里に何代も続く豪商がおった。その一族は代々、陶磁器の市場を独占することで利益を上げていたそうだ。彼の屋敷には二人の座敷童がおった。小柄の少女の座敷童。座敷童とは恵みをもたらす徳の高い神様のことじゃ。
ある時、五郎という漁師が夜道を歩いておった。彼は豪商一家の屋敷のそばを通る時、とある不思議な体験をしたと言う。
反対方向から歩く二人の少女を彼は見たのだ。この道の先には五郎の家と、豪商の屋敷しかない。それ以外は薮だ。
五郎は不思議に思い、二人の少女に尋ねた。
「夜は暗い。妖怪に食われるぞ。早く帰れ。」
二人の少女は五郎の問いを無視して通り過ぎていった。五郎は不思議に思ったが、どうすることもできない。それから五郎は家に帰って、早々に寝てしまった。
翌朝の正午に五郎は目を覚ました。いつものように漁に出かける五郎。同じ道を歩いていると五郎は様子がおかしいことに気がついた。
今朝、豪商一家が皆死んだと。五郎は風の噂でそう聞いた。
身構えて、それから五郎は振り向いた。五郎の家の隣の豪商の屋敷。その屋敷の門の前で大勢の野次馬が見物をしていた。五郎はそれを確認してう唾をごくりと飲んだ。
それから五郎は走った。一目散に走った。豪商の屋敷に着くと一人の爺が喚いているのを五郎は聞いた。
「ワシは昨夜、この屋敷に風貌のおかしな異国人が尋ねるのを見たのじゃ。それはそれは不気味で、目は赤く、頭からは管のようなものが二束伸びている。そいつは屋敷の住人に何か小さなものを渡しておった。毒じゃ。」
「ワシは怖くなって走って逃げた。けれど間違いなくその異国人が屋敷の者を殺したのじゃ。あれはあれは恐ろしい。妖怪に違いない。」
後になっても豪商一族の滅亡は未解決の怪談として語られることが多い。しかし博麗神社の巫女、博麗霊夢はこう言っている。
「その異国人ってやつはどうせ月の兎のことでしょう。あの月の奴らが何か悪巧みでもしたのでしょう。」
そして博麗の巫女はこう付け加えた。「決して怪しい薬は買わないように。代わりに博麗のお守りを買いなさい。」と。
一方で、魔法の森に住み、時々里に降りてくる少女。巫女とよく一緒にいる箒に乗る少女はこう言っている。
「異国人の持ってきたもの。それはただの薬だぜ。毒なんかじゃない。けど私が見るに、屋敷の住人の死因は毒だ。それは間違いない。でもそれは魔法の森で一番よく取れる毒キノコによる症状とそっくりだよ。だからあの日の献立表が分かれば解決だぜ。」
また、この話は『陶磁器を独占する行動への警告』として創作されたのだと、寺子屋の教師、上白沢慧音は子供達に解説している。
屋敷のそばに鬱蒼と広がる雑木林のように、いつまでも真相は藪の中である。
ある時、五郎という漁師が夜道を歩いておった。彼は豪商一家の屋敷のそばを通る時、とある不思議な体験をしたと言う。
反対方向から歩く二人の少女を彼は見たのだ。この道の先には五郎の家と、豪商の屋敷しかない。それ以外は薮だ。
五郎は不思議に思い、二人の少女に尋ねた。
「夜は暗い。妖怪に食われるぞ。早く帰れ。」
二人の少女は五郎の問いを無視して通り過ぎていった。五郎は不思議に思ったが、どうすることもできない。それから五郎は家に帰って、早々に寝てしまった。
翌朝の正午に五郎は目を覚ました。いつものように漁に出かける五郎。同じ道を歩いていると五郎は様子がおかしいことに気がついた。
今朝、豪商一家が皆死んだと。五郎は風の噂でそう聞いた。
身構えて、それから五郎は振り向いた。五郎の家の隣の豪商の屋敷。その屋敷の門の前で大勢の野次馬が見物をしていた。五郎はそれを確認してう唾をごくりと飲んだ。
それから五郎は走った。一目散に走った。豪商の屋敷に着くと一人の爺が喚いているのを五郎は聞いた。
「ワシは昨夜、この屋敷に風貌のおかしな異国人が尋ねるのを見たのじゃ。それはそれは不気味で、目は赤く、頭からは管のようなものが二束伸びている。そいつは屋敷の住人に何か小さなものを渡しておった。毒じゃ。」
「ワシは怖くなって走って逃げた。けれど間違いなくその異国人が屋敷の者を殺したのじゃ。あれはあれは恐ろしい。妖怪に違いない。」
後になっても豪商一族の滅亡は未解決の怪談として語られることが多い。しかし博麗神社の巫女、博麗霊夢はこう言っている。
「その異国人ってやつはどうせ月の兎のことでしょう。あの月の奴らが何か悪巧みでもしたのでしょう。」
そして博麗の巫女はこう付け加えた。「決して怪しい薬は買わないように。代わりに博麗のお守りを買いなさい。」と。
一方で、魔法の森に住み、時々里に降りてくる少女。巫女とよく一緒にいる箒に乗る少女はこう言っている。
「異国人の持ってきたもの。それはただの薬だぜ。毒なんかじゃない。けど私が見るに、屋敷の住人の死因は毒だ。それは間違いない。でもそれは魔法の森で一番よく取れる毒キノコによる症状とそっくりだよ。だからあの日の献立表が分かれば解決だぜ。」
また、この話は『陶磁器を独占する行動への警告』として創作されたのだと、寺子屋の教師、上白沢慧音は子供達に解説している。
屋敷のそばに鬱蒼と広がる雑木林のように、いつまでも真相は藪の中である。
一つの事象が幻想郷の中で様々な牽強付会の解釈によって藪の中へと紛れていく感じがいかにも怪談らしくてとても好みです