遠い遠い……今とは違う何処かにあるという世界、その夜空に真っ赤な流星が流れる
やがてその流星から二つの小さな破片がこぼれ、本体から離れていく
二つの破片は夜の闇に包まれた山へと落下し、流星の本体はやや離れた森の中へと落ちる
ぶすぶすと周囲の樹木を薙ぎ払って落下した流星は、やがてその熱を失い沈黙した
そして――
「わふぅぅ……」
下っ端哨戒白狼天狗、もとえ犬走椛は込み上げて来た欠伸を噛み殺した
一日二日は寝なくとも何ともないが、暇な時間が多いと自然と眠気が襲ってくる
第一、椛が哨戒している妖怪の山に好き好んで登ってくる輩など滅多にいない
いるとすれば紅白の巫女か白黒の魔法使いだろうが、その二人が相手では椛では相手にならない――残念な話だが
だが、そこは根が真面目な椛の事、眠気を気合で押し殺して周囲を見渡す
「……ん?」
すると千里先も見通す椛の視界に妙な物が映った
見慣れた光景の何処かに小さな違和感を覚え、その方向に目を凝らす
鬱蒼と生い茂った樹木の間に、何か焼け焦げたような跡が見える
「何だろ?」
尚も目を凝らせば焼け焦げた樹木の間に、何かが転がっている
初めは流星の破片か何かかと思ったが、そのシルエットは明らかに人工物だった
「剣と……盾、かな?」
山での落し物回収も哨戒部隊の任務……かどうかは知らないが、椛はひょいひょいとその場所までやってきた
周囲は焼け焦げた木々が散乱し、二つの擂鉢状になった地面の真ん中にそれらは落ちていた
「やっぱり剣と盾だ……何でこんな所に?」
ざりざりとした地面を踏みしめながら、先ずは盾の方に足を運ぶ
「よっと……」
鮮やかな緑色をしたその盾は、普段自分が使っている物に比べるとやや重かったが、不思議としっくりとくる
自前の盾を外して装備してみると、全身に力が漲って来るかのような感覚が身体を包む
「うわぁ……凄い」
思わず椛の口から感嘆の声が漏れる
この盾に宿っている力が何なのかまでは流石に分からないが、非常に強力な力を持っていることだけは分かる
恐らくマジックアイテムの類だろうが、生憎とその手の知識は椛にはない
白黒の魔法使いならその手の知識もあるだろうが、聞いてみる気にはなれない
「っと、こっちは……」
今度はもう一つの落下物、剣の方に足を向ける
炎のような装飾が施されたその剣は、幻想郷では珍しい両刃の西洋剣だった
柄を握って引き抜いてみれば、ほんのりと剣自体から温かみを感じる
「こっちもマジックアイテム……かな?」
小首を傾げて剣を眺めるが、どこぞの道具屋と違って道具の名称と用途が分かる訳でもない
「とりあえず、回収しておこうかな」
自前の剣を片付け、拾った剣を手に握ってひょいと空中に駆け上がり、周囲を見渡す
よく見れば山から離れた森の中にも周囲が焼け焦げた跡が見える
生憎とその辺りは哨戒範囲ではないため気軽に探しに行くという訳にはいかない
ほんの少しだけ残念に思いながら、椛は哨戒任務の為に戻っていった
がさりと枝が揺れ、「影」が空を見上げる
光沢を抑えた銀色の鎧が日光を反射し、周囲に柔らかな光を振りまく
周囲に視線を巡らせて、擂鉢状になった地面を一瞥する
(何処かで落としたか……下手に拾われる前に回収しないとな)
白銀の「影」は僅かに溜息を吐くと、山へ向かって歩き出した
木々の陰に隠れる様にして歩を進める「影」の上空を、箒に乗った魔女が通過して行った
「よう、犬パシリ」
「犬走です!!」
からかう口調の白黒魔法使いこと霧雨魔理沙に、椛は真っ赤になって答えた
何時もの事ながらどうもこの人間は苦手だと思う
仏頂面をしてみせる椛に、魔理沙は悪びれた様子も見せない
「毎日毎日ご苦労なこったな、そんじゃ失礼するぜ」
「あ、ちょっと!」
八坂神社の一件以来、魔理沙が山に出入りする事は珍しい事ではなくなった
だが、それでも自分の任務は哨戒と監視だと椛は自覚している
