注)少々独自解釈あり。それでも良ければ読んでいただけると嬉しいです
地霊殿の主になったお祝いに四季様から頂いたお古の仕事机と椅子で書類仕事をしながらふとカレンダーを見てみる。今日はこいしが出かけてからちょうど一週間になる。経験上そろそろ帰ってくる頃だろう。ならば今日の仕事は早めに切り上げてクッキーでも作って待つことにしよう。
生地を作ってオーブンで焼いてる間、最近のこいしとの関係について考えてみる。今から随分前にこいしは第三の目を閉じてしまい、その時からこいしはそれによって得たを使っていろんなところを散歩するようになった。無断で出かけてはなかなか帰ってこず、またフラっと出かけてしまうこいしの放浪癖を何とかできないかと守矢の巫女に尋ねてみたところ
「守矢神社を信仰すればいいと思います!」
「……心の底からそう思われると私も手のうちようがないのですが、他にいい方法はないでしょうか?」
「そうですねー……、奥さんの料理が美味しいと旦那さんは浮気しなくなるって雛さんが言ってたような気がしますよ?」
聞いたときは半信半疑だったが、試しに自分で料理をつくるようになるとこいしが家にいる時間は長くなった。今では随分と料理のレパートリーも増えたものだ。
そしてそれに伴って変わったことがもう一つある。こいしが外から帰ってくるとき必ずお土産を持って帰ってくるようになったのだ。地底界は地上と長い間隔離されていたために文化が違うところが幾つかある。その一つが食文化だ。こいしは私が料理をするようになってから地上の食材(地底では珍しいもの)をおみやげに持って帰ってきて料理をするよう頼んでくる。
……というのが少し前までの話で最近はこいしの(よくわからない)基準でいろんなお土産を持って帰ってくる。そのお土産で問題になったトップ3つは天狗のカメラ・宝塔・八雲の式の式である。いずれも『面白そう・綺麗・ペットにしたい』という本人にとっては十分な理由があるのだが、いかんせんあの子は欲望に真っ直ぐ過ぎる。だから今日あたりおそらく帰ってくるあの子を楽しみにする反面、実はかなり心配でもある。
◇
「ただいまー!お姉ちゃん、今帰ったよー!」
「お帰り、こいし。クッキー焼いたんだけど食べる?」
「チョコのやつ?」
「普通のやつよ。チョコレートは高いからそんなに頻繁にはダメよ」
「ちょっと残念だけどまぁいいや。そうだお姉ちゃん、これお土産!」
……やはり現実からは逃れられないようだ。見ないようにはしていたけどやっぱりこいしがロープで縛って連れてきているこの妖精はお土産だったらしい。しかも今回はその妖精を心配してなのか、別の妖精までついてきている。こいしが『神隠しの模倣犯』と言われる日も近いかもしれない。それを防ぐためにもここで誤解を解いて置かなければならない。……誤解ではないような気がするのはきっと気のせいだ。
「妹が迷惑をかけたみたいでごめんなさいね。お詫びといっては何ですがクッキーでもいかがですか?」
「クッキーくれんの?食べる!」
「えっ?いいんですか?……じゃあいただきます」
私とこいし、それに妖精二人でお茶をしながら話を聞いてみたところ縛られていた方はチルノ、ついてきた方は名前がなく周りからは大ちゃんと呼ばれているらしい。二人に事情を聞いてみたところ、チルノが地上の湖でカエルを凍らせて遊んでいたらいきなりこいしに弾幕ごっこを挑まれ、勝ったこいしがチルノをロープで縛って連れてきてそれを心配した大ちゃんがついてきたということらしい。
……これはもしかしなくても拉致というのではないか?これを弁明するのは非常に難しい。そして何より私が苦手なものはこいし・八雲紫・妖精である。これらは心が読めなかったり、読めてもよくわからなかったり、そもそも何も考えてなかったりするからだ。念のために言っておくがあくまで苦手であって嫌いではない。何も考えてない妖精をどう言いくるめるか、とりあえずこいしからも話を聞こう。
