このSSは、『また夏が来た。』の後日譚となる内容を含んでおります。
別に読んでいなくても問題ないのですが一部判り辛いところもあると思われます。
紅き悪魔の館にある大図書館
そこでパチュリー・ノーレッジは優雅に読書をしていた。
「パチェ、起きている。」
パチュリーがこの図書館から出ることはない事を知っているので、起きているかの確認をしながらこの館の主であり、親友のレミリア・スカーレットが尋ねてきた。
「起きているわよ、レミィ。」
本から目を離さず返事を返すパチュリー。
「一寸相談があるのよ。」
「面倒ごとは嫌よ。」
「面倒なことかも知れないのだけど、紅魔館にとっても重要な話なの。」
今迄のレミリアの重要と言っても、暇でしょうがない程度のことだったが、紅魔館にとっても重要という言葉が気になり、パチュリーは本を読むのを止めた。
「一体どうしたの?」
「最近、私のカリスマが落ちている気がするの。」
「そんなこと?」
「そんなことじゃないわよ!重要なことよ!」
「いい、レミィ。カリスマと言うのは、人を魅了する非日常的な能力の事よ。レミィには”運命を操る程度の能力”が使えなくなったわけでもないのだから、カリスマは無くなっていないわよ。ましては落ちたりするものでもないの。」
「言葉の勉強をしに来たんじゃないわよ。こう、周りから恐れられると言うか、尊敬されるとかそういう感じの物が落ちた気がするの。」
「威厳や畏敬のこと?」
「そう、そんな感じの物よ。」
「別にどうでも良いじゃない。」
あまりにも馬鹿馬鹿しい内容にパチュリーは呆れて、そう答えてしまった。
「良くないわよ。いい、パチェ。私が軽く見られるってことは、紅魔館が軽く見られるってことよ。それでなくても、幻想郷に新勢力が次々に現れて、パワーバランスが崩れ始めている中で、パワーバランスの一端を担う紅魔館にその力がないと思われれば、バカな下等妖怪達が紅魔館を襲うかもしれないのよ。」
「そんな身の程知らずのクズ妖怪なんて、美鈴に潰させればいいじゃない。」
「それはそれで構わないのだけど、そんなことが起これば、それこそ私にカリスマが落ちたことの証明になるじゃないの。」
「だから、その言葉の使い方はおかしいわよ。」
「いいのよ。意味さえ通じれば。」
何のことはない。レミリアは”カリスマ”が落ちたことに腹を立てているだけなのだ。レミィの”カリスマ”が落ちたなんて、何を今更である。
レミィが"カリスマ"を持っていたのは、紅霧の異変で幻想郷に名を轟かせた時から、終わらない夜の異変迄で、それ以後、急降下している。未だ地に落ちていない事の方が不思議な程だ。
紅霧の異変を起こし、霊夢、魔理沙に敗れ、それでも受け入れられたことで、今迄、紅魔館の主、スカーレット家の当主として張り詰めていた物がなくなったのか、本来の性格が表に出るようになったからである。
それ自体は決して悪いことではない。だが、あまりにも幼い言動を繰り返すようになった為、軽く見られるようになったのだ。
だが、親友が軽んじられるのはパチュリーの本意ではない。
「それで、どうしたいわけ?」
「カリスマを取り戻したいの。」
「取り戻したいって……いい、レミィ。それは、そんなに簡単なものではないわよ。ましてや狙って取り戻せたりするような物でもないわよ。」
「そうなの?」
「そうよ。例えば、白玉楼の亡霊。あの亡霊もレミィと同じでかなり"カリスマ"を落しているわ。でも、あの亡霊は難解の言葉を使って理解され難いだけで、決して思慮が足りないわけではないし、計算しているかまではわからないけど、立ち回りが上手いわ。それに加えて特技と言って良いかはわからないけど、大食いだから、その分野の人にとっては"カリスマ"になったの。」
「私だって、特技の一つや二つ……」
「多分、今、レミィが思っている特技は、吸血鬼としての身体能力のことだと思うけど、それでは駄目よ。飛ぶ速さでは烏の方が速いし、力だって鬼の方が上でしょ。それに、吸血鬼は泳げないじゃない。」
「それ以外にもあるわよ。知識だってそれなりにあるし、チェスだって得意だし、紅茶だって……」
