(ふーっ、今日は疲れたな……)
そう命蓮寺の自室で書き物をしつつ、後姿に枯れたおじさんばりの哀愁を漂わせているのは、小さな大将のナズーリンである。
いつもこれほど疲れている訳ではないが、今日は白蓮による説法会が執り行われたため、寺の者は総出で準備をしていたのだ。
特にナズーリンはその頭の回転の速さを見込まれ、全体への指示と事務方のほとんどをこなしていたので無理も無い。
しかし、ナズーリンに気の抜けた深い吐息を吐かせる理由は他にもあった。
(ご主人……今回は派手にやっちゃったからなぁ……)
定期的に行われる説法会。ナズーリンのご主人こと寅丸星も当然準備に参加するし、会場でも働く。
その様子は甲斐甲斐しいのだが、いかんせん小さな失敗をしたりする。
会の日取りを回覧板に挟み忘れたり、段取りが書かれた紙を失くしたり、聴衆を違う部屋に案内してしまったりと様々だ。
その度にナズリーンが持ち前の機転を発揮し、何とか場を収めてきたのだ。
ナズーリンは、灯台に照らされた毘沙門天への報告書を前に、『当人は身を粉にして実に誠実な働きを見せるも、未だ粗忽の癖が治らず』と渋い顔で書き記す。
そこまで書いて筆を置くと、肩を労わる様にさする。ついでに肩も揉む。
(……うーん、がちがちだ)
するとナズーリンは部屋の隅っこの葛篭から、孫の手を取り出す。
背中が痒い訳ではない。目的は柄にくっついているゴルフボールだ。
香霖堂で手に入れたその柄をひっくり返し、ゴルフボールで肩を叩き始めた。
とんとんとんとん、と適度な重さの衝撃音が部屋に響く。
(はーっ……ってオヤジ臭くなっちゃったな~)
最早、オヤジを通り越しておじいちゃん並みであることに、ナズーリンは気付く気配も無いのだった。
――◇――
しばらくとんとんしていると、後ろに人の気配を感じて振り返る。
「どうしたご主人。お腹が空いたのか?」
「そんなことではありません」
若干むくれた顔で立っていたのは、噂をすれば影の星である。
星はナズーリンの許可を得て、部屋に入ってくる。
いつも明るくハツラツとした彼女だが、隣に座るとシュンとした表情になる。
耳が頭の上にあったら、ぱたんと萎れているだろう。
「……どうしたんだい、ご主人?」
「ただ……今日は、その……すみませんでした」
そう言うと、星は視線をそらしうつむいてしまう。
今回の説法会では、予てから信者との親睦をもっと深めたいという白蓮の意向により、精進料理やおはぎなどの甘い物といったささやかな手料理を振舞うこととなった。
ナズーリンが献立を作成し、星も含む一同が下拵えをしたお陰で、納得のいく料理ができた。
さて説法が終わり、給仕を任された星が意気揚々と料理を運んでいった。
その矢先、裾を踏んづけてすっ転び、料理を派手にぶちまけた。
よりによって一番手のかかった大皿の主菜がパー。
挙句にわざわざ説法を聞きに来てくれた住人の一人に料理を引っかけてしまったから、さぁ大変。
星は半ベソで謝るだけだったが、ナズーリンは冷静だった。
まずは丁寧に非礼を詫び、村紗に着替えを持ってこさせた。
片づけをさっさと済ませ、ありあわせの材料で見栄えのする代わりの料理まで作って見せたのだ。
幸い相手は心の広い人間で笑って許してはくれたが、これまでにない大きな失敗がよっぽどこたえたらしい。
だがナズーリンは手をぱたぱたと振ると、殊更明るくこう言った。
「ああ、別に気にしてないぞ。あの後だって、ご主人もちゃんとその人の服を洗濯したし、丸く収まったじゃないか。
ただ、しょっちゅうやられるのは困るけどね」
「でも、かなり大変そうだった……」
「なに、どーってことない。たまには私も働かないと」
ナズーリンは軽くはははと笑うと、とんとんを再開する。
星はその様子をじっと眺めていたが、ふと口を開く。
「ナズーリン」
「ん、何だい?」
「肩揉みしてあげます」
「……へ?」
――◇――
ぎゅっぎゅっぎゅっ、と小さな肩を挟み込んだ手が、等間隔の運動を繰り返す。
「痛くないですか?」
「うん、もっと強くていい」
そう言うと指の圧迫感が、ぎゅぎゅぎゅ、くらいに進化する。