「紅茶のおかわりを持ってくるからちょっと待っててくださいね。こいし、ちょっと手伝ってちょうだい」
「はーい」
とりあえずこいしをキッチンまで連れ出すことに成功した私はお茶の用意をしつつ尋ねてみた。
「こいし、ところでなんであの子を連れてきたの?」
「わかんない!」
自信満々の返答だった。もうだめかもしれない。
「知らない人をつれてきちゃいけないって、八雲の式の式を連れてきた時に言ったの覚えているかしら?」
「うん」
「じゃあなんで連れてきたの?」
「なんとなく!」
「……あのねこいし、あの時もお姉ちゃんとっても困ったことになったんだけど。ひょっとしてあなた私のこと嫌いだったりする?」
「大好きだよお姉ちゃん!」
「私もあなたのことが好きですけど……」
こうなったら仕方ない。妖精との会話はあまり得意ではないが、美味しい物を渡して、謝って、以後こんなことはしないと約束して、またこいしが連れてくることがないように祈るしかないだろう。とりあえず二人の好物を聞くところから始めようか。
「お姉ちゃん困ってるの?」
「……え?あぁ、いくら妖精でも無理やり連れてくるのはよくないから」
「わかった!」
こいしはそう言って二人の妖精がいる客間の方に行ってしまった。これは非常にまずい。経験上こういう時のこいしの考える事はよくない事が多い。急いでお茶を持って追いかけ、客間に着くと
「弾幕ごっこで起きた問題は弾幕ごっこで解決だ!ということでもう一回勝負して私が勝ったら今日のことは忘れてちょうだい!」
……これで交渉はできなくなってしまった。というよりこんな条件を飲むはずが
「さいきょーのアタイに挑むなんていいどきょーね!これ食べ終わったら勝負よ!」
「でもチルノちゃん……」
「何よ?大ちゃん文句あんの?」
「ないけど……」
「じゃあ口出ししないでよね!」
……これだから妖精は苦手だ。
◇
食べ終わったチルノとこいしは弾幕ごっこを始めてしまい、それを私と大ちゃんが観戦している状況になっている。見たところチルノは妖精とは思えないくらい強い力を持っていたが、さすがにこいしのほうが強い。とりあえずこの一件は解決しそうだと安心していると、ふと大ちゃんのことが気になった。地上からチルノを追ってやってきたのだから親しい間柄なのかと思っていたが、お茶している時の様子を見ているとどこかぎこちなく感じたからである。なんというか……チルノとの距離を測りかねているといった感じだろうか。そんな気がしたので少し話しかけて見ることにした。
「迷惑かけてごめんなさいね。それにしてもあの子が心配だったんだろうけど、だからってわざわざ地底まで来るなんてあなたは友達思いなんですね」
「……そんなことないですよ。それにチルノちゃんは私のことを多分友達だと思ってませんチルノちゃんは妖精の中ではとても強いんですけど、そのせいでなかなかそういう親しい子ができなくて。だからチルノちゃんはよく一人ぼっちなんです。チルノちゃんもみんなと一緒にいるのがあんまり好きじゃないみたいですし……」
「あなたはあの子のことが嫌いなの?」
「いいえ、私は仲良くしたいんですけど……。チルノちゃんには迷惑かもしれないですし……」
妖精にはやはりさとりの能力があまり意味がない。この子の喋ったことと考えていることはほとんど一緒だ。だから真剣に悩んでいるんだろうが私にはどうすることもできない。結局のところ大ちゃんが困っているのは『どうやってチルノと付き合っていくか?』である。しかしその答えは誰にもわからない。仮にチルノが大ちゃんが嫌いだとしても大ちゃんがそばにいたほうがチルノのためになったりする場合があるし、またその逆などもあるからである。だから答えは誰にもわからないし、誰にもわからないなら私は読むことができない。
「くらえ!氷符『アイシクルフォール』」
上空ではそのチルノがスペカを放っていた。基本的に弾のスピードは速いしなかなか強力だが、やはりこいしには及ばない。……と言うより今使ったスペルってチルノの正面に行ったら当たらないように見えるんですが……