「知識で私や、里のハクタク、月の薬師にかなう?チェスだって私相手で勝率半分ぐらいじゃない。紅茶だって、咲夜以上に詳しい?」
「なら、私には運命を操る能力があるわよ。」
「でも、レミィの能力はわかり難いの。例えば、大怪我をする運命を操って、怪我しないようにしても、本当にそんな運命があったかどうかなんて誰も判らないのよ。それに万能でもない。もし万能なら、そもそも私に相談なんかせずに、自分の運命を操ってしまえば良いのだから。」
「じゃぁ、どうすれば良いの?」
「だから、簡単じゃないって言っているの。以前のレミィなら、確かに威厳や畏敬の念を持つ者が居たと思うけど。レミィはその時と今の自分が変わったところがあるって気付いてる?」
「私は昔のままよ。」
「そう言うと思ったわ。それが自覚できていればまだ方法があるのでしょうけど、自覚がないのなら他の方法を考えるしかないわね。……取敢えず、軽く見られないように思い付きで何かをやるような事はしない方が良いわね。そして、地味だけど、もっと信頼されたり、慕われたりすることね。」
「信頼されるとか、慕われるなんて関係あるの?」
「”カリスマ”と言うのは少し違うけど、例えば咲夜。本来妖精なんて気ままで考えなしなのに、妖精メイド達を束ねて紅魔館を仕切っているでしょ?それは咲夜が怖いからでなく、信頼されているし、慕われているからよ。」
「それなら私だって……」
「無理ね。咲夜は妖精メイド達に厳しいけれど、妖精メイド以上にキツイ仕事もしているし、仕事量だって比べられない程やっている。部下が失敗しても叱るだけでなく、失敗しない方法を助言したり、失敗の後処理も一緒にしているらしいわ。妖精メイド達はその事を知っているから、咲夜を慕っているし、上司としても信頼もしているの。」
「パチェ良く知っているわね。」
「美鈴や小悪魔から聞いたり、妖精メイド達が話していたのが耳に入っただけよ。図書館から出ない私の耳に入るのだから相当慕われていると思うわ。」
「じゃぁ、私も咲夜の真似をすれば……」
「言っておくけど、やったからと言って直ぐに信頼されたりしないわよ。レミィの性格を考えると100年くらいかかるかも知れないわ。それに、信頼されるとしても紅魔館内限定よ。」
「じゃぁ、駄目じゃない。もっと、ぱ~っ!と、カリスマを取り戻す方法はないの?」
「あるとしたら、器の大きいところを見せるか、イベントで活躍するぐらいね。」
「器の大きいところなんて、どうやって見せればいいのよ。」
「そうね~そうだ、レミィ。咲夜と霊夢が付き合っている事、知っている?」
「うそ!何それ?」
「知らなかったみたいね。咲夜も霊夢も隠しているから仕方ないのだろうけど、この前、咲夜が休暇を申し込んだって言ってた時の事覚えているでしょ?」
「えぇ、霊夢が避暑に遊びに来た日のことでしょ。私も一緒に遊ぶつもりだったんだけど、眠れなくて朝まで起きてたせいで、夕方まで寝ちゃって遊び損ねたわ。」
「えぇ、その時に偶然、小悪魔が見たらしいのだけど、咲夜と霊夢が寄り添って湖を見つめている姿は、まるで恋人同士みたいだったらしいの。それで、そのことを小悪魔が咲夜に尋ねたら、顔を真っ赤にしながら霊夢にプロポーズされたって答えたそうよ。」
「ほんと?凄いじゃない。」
「本当よ。ねっ?そうでしょ、小悪魔。」
「パチュリー様、その話は咲夜さんに口止めされているんですから、あまり言わないで下さいよ。咲夜さんだって、時期を見て、自分からお嬢様に話すって言ってたんですから。」
パチュリーは、姿は見えなかったが近くで本棚の整理をしていた小悪魔に確認の為に声をかけると、小悪魔が本棚の影から姿を現し、答えた。
「貴方は私の使い魔。貴方に話した時点で私にばれていると思わなかった咲夜のミスね。それで、レミィ。今の話を聞いて、レミィはどうする?」
「当然、咲夜と霊夢を思いっきりからかうわ。」
「それでは駄目よ。」
「なんで?こんな面白いこと、そのままにしておけるわけないじゃない。」
「言ったでしょ。器の大きいところを見せるって。こういう時は、事が公になるまでレミィもこの事を知らない事にしておくの。そして、事が公になった時に『そんなことはとっくに知っていたし、二人の事は信頼しているから、特に何も言わなかったのだけど、応援もしているし、祝福もしている。』って言えば良いのよ。」
