「13枚。私はドロワ派ですわ」
かつての紅魔事件の折、霧雨魔理沙のその言葉にレミリア・スカーレットは驚愕した。
驚愕の余り、神槍グングニルと間違えて新鮮ヤリイカを取り出してしまう程であった。
レミリアにとっては渾身のギャグであった『今まで食べたパンツの枚数』
それに対して、『13枚』と至極真顔で答えられてしまったと言うのだから無理もなかった。
そもそも、まさかパンツを食った事のある少女が存在するとは、レミリアは夢にも思っていなかったのだ。
レミリアは、これまでパンツを一枚しか食した事がない。
それも幼い日、父親と『どちらがパンツを長く口に入れられているか勝負』をした際の誤飲であった。
詰まる所彼女は、これまで一度たりともパンツを食そうなどと考えた事はないのである。
しかしあの魔女……霧雨魔理沙はどうだ。
彼女はこれまでにパンツを13枚も食した上に、あくまで自分はドロワ派だと言った。
だとすると、果たしてどれ程の数のドロワーズが、彼女の胃の中へと消えていったのだろう。
大層気になったが、それを聞いてしまえば何かが壊れてしまいそうだったのでレミリアは聞けなかった。
好奇心旺盛な彼女に質問を止めさせる、それほどまでの衝撃、所謂カルチャーショックという物をその時レミリアは感じていたのである。
……思えばあの日以来、レミリアは自分の下着を守ろうとノーパン主義に目覚めるようになったのだった。
「その者黒き衣を纏い金色のパンツ喰らうべし、か」
レミリアは自身の回想をさえぎるようにそう呟き(内容に意味は無い)、窓越しに大きな月を仰ぎ見た。
ほのかな月明かりに照らされた、その物憂げな表情は、まるで幼さと妖艶さの二面性を内包する彼女を表す一枚の絵画のようで。
勿論、下はノーパンであった。
あの日以来レミリアは、『パンツは食べる物なのか』と言う疑問にずっと悩まされてきた。
普通に考えれば有り得ない話、けれどその普通が間違っていたら?
普通の魔法使いがパンツを食うと知ってしまった事で、レミリアは自分自身の『普通』に自信が持てなくなっていたのだ。
もしかしたらパンツは、至って普通に食べる事の出来る物なのかも知れない。
自分でも馬鹿らしいと思いながら、それでも最後の一線でその仮説を否定する事ができなかった。
彼女の仮説が正しいか否かなど、自分の親友であるパチュリー・ノーレッジならば当然知っているだろう。
しかして、レミリアがそれを彼女に聞こうとしないのは、自身のプライドによる所が大きい
もし、パチュリーにその疑問を投げたとして、親友から『え? レミィったらそんな事も知らないのむきゅ? おむつと哺乳瓶咥えて出直してきなサノバビッチ』なんていわれた日には、物が物だけにレミリア株はストップ安である。
更に言うならば、彼女がいつも穿いているのはパンツではなくドロワーズだ。
ドロワ派の少女にパンツの事を聞くという行為は、たけのこ派にきのこって美味しいよねと言うくらいの暴挙、いくらレミリアでも越えられない一線である。
だからこそレミリアはこれまでずっと、その疑問を決して口にせず、自分の中に押しとどめてきた。
日々強くなる好奇心に耐えながら、平静を装って生きてきた。
しかし、それも今日が最後であった。
「失礼します、お嬢様」
「入りなさい」
部屋の外から聞こえてくる声に、レミリアはそう応える。
ゆっくりと開かれた扉から姿を現したのは、完全で瀟洒なレミリアのメイド、十六夜咲夜。
予め部屋に来るように呼んであったのだ。
目的は勿論、パンツを食べた事があるか……そもそもパンツとは食べる物なのかと言う質問。
完全で瀟洒たる彼女ならばきっと、レミリアの満足いく回答を与えてくれるだろうし、周りの者達に言い触らすような真似は決してしないだろう。
従者に情けない姿は見せたくなかったが、背に腹は変えられないと言う訳だ。
幸いな事に彼女が穿いているのはドロワーズでは無くパンツである。
それを何時でも確認出来るようにする為に、夜な夜なレミリアはメイド服のスカート丈を少しずつ短くカットしていったのだ、ぬかりはない。
咲夜は気付いていないだろうが、最早彼女のスカートの丈は膝上30cm、何時でも下着を確認できる構造に、我ながら匠の心意気が光っているとレミリアは唇の端を吊り上げる。