「止めだ~!本能『イドの解放』」
こいしもチルノがスペカを放ってすぐそのことに気づいたようで、チルノの真正面に移動しスペカを放った。至近距離で大量に被弾したチルノは為す術もなく吹っ飛ばされた。やはり今のは正面に安全地帯があったようだ。妖精らしいといえばそれまでだが、まぁなんとも言えないものである。そんなことを考えているとこいしが降りてきて
「勝ったよお姉ちゃん!」
「はい、見てましたよ。がんばりましたね」
「えっへん!」
とりあえず弾幕ごっこで勝ったしこの一件は終わりだ。お土産にプリンでも作って持たせてあげようかと考えているとこいしが大ちゃんに声をかけた。
「確か大ちゃんって言ったよね?」
「えっ?あ、はい。そうです」
「チルノと仲良くなりたかったらね、ちゃんと向き合って『友達になりたい』って言えばいいよ」
その後飛ばされたチルノを見つけてお土産としてプリンを渡して地上までこいしと二人で送っていった。
◇
その日の夜こいしと二人で晩ご飯を食べてる時、疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「こいし、なんで大ちゃんがチルノのことで悩んでるって分かったの?」
「それはさすがに私でも見たら分かるよ」
まぁたしかにそうだ。大ちゃんの様子を見ればそれは分かるかもしれない。だが私は本当に気になったのは次だ。どうしてその大ちゃんの悩みに対してこいしがあの答えを出したかである。正直に言えば私もそれなりに長く生きてる身であるので、大ちゃんの悩みに対してそれっぽいことを言うことはできる。それで大ちゃんを元気づけることは容易だったと思う。けど結局は二人の問題だからと思い、私は口出しをしなかった。けどこいしは大ちゃんにアドバイスをした。何を思ってこいしが行動したのか純粋に知りたかったのである。
「なんで大ちゃんにあのアドバイスをしたの?」
「チルノがそれを求めていたからだよ。チルノは自分とちゃんと向き合ってくれる友達が欲しかったんだと思ったから」
「なんでそう思うの?」
「チルノのスペカで1枚正面で弾が当たらない奴があったでしょ?あれってたぶん無意識に『自分と正面から向き合ってくれる相手』が欲しくてそのために空いているんだと思うの。妖精にしては力が強すぎるからか、その性格のせいかわからないけど地上で見つけた時も離れて見てた大ちゃん以外は一人ぼっちだったし。きっと友達が欲しかったんじゃないかな?」
「……確かにそうかもしれないですけど、それはただのこいしの思い込みかもしれませんよ?」
「たしかにそうかもしれないね。でも『友達になりたい大ちゃん』と『友達のいないチルノ』。二人が友達になったら全部解決だよ?」
「……二人が友だちになることが必ずしもいいこととはかぎりませんよ?」
「そんなの友達になってみないとわかんないよ!」
私はさとり妖怪であり、そのためにみんなから恐れられ色々と苦労してきた。心を読むことで様々なトラブルを引き起こしてきたし、けど逆にそれによってトラブルを回避したことも少なくはなかった。その結果良くも悪くも自身の能力に頼りきってしまっていたのだ。そうしているうちに必要なことも余計なこともいろいろなことを考えてから行動するようになってしまった。いつからかこいしのように考えたことをそのまま行動に移せないようになっていた。必ずしもこいしのように生きるのが正しいと思わない。でも少なくてもやってみないとわからないこともあるのだ。見えないからこそ、心を読めないからこそ見えてくるものもあるのかもしれない。
「こいしの言うとおりかもしれないわね。けど今度からは知らない人は連れてきちゃダメよ?」
「分かってるよお姉ちゃん!」
「明日はもうでかけるの?」
「そうだなぁ……しばらくここにいようかな」
「わかったわ」
