魔理沙は白い息を吐きながら、家から一歩外に出た。
「こりゃまたすごい」
異変かと思った魔理沙は、通りにくい道をかき分けて急いで博麗神社に向かった。
「霊夢、大変なんだ!!」
「どうしたのよ、慌てて」
というのに博麗の巫女は全く気にする素振りを見せず、呑気にお茶を飲んでいるではないか。
「見れば分かるだろ!? 外で異変が起きてるんだよ!」
「異変? 異変って『雪』のこと?」
「ああ、そうだ。呑気にお茶なんか飲んでる場合じゃないぜ!!」
「あれはね、雪と言って、一つの自然現象で……」
「んなわけあるかっ!! だって!!」
雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪
「こんなに漢字の『雪』が道に積もってるんだぞ!?」
「絶景ねぇ」
なぜか分からないが、『雪』という漢字が大量にあらゆるところに積もっていた。
「私が思うにな、霊夢」
「ん?」
「これはれっきとした異変だと思うんだ」
「異変がそんなしょっちゅう起きてたら幻想郷はとっくに滅びてるわよ」
「そうならないように動くのが霊夢だろ!!」
「……もう仕方ないわねぇ」
「おおっ! ついに動くのか!?」
霊夢は立ち上がった途端、ある方向を見つめた。どうやら、勘がもう答えを教えてくれてるようである。
「阿求のところに行くわよ、魔理沙」
「阿求? あいつが黒幕ってことか? それは信じ難いが……」
「違うわよ。解決するの、阿求に力を借りて」
寒い中、さっさと空を飛び、訪ねるは人里にある稗田家。空を飛びながら見下ろしていたが、あらゆるところに『雪』は積もっていた。
「阿求様ですね、少々お待ちください」
使用人に阿求に用があると言うと、しばらくして、使用人が阿求の部屋へ案内してくれた。
「こちらへどうぞ」
扉を開けると、座って本を読んでいた阿求がいた。
「阿求、聞きたいことがあるんだけど」
「こんにちは霊夢さん。まずはこちらに座ってください」
「よっ! 阿求! 私もいるぜ?」
「魔理沙さんも座ってください」
用意されていた座布団は阿求の分も含めて三つあった。
「座布団まで用意してくれてサンキューな」
「いえ、この座布団はあなた方のために用意したものではありません」
「どういうことだ?」
「先程までお客様がいたんですよ。あなた方と違って、ちゃんと事前に連絡をしてくださったお客様が」
「もしかして怒ってたりする?」
「別に怒ってませんよ。そうだ、そのお客様に会ってみますか? まだ屋敷内にいるはずです」
さっきから魔理沙ばかりが会話していた。ならば霊夢はというと、ずっと何かを考えているようだった。
「いや私たちは異変解決のために来たんだ……そのお客様とやらに会いにきたわけじゃ」
「いえ、会ってもらいましょう」
「えっ」
「悪いけど阿求、そのお客さん、ここに呼んでくれる? きっと、その人たちが異変解決の鍵よ。魔理沙」
お茶を啜りながら待っていると、障子が開いた。ちなみに、慣れない正座をしていた魔理沙は足が痺れて動けないでいる。
「って、ええっ!?」
「……これは珍しいわね」
そこにいたのは……。
雪
消
漢字だった。
「はじめまして、雪です」
「私は消と申します。博麗さんの方は、前にお会いしましたよね?」
「はい、久しぶりですね、消さん」
「えっ、えっ!?」
霊夢は淡々としてるが、漢字が普通に喋っていることに魔理沙は驚くばかりだった。
「おい霊夢!? こ、この人たちはいったい……」
「八百万の神と言って、昔から神はあらゆるものに宿ってると考えられてきた……もちろんそれは漢字にだって例外じゃない」
「つまり漢字の神様ということですよ、魔理沙さん」
そう阿求は呟いた。
「漢字の神様がいたなんて……それに幻想郷にいたなら一度くらい会ってもおかしくないはずなのに……。霊夢、お前は知り合いっぽいが……」
「まあね。と言っても、私だって一度しか会ったことがないくらい、本当に珍しい人たちだけど」
