Coolier - 新生・東方創想話

にぶみこ

2009/11/20 01:52:53
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「こんにちはー。霊夢さん居ますかー?」

「あら………」

あの娘ったら今日も来たのか、と。面倒ではなく寧ろ疑惑に近い感覚で私は手元の作業を止めて相手を出迎える。

「霊夢さーん………?」

「はいはい、居るわよー」

ちょっと出て来るのが遅れた程度でえらくションボリとした声を漏らした来訪者に少しだけ苦笑して、私は

縁側へと運ぶ。襖を開けて顔を見せてやると、そいつは一気に表情を明るくした。

効果音的には『パアァ~』なんてのが一番妥当そうね。

「こんにちは、霊夢さん」

「こんにちは、早苗。今日もお茶飲んでく?」

「はいっ」

例えるなら花のような眩しい笑顔で、外来の巫女(正確には風祝とかだそうだけど、区別がつかんから巫女で)

東風谷 早苗は本日も私の神社にお茶を飲みにやって来たのだった。かれこれコレで半年になるかな。

事の発端はこれまた半年前………丁度こいつの神社の神様が起こした騒動が一先ずの終局を向かえ

暫くした頃………信仰を増やす為の布教活動の帰りだとか言って早苗はウチにやって来るようになっていた。

ペースは月一から週一、三日に一回と狭まっていきここんとこ最近はほぼ毎日だ。そんなに私の出すお茶が

美味しいのかしらね?

普通なら茶葉の量が倍化するから少し躊躇するところだけど、残念ながら私にはあの娘を邪険に出来ない

理由がある。

「ああ、そうだ………忘れないうちに」

思い出したように、懐を探る早苗。取り出したのは、何やらチャリチャリと音の鳴る巾着袋………何を隠そう、お賽銭だ。

そう、お賽銭だ。早苗はウチに来る度に多かれ少なかれ絶対にお賽銭を入れてくれる。布教活動の一環で、私の神社に

行きたくても行けない人達のお賽銭をわざわざ持ってきてくれているのだ。

そんな良い娘を自分の飲む量が減るからなんて理由でお茶をケチったら、私の良心は

修復不可能なレベルの傷を負うだろう。

「私なんかの為にわざわざご苦労ねぇ」

「いえいえ。霊夢さんの生活が潤うなら、このぐらい」

「今でも充分潤ってると思うんだけどね、私は」

三食ちゃんと食べてるし。あ、小食だからひもじく見られてんのか私?

ここら辺はいつかちゃんと訂正しとこ。

しっかし………

「早苗、何でアンタいつも賽銭手渡しなの?」

「駄目、ですか?」

「や、駄目じゃないけど」

*                            *                              *

「はぁ………やっぱり美味しいですね、霊夢さんのお茶」

「そう?ありがと」

心底穏やかな優しい表情をしている早苗に釣られて、思わず私も小さく笑ってお茶を啜る。

自分で言うのもアレだが………不味くはないな、うん。

「「………………」」

飲んでいる間は、互いに会話は少ない。お茶………特に最初の一杯はのんびり静かに愉しむモノだと

思う私の信条に付き合うのは幻想郷どこを探しても早苗ぐらいだろう。いつも私の隣で、私のお茶を

飲む姿を見て幸せそうに笑っている。

「………何?今日の私の顔には何がついてるの?」

「え………あっ!い、いえ!そんなんじゃ………」

慌てて取り繕うように、お茶をちびちびと飲む早苗………うーん、いっつも私の顔見てるけど

お茶を飲んでいる時の私はそんなに興味深い顔してんのかな?