「痛くないですか?」
「うん大丈夫。そのくらいで」
正座のナズーリンの後ろで、星が真剣な表情で肩揉みをしていた。
初めナズーリンは、ご主人にそんなことやらせるわけには……と遠慮していたが、頑として譲らない時の眼をしていた星に負け、恐る恐る背中を向けた。
すると、すぐに星の手が伸びてきた。白木の様にしなやかな指が肩に触れ、ナズーリンはくすぐったそうに肩をすくめる。
そのまま壊れ物を扱うように表面を撫でられ、ナズーリンは「ふわぁぁ~」と嬌声をあげてしまった。
そしてゆっくりと、星が肩を揉む。
星の体温は子供の様にいつも温い。特に手はカイロみたいにぽかぽかで、滞った血流をじんわりと刺激し活性化させる。
大雑把なイメージの彼女だが、逐一ナズーリンにお伺いを立て、一揉み一揉み心を込めて一心不乱に凝りを取ろうと努める。
楽器を弾く様な繊細な指遣いに、ナズーリンは凝り固まった筋肉と心がほぐれて行くのを感じた。
(はあぁ~……これは本当に気持ちがいい)
ナズーリンは表情筋を弛緩させて、滋味あふれる快感を噛み締める。
これは決して一人では感じ得ない、とても原始的だがかけがえの無い、二人分の温もりという魂の潤いだった。
「うぅー、極楽極楽。ご主人、私は昇天しそうだよ」
「そんな、これくらいで大袈裟ですよ」
そう言って、二人は小さく笑い合う。
「それに私は嬉しい」
「え?」
ふと、ナズーリンが口を開く。
「ご主人も今日は一生懸命頑張って、とても疲れているだろう。なのに私のこと気遣ってくれて、こんなに心地いいことをしてくれた。
その気持ちがとても嬉しいんだ。
だからご主人、ちょっとくらい失敗したからって、少しくらい失物したからって、私は絶対軽蔑したり愛想を尽かしたりはしないよ。
こういうご主人の気の優しさを、真摯な心を、他にもご主人の素敵な所をいっぱい知っているからね」
そう諭す様に語りかけて、ナズーリンは肩越しに星の手に触れる。
星は大きく目を見開くと、何かを堪えるように二度息を大きく吸って吐いた。
「ナズーリン」
「ん、どうし――」
た、は言えなかった。
星が後ろから、ナズーリンを捕まえる様に抱きついてきたからだ。
両手を胸の辺りに回し、がっちりと固定する。
突然の抱擁に、ナズーリンは総毛立たせて固まってしまう。
だが星も身じろぎ一つせず、ナズーリンの体温、匂い、息遣いの全てを背中越しに感じたいかの様に顔を埋め、ただ密着度合いを高める。
やがて時間が経ち、ナズーリンも力を抜いて星のなすがままに体を任せることにした。
「……怖かったんです」
星が、震えるような小さな声でナズーリンに呟く。
「私、いつもドジばかりをしていて……その度にナズーリンに助けって貰ってばかりで……
感謝している反面、とても不安でした。
もしかして、あまりの無能さに幻滅しているのではないか。主従関係だから、嫌々しているのではないか。
でも、もし嫌われていたらと考えると恐ろしくて……本心を尋ねることもできなかった……」
背後の独白を黙って聞くナズーリン。
星はナズーリンの背中から顔を上げると、今度は鎖骨の上から包み込む様に抱きかかえ、ほっそりとした白いうなじに口付ける程接近する。
熱い吐息が首筋をつたい、ナズーリンの脈が少し上昇した。
「でも、今日はナズーリンの本当の気持ちが聞けてよかった……
いつも私のこと助けてくれて、特に今日は私のせいで色々大変だったのに、明るく振舞ってくれて……
そんな貴方がご主人と呼んでくれて、私は三国一の幸せな寅です。
だから……肩揉みならいつでもできるし、してあげられるから……もう一人で……無理しないで欲しい。
私も、もっとナズーリンにありがとうの気持ちを込めて、たくさん何かをしてあげたいんです」
そう言い終わると、止まっていた手を動かし肩揉みを続ける。
ナズーリンは少しうつむく。
そして、熱くなった目頭を手でぐにぐにと揉んで平常に戻してから顔を上げ、はっきりと星に言う。
「……わかった。でも一つだけ訂正させてくれ」
「……何ですか?」
「私は別に無理をしていない。
