「今年の夏は涼しかったわねぇ」
そろそろ日も暮れ始め、周りの景色が茜色に染まる頃、神社の縁側に2人の少女が座っていた。
「知ってるか? そういうことを〝霊化〟って言うんだぜ」
「また変な話を吹き込まれたようね」
いかにも興味のなさそうな、呆れた返事をしたのはこの神社の巫女、霊夢だった。
手に湯飲みを持ち、そばには煎餅の入った器が置かれている。
「でもなんで〝霊化〟って言うんだろうな。」
煎餅を口に運びながらもう1人の少女、魔理沙は問いかける。
「霊に化けるのよ。 幽霊は温度が低いから」
「じゃあ私たちはもう〝霊化〟してるのか?」
「してるんじゃない? 幽霊はじめじめしたとこを好むって言うし。魔理沙なんて山奥でゴミ拾いが日課でしょ」
「トレジャーハンティングといって欲しいぜ」
霊夢の皮肉に気を悪くした様子もなく、魔理沙はバリッと軽快な音を立てて煎餅をかじる。
「ところでその話、誰にも喋ってないでしょうね。また異変でも起こされたらたまったものじゃないわ」
「その点は大丈夫だ。こんな話霊夢にしか喋らないからな」
「あら、それは喜んでいいのかしら」
「馬鹿にしたつもりなんだがな」
呆れた顔で魔理沙は残り一枚の煎餅を手に取ると、静かな空間にまた同じ音が鳴り響く。
「ところで誰から聞いたのかは気にならないのか?」
「聞くだけ無駄ね。無駄なことはしないようにって決めたの」
霊夢は空の器をため息交じりに見つつ手に持った湯飲みを傾ける。
「あれは無駄じゃないのか」
そう言いながら古ぼけた賽銭箱を指差す。
「そう思うならお金入れていきなさいよ」
「無駄なことはしないようにって決めたんだ」
「無駄じゃないわよ。大変立派な御利益があるんだから」
「そりゃまたずいぶんと説得力のない話だな」
そう笑いながら返事すると傍らにあった箒を手に取り立ち上がった。
「さて、そろそろ仕事の時間だ」
あたりは暗くなり始め、夕暮れの時間も終わりを告げようとしていた。
「はぁ……。止めはしないけどね。人の物をあんまり盗り過ぎないようにしてよ、私までとばっちりを食うんだから」
「仕方ないさ。魔法使いと需要は切っても切れない縁だからな」
「まったく、供給する側は大変ね。同情するわ」
「いや、ひょっとすると私のおかげで均衡が保たれているんじゃないか?」
そう言って箒にまたがると、重力に反して足が地面から遠ざかり始める。
「それと、一応言っておくが盗るんじゃない」
箒に乗った魔理沙が神社よりも高く上がった時、霊夢に顔を向けて言った。
「借りてくだけだぜ」
――1人残った霊夢は大きなため息をつくと重い腰を上げ、神社の中へと入っていった。
今日もゆっくり眠られることだけを祈りながら――
そろそろ日も暮れ始め、周りの景色が茜色に染まる頃、神社の縁側に2人の少女が座っていた。
「知ってるか? そういうことを〝霊化〟って言うんだぜ」
「また変な話を吹き込まれたようね」
いかにも興味のなさそうな、呆れた返事をしたのはこの神社の巫女、霊夢だった。
手に湯飲みを持ち、そばには煎餅の入った器が置かれている。
「でもなんで〝霊化〟って言うんだろうな。」
煎餅を口に運びながらもう1人の少女、魔理沙は問いかける。
「霊に化けるのよ。 幽霊は温度が低いから」
「じゃあ私たちはもう〝霊化〟してるのか?」
「してるんじゃない? 幽霊はじめじめしたとこを好むって言うし。魔理沙なんて山奥でゴミ拾いが日課でしょ」
「トレジャーハンティングといって欲しいぜ」
霊夢の皮肉に気を悪くした様子もなく、魔理沙はバリッと軽快な音を立てて煎餅をかじる。
「ところでその話、誰にも喋ってないでしょうね。また異変でも起こされたらたまったものじゃないわ」
「その点は大丈夫だ。こんな話霊夢にしか喋らないからな」
「あら、それは喜んでいいのかしら」
「馬鹿にしたつもりなんだがな」
呆れた顔で魔理沙は残り一枚の煎餅を手に取ると、静かな空間にまた同じ音が鳴り響く。
「ところで誰から聞いたのかは気にならないのか?」
「聞くだけ無駄ね。無駄なことはしないようにって決めたの」
霊夢は空の器をため息交じりに見つつ手に持った湯飲みを傾ける。
「あれは無駄じゃないのか」
そう言いながら古ぼけた賽銭箱を指差す。
「そう思うならお金入れていきなさいよ」
「無駄なことはしないようにって決めたんだ」
「無駄じゃないわよ。大変立派な御利益があるんだから」
「そりゃまたずいぶんと説得力のない話だな」
そう笑いながら返事すると傍らにあった箒を手に取り立ち上がった。
「さて、そろそろ仕事の時間だ」
あたりは暗くなり始め、夕暮れの時間も終わりを告げようとしていた。
「はぁ……。止めはしないけどね。人の物をあんまり盗り過ぎないようにしてよ、私までとばっちりを食うんだから」
「仕方ないさ。魔法使いと需要は切っても切れない縁だからな」
「まったく、供給する側は大変ね。同情するわ」
「いや、ひょっとすると私のおかげで均衡が保たれているんじゃないか?」
そう言って箒にまたがると、重力に反して足が地面から遠ざかり始める。
「それと、一応言っておくが盗るんじゃない」
箒に乗った魔理沙が神社よりも高く上がった時、霊夢に顔を向けて言った。
「借りてくだけだぜ」
――1人残った霊夢は大きなため息をつくと重い腰を上げ、神社の中へと入っていった。
今日もゆっくり眠られることだけを祈りながら――
これからの活躍、期待しております。
あなたが描く物語が、ここからどのように発展するのか、見届けさせて頂きます。
なかなかいい文章だと思いました