「それで、私に用とは?」
「ええ、実は……」
早速質問を口にしようとして、レミリアはすんでの所でそれを止めた。
もし、ここで何も考えずに魔理沙に対してと同じように「今まで食べたパンツの枚数を覚えている?」などと聞いて、「100枚から先は覚えていない」なんて返答が返って来ようものなら、自分はショックの余り幼児退行を起こしてしまうかも知れない。
「お嬢様?」
急に難しい顔をしだした主を心配してか、膝上30cmメイドが声をかける。
対してレミリアは、従者にどう質問を投げるべきか決めかね、むぅ、と小さく唸り声を上げる。
要は彼女がパンツを食べるか否かがわかれば問題ないのだ、何かしら上手い表現はないだろうか。
「貴女はパンツは何味が好き?」とさり気なく尋ねるか、「昨日食べたパンツが美味しかったのよ」と相手のリアクションを見るか、「いただきます」とおもむろに咲夜のパンツにむしゃぶりつくか、案は浮かぶがどれもしっくり来る物がない。
……いやいや、この期に及んで小細工を考えるのは小物のする事だ。
レミリアは何かを思い直したように、大きく首を横に振った。
自分はツェペシュの幼き末裔レミリア・スカーレット。
欲しい物は正面から手に入れるのが我が流儀、欲するものが答えならば、真っ向から質問してこそ誉れと言う物だ。
何を恐れる事がある、「100枚から先は覚えていない」と言われたなら、「私の食べた枚数は53万だけどね」と言って逆にメイドに泡を吹かせてやればいいではないか。
心の中で自分を鼓舞しながら、吸血鬼は顔を上げる。
彼女の中からは既に迷いは消え去っていた。
力強い瞳を携え、少女は堂々とその質問を紡ぐ。
「貴女、パンツ食った事ある?」
「パン作った事ですか……? それはまぁ、ありますが」
やはり、そうだったか。
パンツが食物であると証明する従者の返答に、レミリアはゆっくりとその瞳を閉じた。
もっと衝撃を受けるかと思ったが、不思議と彼女の心は落ち着いている。
むしろ自分の中の常識が完膚なきまでに破壊された事に、レミリアは妙な清々しさすら覚えていた。
これで彼女はもう、悩む必要も恐れる必要も無くなったのだから。
憑き物が落ちたような静かな心持ちで、レミリアは自分の従者に尋ねる。
「どれくらいの数?」
「正確な数までは……何せほとんど毎日ですから」
「毎日……」
「ええ、こう見えてこだわるタイプなので。いつも自分で用意しています」
「しかも自前……」
なんと言う猛者だったのだ、ウチのメイドは。
毎日自分の穿いていたパンツを口に運んでいるメイド長の姿を想像したレミリアの口から、思わず感嘆の溜息が漏れる。
霧雨魔理沙がどんな物だ、我が家の従者は13枚どころでなくパンツを喰らっているぞ。
自分の身近な存在があの白黒魔女を上回ったと言う事実が、何だか少しだけ誇らしかった。
今度から彼女の事はメイド長改め、パンツ長と呼ぶ事にしよう。
「お嬢様も、いつも美味しいって言ってくださるじゃないですか」
そんなレミリアの阿呆な思考を遮るかのように、咲夜の言葉が室内へと響く。
レミリア、一瞬硬直。
「え、なに? 私も食べてるの?」
「この館の方なら全員召し上がっているかと」
さも当然、と言わんばかりにパンツ長は言ってのける。
だが、そうは言われてもレミリアには、これまでパンツを食べた記憶など微塵も無い。
だとすると、考えられるのは自分でも気付かない内に、咲夜産パンツを食していたと言う事。
そこでレミリアの脳内に、一つの仮説が浮かぶ。
……まさかこのメイド、ピーマンをみじん切りにしてこっそり混ぜる感覚で、今までの料理に自分の細切れパンツを仕込んでいたんじゃ。
これまでの経験上十分に有り得る可能性だ、とレミリアは自分のメイドの圧倒的したたかさに、一瞬背筋に薄ら寒いものが走るのを感じた。
しかし、そうなると自分は既にパンツを食していたと言う事になるのか。
本日何度目かもわからない衝撃の事実に、吸血鬼は小さく小さく笑みを浮かべる。
「そうか……私は既に上り始めていたのか、この果てしない袴下坂(パンツロード)を」
「何を言って……?」
