一個もないわ、アリスはこんなに大量のキャンディーをどうするつもりなのかしら?
と、今度は人間大の足音が聞こえてくる。このキビキビとした足音はおそらく……
「いらっしゃいアリス」
「こんばんは、パチュリー」
「こんな時間にどうしたの?あぁこの子達の言語機能ならすばらしかったと思うわ」
「そう?ありがとう」
一冊の本を片手に、微笑みながら近寄って来るアリス。
「パチュリー」
「ん?なにかしら?」
「Trick or Treat」
「見ての通り、売り切れよ」
というかこんなにあってもまだ足りないのかしら?甘党だとは思ってたけどここまでなんてね。
「そう……じゃあTrickね」
「……え?この子達にちゃんとあげたじゃない」
「あら?”私”は貰ってないわよ?」
なるほど、人形達を使ってこちらの資源をなくし、罰にかこつけて要求を通す。頭脳派の名に恥じない策ね。
まぁアリスには日頃からお菓子とかを貰っているし、本の数冊くらいいいか。
「それで?どんな本が欲しいの?」
「本はいいわ、知識をちょうだい」
「なにが知りたいの?自律人形の作り方なら私もまだ知らないわよ?」
「この本を読んでほしいのよ」
そういってアリスが差し出したのは『不思議の国のアリス』、しかも普通に英語版。
「なに?暗号でも隠されてるの?」
「いいえ、違うわ」
「?それじゃ何を知りたいの?」
「あなたがどんな声でそれを読むのか」
「……は?」
この子は何を言ってるのだろうか?
「それはつまり、私にこの本を朗読してほしいということ?」
「えぇ、そうよ」
「…………」
あきれて物も言えないとはまさにこのことね、いったい何のつもりかしら?
この子は普段は理知的だけど、ときどき何を考えているのかわからなくなるわ、まぁ本を読むくらいなら別にいいけどね。
「いいわ、読んであげる」
「ありがとう、パチュリー、録音もしていい?」
「別に構わないけど、そんなものどうするの?」
「私、”寝る前に本を読んでもらえないと眠れない病”なのよ」
「……いままでどうしてたの?」
「今日発症したの」
…………本当になんなのかしら?
まぁ読みながら考えようかしら、わかる気がしないけど。
「しょうがないわね、そこに座って」
アリスは私の向かいに椅子を運び、録音の魔法の準備をしてから目をつむる。
完全に聞く体勢ね、私に朗読なんてさせて何がおもしろいのかしら?まぁいいわ、寝たら小悪魔の部屋にでも運べばいいし、さっさと読んで寝かしつけましょう。
さっきから本棚の影で覗いている小悪魔の”お休みのキスをしてもらわないと眠れない病”にも対応しないといけないしね。
パチュリーが好きすぎて仕方ないのでハロウィンSS
下手の横好きだろうが黒歴史だろうが長すぎだろうが、自重しない!
++++
ーーMorning
紅魔館
私の図書館は今日も知識と静寂を提供してくれる……はずだった。
「パチュリー!とりっく、おあ、とりーと!」
「お菓子が欲しいのかー」
「二人とも、図書館では静かにしなきゃだめだよ~」
「えっと、ごめんなさい……」
「・・・・」
静寂を打ち破ったのはたまに絵本や図鑑を読みにくる4人組。
どこで見つけたのかは知らないが、来館者が新しい知識を身につけてゆくのは喜ばしいことだ。
特に彼女達は覚えたての知識や経験を”おしゃべり”という形で私に提供してくれる。
幻想郷中を遊び回っている彼女達の知識は、私にとっては新鮮で、とても興味深い。
「小悪魔」
「はいっ!パチュリー様!ただいまお持ちします!!」
いい返事だ、何もいいつけた覚えはないがあらかじめ準備していたらしい。
だが、台車に山積みのキャンディというのはいささか多すぎるのではないだろうか?