尤も魔理沙が出入りする度に任務を遂行しようとして、結果黒焦げになっているのだが
「お前もこりないなぁ……そんじゃ」
懐からミニ八卦炉を取り出すと、何の躊躇もなく椛に向ける
魔力が集中し、膨大な光となって椛に襲い掛かる
「『恋符』マスタースパーク!!」
「あ、あわわっ!?」
相変わらず全力勝負の魔理沙に、椛は思わず手にしていた、拾った盾を正面にかざした
光の奔流が椛を飲み込み、周囲が爆音に包まれる
ふふん、と鼻を鳴らした魔理沙だったが、次の瞬間には目を剥いた
「お!?」
ぱちぱちと周囲の木々が焦げる中で、椛は無傷で立っていた
自慢の一撃が完全に防がれた事に魔理沙は驚いたが、それは椛も同様だった
緑色の盾はマスタースパークの直撃を受けたにも関わらず傷一つ無く、なお美しさを保っていた
「な、なんだよ、そりゃ!?」
僅かに声を上ずらせる魔理沙だったが、椛が知る由もない
椛も困惑しきった様子で盾を見るが、当然ながら答えてくれる訳も無い
「にゃろう……ならもう一発だぜ」
再びミニ八卦炉を構えて椛に向ける
困惑しきりの椛は、咄嗟にこれまた拾った赤の剣を抜くと、そのまま勢いのままに振り回した
と、その剣から突如として炎が迸り、マスタースパーク発射寸前だった魔理沙に襲い掛かる
「お、おわっ!?」
咄嗟に構えを解き、回避行動をとる魔理沙
剣から迸った炎はまるで生き物のように空中をのたうち、魔理沙の箒の後端を焦がして消えた
「な、何だよそれ!?……マジックアイテムか」
驚きっぱなしの魔理沙に、こちらは予想外の展開に困惑しきりの椛
真剣な表情になった魔理沙が、ややあって不敵な笑みを浮かべる
「だったら……頂いていくぜ!」
「え、えぇぇ!?」
椛の持っている剣と盾を、珍しいマジックアイテムだと理解した魔理沙
珍しい物があれば欲しくて仕方がなくなってしまう癖を全開にして、椛に襲い掛かる
余りの急展開に眼を白黒させる椛は、成り行き上緑色の盾と剣を守る為の戦いをしなければならなくなってしまった
人里の守護者、ワーハクタクたる上白沢慧音は森の中で足を止めた
秀麗といっていいその表情は困惑に彩られ、どうしたものかと腕を組んだ
「これは酷いな」
周囲は既に赤黒く変色した血液で汚され、無残な姿となった妖怪達の残骸が散乱していた
「人間の――手際じゃ、ないか」
表情を曇らせ、惨劇の跡を眺める
村の人間から、森の中で異常な光景を見たという話を聞いて出向いてきたのだが、確かに異常だ
妖怪といえど弾幕ごっこのルールに従っている限りは、ここまで惨殺される筈が無い
であれば、ルールを知らない「外」の妖怪の仕業かとも思えたが、あまりに残虐に過ぎる
それに惨劇の舞台はここ一箇所だけではない、慧音が飛んできた限りでも既に数箇所で同じ光景が見られた
「……何が起きている?」
普通でない事態が起きつつある
怠惰な博麗の巫女に相談しに行こうと心に決め、慧音は飛び立った
その後姿を木々の陰から見つめる、白銀の「影」の視線に気づかないままに
「か、勝っちゃった……」
椛は呆然としながら遠く消えそうになる魔理沙の姿を眺めていた
明日は必ず頂くからな、と涙目で言い残していった魔理沙の気持ちも分からないでもない
自慢のスペルカードは悉く緑色の盾で防がれ、火炎の剣はマスタースパークに匹敵する火力で襲い掛かる
弾幕ごっこのルールぎりぎりだったが、ここまでの完敗も久しぶりだった筈だ
それも(言っては悪いが)格下の椛相手に、だ
「す、凄いなぁ、これ……」
左手の盾と右手の剣を交互に眺める
自分自身の実力を正当に評価できる椛には、この勝利が剣と盾のお陰だという事がしっかりと分かっていた
だからこそ、これは自分の手元において置くべきではないとも考えていた
このまま二つの武具を使い続ければ、何時かそれを自分の実力だと勘違いしてしまいかねない
それは傲慢であり、椛は自身がそうなってしまう事を恐れていた