「いや、なんでもないさ。そんな事より見なさい、あの満月を。まるで私の新境地への達成を祝福しているかのようじゃないか」
レミリアはそう言って窓の外の月へと視線を送る。
先程からパンツの事ばかり考えていたせいか、レミリアにはその月が何となくお尻に見えた。
全く難儀な物だ、と小さく溜息を吐きながら、レミリアはその妖艶にして無邪気な瞼をすっと細める。
そんな彼女の妖艶さにあてられたのだろうか。
横に佇んでいた咲夜はほのかに頬を染めながら、その口を開く。
「お嬢様、一つ伺いたい事が」
「……何かしら?」
「そろそろスカートの丈戻してもいいですか」
どうやら彼女、レミリアの仕業だと気付いていながら、あえて膝上30cmスカートを穿いていたらしい。
その余りに瀟洒なモロパン姿に、思わず瞳から涙が零れたレミリアであった。
次の日、太陽が上空から照りつける中、レミリアは一人で妖怪の山近くを散策していた。
当然従者は付いて来ると言ったが、彼女とてまだまだ幼い五百歳児、たまには一人になりたい時もある。
しつこく食い下がる従者の動きを、おニューのスカート丈を35cmカットする事で封じた吸血鬼は、日傘を右手に中空を掛ける。
その姿は、夜に生きる悪魔にも関わらず、何処か光の中で踊る天使のような神聖さをかもし出していて。
勿論、下はノーパンであった。
(咲夜のおかげね)
晴れ晴れしい気分で飛び回りながら、レミリアはここにはいない膝上35cm従者に感謝の気持ちを送る。
昨日の晩までのレミリアは、どこか張り詰めた糸のように余裕と言う物が存在しなかった。
来る日も来る日もパンツの事を考え、酷い日など少年漫画のパンチラシーンを探しては、いつでも見られるようにポストイットを貼る程だった。
なけなしのパンチラでは埒があかないと仕入れた『みかん100%』が、メイド長の掃除の後、机の上に平積みされていた時は、自分でも気付かない内に涙が零れた。
そんな屈辱も悲しみも、全てはパンツとは食う物か否か、と言う謎を解明する為。
紅魔館の主が『パンツを食べない当主』などと情けないレッテルを貼られない為、当主としての必死の努力であった。
しかしそんな彼女の苦しみは、昨晩メイ……パンツ長から『パンツは食べ捨てる物』と言うお墨付きをもらった事で遂に終わりを告げたのだ。
「後は実際に喰らうのみ……か」
誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟く吸血鬼。
咲夜の話ではどうやら無意識の内に細切れパンツを食べた事はある様だが、形の残ったパンツとなると話は別だ。
スライスされたハムを食べるのと、豚丸ごと1頭にかぶりつくのでは大きく意味が異なってくる。
そういった意味では、レミリアは未だにパンツを食したとは言えなかった。
昨晩までの『パンツは穿く物』と言う常識が、『パンツは食べる物』だと知った今も、それを喰らう事に対しての抵抗を緩めない。
自分の中の常識を180度塗り替えられて、はいそうですかと言えないのは至極当然の事であった。
とは言え、何時までもパンツを食べない主ではられないのも事実、幼き主は既に覚悟を決めていた。
この散策から帰った時、レミリアはパンツ長に向かって宣言する、「夕食はパンツにしてくれ」と。
その一歩を踏み出す為に、彼女はこうして一人、空を舞いながら心を落ち着かせているのだ。
「あや? レミリアさんだ」
ふと、そんなレミリアの意識の外から声がした。
本人は独り言のつもりだったのかも知れないが吸血鬼の感覚は鋭敏、すぐさま声のした方向に視線を向けると、そこには木陰に腰を下ろしている天狗のブン屋、射命丸文の姿。
それと隣にもう一人……。
「八雲紫、か。何とも珍しい取り合わせじゃない」
興味を惹かれたレミリアは、くるりと方向を転換して二人の目の前へと着地する。
どうやら彼女達は二人で何かを読んでいたらしい。
レミリアが地に降り立ったのを見ると、読んでいた本を閉じてひらひらと手を振った。
「御機嫌よう、紅魔の主。昼間から散歩なんてして、お肌は大丈夫かしら」
「余計なお世話よ。貴女達こそ二人揃って何を読んでいたのかしら」
「あ、これですか? 外の世界の本らしいですよ?」
「へぇ、外の世界の……」
文の返答に、レミリアはぴくりと反応する。