だって、一番大切な宝物を守ることを無理するって言わないだろう。
だから無理なんてしてないし、そのことを気に病む必要も無いぞ」
「……はい……ありがとう」
その後二人は黙々としていたが、星の柔和な笑顔と、ナズーリンの真っ赤な耳たぶが二人の心境を雄弁に語っていた。
――◇――
仕上げにさすさすさす、っと撫でられる。
揉みしだかれるのと違い、撫でられた所がちりちりと電流が走った様に甘く痺れる。
ナズーリンは、なんだかクセになりそうだと考えてしまい、かぶりを振って否定する。
「はい、おしまいです」
「……ありがとう、ご主人。すごく良かった」
「へへへ、そうですか。じゃ、私はもう寝ます」
「あ、待って」
「?」
寝所に戻ろうとする星を、ナズーリンが引き止める。
頬を朱に染め、片方の拳を手に当てたナズーリンが上目遣いでこうおねだりをする。
「これ、本当に気持ちいいから……これからも、ちょくちょくやってもらっていいかい?」
「……はい、もちろんですよ」
その後、ゴルフボール付孫の手の出番は減りました。
でも、たくさんの安らぎは増えました。
そんなある夜の物語。
【終】
そう命蓮寺の自室で書き物をしつつ、後姿に枯れたおじさんばりの哀愁を漂わせているのは、小さな大将のナズーリンである。
いつもこれほど疲れている訳ではないが、今日は白蓮による説法会が執り行われたため、寺の者は総出で準備をしていたのだ。
特にナズーリンはその頭の回転の速さを見込まれ、全体への指示と事務方のほとんどをこなしていたので無理も無い。
しかし、ナズーリンに気の抜けた深い吐息を吐かせる理由は他にもあった。
(ご主人……今回は派手にやっちゃったからなぁ……)
定期的に行われる説法会。ナズーリンのご主人こと寅丸星も当然準備に参加するし、会場でも働く。
その様子は甲斐甲斐しいのだが、いかんせん小さな失敗をしたりする。
会の日取りを回覧板に挟み忘れたり、段取りが書かれた紙を失くしたり、聴衆を違う部屋に案内してしまったりと様々だ。
その度にナズリーンが持ち前の機転を発揮し、何とか場を収めてきたのだ。
ナズーリンは、灯台に照らされた毘沙門天への報告書を前に、『当人は身を粉にして実に誠実な働きを見せるも、未だ粗忽の癖が治らず』と渋い顔で書き記す。
そこまで書いて筆を置くと、肩を労わる様にさする。ついでに肩も揉む。
(……うーん、がちがちだ)
するとナズーリンは部屋の隅っこの葛篭から、孫の手を取り出す。
背中が痒い訳ではない。目的は柄にくっついているゴルフボールだ。
香霖堂で手に入れたその柄をひっくり返し、ゴルフボールで肩を叩き始めた。
とんとんとんとん、と適度な重さの衝撃音が部屋に響く。
(はーっ……ってオヤジ臭くなっちゃったな~)
最早、オヤジを通り越しておじいちゃん並みであることに、ナズーリンは気付く気配も無いのだった。
――◇――
しばらくとんとんしていると、後ろに人の気配を感じて振り返る。
「どうしたご主人。お腹が空いたのか?」
「そんなことではありません」
若干むくれた顔で立っていたのは、噂をすれば影の星である。
星はナズーリンの許可を得て、部屋に入ってくる。
いつも明るくハツラツとした彼女だが、隣に座るとシュンとした表情になる。
耳が頭の上にあったら、ぱたんと萎れているだろう。
「……どうしたんだい、ご主人?」
「ただ……今日は、その……すみませんでした」
そう言うと、星は視線をそらしうつむいてしまう。
今回の説法会では、予てから信者との親睦をもっと深めたいという白蓮の意向により、精進料理やおはぎなどの甘い物といったささやかな手料理を振舞うこととなった。
ナズーリンが献立を作成し、星も含む一同が下拵えをしたお陰で、納得のいく料理ができた。
さて説法が終わり、給仕を任された星が意気揚々と料理を運んでいった。
その矢先、裾を踏んづけてすっ転び、料理を派手にぶちまけた。
よりによって一番手のかかった大皿の主菜がパー。
挙句にわざわざ説法を聞きに来てくれた住人の一人に料理を引っかけてしまったから、さぁ大変。
星は半ベソで謝るだけだったが、ナズーリンは冷静だった。