「………静かですね」

「最近は特にね………ついこの間まではウザいくらい来てたのに、どうしたのかしら?」

二杯目のお茶を淹れ、落ち着きを取り戻した早苗が何気なく切り出す。

ここ最近、博麗神社には人間及び妖怪の来訪が全く確認されていない。特にこの一週間は、早苗しか

来ていないと言う過去最少参拝数を更新している。ウチに居候している鬼ですら、早苗が来ると

霧散化してどこか消える始末だ。早苗に苦手意識でもあるのか、それとも徒党を組んで何か

でかい異変の準備でもしているのか?だったら早急にしばき倒しておく必要があるが………

「皆さん、気を遣ってくれているんだと思います………遠慮しなくても良いのに」

嬉しいですけどね。と、早苗が何か苦笑しているのを見ると特に問題は無さそうだ。私の直感も、

『まあ大丈夫なんじゃね?』と告げていることだし。

しかし早苗は今の現状の何が嬉しいのだろうか。

「まあ、宴会の一つでも開けば勝手に集まるか………もしそれで誰も来ないようなら、
 本格的に調査しなきゃいけないけど………っと」

「あれ………どうしたんですか、それ?」

談笑しているだけってのもアレなので、私は途中で止めた“それ”を手元に寄せ作業を再開する。

やっているのは………毛糸の編み物だ。

「そろそろ冬も近いしさ、ちょちょいと作ってるところ」

「編み物とかも出来るんですね………やっぱり、霊夢さんは凄いなぁ」

「いやあ、私からしたら早苗の方が相当凄いけど」

魔理沙とはまた違うタイプだけど、早苗は努力家だ。不精な私とは違って、何かを

継続出来るってのは素直に凄いと思う。

毎日山から里まで往復したり、私の代わりに賽銭貰ってきたりとか頭下がるわマジで。

「いえいえ、私なんて。家事炊事洗濯お掃除に妖怪退治何でもござれな霊夢さんには敵いませんよ」

「そんなに大した事じゃないと思うけどねぇ。長い間一人で生きてきたから必然的に出来るようになっただけだし、
 第一妖怪退治以外はどれもこれもかなり適当よ?」

ぶっちゃけ朝なんか卵と醤油とご飯だけで良いって思ってるし。栄養バランスなんてガン無視上等だわ。

…………ん?何で早苗そんな悲しそうな顔してんの?

「その………ごめんなさい」

「ん………ああ、成程」

“一人で生きてきた”ってフレーズに気を遣ってんのか。真面目だなもう。

「気にすること無いわよ。物心ついた頃から一人だったんだから、悲しみようもないし」

「でもっ!」

「良いんだって。今はアンタが居るんだから」

「え………」

「アンタも、魔理沙も、咲夜とか妖夢とか紫とかその他諸々が周りに居て、退屈して無いから
 それで良いのよ………ん?どしたの早苗」

「あ、や………何でもないです」

何だか物凄くテンションを下げて、お茶を飲み始める早苗………むむ、何か気に障るような事

さっきのやり取りで言ったかな?それとも人生を楽観視しすぎて怒ったか?

「………霊夢さんは、もうちょっと自分の言動に注意した方が良いです」

「無重力と定評を戴いてる私には、難しい課題ね………よし、出来た」

残りの毛糸を使いきり、仕上げを終えた編み物が姿を現す。

柄は、青を基調とした長いマフラー。真ん中に二本だけ白い線が編まれているシンプルデザインだが、

なかなかの出来じゃないかと思う。それを見て、「上手ですね~」と目をキラキラさせている早苗。

………うん、そうだな。

「それじゃあ、はい。早苗」

「え?」

完成したてのマフラーを、早苗に渡す。私の行為が理解できていないのか、ポカンと口を開いたままの

早苗に、ちょっとだけ苦笑する。

「あの………?」

「うん、あげる」

「ええっ!?」

私からのプレゼントに、素っ頓狂な声を上げる早苗。元々あげるつもりで作ってたけど、そんなに驚きますかね。

「いやさ、紫の話だと外来人の連中は冬は暖かい空間から出ない時間が増えて寒さに弱くなってるって
 聞いたからさ。アンタも外の人間だから少しでも寒く無いようにと思って………一応、か弱い外来人を
 守るのも巫女の仕事だしね。って、アンタはか弱くないか」

はっはっは~と笑って見せたが、早苗は相変わらず顔真っ赤にしてカチコチのまま。

………情けを掛けられたと思って怒ってんのかしら?今でこそのんびりおっとりしてるけど、初めて相対した時は

すげぇプライド高そうだったし。

「………いらないなら、捨てても良いけど?」

「とっ!とんでもない!!嬉しいです………凄く………」

後生大事そうに、早苗は私のマフラーを抱く。余りモノでそこまで愛着沸かしてくれるとは、嬉しいもんだわね。

「でも霊夢さんは、やっぱり自分の言動に注意した方が良いです。ずるいです」

「ずるいって、何がよ。もうアンタは…………む?」

ふと、私の直感が奥(正確には境内か)でコソコソしている何かを察知する………

こんな辺鄙な神社に、まさかコソ泥か?