「う~~~でも、こんな面白いこと知らないふりするなんてできないわよ。」
「我慢しなさい。”カリスマ”を取り戻したいのでしょ?」
「判ったわよ。もう一つのイベントで活躍するって言うのは?」
「異変やコンテストで活躍したりすることね。でも、異変なんてそうそう起こるものでもないし……」
「なら、もう一度私が異変を起こして……」
「それは駄目よ。レミィが異変を起こしたら霊夢が出てくるでしょ?そんなことになったら咲夜がレミィと霊夢の板挟みになってしまうわ。二人の関係を知って、そんなことしたなんて事がばれたら、”カリスマ”が地に落ちるどころか、地霊殿より深くめり込むわよ。」
「じゃぁ、コンテストとかのイベントで活躍って言うのは?」
「簡単に言えば、料理対決や力比べ、マラソンでも大食い競争でも良いわ。そう言うイベントで活躍するのよ。」
「大食い競争は嫌だけど、そっちの方が簡単そうね。」
「そうでもないわよ。さっきも言ったように競走して烏に勝てる?鬼に力で勝てる?レミィは吸血鬼としての身体能力が高いから普通に活躍するどころか圧勝して見せても、”カリスマ”を取り戻せるか怪しいわよ。」
「じゃぁ、どうしたら良いの?」
「もし、やるならレミィにとって不利な条件。最低でも競う相手と同等の条件で活躍するくらいかしら。例えば水泳とか。」
「そんなことできるわけないじゃない。」
「だから、簡単じゃないのよ。レミィが、不利か同等な条件で活躍できることなんてかなり難しいわ。その上で、レミィ、貴方にできることは?」
「身体能力や魔力の様な分野ではダメで、趣味関係もダメ。後は”運命を操る程度の能力”くらいしかないわよ。いっそのこと操れる運命を操れるだけ操ってやろうかしら。それで誰が幸せになろうと不幸になろうと知ったことじゃないわ。」
「乱暴ね。そんなことしたら異変になって……ちょっと待って。もしかしたら良いアイデアかもしれないわね。」
「えっ、ほんとう?」
「えぇ、小悪魔、貴方にも手伝ってもらうわよ。今度の博霊神社の宴会で一芝居打つわよ。」
そして、博霊神社で宴会が開かれる日が来た。
紅魔館からは、レミリアと咲夜、小悪魔が出席することになった。計画立案者のパチュリーは宴会には参加せず、図書館に残り、必要に応じて念話で小悪魔に指示を出すことになっている。
これは、地霊殿の主・古明地 さとりが出席した時にも計画が露見しないようにする為に必要と言うことであり、その為、計画自体は、レミリアどころか、小悪魔にも知らされていなかった。
ただ、レミリアにはパチュリーより、『この計画はレミィがスカーレット家に恥じない言動をすることが、成功の絶対条件』と念を押された。
宴会当日、博霊神社には、霊夢、魔理沙以外に、アリス、幽々子、妖夢、鈴仙、てゐ、萃香と文、にとり、雛、神奈子と諏訪子、早苗、そして、聖とその従者達が集まっていた。
地霊殿の者達とスキマ妖怪達は来ておらず、また、輝夜は館を出た所で妹紅と遭遇、戦闘になった結果、共倒れになり、それぞれ永琳と慧音が引き取って帰った為、出席できないと言うことであった。
取敢えず、小悪魔との話を聞かれないようにする為、レミリアは咲夜を引き離しておくことにした。
「咲夜、今日は私に構わず、楽しみなさい。」
「ですが、お嬢様。私はお嬢様のお世話をすることが…」
「良いのよ。たまには息抜きをしなさい。私の世話は小悪魔にして貰うから。小悪魔も良いでしょ?」
「えぇ、任せて下さい。咲夜さんはいつもお仕事で大変なんですから、たまには羽を伸ばして下さい。」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせて頂きます。小悪魔もお願いね。」
そう言って、咲夜はレミリア達から離れると霊夢の隣に座り、談笑を始めた。
「お嬢様。パチュリー様からもう少し宴会が進んだら計画を始めるそうです。お嬢様は折を見て話に加わるように、とのことです。それと、くれぐれもスカーレット家に恥じない言動を忘れないように、とのことです。」
「判ったわ。」