そう言って霊夢が二人を見ると、漢字たちは笑いながら答えた。ちなみに笑顔なのかは分からない、そもそもどこが顔なのかも分からない。
「あはは、普段は端の方に住んでますからなぁ」
「まあ漢字が喋ったり動いてたりしていたら不気味でしょう? ですから、姿を見せることは基本ないのです」
「な、なるほど……って待てよ? 今回の『雪』漢字騒動、もしかして!」
「申し訳ありません。実はこちらの『雪』の不手際でして」
「申し訳ありません」
雪が謝った。しっかり90°に体を曲げている。
「そこで消さんが来たんですね」
「そういうことです」
「おいおい、どういうことなんだよ、霊夢」
魔理沙は状況が飲み込めず、霊夢に問いただした。
「それはこの二人が教えてくれるわ」
「私が説明します」
「えっと、あんたは雪さんだよな」
「はい。私は雪という漢字に宿った神です」
漢字にも神は宿る。しかし、全ての漢字に神が宿るわけではない。雪や消という言葉は、昔から妖怪や神と縁が深い漢字なのである。
「今回の騒動は全て私の過ちが原因なのです」
「過ちって?」
「あれは影分身の練習をしていた頃」
「そんな頃あるか? 普通」
魔理沙のツッコミもスルーして、雪さんは喋り続けた。
「忍者という存在に憧れてしまい、影分身の練習をしていたのですが、なかなか上手くいかず、結果間違って私の形をした模型のようなものが幻想郷中に降ってしまったのです」
「それが至る所に積もってる『雪』か」
「はい」
そこに霊夢が続ける。
「似たような異変は前も一度あったのよ。あれは第三次影分身ブームの頃かしら」
「定期的に来てるのかよ、そのブーム。じゃあ今は何度目なんだよ」
「そのときはまた違う漢字が幻想郷中に降っちゃって、そのときに博麗神社にやってきたのが消さん含む、漢字連盟の人たちで」
「漢字連盟!? いや、そもそもそんな異変、私は知らないぞ!?」
「それはそうよ。あれは真夜中に起きて、真夜中の間にわずか五分で解決したんだから」
「この事件を知ってるのは、私阿求と、上白沢慧音、博麗霊夢、八雲紫、漢字連盟くらいですかね」
「まあ、すっかり私も忘れてて、阿求と話してる間にようやく思い出したんだけどね」
どうやら、同じような事件は前にもあって、そのときもこの漢字連盟? の人たちがやってきてたらしい。
「それで事件の内容は分かったが、じゃあここからどうやって解決するんだよ。以前はどうやって解決したんだ?」
「そこは私の専門外。漢字のことは漢字連盟に任せるしかないの、ね、消さん」
「任せてください」
いつのまにか雪さんは後ろの方に下がっていて、消さんが堂々と立っている。
「私には消す能力があるのです」
「消す? 消すって何を」
「もちろん物をです」
なんと目の前にとんでもなく強い奴がいるではないか。魔理沙は、またとんでもない奴が現れた、と頭を悩ませている。
「ただし、同じく漢字の神によって作り出されたもの限定ですが」
「な、なんだ……それなら安心だな、平和で」
「だから私に任せてください。幻想郷中に『消』を降らせ衝突させることで、『雪』を相殺し消そうということです」
「だそうよ、魔理沙。私も昔見てるから信じていいわ、私たちにできることはない。素直に見守ってましょう」
「ま、まあ霊夢がそう言うなら……」
そして五人で屋敷の庭に向かい、消さんを見守る。
「じゃあそろそろ始めますか」
「すいません、少しよろしいですか?」
すると隣にいた阿求が突然質問をし始めた。
「私の記憶違いかもしれないのですが」
「はい」
「あのとき漢字を消したのは『消』さんではなく、同じく漢字連盟の『無』さんじゃなかったですか?」
ここに来て新人物、いや新漢字の登場である。
「いや、違いますよー、紛れもなく私ですって。ねえ、霊夢さん?」
「……なんかそう言われると、『無』さんだった気がするような、えっと、私も深夜で寝ぼけてたからなぁ」
しかもここにきて霊夢の記憶が不確かなものになる。
「えっと、確か、あのときも消さんは『私にもできるはずなんだ!』とか、ほざいてたような」
ほざいてた、っておい。
「ふふ、霊夢さん。それは記憶違いですよ」