地上でチルノと大ちゃんが仲良くなれるかは私にはわからない。けど少し自分勝手だけど素直なチルノと気が弱いけど優しい大ちゃん。二人はうまくいくんじゃないかと思うし何より上手く行って欲しいと思う。明日のおやつはチョコレートのケーキにしようかしら。そんなことを考えながら寝室に向かった。
地霊殿の主になったお祝いに四季様から頂いたお古の仕事机と椅子で書類仕事をしながらふとカレンダーを見てみる。今日はこいしが出かけてからちょうど一週間になる。経験上そろそろ帰ってくる頃だろう。ならば今日の仕事は早めに切り上げてクッキーでも作って待つことにしよう。
生地を作ってオーブンで焼いてる間、最近のこいしとの関係について考えてみる。今から随分前にこいしは第三の目を閉じてしまい、その時からこいしはそれによって得たを使っていろんなところを散歩するようになった。無断で出かけてはなかなか帰ってこず、またフラっと出かけてしまうこいしの放浪癖を何とかできないかと守矢の巫女に尋ねてみたところ
「守矢神社を信仰すればいいと思います!」
「……心の底からそう思われると私も手のうちようがないのですが、他にいい方法はないでしょうか?」
「そうですねー……、奥さんの料理が美味しいと旦那さんは浮気しなくなるって雛さんが言ってたような気がしますよ?」
聞いたときは半信半疑だったが、試しに自分で料理をつくるようになるとこいしが家にいる時間は長くなった。今では随分と料理のレパートリーも増えたものだ。
そしてそれに伴って変わったことがもう一つある。こいしが外から帰ってくるとき必ずお土産を持って帰ってくるようになったのだ。地底界は地上と長い間隔離されていたために文化が違うところが幾つかある。その一つが食文化だ。こいしは私が料理をするようになってから地上の食材(地底では珍しいもの)をおみやげに持って帰ってきて料理をするよう頼んでくる。
……というのが少し前までの話で最近はこいしの(よくわからない)基準でいろんなお土産を持って帰ってくる。そのお土産で問題になったトップ3つは天狗のカメラ・宝塔・八雲の式の式である。いずれも『面白そう・綺麗・ペットにしたい』という本人にとっては十分な理由があるのだが、いかんせんあの子は欲望に真っ直ぐ過ぎる。だから今日あたりおそらく帰ってくるあの子を楽しみにする反面、実はかなり心配でもある。
◇
「ただいまー!お姉ちゃん、今帰ったよー!」
「お帰り、こいし。クッキー焼いたんだけど食べる?」
「チョコのやつ?」
「普通のやつよ。チョコレートは高いからそんなに頻繁にはダメよ」
「ちょっと残念だけどまぁいいや。そうだお姉ちゃん、これお土産!」
……やはり現実からは逃れられないようだ。見ないようにはしていたけどやっぱりこいしがロープで縛って連れてきているこの妖精はお土産だったらしい。しかも今回はその妖精を心配してなのか、別の妖精までついてきている。こいしが『神隠しの模倣犯』と言われる日も近いかもしれない。それを防ぐためにもここで誤解を解いて置かなければならない。……誤解ではないような気がするのはきっと気のせいだ。
「妹が迷惑をかけたみたいでごめんなさいね。お詫びといっては何ですがクッキーでもいかがですか?」
「クッキーくれんの?食べる!」
「えっ?いいんですか?……じゃあいただきます」
私とこいし、それに妖精二人でお茶をしながら話を聞いてみたところ縛られていた方はチルノ、ついてきた方は名前がなく周りからは大ちゃんと呼ばれているらしい。二人に事情を聞いてみたところ、チルノが地上の湖でカエルを凍らせて遊んでいたらいきなりこいしに弾幕ごっこを挑まれ、勝ったこいしがチルノをロープで縛って連れてきてそれを心配した大ちゃんがついてきたということらしい。
……これはもしかしなくても拉致というのではないか?これを弁明するのは非常に難しい。そして何より私が苦手なものはこいし・八雲紫・妖精である。これらは心が読めなかったり、読めてもよくわからなかったり、そもそも何も考えてなかったりするからだ。念のために言っておくがあくまで苦手であって嫌いではない。何も考えてない妖精をどう言いくるめるか、とりあえずこいしからも話を聞こう。