だが、これほどの力を秘めた剣と盾だ、ほいほいと誰かに渡す訳にもいかない
「文様にでも頼んでみようかなぁ」
それもそれで、魔理沙に奪われる位危険な賭けかもしれないなぁと思い直し、頭を振る
いっその事、八坂神社に奉納しようかとも考えたがそれでは落とし主が困るだろう
結果として暫くは自分が持っているしかないと結論付け、椛は剣と盾を持ち直した
「自戒しなくっちゃ」
気合を入れなおす椛には、傲慢の影など微塵も見つける事は出来なかった
(あれは……確かに剣の炎だ)
山の麓で白銀の「影」は先程まで上空で行われていた戦闘を思い出していた
空を飛ぶ魔女と、恐らくは剣と盾を「拾った」誰かとの戦いを、「影」は最初から最後まで見ていたのだ
(しかし剣が選ぶとは……よほどの精神力の持ち主か)
がしゃがしゃと耳障りな音を響かせながら、「影」は二言三言呟いた
呟きが収まると、周囲に霧が立ち込め始めた
それは異常な速度で広がり、「影」を完全に包み込んだ
先程まで聞こえていた耳障りな音も、「影」の気配も消え、ただ静寂だけが周囲を支配する
不思議な事に、その霧は限定された範囲だけに留まり、「影」の進路を助けるように広がっていく
日が落ち、月明かりが照らし出す頃には、その霧は夜の哨戒を始めた椛の目前にまで迫っていた
「この霧……普通じゃない」
夕方頃から広がった霧は、今は自分の目前にある
千里眼を持つ椛の眼を持ってしてもその内部を覗くことが出来ず、椛は警戒のレベルを上げていた
その霧は魔法も能力も音も気配も、ありとあらゆる物を遮断するようで、得体の知れない不気味さがある
(一当てして様子を見ようか)
そう考えた椛だったが、それは結局無駄に終わる
突然すっと霧が引き、視界がクリアになる
訝しげに周囲を見渡す椛の耳が、異音を捉えた
「誰だっ!?」
すっかり手に馴染んだ赤の剣を構え、異音の方向へと視線を向ける
月光が照らし出す中で、暗い木々の陰から金属同士がこすれあう音が近づいてくる
「夜分に失礼する、剣と盾を探しているのだが」
がしゃり、と夜の闇から出てきた姿に椛は息を呑んだ
全身を白銀の鎧で固め、真紅のマントを背負うその姿は、何かで読んだ西洋の騎士そのものだった
それだけではない、全身から発する「気」が、今まで椛が見てきた誰とも異なっている
強いて言うならば外見通りの重厚さと精錬さ、それとは真逆の何処か暖かな雰囲気が混ざっている
そして何よりも――
(……間違いなく、強い)
自分では相手にならないほど、恐らくは魔理沙や霊夢と同等くらいに強い
剣を交えた訳では無い
しかし椛もそれなりの実力を持っている以上、本能で理解してしまう
そして、彼が探しているのが、自分の持つ剣と盾であることも自然と理解できた
「これ、ですよね」
剣と盾を掲げて見せると、彼は無邪気に瞳を輝かせた
「それです。有難う――ええと」
「椛です。白狼天狗の犬走椛」
自然と名前が口から零れ落ちた
雰囲気と言葉だけで分かる、彼はとてもよく出来た人物だと
それは自分では敵わない強者に他する、礼儀とでも言うべきだろうか
「有難う、犬走殿。私の名は――」
月の光が彼を照らし出す
兜の前立てに光るⅤの形をした角が月光を反して金色に輝く
「ガンダム。私の名は騎士(ナイト)ガンダム、スダ・ドアカから流れ着いた騎士です」
やがてその流星から二つの小さな破片がこぼれ、本体から離れていく
二つの破片は夜の闇に包まれた山へと落下し、流星の本体はやや離れた森の中へと落ちる
ぶすぶすと周囲の樹木を薙ぎ払って落下した流星は、やがてその熱を失い沈黙した
そして――
「わふぅぅ……」
下っ端哨戒白狼天狗、もとえ犬走椛は込み上げて来た欠伸を噛み殺した
一日二日は寝なくとも何ともないが、暇な時間が多いと自然と眠気が襲ってくる
第一、椛が哨戒している妖怪の山に好き好んで登ってくる輩など滅多にいない