「そ、そうだったけ」
「しかし私もそんな気がするんですよね」
と口を挟むのは阿求。
「阿求さんも記憶違いですよ。間違いありません。実は私、ふふ、結構記憶に自信がある方なんです」
「ですよねぇ」
「消さん。相手、稗田家だぞ?」
相変わらず魔理沙のツッコミはスルーされ、ついにこの時がきた。幻想郷中に『消』を降らす時が。
「『消』よ、降れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!」
そして幻想郷中に『消』が降り積もり……。
雪消雪消雪消消雪消雪雪消消消雪雪消消雪消雪消消雪消消消雪雪消消消雪雪雪消消雪雪雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪雪雪消消消消消雪雪消消消雪雪雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消消雪消消雪雪雪消雪雪雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪消雪消雪消雪雪消雪消雪消消雪消雪雪醤油消雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪雪雪消消消消消雪雪消消消雪雪雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消消雪消消雪雪雪消雪雪
「『雪』消えてないじゃん!?!?」
魔理沙のツッコミが冬の空気に響き渡る。寒いと声が届くよね。
「『消』一緒に積もっちゃってるじゃん!?!?」
山彦が響く。命蓮寺まで届いたかな?
「どう見ても悪化しちゃってるじゃん!?!?」
それを見て、消さん、申し訳そうに。
「てへ」
「てへ、じゃないが!?」
霧雨魔理沙、涙流し心の一句。
消えないじゃん
積もってるじゃん
悪化してるじゃん
——霧雨魔理沙(字余り)
そのあと、『無』さんが来てくれて事なきを得ました。
おわり
「こりゃまたすごい」
異変かと思った魔理沙は、通りにくい道をかき分けて急いで博麗神社に向かった。
「霊夢、大変なんだ!!」
「どうしたのよ、慌てて」
というのに博麗の巫女は全く気にする素振りを見せず、呑気にお茶を飲んでいるではないか。
「見れば分かるだろ!? 外で異変が起きてるんだよ!」
「異変? 異変って『雪』のこと?」
「ああ、そうだ。呑気にお茶なんか飲んでる場合じゃないぜ!!」
「あれはね、雪と言って、一つの自然現象で……」
「んなわけあるかっ!! だって!!」
雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪
「こんなに漢字の『雪』が道に積もってるんだぞ!?」
「絶景ねぇ」
なぜか分からないが、『雪』という漢字が大量にあらゆるところに積もっていた。
「私が思うにな、霊夢」
「ん?」
「これはれっきとした異変だと思うんだ」
「異変がそんなしょっちゅう起きてたら幻想郷はとっくに滅びてるわよ」
「そうならないように動くのが霊夢だろ!!」
「……もう仕方ないわねぇ」
「おおっ! ついに動くのか!?」
霊夢は立ち上がった途端、ある方向を見つめた。どうやら、勘がもう答えを教えてくれてるようである。
「阿求のところに行くわよ、魔理沙」
「阿求? あいつが黒幕ってことか? それは信じ難いが……」
「違うわよ。解決するの、阿求に力を借りて」
寒い中、さっさと空を飛び、訪ねるは人里にある稗田家。空を飛びながら見下ろしていたが、あらゆるところに『雪』は積もっていた。
「阿求様ですね、少々お待ちください」
使用人に阿求に用があると言うと、しばらくして、使用人が阿求の部屋へ案内してくれた。
「こちらへどうぞ」
扉を開けると、座って本を読んでいた阿求がいた。
「阿求、聞きたいことがあるんだけど」
「こんにちは霊夢さん。まずはこちらに座ってください」
「よっ! 阿求! 私もいるぜ?」