外の世界の書籍……『北斗のナックル』や『ドラゴン球体』など名作の数々は、いつも大いにレミリアを楽しませてくれるのだが、何分手に入りにくいのが難点だ。
しかも恐らく目の前の本はスキマ妖怪が仕入れてきた物、外の世界の最新トレンドと見て間違いないだろう。
読みたい。
レミリアの心の中に欲求の火が灯る。
しかし彼女は紅魔の主、他人に物を恵んでもらうなどあってはいけない。
目の前の天狗のように、スキマ妖怪に媚を売って読ませてもらうなど、彼女のプライドが許さないのだ。
努めて興味なさそうに振舞うレミリアであったが、涎を垂らしていたのが悪かったのか、紫はどうぞ、と言わんばかりに薄い本を差し出してくる。
別に読ませてもらうつもりは無かったのだが、相手の好意では断るわけにもいかない。
瞳をルビーのようにキラキラ輝かせながら、ぺらりとその薄い本を開く。
「……何これ」
そして瞬間的に絶句。
彼女の開いた本の中、女性達が自分の下着姿を見せびらかすようにポーズを取っていたのだ。
しかもないすばでー、ばいんばいんである。
もう一度言う、ばいんばいんである。
「色々な下着紹介の本ですよ。素敵な下着がたくさん載ってます」
「外にはそんな本まであるのねぇ……」
感心したように呟きながら、レミリアはぱらぱらとページをめくっていく。
成程、確かに文の言うとおり、幻想郷では見られないようなデザインをしたカラフルな下着が、ページ毎に写真で紹介されている。
お洒落は見えない所からと言うがまさか下着もとは、外の世界のお洒落レベルは恐ろしい物である。
そんな事を考えながら本を読んでいて、ふと気付く。
―――――下着とは付ける物ではなく、食べる物であった、と。
(フ、私もまだまだ。かつての常識を捨て切れていないようね)
常識は投げ捨てる物、と言う緑巫女の言葉を頭に思い描きながら、レミリアは小さく苦笑する。
危ない危ない、もし下着は食べる物だと言う事を忘れて、お洒落などと素っ頓狂なコメントをしていた日には、幻想郷中の笑い者だ。
外の世界には食品サンプルと言う物があると言うし、恐らくはこれがそうなのだろう。
すんでの所で危機を脱した事に、レミリアは安堵の溜息を吐く。
しかしだとすると、これからどうするかが問題である。
レミリアは未だパンツ未食者(誤飲はノーカン)、果たしてパンツがどのような味をするのか見当もついていない。
そして目の前に居るのは噂大好き鴉天狗と、人をからかうのが大好物のスキマ妖怪、下手にボロを出して、レミリアがパンツ未食者だと知られたらどうなる事か。
レミリアの背筋にぞくりと冷たい物が走る。
からかわれるだけならばまだいい、もしも彼女達から軽蔑の目を持って「え、パンツも食べた事が無い? おむつと哺乳瓶咥えて出直してきなストイコビッチ」なんて言われた日には、ショックの余り名古屋グランパスの監督になってしまうかもしれない。
その結末だけは何としてでも避けなければならなかった。
「やっぱり外の世界のは違いますよねぇ」
「ええ、こういったデザインが幻想郷にもあればいいのだけれど」
さて、どうするべきか。
雑談を続ける二人を尻目に、レミリアはカリスマ顔の裏で頭を悩ませる。
とにかく、自分がパンツの味も知らない女だとバレる事態だけは回避しなければいけない。
この場から逃げ出そうにも相手は幻想郷最速とチート移動技所持者。
少しでも不審な態度を見せれば、逃げ出した所であっという間に捕まり、事情聴取をされてしまうであろう。
ならばどうする……考えろ、レミリア・スカーレット。
吸血鬼は自然数を数えながら、打開策を探して行く。
「デザイン性もいいけど、生地も優れているわ」
「外の世界の下着は、お肌に優しいですよね」
「確かに、あの口当たりは幻想郷産では中々真似できないわ」
取り敢えず話をあわせる事にした。
上手く二人の会話から情報を読み取り、当たり障りの無い答弁をしていれば問題ない、彼女の脳内で導き出された解はこれであった。
一瞬、二人の笑顔が固まった気がしたが、きっと気のせいである。
「んー、このパンティ可愛いですねぇ」
「爽やかさが出ていていいんじゃないかしら」
「ええ、中々フルーティそうなパンツね」
行ける!