「うお~ スゲー!」
「たくさんあるのかー!」
「わざわざすいません……」
「あれ?この香りは幽香さんの……?」
「はい、風見さんにいただいた花の蜜を混ぜてあるんです。大変だったんですよー 死ぬかと思いました。」
胸をはってドヤ顔の小悪魔、そういえば昨日は早朝から出かけていて、帰って来た時は燃え尽きたような顔をしてたわね。
ハロウィンのキャンディに命をかけるのは幻想郷広しといえどこの子くらいなものだろう。
「どうぞパチュリー様、あなたの小悪魔からのプレゼントです!この子達にはパチュリー様から渡してあげてください」
「あなたが渡せばいいじゃないの」
「そ、そんな!それじゃ私が貰えません!?あっ、トリックが希望ってことですか?では久しぶりにそ、添い寝なんてどうでしょう?」
どうにも間違っているが、たしかに今からこの子達の分までお菓子を用意するのは面倒だ。
それにしても、添い寝はイタズラにはいるのだろうか?そもそも一昨日も一緒に寝たのに……
「小悪魔、手を出しなさい」
「はいっ!ってあれっ?え?……こ、これはまさかの手作りお菓子!? こあぁぁ~」
昨日作っておいたカルメ焼き(湿気らないように魔法をかけてある)をわたすと、小悪魔は陶然とした顔でへたり込んでしまった。
大妖精とリグルは心配しているが、毎年のことなので気にしないでおこう。
「チルノ、両手をだしなさい」
「はい!うわぁ~ ありがとうパチュリー!」
「作ったのは小悪魔よ」
「うんっ、ありがとう小悪魔!」
両手いっぱいのキャンディに目を輝かせるチルノ、他の三人も目を輝かせて待っている。
ルーミアにいたってはよだれまで垂らして……仕方のない子ね、風の魔法でぬぐってあげましょう。
「ほらルーミア、よだれがたれてるわよ。はいお菓子、ちゃんと味わって食べるのよ」
「ありがとう!おいしそうなのかー」
「大妖精、ちゃんと歯磨きするように見といてあげてね」
「はい、わかりました!うわぁこんなに、ありがとうございます!」
「どうぞリグル、悪いけど幽香のところにお使いをお願いしてもいいかしら?」
「もちろんです。ありがとうございますっ!」
幽香宛のお礼状とカルメ焼き(小悪魔の好物、”カルメ”という響きがいいらしい)をリグルに持たせて送り出す。
あの子達は元気が溢れすぎてダダ漏れになっているが、図書館のルールはまもってくれる。「静かに」意外は、だが。
さて、あそこをフラフラ飛んでくるのはレミィとフランかしら?
大方夜まで待てなかったんだろう、我らがお嬢様は何年経っても子供心が抜けないらしい。
「パチュリー トリック・オア・トリートッ!」
「ぱちぇ~ トリート・オア・トリート」
「フラン、レーバティンを置くかレミィの手を離すかしないとお菓子が持てないわよ?あとレミィ、それじゃ選択肢がなくなってしまっているわ」
「夜の王たる私の言葉よ?選択肢なんてはじめからあるわけないじゃふぁいぃ~」
「今は昼間よ?それにそんな大あくびしながらじゃ威厳がないわ」
「フランに起こされたのよ、まったく子供なんだから」
「え~ でもお姉様だってお洋服着たまま寝てたじゃない」
「あら?可愛い妹が起こしにきてくれる運命が見えたらおめかしして待っているのが当然じゃない」
この姉妹の仲良しっぷりといったら、紅魔館がカップルの聖地になるほどだ。
門番の美鈴が恋愛成就のお守りを作って発売したところ飛ぶように売れ、いまや紅魔館の収入の一部を担っている。
ちなみに当人達はその事実をまだ知らない。
「はい、二人とも。これが小悪魔お手製のキャンディね。で、こっちが私の作ったカルメ焼き」
「パチェ、私のはフランに渡してちょうだい。それからフランのは私に」
「え?お姉様、なんでそんな…… あっ!さては私用のお菓子作り忘れたわね!だから取り替えっこでごまかそうとっ!」
「何言ってるのよフラン、あなた用はちゃんと用意してあるわ」
「じゃあなんで?」
「そんなの、食べさせ合いっこするために決まってるじゃない」
「わ~い!楽しみ~!」
「それよりフラン、あなたはちゃんと用意してくれたのかしら?」
「え?もうあげたじゃない」
「?まだ貰ってないわ」
「そんなことないよ、ちゃんと口移しであげたよ?お姉様が寝てる間に」
「え?く、口移し?そそ、それってもしかしなくてもキキキキス?」
「うんっ!おいしいって言ってくれたよ!寝言で」
「ちょっ それじゃ今日が私の初ちゅ~記念日!?」
「ん?ファーストキスなら400年前に貰ったよ?お姉様の舌、やわらかくておいしかったなぁ~」
「えぇっ?!そそそそれってディー…… あふぅぅ……」
我が親友は顔を真っ赤にして気絶してしまった、いつもはリードしている(つもり)なのに一線をこえるととたんに弱くなるんだから……
この分だとフランが幽閉される原因になった暴走の真相はまだ黙っていた方がよさそうね、
フランから聞いたときに口止めしといてよかったわ。
お姫様だっこしたレミィのお腹にお菓子を山積みにして、鼻歌を歌いながら帰って行くフラン。
あら?咲夜に人払いを頼んでる……あ、小悪魔が蜂蜜渡してる、あんな量いったい何に……
まぁレミィは吸血鬼なんだし、蜂蜜で溺れたって死にはしないわね。
ーーーAfternoon
日付はハロウィン、時間はお昼、場所は私の大図書館。
小悪魔には用事を言いつけてあるので戻ってくるまで私はのんびり読書を……と思ったけど来客のようね。
意気揚々とやって来たのは紅白、白黒、青白の三人組、チルノ達とは別の意味で騒がしい、姦しいのほうが適当?