「魔理沙さんも座ってください」
用意されていた座布団は阿求の分も含めて三つあった。
「座布団まで用意してくれてサンキューな」
「いえ、この座布団はあなた方のために用意したものではありません」
「どういうことだ?」
「先程までお客様がいたんですよ。あなた方と違って、ちゃんと事前に連絡をしてくださったお客様が」
「もしかして怒ってたりする?」
「別に怒ってませんよ。そうだ、そのお客様に会ってみますか? まだ屋敷内にいるはずです」
さっきから魔理沙ばかりが会話していた。ならば霊夢はというと、ずっと何かを考えているようだった。
「いや私たちは異変解決のために来たんだ……そのお客様とやらに会いにきたわけじゃ」
「いえ、会ってもらいましょう」
「えっ」
「悪いけど阿求、そのお客さん、ここに呼んでくれる? きっと、その人たちが異変解決の鍵よ。魔理沙」
お茶を啜りながら待っていると、障子が開いた。ちなみに、慣れない正座をしていた魔理沙は足が痺れて動けないでいる。
「って、ええっ!?」
「……これは珍しいわね」
そこにいたのは……。
雪
消
漢字だった。
「はじめまして、雪です」
「私は消と申します。博麗さんの方は、前にお会いしましたよね?」
「はい、久しぶりですね、消さん」
「えっ、えっ!?」
霊夢は淡々としてるが、漢字が普通に喋っていることに魔理沙は驚くばかりだった。
「おい霊夢!? こ、この人たちはいったい……」
「八百万の神と言って、昔から神はあらゆるものに宿ってると考えられてきた……もちろんそれは漢字にだって例外じゃない」
「つまり漢字の神様ということですよ、魔理沙さん」
そう阿求は呟いた。
「漢字の神様がいたなんて……それに幻想郷にいたなら一度くらい会ってもおかしくないはずなのに……。霊夢、お前は知り合いっぽいが……」
「まあね。と言っても、私だって一度しか会ったことがないくらい、本当に珍しい人たちだけど」
そう言って霊夢が二人を見ると、漢字たちは笑いながら答えた。ちなみに笑顔なのかは分からない、そもそもどこが顔なのかも分からない。
「あはは、普段は端の方に住んでますからなぁ」
「まあ漢字が喋ったり動いてたりしていたら不気味でしょう? ですから、姿を見せることは基本ないのです」
「な、なるほど……って待てよ? 今回の『雪』漢字騒動、もしかして!」
「申し訳ありません。実はこちらの『雪』の不手際でして」
「申し訳ありません」
雪が謝った。しっかり90°に体を曲げている。
「そこで消さんが来たんですね」
「そういうことです」
「おいおい、どういうことなんだよ、霊夢」
魔理沙は状況が飲み込めず、霊夢に問いただした。
「それはこの二人が教えてくれるわ」
「私が説明します」
「えっと、あんたは雪さんだよな」
「はい。私は雪という漢字に宿った神です」
漢字にも神は宿る。しかし、全ての漢字に神が宿るわけではない。雪や消という言葉は、昔から妖怪や神と縁が深い漢字なのである。
「今回の騒動は全て私の過ちが原因なのです」
「過ちって?」
「あれは影分身の練習をしていた頃」
「そんな頃あるか? 普通」
魔理沙のツッコミもスルーして、雪さんは喋り続けた。
「忍者という存在に憧れてしまい、影分身の練習をしていたのですが、なかなか上手くいかず、結果間違って私の形をした模型のようなものが幻想郷中に降ってしまったのです」
「それが至る所に積もってる『雪』か」
「はい」
そこに霊夢が続ける。
「似たような異変は前も一度あったのよ。あれは第三次影分身ブームの頃かしら」
「定期的に来てるのかよ、そのブーム。じゃあ今は何度目なんだよ」
「そのときはまた違う漢字が幻想郷中に降っちゃって、そのときに博麗神社にやってきたのが消さん含む、漢字連盟の人たちで」
「漢字連盟!? いや、そもそもそんな異変、私は知らないぞ!?」
「それはそうよ。あれは真夜中に起きて、真夜中の間にわずか五分で解決したんだから」
「この事件を知ってるのは、私阿求と、上白沢慧音、博麗霊夢、八雲紫、漢字連盟くらいですかね」