そう判断したレミリアは、涼しい顔を浮かべてパンツグルメを装い続ける。
「貴女、こういうのは穿かないの?」
「あやや、黒ですか……ちょっとそれは私には大人向け過ぎるかなーと」
「わかってないわねぇ、この大人の苦味が堪らないのに」
ちなみに彼女、コーヒーは砂糖とミルクが必須である。
「レミリアさんはどんなのが好みなんですか」
「大人っぽくても子供っぽくても似合いそうだけど」
「やっぱり、芳醇な味と香りがする物が一番だわ」
我ながら上手く話をあわせているものだ。
そう自画自賛していたレミリアの動きがふと止まる。
彼女の視線の先、文と紫の二人がこれ以上無いまでに、怪訝な目をしていたから。
流石のレミリアも思わず言葉が詰まってしまう。
「……」
「……」
「……」
嫌な沈黙が三人の間に流れる。
しまった、芳醇とか少しわざとらし過ぎたか、せめて「美味しければ何でもいいわ」とか無難な言葉にしておくべきだった。
レミリアの頭の中に、後悔の二文字が駆け巡る。
「ねぇ、レミリア」
「何?」
「あの、何の話をしているんでしたっけ」
「パンツでしょ?」
「そ、そうですよね。下着の話ですよね」
「? 何を当たり前の事を言っているのよ」
一見すると冷静に答弁しているようだが、この吸血鬼汗だらだらである。
一歩間違えれば明日の朝刊のトップニュース決定では、いつもはクールなビューティである彼女でも焦りたくもなると言う物だ。
とにかく何とかしてこの状況を打開せねば。
レミリアは再び脳をフル回転させて、打開策を考えていく。
「あ、そういえば今日はパチェと一緒に、ビリーズブートキャンプをやる約束をしていたわ!」
その結果がこれである。
名付けて『友人との先約を装ってこの場から速攻で離脱する作戦』、具体的には友人との先約を装ってこの場から速攻で離脱する作戦である。
自分の余りにパーフェクトゥな打開策に、思わず鳥肌が立ってしまうレミリア。
そのまま呆然としている二人を尻目に、今が好機とばかりに一気に館の方向へと飛び立った。
スピードでは文達に劣るレミリアだが、後ろから追って来る様子が無い辺り、どうやら上手く誤魔化す事ができたらしい。
何とか緊急事態を脱した事に、レミリアはほっと胸をなでおろした。
危ない危ない、どうやら少し見当違いな発言をしていたようだ。
やはり実際に食べずに、見た目だけで味を判断するのは危険だったと言う事、一刻も早く実際にパンツを食さねば。
レミリアは強い決心を胸に、館に向けて翼を羽ばたかせた。
「おーい」
館まであと10分程と迫った湖のほとり。
ふと後ろから聞こえてくる聞きなれた声に、レミリアは推進力を緩めて後ろを振り返る。
予測どおりと言うべきか、そこに在ったのは白黒魔女こと霧雨魔理沙の姿。
レミリアがパンツは食物だと気付くきっかけを作った少女であった。
「魔理沙か」
「よっ、メイド長も連れずに珍しいじゃないか」
「たまには一人で散歩したくなる時もあるのよ。貴女こそ、こっちの方向には私の屋敷しかないけど」
腕を広げながら大仰に言ってのけるレミリアに対して、魔理沙はニッと歯を見せて笑う
その笑顔を見ただけで、レミリアはまた良からぬ事を企んでいるな、と予測する事が出来た。
「またパチェの本でも盗って行く気かしら」
「ハズレ。今日はメイド長の作る夕食でも戴きにいこうと思ってな」
「相変わらず図々しい魔法使いねぇ」
「そんな所が可愛いだろ?」
ぬかせ、とレミリアは鼻を鳴らす。
悪びれる様子も無く食事を戴こうとは、本当に何処までも図々しい盗人である。
追い返してやろうか、と魔理沙を睨み付けようとした所で、レミリアはその動きを止める。
……まぁ、一食くらいはくれてやってもいいか。