いるとすれば紅白の巫女か白黒の魔法使いだろうが、その二人が相手では椛では相手にならない――残念な話だが
だが、そこは根が真面目な椛の事、眠気を気合で押し殺して周囲を見渡す
「……ん?」
すると千里先も見通す椛の視界に妙な物が映った
見慣れた光景の何処かに小さな違和感を覚え、その方向に目を凝らす
鬱蒼と生い茂った樹木の間に、何か焼け焦げたような跡が見える
「何だろ?」
尚も目を凝らせば焼け焦げた樹木の間に、何かが転がっている
初めは流星の破片か何かかと思ったが、そのシルエットは明らかに人工物だった
「剣と……盾、かな?」
山での落し物回収も哨戒部隊の任務……かどうかは知らないが、椛はひょいひょいとその場所までやってきた
周囲は焼け焦げた木々が散乱し、二つの擂鉢状になった地面の真ん中にそれらは落ちていた
「やっぱり剣と盾だ……何でこんな所に?」
ざりざりとした地面を踏みしめながら、先ずは盾の方に足を運ぶ
「よっと……」
鮮やかな緑色をしたその盾は、普段自分が使っている物に比べるとやや重かったが、不思議としっくりとくる
自前の盾を外して装備してみると、全身に力が漲って来るかのような感覚が身体を包む
「うわぁ……凄い」
思わず椛の口から感嘆の声が漏れる
この盾に宿っている力が何なのかまでは流石に分からないが、非常に強力な力を持っていることだけは分かる
恐らくマジックアイテムの類だろうが、生憎とその手の知識は椛にはない
白黒の魔法使いならその手の知識もあるだろうが、聞いてみる気にはなれない
「っと、こっちは……」
今度はもう一つの落下物、剣の方に足を向ける
炎のような装飾が施されたその剣は、幻想郷では珍しい両刃の西洋剣だった
柄を握って引き抜いてみれば、ほんのりと剣自体から温かみを感じる
「こっちもマジックアイテム……かな?」
小首を傾げて剣を眺めるが、どこぞの道具屋と違って道具の名称と用途が分かる訳でもない
「とりあえず、回収しておこうかな」
自前の剣を片付け、拾った剣を手に握ってひょいと空中に駆け上がり、周囲を見渡す
よく見れば山から離れた森の中にも周囲が焼け焦げた跡が見える
生憎とその辺りは哨戒範囲ではないため気軽に探しに行くという訳にはいかない
ほんの少しだけ残念に思いながら、椛は哨戒任務の為に戻っていった
がさりと枝が揺れ、「影」が空を見上げる
光沢を抑えた銀色の鎧が日光を反射し、周囲に柔らかな光を振りまく
周囲に視線を巡らせて、擂鉢状になった地面を一瞥する
(何処かで落としたか……下手に拾われる前に回収しないとな)
白銀の「影」は僅かに溜息を吐くと、山へ向かって歩き出した
木々の陰に隠れる様にして歩を進める「影」の上空を、箒に乗った魔女が通過して行った
「よう、犬パシリ」
「犬走です!!」
からかう口調の白黒魔法使いこと霧雨魔理沙に、椛は真っ赤になって答えた
何時もの事ながらどうもこの人間は苦手だと思う
仏頂面をしてみせる椛に、魔理沙は悪びれた様子も見せない
「毎日毎日ご苦労なこったな、そんじゃ失礼するぜ」
「あ、ちょっと!」
八坂神社の一件以来、魔理沙が山に出入りする事は珍しい事ではなくなった
だが、それでも自分の任務は哨戒と監視だと椛は自覚している
尤も魔理沙が出入りする度に任務を遂行しようとして、結果黒焦げになっているのだが
「お前もこりないなぁ……そんじゃ」
懐からミニ八卦炉を取り出すと、何の躊躇もなく椛に向ける
魔力が集中し、膨大な光となって椛に襲い掛かる
「『恋符』マスタースパーク!!」
「あ、あわわっ!?」
相変わらず全力勝負の魔理沙に、椛は思わず手にしていた、拾った盾を正面にかざした
光の奔流が椛を飲み込み、周囲が爆音に包まれる
ふふん、と鼻を鳴らした魔理沙だったが、次の瞬間には目を剥いた
「お!?」
ぱちぱちと周囲の木々が焦げる中で、椛は無傷で立っていた
自慢の一撃が完全に防がれた事に魔理沙は驚いたが、それは椛も同様だった