「早苗、私ちょっとお花摘みに行って来るわね」

「あ………はいー」

幸せそうに、心ここに有らずな早苗は気の抜けた返事を返す。

私が境内の角を曲がるまで、彼女はずっとマフラーを抱いていた。

*                            *                              *

「ちょ、アイツこっち来るよ!」

「え?でも厠行くって」

「んなもん嘘に決まってるでしょ!早いトコ」

「コラそこ」

「「あうんっ!?」」

鬼が起こした宴会騒動の時に習得した瞬間移動(※東方萃夢想の消えて上空から蹴り込むアレの応用)にて

背後へ回り込み、おスネちゃんに玉串を横から叩き込む。種族は違えど人型故急所は同じか、悶絶する

侵入者の二名。

「ちょ、容赦ないねぇお前は………」

「人ん家に勝手に上がりこむ輩に慈悲など不要よ。で?何しに来たのよアンタら」

「やあ……ちょっとね」

おスネを摩って起き上がる二人の名は、八坂 神奈子と守矢 諏訪子。どっちも神様で、早苗が奉っている奴等だ。

神様があの程度で悶絶するのって、どうなんだろ。

「早苗がさ、いつもこの神社の話をするもんだからどんなものかと思って。
 んんで、ここで様子を見てたら」

「私に見付かったと………なんつうか、過保護ねぇ」

「そりゃ、早苗は私らの娘みたいなもんだしね………それにしても、幸せそうに
 顔を崩しちゃってまあ」

ここからでも視えるのか、恐らく早苗の緩みきった顔に苦笑している神奈子。

その横顔は、神様と言うより母親のよう。

「…………ありがとうな、博麗の。アンタのお陰で、早苗の笑顔が増えた。
 礼を言わせてくれ」

「神様直々にお礼とはまた…………でも私、アイツに何もしてないけど?」

「そんな事ないさ」

ご自慢のカエル帽子を指先で回して、見た目は小娘のクセにやたら大人びた雰囲気を纏って諏訪子は微笑む。

「早苗はさ………現人神って立場故にかなり浮いてて、対等に話せる相手………話してくれる相手が居なくて
 ずっと独りだったんだよ。挙句自分殺して私達に仕えてさ………正直、ここに来る前は結構荒んでた」

「でも………アンタがあの娘を叩きのめして、敵対していたにも関わらずすんなりと受け入れてくれた
 お陰であの娘は対等………いや、それ以上の相手を手に入れられたのさ。そうそう出来るもんじゃないよ?こんなの」

「ふーん………」
 
神奈子たちの言葉に、私は何とも締まらない返事しか出来なかった。私としてはいつも通りの異変解決だったし、

そんなに感謝されてもなあと言うのが私の心情だ。つーか、早苗も結構苦労してんのね。

「まあ、あれだ。今後とも早苗のことよろしく頼むよ。ついで言うと、早苗の気持ちに気付いてくれると
 私達としちゃあ万々歳だ。それじゃあな、博麗の」

「ん、ああ………うん」

何やら妙に私を信頼した二柱の神は、結構あっさりとその場を後にした。やれやれとこれ見よがしに溜息をついて、

私は踵を返す。

「お待たせ、早苗…………って、寝てるのか」

縁側に戻ると、待ちくたびれたのか早苗はすやすやと眠っていた。両腕の間には、相変わらず私の

マフラーを抱いたまま。

「…………早苗の気持ち、ね」

あの神も意味深な事を告げたもんだ。いくら勘が鋭くても、覚りじゃあるまいに私は人の気持ちまで読めないんだけど………

「ん………れいむさぁん………」

「ふふ、はいはい………私はここにいますよーってね」

早苗の手をそっと握り、私はすっかり冷めてしまったお茶を飲む。

まあ、これから早苗とは長い付き合いになりそうだし、ゆっくり知っていこう。

早苗が、私のことをどう思っているのか。

私も、早苗のことをどう思っているのか。




































「霊夢さーん」

「あら、いらっしゃい」
今夜も妄想爆発中、鉢植えです。しょーこりもなく投稿した第三弾は、レイサナでした。取り敢えずあと七個ぐらい書けたらいいなぁと思う今日この頃です。さて、相も変わらず本能のまま書いたら自分の中の東方では

・霊夢は万能だが鈍感で、お姉さん属性持ちの天然のたらし。
・そんな霊夢に早苗は憧れていて、ちょくちょく会いに行っている。
・そんな純な早苗に遠慮して、博麗神社の常連は最近自重気味。

と言うのが判明しました。セクハラお嬢様を最初に切り出した所為かちょっとインパクト不足な感が否めませんが、ちょっとでも愉しんでいただけたら嬉しいです。さて、次こそパチュレミかな………?
それでは、失礼しました。

>誤字について
アウチッ!ご指摘ありがとうございます。修正しときました
鉢植え
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コメント



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博麗ですよっと
33.100名前が無い程度の能力削除
ん~っ 甘々ですねぇ
こーゆーの大好きです
ごちそうさまでした
レイサナはみんなのジャスティス
35.100名前が無い程度の能力削除
ほんわか幸せになれました
36.100名前が無い程度の能力削除
甘いなぁ~
39.100名前が無い程度の能力削除
良いね
43.40名前が無い程度の能力削除
誰かのために気を使う連中なんて少数だから
覗き見してる二神が他の連中を追い払ってたとかの方が
説得力があるじぇい
45.100名前が無い程度の能力削除
レイサナにどっぷりはまっちまった
48.90名前が無い程度の能力削除
ほんわかさせていただきました。
いただきました、が、(投稿時間からしたら今更ですが)誤字のご報告を。

>守矢 諏訪子。
諏訪子様の上の名前は洩矢となります。
発音はいっしょですが、守矢と綴るのは神社のほうですね。

モレヤ神のおわすモリヤ神社! ややこしいけど、愛を以て覚えてあげて!