前後の二人はあまり図書館にはこないが、本自体は好きらしい。ラノベがどうとか言ってたけどどんな本なのかしら?
「パチュリー、ブック・オア・トリートだぜ!」
「パチュリーさん、私もいいですか?」
「お賽銭でもいいわよ?」
「はい、早苗と霊夢にはキャンディーとカルメ焼き。魔理沙にはちょうど読み終わったこの本をあげるわ」
「わあぁ ありがとうございますパチュリーさん!諏訪子様たちと一緒にいただきますね」
「なんでカルメ焼きなの?まぁいいか、ありがとう、これは私から、おせんべいよ」
「あらありがとう、小悪魔がカルメ焼き好きだから毎年作ってあげてるのよ」
「な、なんで私だけ本なの?」
「もしかしてカルメ焼きはパチュリーさんが作ったんですか?」
「えぇ、簡単だしね」
「え?パチュリーが作ったのか?めずらしいじゃないか~」
嬉しそうな早苗、ぶっきらぼうだがわざわざお菓子(?)を持ってきてくれた霊夢、私の手元を見つめる魔理沙。
巫女二人(正確には片方は風祝)はおそらく魔理沙にひっぱり出されたのだろう、普段はあまりこないし、霊夢のせんべいなんて包まれてすらいないし。
「ところで 「すいません、私も何か持ってくればよかったですね。それともいたずらします?」
「そうねぇ、じゃあトリートとして今度あなたの神社の歴史を教えてくれない?」
「はい、もちろんいいですよ!」
「なぁ、なんで私だけ 「このキャンディーおいしいわね」
「そう、幽香から貰ったはちみつをブレンドしたみたいよ?」
「あんたの従者は命知らずね……」
「なぁなぁ、私もおかs 「幽香さんって太陽の畑の?」
「ちょっとまって早苗……」
「ふぅ、なぁ、私としては本より「キャンディー落ちてるわよ、はい、袋もいる?」
「ありがとうございます、できればいただけますか?」
小悪魔に用意させておいた紙袋を渡しておく、あら?帽子を押さえつけてるわね。
しかたない、意地悪はこれくらいにしてあげる。
「どうかしたの魔理沙?」
とたんに顔を上げ目を輝かせる魔理沙、切り替えは早いのよね。
「わ、私としてはだな、いつも本ばかりだし、今日のところはお菓子で手を打とうじゃないかとこう思う訳だ!」
「あら?お菓子も死んだら返してくれるの?」
「え?……し、しょうがないなぁ、こんど魔理沙さん特製キノコケーキを持ってきてやるぜ!」
頬を少し赤く染め、うれしそうに帽子を差し出す魔理沙、そんなにお菓子が欲しいの?本当に子供っぽいんだから。
そんなんだからアリスに妹扱いされるのよ。。。
まぁまだたくさんあるし、わけてあげようかしら。
「はい、キャンディー」
「おぉ ありがとうだぜ」
「はい、キャンディー」
「ありがとう」
「はい、キャンディー」
「あ、ありがとう」
帽子いっぱいのキャンディー、人里の子供でもこんなには貰わないだろう。
でも魔理沙はまだ不満そうね、そんなチラチラ見られても…… はぁ、まったくもう。
「まだ足りないの?しょうがないわね」
「お、おお いただくぜ!」
「はい、キャンディー」
魔理沙は「うわ~ん」とか号泣しながら飛び出して行った、いったい何が気に食わなかったのかしら?
キノコキャンディーが気に入らなかったかしらね?包装は他と同じにしたから気づかれてないはずだけど?