まずは丁寧に非礼を詫び、村紗に着替えを持ってこさせた。
片づけをさっさと済ませ、ありあわせの材料で見栄えのする代わりの料理まで作って見せたのだ。
幸い相手は心の広い人間で笑って許してはくれたが、これまでにない大きな失敗がよっぽどこたえたらしい。
だがナズーリンは手をぱたぱたと振ると、殊更明るくこう言った。
「ああ、別に気にしてないぞ。あの後だって、ご主人もちゃんとその人の服を洗濯したし、丸く収まったじゃないか。
ただ、しょっちゅうやられるのは困るけどね」
「でも、かなり大変そうだった……」
「なに、どーってことない。たまには私も働かないと」
ナズーリンは軽くはははと笑うと、とんとんを再開する。
星はその様子をじっと眺めていたが、ふと口を開く。
「ナズーリン」
「ん、何だい?」
「肩揉みしてあげます」
「……へ?」
――◇――
ぎゅっぎゅっぎゅっ、と小さな肩を挟み込んだ手が、等間隔の運動を繰り返す。
「痛くないですか?」
「うん、もっと強くていい」
そう言うと指の圧迫感が、ぎゅぎゅぎゅ、くらいに進化する。
「痛くないですか?」
「うん大丈夫。そのくらいで」
正座のナズーリンの後ろで、星が真剣な表情で肩揉みをしていた。
初めナズーリンは、ご主人にそんなことやらせるわけには……と遠慮していたが、頑として譲らない時の眼をしていた星に負け、恐る恐る背中を向けた。
すると、すぐに星の手が伸びてきた。白木の様にしなやかな指が肩に触れ、ナズーリンはくすぐったそうに肩をすくめる。
そのまま壊れ物を扱うように表面を撫でられ、ナズーリンは「ふわぁぁ~」と嬌声をあげてしまった。
そしてゆっくりと、星が肩を揉む。
星の体温は子供の様にいつも温い。特に手はカイロみたいにぽかぽかで、滞った血流をじんわりと刺激し活性化させる。
大雑把なイメージの彼女だが、逐一ナズーリンにお伺いを立て、一揉み一揉み心を込めて一心不乱に凝りを取ろうと努める。
楽器を弾く様な繊細な指遣いに、ナズーリンは凝り固まった筋肉と心がほぐれて行くのを感じた。
(はあぁ~……これは本当に気持ちがいい)
ナズーリンは表情筋を弛緩させて、滋味あふれる快感を噛み締める。
これは決して一人では感じ得ない、とても原始的だがかけがえの無い、二人分の温もりという魂の潤いだった。
「うぅー、極楽極楽。ご主人、私は昇天しそうだよ」
「そんな、これくらいで大袈裟ですよ」
そう言って、二人は小さく笑い合う。
「それに私は嬉しい」
「え?」
ふと、ナズーリンが口を開く。
「ご主人も今日は一生懸命頑張って、とても疲れているだろう。なのに私のこと気遣ってくれて、こんなに心地いいことをしてくれた。
その気持ちがとても嬉しいんだ。
だからご主人、ちょっとくらい失敗したからって、少しくらい失物したからって、私は絶対軽蔑したり愛想を尽かしたりはしないよ。
こういうご主人の気の優しさを、真摯な心を、他にもご主人の素敵な所をいっぱい知っているからね」
そう諭す様に語りかけて、ナズーリンは肩越しに星の手に触れる。
星は大きく目を見開くと、何かを堪えるように二度息を大きく吸って吐いた。
「ナズーリン」
「ん、どうし――」
た、は言えなかった。
星が後ろから、ナズーリンを捕まえる様に抱きついてきたからだ。
両手を胸の辺りに回し、がっちりと固定する。
突然の抱擁に、ナズーリンは総毛立たせて固まってしまう。
だが星も身じろぎ一つせず、ナズーリンの体温、匂い、息遣いの全てを背中越しに感じたいかの様に顔を埋め、ただ密着度合いを高める。
やがて時間が経ち、ナズーリンも力を抜いて星のなすがままに体を任せることにした。
「……怖かったんです」
星が、震えるような小さな声でナズーリンに呟く。
「私、いつもドジばかりをしていて……その度にナズーリンに助けって貰ってばかりで……
感謝している反面、とても不安でした。
もしかして、あまりの無能さに幻滅しているのではないか。主従関係だから、嫌々しているのではないか。
でも、もし嫌われていたらと考えると恐ろしくて……本心を尋ねることもできなかった……」