緑色の盾はマスタースパークの直撃を受けたにも関わらず傷一つ無く、なお美しさを保っていた
「な、なんだよ、そりゃ!?」
僅かに声を上ずらせる魔理沙だったが、椛が知る由もない
椛も困惑しきった様子で盾を見るが、当然ながら答えてくれる訳も無い
「にゃろう……ならもう一発だぜ」
再びミニ八卦炉を構えて椛に向ける
困惑しきりの椛は、咄嗟にこれまた拾った赤の剣を抜くと、そのまま勢いのままに振り回した
と、その剣から突如として炎が迸り、マスタースパーク発射寸前だった魔理沙に襲い掛かる
「お、おわっ!?」
咄嗟に構えを解き、回避行動をとる魔理沙
剣から迸った炎はまるで生き物のように空中をのたうち、魔理沙の箒の後端を焦がして消えた
「な、何だよそれ!?……マジックアイテムか」
驚きっぱなしの魔理沙に、こちらは予想外の展開に困惑しきりの椛
真剣な表情になった魔理沙が、ややあって不敵な笑みを浮かべる
「だったら……頂いていくぜ!」
「え、えぇぇ!?」
椛の持っている剣と盾を、珍しいマジックアイテムだと理解した魔理沙
珍しい物があれば欲しくて仕方がなくなってしまう癖を全開にして、椛に襲い掛かる
余りの急展開に眼を白黒させる椛は、成り行き上緑色の盾と剣を守る為の戦いをしなければならなくなってしまった
人里の守護者、ワーハクタクたる上白沢慧音は森の中で足を止めた
秀麗といっていいその表情は困惑に彩られ、どうしたものかと腕を組んだ
「これは酷いな」
周囲は既に赤黒く変色した血液で汚され、無残な姿となった妖怪達の残骸が散乱していた
「人間の――手際じゃ、ないか」
表情を曇らせ、惨劇の跡を眺める
村の人間から、森の中で異常な光景を見たという話を聞いて出向いてきたのだが、確かに異常だ
妖怪といえど弾幕ごっこのルールに従っている限りは、ここまで惨殺される筈が無い
であれば、ルールを知らない「外」の妖怪の仕業かとも思えたが、あまりに残虐に過ぎる
それに惨劇の舞台はここ一箇所だけではない、慧音が飛んできた限りでも既に数箇所で同じ光景が見られた
「……何が起きている?」
普通でない事態が起きつつある
怠惰な博麗の巫女に相談しに行こうと心に決め、慧音は飛び立った
その後姿を木々の陰から見つめる、白銀の「影」の視線に気づかないままに
「か、勝っちゃった……」
椛は呆然としながら遠く消えそうになる魔理沙の姿を眺めていた
明日は必ず頂くからな、と涙目で言い残していった魔理沙の気持ちも分からないでもない
自慢のスペルカードは悉く緑色の盾で防がれ、火炎の剣はマスタースパークに匹敵する火力で襲い掛かる
弾幕ごっこのルールぎりぎりだったが、ここまでの完敗も久しぶりだった筈だ
それも(言っては悪いが)格下の椛相手に、だ
「す、凄いなぁ、これ……」
左手の盾と右手の剣を交互に眺める
自分自身の実力を正当に評価できる椛には、この勝利が剣と盾のお陰だという事がしっかりと分かっていた
だからこそ、これは自分の手元において置くべきではないとも考えていた
このまま二つの武具を使い続ければ、何時かそれを自分の実力だと勘違いしてしまいかねない
それは傲慢であり、椛は自身がそうなってしまう事を恐れていた
だが、これほどの力を秘めた剣と盾だ、ほいほいと誰かに渡す訳にもいかない
「文様にでも頼んでみようかなぁ」
それもそれで、魔理沙に奪われる位危険な賭けかもしれないなぁと思い直し、頭を振る
いっその事、八坂神社に奉納しようかとも考えたがそれでは落とし主が困るだろう
結果として暫くは自分が持っているしかないと結論付け、椛は剣と盾を持ち直した
「自戒しなくっちゃ」
気合を入れなおす椛には、傲慢の影など微塵も見つける事は出来なかった
(あれは……確かに剣の炎だ)
山の麓で白銀の「影」は先程まで上空で行われていた戦闘を思い出していた