「紅茶のおかわりを持ってくるからちょっと待っててくださいね。こいし、ちょっと手伝ってちょうだい」
「はーい」
とりあえずこいしをキッチンまで連れ出すことに成功した私はお茶の用意をしつつ尋ねてみた。
「こいし、ところでなんであの子を連れてきたの?」
「わかんない!」
自信満々の返答だった。もうだめかもしれない。
「知らない人をつれてきちゃいけないって、八雲の式の式を連れてきた時に言ったの覚えているかしら?」
「うん」
「じゃあなんで連れてきたの?」
「なんとなく!」
「……あのねこいし、あの時もお姉ちゃんとっても困ったことになったんだけど。ひょっとしてあなた私のこと嫌いだったりする?」
「大好きだよお姉ちゃん!」
「私もあなたのことが好きですけど……」
こうなったら仕方ない。妖精との会話はあまり得意ではないが、美味しい物を渡して、謝って、以後こんなことはしないと約束して、またこいしが連れてくることがないように祈るしかないだろう。とりあえず二人の好物を聞くところから始めようか。
「お姉ちゃん困ってるの?」
「……え?あぁ、いくら妖精でも無理やり連れてくるのはよくないから」
「わかった!」
こいしはそう言って二人の妖精がいる客間の方に行ってしまった。これは非常にまずい。経験上こういう時のこいしの考える事はよくない事が多い。急いでお茶を持って追いかけ、客間に着くと
「弾幕ごっこで起きた問題は弾幕ごっこで解決だ!ということでもう一回勝負して私が勝ったら今日のことは忘れてちょうだい!」
……これで交渉はできなくなってしまった。というよりこんな条件を飲むはずが
「さいきょーのアタイに挑むなんていいどきょーね!これ食べ終わったら勝負よ!」
「でもチルノちゃん……」
「何よ?大ちゃん文句あんの?」
「ないけど……」
「じゃあ口出ししないでよね!」
……これだから妖精は苦手だ。
◇
食べ終わったチルノとこいしは弾幕ごっこを始めてしまい、それを私と大ちゃんが観戦している状況になっている。見たところチルノは妖精とは思えないくらい強い力を持っていたが、さすがにこいしのほうが強い。とりあえずこの一件は解決しそうだと安心していると、ふと大ちゃんのことが気になった。地上からチルノを追ってやってきたのだから親しい間柄なのかと思っていたが、お茶している時の様子を見ているとどこかぎこちなく感じたからである。なんというか……チルノとの距離を測りかねているといった感じだろうか。そんな気がしたので少し話しかけて見ることにした。
「迷惑かけてごめんなさいね。それにしてもあの子が心配だったんだろうけど、だからってわざわざ地底まで来るなんてあなたは友達思いなんですね」
「……そんなことないですよ。それにチルノちゃんは私のことを多分友達だと思ってませんチルノちゃんは妖精の中ではとても強いんですけど、そのせいでなかなかそういう親しい子ができなくて。だからチルノちゃんはよく一人ぼっちなんです。チルノちゃんもみんなと一緒にいるのがあんまり好きじゃないみたいですし……」
「あなたはあの子のことが嫌いなの?」
「いいえ、私は仲良くしたいんですけど……。チルノちゃんには迷惑かもしれないですし……」
妖精にはやはりさとりの能力があまり意味がない。この子の喋ったことと考えていることはほとんど一緒だ。だから真剣に悩んでいるんだろうが私にはどうすることもできない。結局のところ大ちゃんが困っているのは『どうやってチルノと付き合っていくか?』である。しかしその答えは誰にもわからない。仮にチルノが大ちゃんが嫌いだとしても大ちゃんがそばにいたほうがチルノのためになったりする場合があるし、またその逆などもあるからである。だから答えは誰にもわからないし、誰にもわからないなら私は読むことができない。