「まあ、すっかり私も忘れてて、阿求と話してる間にようやく思い出したんだけどね」
どうやら、同じような事件は前にもあって、そのときもこの漢字連盟? の人たちがやってきてたらしい。
「それで事件の内容は分かったが、じゃあここからどうやって解決するんだよ。以前はどうやって解決したんだ?」
「そこは私の専門外。漢字のことは漢字連盟に任せるしかないの、ね、消さん」
「任せてください」
いつのまにか雪さんは後ろの方に下がっていて、消さんが堂々と立っている。
「私には消す能力があるのです」
「消す? 消すって何を」
「もちろん物をです」
なんと目の前にとんでもなく強い奴がいるではないか。魔理沙は、またとんでもない奴が現れた、と頭を悩ませている。
「ただし、同じく漢字の神によって作り出されたもの限定ですが」
「な、なんだ……それなら安心だな、平和で」
「だから私に任せてください。幻想郷中に『消』を降らせ衝突させることで、『雪』を相殺し消そうということです」
「だそうよ、魔理沙。私も昔見てるから信じていいわ、私たちにできることはない。素直に見守ってましょう」
「ま、まあ霊夢がそう言うなら……」
そして五人で屋敷の庭に向かい、消さんを見守る。
「じゃあそろそろ始めますか」
「すいません、少しよろしいですか?」
すると隣にいた阿求が突然質問をし始めた。
「私の記憶違いかもしれないのですが」
「はい」
「あのとき漢字を消したのは『消』さんではなく、同じく漢字連盟の『無』さんじゃなかったですか?」
ここに来て新人物、いや新漢字の登場である。
「いや、違いますよー、紛れもなく私ですって。ねえ、霊夢さん?」
「……なんかそう言われると、『無』さんだった気がするような、えっと、私も深夜で寝ぼけてたからなぁ」
しかもここにきて霊夢の記憶が不確かなものになる。
「えっと、確か、あのときも消さんは『私にもできるはずなんだ!』とか、ほざいてたような」
ほざいてた、っておい。
「ふふ、霊夢さん。それは記憶違いですよ」
「そ、そうだったけ」
「しかし私もそんな気がするんですよね」
と口を挟むのは阿求。
「阿求さんも記憶違いですよ。間違いありません。実は私、ふふ、結構記憶に自信がある方なんです」
「ですよねぇ」
「消さん。相手、稗田家だぞ?」
相変わらず魔理沙のツッコミはスルーされ、ついにこの時がきた。幻想郷中に『消』を降らす時が。
「『消』よ、降れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!」
そして幻想郷中に『消』が降り積もり……。
雪消雪消雪消消雪消雪雪消消消雪雪消消雪消雪消消雪消消消雪雪消消消雪雪雪消消雪雪雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪雪雪消消消消消雪雪消消消雪雪雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消消雪消消雪雪雪消雪雪雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪消雪消雪消雪雪消雪消雪消消雪消雪雪醤油消雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪消雪雪雪雪消消消消消雪雪消消消雪雪雪雪消消雪消消雪消雪消雪消雪消消雪消消雪雪雪消雪雪
「『雪』消えてないじゃん!?!?」
魔理沙のツッコミが冬の空気に響き渡る。寒いと声が届くよね。
「『消』一緒に積もっちゃってるじゃん!?!?」
山彦が響く。命蓮寺まで届いたかな?
「どう見ても悪化しちゃってるじゃん!?!?」
それを見て、消さん、申し訳そうに。
「てへ」
「てへ、じゃないが!?」
霧雨魔理沙、涙流し心の一句。
消えないじゃん
積もってるじゃん
悪化してるじゃん
——霧雨魔理沙(字余り)
そのあと、『無』さんが来てくれて事なきを得ました。
おわり
大変に爆速で笑かされました。良かったです。