空を飛ぶ魔女と、恐らくは剣と盾を「拾った」誰かとの戦いを、「影」は最初から最後まで見ていたのだ
(しかし剣が選ぶとは……よほどの精神力の持ち主か)
がしゃがしゃと耳障りな音を響かせながら、「影」は二言三言呟いた
呟きが収まると、周囲に霧が立ち込め始めた
それは異常な速度で広がり、「影」を完全に包み込んだ
先程まで聞こえていた耳障りな音も、「影」の気配も消え、ただ静寂だけが周囲を支配する
不思議な事に、その霧は限定された範囲だけに留まり、「影」の進路を助けるように広がっていく
日が落ち、月明かりが照らし出す頃には、その霧は夜の哨戒を始めた椛の目前にまで迫っていた
「この霧……普通じゃない」
夕方頃から広がった霧は、今は自分の目前にある
千里眼を持つ椛の眼を持ってしてもその内部を覗くことが出来ず、椛は警戒のレベルを上げていた
その霧は魔法も能力も音も気配も、ありとあらゆる物を遮断するようで、得体の知れない不気味さがある
(一当てして様子を見ようか)
そう考えた椛だったが、それは結局無駄に終わる
突然すっと霧が引き、視界がクリアになる
訝しげに周囲を見渡す椛の耳が、異音を捉えた
「誰だっ!?」
すっかり手に馴染んだ赤の剣を構え、異音の方向へと視線を向ける
月光が照らし出す中で、暗い木々の陰から金属同士がこすれあう音が近づいてくる
「夜分に失礼する、剣と盾を探しているのだが」
がしゃり、と夜の闇から出てきた姿に椛は息を呑んだ
全身を白銀の鎧で固め、真紅のマントを背負うその姿は、何かで読んだ西洋の騎士そのものだった
それだけではない、全身から発する「気」が、今まで椛が見てきた誰とも異なっている
強いて言うならば外見通りの重厚さと精錬さ、それとは真逆の何処か暖かな雰囲気が混ざっている
そして何よりも――
(……間違いなく、強い)
自分では相手にならないほど、恐らくは魔理沙や霊夢と同等くらいに強い
剣を交えた訳では無い
しかし椛もそれなりの実力を持っている以上、本能で理解してしまう
そして、彼が探しているのが、自分の持つ剣と盾であることも自然と理解できた
「これ、ですよね」
剣と盾を掲げて見せると、彼は無邪気に瞳を輝かせた
「それです。有難う――ええと」
「椛です。白狼天狗の犬走椛」
自然と名前が口から零れ落ちた
雰囲気と言葉だけで分かる、彼はとてもよく出来た人物だと
それは自分では敵わない強者に他する、礼儀とでも言うべきだろうか
「有難う、犬走殿。私の名は――」
月の光が彼を照らし出す
兜の前立てに光るⅤの形をした角が月光を反して金色に輝く
「ガンダム。私の名は騎士(ナイト)ガンダム、スダ・ドアカから流れ着いた騎士です」
ガンダムとクロスオーバーとか、ないわぁ。
私としては無しです
ガンダムwwwwwwww
武器が強い訳だ
さて、この椛いくら?
短いですが。
続きに期待。次はもっと長くしてもらえると嬉しいです。
未だに捨てられないカードダスの束という束
コレクション用のホルダーも持ってるし馬鹿でかいカード?も持ってるぞ
W以降もナイトで見たかったなぁ…劇場アニメめっちゃ興奮したなぁ…
と、言いたいところですが、中には良作(今まで見てきた中で1つ、2つしかありませんが)があるのも事実。
続きがあるようなので、完結したら点数を入れたいと思います。
出だしがどっかで聞いたことがあるとは思ったけど。
続きに期待。
ちょっと続きが気になってしまった。
期待してみたいですね。
でも文章はしっかりしてるんだなぁ…
ところで文末に句読点をつけないのは何かのこだわり?
最初なのでフリーレスで。
好きです。
神様レベルの方が来てしまったな
さてどうなるのでしょう
しかし、知ってるか知らないかで年代がばれるwww
ところで炎・力は持ってて霞が無さそうなのは気のせい?
装備している表現がありますね。
読む人を選ぶかもしれませんが、
知ってる者としては次に期待します。