※ものすごく短いです。
「トリックオアトリート」
薄暗い図書館に突然、明るく凛とした声が響いた。
パチュリーは手元の本から少しだけ視線を外して、声のした方に目を向けてみる。
そこには、先ほどから本も読まずにじっとしていた金糸の持ち主がいた。
「残念だけど、ここには恋愛小説くらいしか甘いものはないわよ」
碧眼の瞳に向けてそう言い放つと、パチュリーは何ごともなかったかのように視線を本に戻す。
もう少し気のきいたことを言えればいいのだが、今は調べ物に集中していたかった。
「あら、そう。なら仕方ないわね……もう、少しは構ってよ」
人形遣いが何やらぶつぶつと言っているのは聞こえるが、パチュリーの頭の中には文字の羅列が流れるだけで、その内容は全然入ってこない。
「じゃあ、悪戯させてもらうわ」
しかし、にんまりと笑いながら呟いたただならぬ一言には、パチュリーの頭は無意識にも反応した。
「え?」
意識がはっきりとした頃には、すでにランプの光に照らされた人形のように綺麗な顔が至近距離にあった。
そして、頬に残る感触と唇が離れる音。
「お菓子をくれない貴女が悪いのよ」
目の前で不敵な笑みを浮かべる人形遣いは、羽や尻尾といった衣装がなくても、十分立派な悪魔に見えた。
「――ずるいわ、アリス」
真っ赤な顔をした魔女が七色の悪魔にぼそりと文句を零す。
こんなことをされてはもう、本に集中することは出来そうになかった。
「だって今日は皆、童心に帰る日でしょ?」
「それはちょっと違うと思うわ」
けれどもそれも、たまにはいいのかもしれない。
「ねえ、アリス」
「何、パチュリー」
「トリックオアトリート」
「トリックオアトリート」
薄暗い図書館に突然、明るく凛とした声が響いた。
パチュリーは手元の本から少しだけ視線を外して、声のした方に目を向けてみる。
そこには、先ほどから本も読まずにじっとしていた金糸の持ち主がいた。
「残念だけど、ここには恋愛小説くらいしか甘いものはないわよ」
碧眼の瞳に向けてそう言い放つと、パチュリーは何ごともなかったかのように視線を本に戻す。
もう少し気のきいたことを言えればいいのだが、今は調べ物に集中していたかった。
「あら、そう。なら仕方ないわね……もう、少しは構ってよ」
人形遣いが何やらぶつぶつと言っているのは聞こえるが、パチュリーの頭の中には文字の羅列が流れるだけで、その内容は全然入ってこない。
「じゃあ、悪戯させてもらうわ」
しかし、にんまりと笑いながら呟いたただならぬ一言には、パチュリーの頭は無意識にも反応した。
「え?」
意識がはっきりとした頃には、すでにランプの光に照らされた人形のように綺麗な顔が至近距離にあった。
そして、頬に残る感触と唇が離れる音。
「お菓子をくれない貴女が悪いのよ」
目の前で不敵な笑みを浮かべる人形遣いは、羽や尻尾といった衣装がなくても、十分立派な悪魔に見えた。
「――ずるいわ、アリス」
真っ赤な顔をした魔女が七色の悪魔にぼそりと文句を零す。
こんなことをされてはもう、本に集中することは出来そうになかった。
「だって今日は皆、童心に帰る日でしょ?」
「それはちょっと違うと思うわ」
けれどもそれも、たまにはいいのかもしれない。
「ねえ、アリス」
「何、パチュリー」
「トリックオアトリート」