小悪魔の耳打ちにレミリアが答える。
そして、宴会が進み、皆が少し酔った頃、小悪魔がてゐに話しかけた。
「てゐさん。てゐさんの能力って妖怪にも効果があるんですか?」
「お賽銭を入れてくれば効果があるよ。」
てゐは、そんな事を言うと小さな賽銭箱を出す。
「嘘つかないの。てゐの能力は”人間を幸運にする程度の能力”でしょ。妖怪に効果はないじゃない。」
「鈴仙、なんで、ばらしちゃうのさ。ここんとこ、人間に会っても、山の上の神社に奇跡を起こす巫女がいるからって言って、お賽銭を入れなくなっちゃったんだから。」
「だからって、嘘は駄目でしょ。ごめんなさい、小悪魔さん。でも何か幸運が欲しいことでもあるんですか?」
「私じゃないんですけど、美鈴さんがしょっちゅう魔理沙さんに負けて不幸なので、少しでも幸運に恵まれる方法はないかと思ったんです。」
「そういうことですか。」
小悪魔の話に鈴仙が納得したように頷いている。
「門番には悪いが、私に勝とうなんて、それこそ奇跡に頼るようなもんだぜ。」
そこに魔理沙が茶々を入れてきた。
「それじゃぁ、早苗さんに頼んだ方が良いのですか?」
「えっ、私ですか?そういう奇跡は願った事がないのですが……」
小悪魔に尋ねられ、早苗が自信なさそうに答える。
「一寸、待ってよ。不幸って事は厄が溜まっているのかもしれない。私が厄災も全て引き受ければ不幸でなくなるわよ。」
そこに割って、遠くから雛が話に加わってきた。雛の周りには厄が渦巻いている為、皆に災厄が降りかからないように少し離れた位置にいた。
「なんなら、私が幸せを集めてあげようか?」
今度は萃香が話に入ってきた。
「小悪魔。そういうことはまず私に言うべきじゃないの?美鈴は私の部下なんだから、私が美鈴の運命を操ってあげるわよ。」
パチュリーの計画を知らないレミリアではあったが、パチュリーからの伝言では、折を見て話に加わるよう言われていたので、話に加わった。
「えっと、誰に頼るべきなんでしょうか?」
小悪魔は少し困った顔をしている。
「面白そうじゃないか。じゃぁ、この中で誰が一番幸せにできるか決めようぜ。」
魔理沙が面白がってそんな事を言い出す。
「また変な事考えたわね。」
それまで黙っていた霊夢が呆れて声をあげる。
「ちょっと待ってよ。さっきは嘘言っちゃったけど、私は人間しか幸運にできないんだよ。不利だよ。」
「なら、ここにいる人間を対象にしようぜ。」
「どうやって勝敗を決めるのですか?こう言ってはなんですが、幸せなんて人それぞれですよ。」
魔理沙の言葉に聖が判定基準を尋ねる。
「そうだな~じゃぁ、こうしようぜ。幸せになりたいなら誰を選ぶか。今迄の実績が物を言うんだから公平だろう?で、エントリーするのは、てゐ、早苗、雛、萃香、レミリアでいいんだな?」
名を上げられた者達が頷く。
「じゃぁ、始めるとするか。因みに私は発案者だから公平を規す為に、誰も選ばないで司会進行をする。早苗はエントリーしているから除外。だから霊夢と咲夜に決めて貰う。」
「ちょっと待って下さい。メイドは吸血鬼の従者なんだから、吸血鬼に有利になるじゃない。」
「もし、咲夜が私を選ぶようなことがあったら、咲夜の票は無効票としてくれて構わないわ。」
「それなら、まぁ……公平ですね。」
鈴仙からの物言いが入るが、レミリアがスカーレット家に恥じない言動は、こういうことなんだろうと思い答え、皆それで納得した。
「じゃぁ、始めようぜ。
エントリーナンバー1番 幸運皆来、好運招来 因幡てゐ
エントリーナンバー2番 奇跡が起これば誰でも幸せ、東風谷早苗
エントリーナンバー3番 厄があるから不幸になる。ならば厄は私が引き受ける、鍵山雛
エントリーナンバー4番 たりないなら、集めてしまえ、幸せを、伊吹萃香
エントリーナンバー5番 不幸なら、運命自体を、変えればいい、レミリア・スカーレット」
「語呂が悪いわね。」
「いきなりなんだから、仕方ないだろ。まずは咲夜からだぜ。」
魔理沙は、霊夢の突っ込みに答えてから、咲夜に答えを求める。
「私ですか?」
「そうだぜ。」
「私はやはり……」
「咲夜、待ちなさい。」