などと言う何とも寛大な思考が、その時彼女の頭の中には浮かんでいたのだ。
何故かは知らないが、咲夜やパチュリーはこの白黒の事を比較的気に入っているようだし、自分自身、彼女には借りがあった。
あの時、彼女がパンツを食べると口にしなければ、レミリアは決してパンツを食物だとは思わなかったろう。
ひょっとしたら一生、パンツをただの下着だと捉え、スカートの下に穿くくらいの用途でしか使わなかったかも知れない。
それは何とも恐ろしい事だ、とレミリアは苦笑する。
結果的には魔理沙のおかげで自分はそんな事態から逃れられたのだ、別に礼と言う訳ではないが、ディナーの招待くらいしてやっても罰は当たらないだろう。
「言っておくけど、口に合うかは知らないわよ?」
レミリアは魔理沙から背を向けると、館の方向へと向き直る。
何せ彼女はドロワ派だ。
パンツを出されて喜ぶかどうかは、レミリアにはわからない。
まぁ、きのこ派にたけのこ出しても、過激派以外は普通に食べるから問題は無いと思われるのだが。
そんな何時に無く寛大なレミリアを不思議に思ってか、魔理沙はレミリアの背中へと疑問を投げかける。
「何だ、やけに謙虚じゃないか。今日はそんなに特殊なメニューなのか?」
「知りたい?」
「知りたいぜっ」
興味津々、と言った様子で声を上げる魔理沙。
そんな彼女の声を聞きながら、レミリアは満足げに口を開く。
「フ、仕方ない、教えてあげるわ。今日のメニューは……」
吸血鬼はゆっくりとその瞳を閉じて、本日の食事を思い描く。
今日これから、彼女の歴史は塗り替えられる。
パンツを食べない吸血鬼から、パンツを食べる吸血鬼へと進化を遂げるのだ。
その歴史的瞬間の証人が霧雨魔理沙と言うのだから、誠運命とは数奇な物だ。
そんな事を考えながら、何処までも穏やかな笑みを浮かべるレミリア。
最後に彼女は魔理沙の方向へと振り返ると、大仰にこう宣言した。
「パンツよ!」
「馬鹿だろお前」
魔理沙の瞳は、何処までも哀れみに満ちていた。
笑わせてもらいましたwww
とても笑わせてもらいました
最初っから最後までボケ倒しとはww
そして突っ込み役はまさかの魔理沙w
冒頭から全力で突っ込んだw
>そのまま呆然としている二人を尻目に、今が好機とばかりに一気に館の方向へと飛び立った。
>スピードでは文達に劣るレミリアだが、後ろから追って来る様子が無い辺り、どうやら上手く誤魔化す事ができたらしい。
…ひょっとして、レミリアの衝撃的なスカート内部が見えてしまったので2人共追いかけて来なかったんじゃ…?
あまりの面白さにパンツ食べたくなってきた。
細かく切り刻んで料理に混ぜれば食べられるはず!
面白かったです!
マイナスを突き抜けて、いっそ清々しいほどのカリスマを感じさせるなぁ、このおぜうさまは。
蘇る小学校の記憶
りかちゃんと勉強してる?
つかピクシーww
full moonは丸出し、half moonは半ケツの隠語ッス
吸血鬼が月に興奮するのは仕方ない事ッス
畜生、なんなんだ、この無償に100点をあげたくなってしまう症状は!w
酔ってたから出だしが黒歴史時代の魔理沙だったんですね
あと吹いて画面が唾だらけなんすけどww
面白すぎましたwGJ!!!!!
なんて出オチ
よくこんな変なもん思いつくなオイw
これもいわゆる勘違い系なんですよ、ネ?
レミリアさんがあまりに真摯に一本突き通すのでむしろ応援したくなっていたオチの頃……ッ!!ww
しかも無駄にシリアス調だしww
お父さん何やってるの
天狗やスキマにバレたら終わりだ、逃げろ!と。
いやぁ、わらったわらったw
あとやりイカwww
なんかほかにもいっぱい突っ込みどころがあったけど面白かったwww
魔理沙らしいw
けど、笑ってしまった私の負けか……!