早苗はおろおろしながら、霊夢はにやにやしながら帰って行った。
早苗は明日また来てくれるらしい、あの子は外の世界から来らしいし、明日はおもしろい話が聞けそうだわ。
そうこうしているうちに、お使いにやっていた小悪魔が妖精メイド達と美鈴と咲夜をつれてやって来た。
言いつけ通り、ちゃんと整理番号を配布して一列に並ばせている。メイド妖精は数が多いのでこうでもしないと大騒ぎになるのだ。
ちなみにいつもは魔法で食堂に巨大プディングを作ってあげている。
「はい咲夜、いつもご苦労様、甘い物で少しは疲れが取れるといいんだけど」
「いえ、ありがとうございます、パチュリー様」
「はい美鈴、いつもご苦労様、甘い物で少しは眠気が取れるといいんだけど」
「うっ ありがとうございますパチュリー様、精進します……」
さて、後はメイド妖精達ね。人数が多いから大仕事なんだけど、まぁ年に数回のことだし、頑張るとしましょうか。
ーーーーNight
ハロウィンも残り数時間で終わり、レミィとフランはまだ地下室から出てこない、おそらくそのまま一緒に寝るのだろう。
フランの部屋はレミィの部屋の隣に移っているけど、フランが閉じ込められていた地下室はまだ残っていて、フランはことあるごとにレミィを地下室に連れ込もうとしていた。
まぁレミィに取っては罪深い場所だけど、あの子にとっては思い出の場所だしね。いろんな意味で。
そうこうしていると、小さな影が近づいて来た。
「シャンハーイ!」
「あら上海、一人でどうしたの?」
「Trick or Treat!」
いつのまに言語機能をつけたのかしら?しかも流暢ね。
まぁいいか、まだお菓子はたくさん残っているし。
「ちょっとまって、袋に入れてあげるから」
「しゃんはーい」
「あら?しゃべれるようになったんじゃないの?」
「んーん、まだちょとだけ」
「そう?とても上手よ。はいお菓子」
「アリガトー!」
それにしても、いつも一緒にいるアリスはどうしたのかしら?
超遠距離操作の実験とか?
「Trick or Treat!」
「ん?」
「「「「Trick or Treat!」」」」
いつの間にか人形が行列を作ってる。これ、キャンディー足りるかしら?……
小さな紙袋にキャンディーを入れてあげると、人形はお礼を言いながら下がって行く、それを何度もくりかえし、なんとか全員に配り終えた。
もう一個もないわ、アリスはこんなに大量のキャンディーをどうするつもりなのかしら?
と、今度は人間大の足音が聞こえてくる。このキビキビとした足音はおそらく……
「いらっしゃいアリス」
「こんばんは、パチュリー」
「こんな時間にどうしたの?あぁこの子達の言語機能ならすばらしかったと思うわ」
「そう?ありがとう」
一冊の本を片手に、微笑みながら近寄って来るアリス。
「パチュリー」
「ん?なにかしら?」
「Trick or Treat」
「見ての通り、売り切れよ」
というかこんなにあってもまだ足りないのかしら?甘党だとは思ってたけどここまでなんてね。
「そう……じゃあTrickね」
「……え?この子達にちゃんとあげたじゃない」
「あら?”私”は貰ってないわよ?」
なるほど、人形達を使ってこちらの資源をなくし、罰にかこつけて要求を通す。頭脳派の名に恥じない策ね。
まぁアリスには日頃からお菓子とかを貰っているし、本の数冊くらいいいか。
「それで?どんな本が欲しいの?」
「本はいいわ、知識をちょうだい」
「なにが知りたいの?自律人形の作り方なら私もまだ知らないわよ?」
「この本を読んでほしいのよ」
そういってアリスが差し出したのは『不思議の国のアリス』、しかも普通に英語版。
「なに?暗号でも隠されてるの?」
「いいえ、違うわ」
「?それじゃ何を知りたいの?」
「あなたがどんな声でそれを読むのか」
「……は?」
この子は何を言ってるのだろうか?
「それはつまり、私にこの本を朗読してほしいということ?」
「えぇ、そうよ」
「…………」
あきれて物も言えないとはまさにこのことね、いったい何のつもりかしら?
この子は普段は理知的だけど、ときどき何を考えているのかわからなくなるわ、まぁ本を読むくらいなら別にいいけどね。
「いいわ、読んであげる」
「ありがとう、パチュリー、録音もしていい?」
「別に構わないけど、そんなものどうするの?」
「私、”寝る前に本を読んでもらえないと眠れない病”なのよ」
「……いままでどうしてたの?」
「今日発症したの」
…………本当になんなのかしら?
まぁ読みながら考えようかしら、わかる気がしないけど。
「しょうがないわね、そこに座って」
アリスは私の向かいに椅子を運び、録音の魔法の準備をしてから目をつむる。
完全に聞く体勢ね、私に朗読なんてさせて何がおもしろいのかしら?まぁいいわ、寝たら小悪魔の部屋にでも運べばいいし、さっさと読んで寝かしつけましょう。
さっきから本棚の影で覗いている小悪魔の”お休みのキスをしてもらわないと眠れない病”にも対応しないといけないしね。
もう少し展開を切り詰めてメリハリをつけるか、逆に尺を取ってしっかり書き込むか、どちらかにした方がいいかもしれませんね。