咲夜はいつもと変わらぬ表情をし、答えようとする。無効票になるとしても、咲夜はレミリアを選ぶのだろう。レミリアはそれが分かった。そして、従者に気を使わせ、選ばせる等、スカーレット家の名誉に傷をつける事だと気付き、咲夜の言葉を遮った。
「お嬢様?」
少し驚いた顔をする咲夜にレミリアは言葉を続ける。
「咲夜。今は主従の事等考えず、自分の心に素直になって、誰が貴方を幸せにしてくれるのかをよく考えなさい。」
レミリアの言葉を聞いた咲夜は目を閉じ、何かを考えている。そして……
「私は……私はこの人を選びます。」
そう咲夜は答えながら、霊夢の手をとる。
「えっ?私?私は含まれていないわよ。」
突然の咲夜の行動に霊夢は驚き、咲夜を見つめ、そう言う。
「お嬢様。今迄、良くして頂いた恩を仇で返すようで申し訳ありません。ですが、私を一番幸せにしてくれるのは霊夢なのです。」
咲夜は頭を下げ、レミリアに詫びた。
「それで良いのよ、咲夜。偽りで私を選んだりしたら、主従の縁を切るところよ。」
「ありがとうございます。」
「それで、次は霊夢だけど……」
咲夜の言葉に皆呆然としているので、レミリアが霊夢に答えを求めた。
「私?当然、咲夜ね。一緒にいれば幸せだもん。」
霊夢はあっけらかんと答えながら、重ねられた咲夜の手を握る。
「ありがとう、霊夢。」
「私の方こそありがとう、咲夜。」
そう言って寄り添い気遣いあう二人は誰の目から見ても、確かに良い恋人同士だった。
「何、このバカップル?」
「いつから付き合ってんだ?」
「ご馳走様です。」
「惚気られただけだね~」
「いや~これは特ダネですね~。」
そして呆然としていた一同が五月蝿い外野になった。
「そんなわけだから、今回は該当者なしと言うことで良いわね。」
魔理沙も二人を冷やかしているので、レミリアが話を進めることにした。
「待って下さい。」
聖がレミリアの採決に物言いをつけた。
「何?」
「確か霊夢さんと咲夜さんが出会ったのは、レミリアさんの起こした異変の時と聞いております。」
「そうよ。それが何?」
「ならば、霊夢さんと咲夜さんを幸せにしたのは、レミリアさんってことなのではないでしょうか?」
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、私は二人の為に異変を起こした訳ではないの。結果として二人が出会って、付き合うようになったみたいだけど。それに、今回は『幸せになりたいなら誰を選ぶか』って事の筈よ。結果を曲解して判断する事は公平ではないし、そんなことで勝ったことにされても、私のプライドが許さないわ。」
「そうですか。そこまで考えておりませんでした。自尊心を傷つけてしまわれたのならお詫びします。今の発言は忘れて下さい。」
「気にしなくて良いわ。」
噂には聞いていたが、ここまで善意的に解釈するとは、聖は根っからの善人ね、と呆れながらレミリアは答えた。
「一寸、待って下さい。」
今度は文がレミリアに声をかけてきた。
「今度は何?」
「さき程からレミリアさんは全く驚いてないみたいですが、二人の関係を知っていらっしゃたんですか?」
「えぇ、知っていたわ。咲夜は私の従者だし、霊夢は友人だもの。私は二人の事は信頼しているから、今迄、何も言わなかったのだけど、応援もしているし、祝福もしているわ。」
以前パチュリーに聞いた言葉をそのままレミリアが答える。
「いや~驚きました。てっきりレミリアさんなら、二人の事を知ったらからかったり、言いふらしたりすると思ってました。」
「子供じゃないんだからそんなことはしないわよ。」
内心、やろうと思った事を言い当てられてヒヤリとしながらもレミリアは平静を装い続ける。
その後、霊夢と咲夜は文に取材されたり、皆から冷やかされたり、からかわれたりして、その日の宴会は幕を閉じた。
咲夜は片付けを手伝わせる為に神社に残し、レミリアと小悪魔は紅魔館への帰途に着いた。
帰り道、小悪魔がレミリアの言動は完璧だったとのパチュリーの評価をレミリアに伝えた。
レミリア自身も忘れてしまっていた何かをを思い出した気がしていた。
(今日来た連中、私の勇姿に驚いていたわね。烏も感心していたし、もしかして次の新聞は私の特集になるかも……)