背後の独白を黙って聞くナズーリン。
星はナズーリンの背中から顔を上げると、今度は鎖骨の上から包み込む様に抱きかかえ、ほっそりとした白いうなじに口付ける程接近する。
熱い吐息が首筋をつたい、ナズーリンの脈が少し上昇した。
「でも、今日はナズーリンの本当の気持ちが聞けてよかった……
いつも私のこと助けてくれて、特に今日は私のせいで色々大変だったのに、明るく振舞ってくれて……
そんな貴方がご主人と呼んでくれて、私は三国一の幸せな寅です。
だから……肩揉みならいつでもできるし、してあげられるから……もう一人で……無理しないで欲しい。
私も、もっとナズーリンにありがとうの気持ちを込めて、たくさん何かをしてあげたいんです」
そう言い終わると、止まっていた手を動かし肩揉みを続ける。
ナズーリンは少しうつむく。
そして、熱くなった目頭を手でぐにぐにと揉んで平常に戻してから顔を上げ、はっきりと星に言う。
「……わかった。でも一つだけ訂正させてくれ」
「……何ですか?」
「私は別に無理をしていない。
だって、一番大切な宝物を守ることを無理するって言わないだろう。
だから無理なんてしてないし、そのことを気に病む必要も無いぞ」
「……はい……ありがとう」
その後二人は黙々としていたが、星の柔和な笑顔と、ナズーリンの真っ赤な耳たぶが二人の心境を雄弁に語っていた。
――◇――
仕上げにさすさすさす、っと撫でられる。
揉みしだかれるのと違い、撫でられた所がちりちりと電流が走った様に甘く痺れる。
ナズーリンは、なんだかクセになりそうだと考えてしまい、かぶりを振って否定する。
「はい、おしまいです」
「……ありがとう、ご主人。すごく良かった」
「へへへ、そうですか。じゃ、私はもう寝ます」
「あ、待って」
「?」
寝所に戻ろうとする星を、ナズーリンが引き止める。
頬を朱に染め、片方の拳を手に当てたナズーリンが上目遣いでこうおねだりをする。
「これ、本当に気持ちいいから……これからも、ちょくちょくやってもらっていいかい?」
「……はい、もちろんですよ」
その後、ゴルフボール付孫の手の出番は減りました。
でも、たくさんの安らぎは増えました。
そんなある夜の物語。
【終】
ナズ星はいいものだ。
ナズもみもみ
ねコレ。内容はむちゃくちゃハートフルだけど! お嬢様
何コレ!て言うのが最初の感想です。なんってオヤジテイストなタイトルなんでしょうww
でも星さんのイイ人ぶりがよかったので、もう全部許します。マッサージはホント天にも昇る
気分になりますよね。お金払ってでもお願いしたい気持ちが分かります。 冥途蝶
マッサージ大好きですねー!中学の時の接骨院の先生のマッサージはホント途中でよく寝てま
した。星さんに是非ともお願いしたいです! 超門番
ええ、そのお気持ち、よくわかります。チクショウ! 唸れ! 私のブルータル棒(今命名)!
3番様
肩もみをしてくれる方とですか!? おめでとうございます! とても素晴らしい事ですね。
愚迂多良童子様
おや、私はとてもいいことだと思いますが、難しいですねぇ。そしてナズ星は私のリフレクソロジー。
7番様
さわさわすりすり、もオススメです。
13番様
そういう信頼関係が根底にあるからこそ、肩もみの姿は美しいのかもしれませんね。
14番様
ありがとうございます。私もあたたかなご感想で胸がいっぱいです。
15番様
椛さんの出番につきましては、非常に高度な政治的判断により『今回は』見送られました。
お嬢様・冥途蝶・超門番様
タイトルへの的確なツッコミありがとうございます。さすがお嬢様!
確かに、マッサージ師の手腕はまさにゴッドハンドです。私も勝てないんですよねコレが……
指圧の心は母心! 押せば次作のネタが湧く! といいなぁと常々思っているがま口でした。
ナズーリンの優しさが染み入る…
星ちゃんもっとナデナデしてあげて。
優しい人が二人並ぶと、かくも暖かな空気が流れるものですね。ナデナデナデナデ。
耳たぶ……あの丸い耳の血管が浮き出てるうっすい所、かなぁ?
お料理ぶっかけはちょっと方向性が(苦笑) お粗末様でした。