レミリアはそんな事を考えながら、気分良く紅魔館に帰った。
宴会が終わってから数日後
レミリアが平静を装いつつも、心待ちにしていた文文。新聞が、遂に発行された。
あの宴会で確実にカリスマを上げた手ごたえを感じ、あの日見せた勇姿を思い出しながらレミリアは新聞を見た。
そこには
『博麗の巫女、熱愛発覚!御相手は紅魔館の瀟洒なメイド長!!』
先日開かれた博霊神社での宴会で今代の博霊の巫女 博麗霊夢さんと紅魔館のメイド長 十六夜咲夜さんが付き合っている事がわかった。
二人が出会うきっかけとなった紅霧異変の首謀者であり、また咲夜さんの働く紅魔館の主、霊夢さんとも友人でもあるレミリア・スカーレットさんによると、二人はこの宴会以前から親密な関係を続けていたとのこと。
また、レミリアさんは今回の二人が交際を発表した事に、『信頼する二人が愛を育んできた事を祝福する。また、これからも二人が良好な関係を築いてくれるように全面的に協力をする。』とコメント。
一部では、既に霊夢さんがプロポーズをし、それに咲夜さんが応えているとの噂もあり、このことから、結婚までは秒読みと見る者もいる。
当紙はこれからも二人の取材を続け、また新しい事実がわかり次第、続報をお伝えしようと思う。
そんな記事とともに、二人が仲睦まじい写真が一面を飾っており、その後の紙面にも二人の経歴や二人を良く知る人のコメントなどが並び、レミリアの思い描く記事は全く載っていなかった。
「パチェー!」
レミリアは叫び声を上げると、図書館のパチュリーを尋ね、またカリスマを取り戻す為の作戦を考えるのであった。
しかし、その宴会に参加した者の話を聞いた者達、新聞の内容を拡大解釈した一部の者達によって、レミリアは縁結びに御利益がある存在と噂され、一部の人、妖怪から信仰されるのだが、それは別の話。
2010.09.01 取敢えず御報告頂いた誤字脱字の修正(3. 名前が無い程度の能力様 沢山の御指摘ありがとうございました。)
レミィ、がんばれっ! 人気は出たじゃないか。
ちなみに俺だったら断然てゐ。
文字が詰まっていると圧迫感があったり、地の文とセリフが見分けにくくなるので読みにくく感じていました。
なので個人的には読みやすくなったと思います。
投稿される前にもう一度、十分に推敲してみてはいかがでしょうか?
つまらない凡ミスでいたずらにご自身の文章の価値を下げるのはもったいないことだと思います。
差し出がましいのは承知の上で、以下に指摘させていただきます。
>面倒になことかも知れないのだけど
>いい、パチェ。、
>jレミィは(それと、この箇所の地の文だけレミリアが「レミィ」と表記されていますが、この地の文はパチュリーによる一人称ではありませんので「レミリア」が正しいのではないでしょうか)
>名を轟かた
>あの亡霊はもともと難解の言葉こそ使って理解され難いだけで
>その分野に人にとっては
>飛ぶ速さでは烏のほうが早いし
>咲夜は精メイド達に厳しいけれど
>紅魔館からは、、
>計画事態は
>レミリアにはぱちゅりーより
>話に加わようにとのことです
>奇跡を起こせる巫女がいるっ言って
>お賽銭を入れなくなっちゃた
>幸運に恵まる
>パチェの計画がどういうものかはわからないが、このままでは私の出番がなくなりそうなので、私も話に加わる。(ここだけ地の文が唐突にレミリアの一人称になっています)
>呆れたような声があげる
>公平を規する
>れミリアは言葉を続ける
>良くして頂い恩
>二人の事を知ったらからかたり
>やろうと思っ事
>評価が伝えれた
>レミリアは平静を装いつつも、心待ちにしていた文文。新聞が、遂に発行された。(この場合、レミリア「が」とするのが適切です)
>当誌はこれからも(当紙が適切です)
>仲睦まじい写真がを
>二人経歴や
誤字脱字以外の文章表現で気になる点も多いのですが、今回は一度読み返せば気付けるであろう単純なミスだけを挙げさせてもらいました。
いちいちうるさい事だとお思いかもしれませんが、どうか今後の創作の糧になさっていただければと思います。
ちょっと、ちょっとだけ、からかってる様子を見てみたかったりw
いやぁ、面白かったです!