「くらえ!氷符『アイシクルフォール』」
上空ではそのチルノがスペカを放っていた。基本的に弾のスピードは速いしなかなか強力だが、やはりこいしには及ばない。……と言うより今使ったスペルってチルノの正面に行ったら当たらないように見えるんですが……
「止めだ~!本能『イドの解放』」
こいしもチルノがスペカを放ってすぐそのことに気づいたようで、チルノの真正面に移動しスペカを放った。至近距離で大量に被弾したチルノは為す術もなく吹っ飛ばされた。やはり今のは正面に安全地帯があったようだ。妖精らしいといえばそれまでだが、まぁなんとも言えないものである。そんなことを考えているとこいしが降りてきて
「勝ったよお姉ちゃん!」
「はい、見てましたよ。がんばりましたね」
「えっへん!」
とりあえず弾幕ごっこで勝ったしこの一件は終わりだ。お土産にプリンでも作って持たせてあげようかと考えているとこいしが大ちゃんに声をかけた。
「確か大ちゃんって言ったよね?」
「えっ?あ、はい。そうです」
「チルノと仲良くなりたかったらね、ちゃんと向き合って『友達になりたい』って言えばいいよ」
その後飛ばされたチルノを見つけてお土産としてプリンを渡して地上までこいしと二人で送っていった。
◇
その日の夜こいしと二人で晩ご飯を食べてる時、疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「こいし、なんで大ちゃんがチルノのことで悩んでるって分かったの?」
「それはさすがに私でも見たら分かるよ」
まぁたしかにそうだ。大ちゃんの様子を見ればそれは分かるかもしれない。だが私は本当に気になったのは次だ。どうしてその大ちゃんの悩みに対してこいしがあの答えを出したかである。正直に言えば私もそれなりに長く生きてる身であるので、大ちゃんの悩みに対してそれっぽいことを言うことはできる。それで大ちゃんを元気づけることは容易だったと思う。けど結局は二人の問題だからと思い、私は口出しをしなかった。けどこいしは大ちゃんにアドバイスをした。何を思ってこいしが行動したのか純粋に知りたかったのである。
「なんで大ちゃんにあのアドバイスをしたの?」
「チルノがそれを求めていたからだよ。チルノは自分とちゃんと向き合ってくれる友達が欲しかったんだと思ったから」
「なんでそう思うの?」
「チルノのスペカで1枚正面で弾が当たらない奴があったでしょ?あれってたぶん無意識に『自分と正面から向き合ってくれる相手』が欲しくてそのために空いているんだと思うの。妖精にしては力が強すぎるからか、その性格のせいかわからないけど地上で見つけた時も離れて見てた大ちゃん以外は一人ぼっちだったし。きっと友達が欲しかったんじゃないかな?」
「……確かにそうかもしれないですけど、それはただのこいしの思い込みかもしれませんよ?」
「たしかにそうかもしれないね。でも『友達になりたい大ちゃん』と『友達のいないチルノ』。二人が友達になったら全部解決だよ?」
「……二人が友だちになることが必ずしもいいこととはかぎりませんよ?」
「そんなの友達になってみないとわかんないよ!」
私はさとり妖怪であり、そのためにみんなから恐れられ色々と苦労してきた。心を読むことで様々なトラブルを引き起こしてきたし、けど逆にそれによってトラブルを回避したことも少なくはなかった。その結果良くも悪くも自身の能力に頼りきってしまっていたのだ。そうしているうちに必要なことも余計なこともいろいろなことを考えてから行動するようになってしまった。いつからかこいしのように考えたことをそのまま行動に移せないようになっていた。必ずしもこいしのように生きるのが正しいと思わない。でも少なくてもやってみないとわからないこともあるのだ。見えないからこそ、心を読めないからこそ見えてくるものもあるのかもしれない。
「こいしの言うとおりかもしれないわね。けど今度からは知らない人は連れてきちゃダメよ?」
「分かってるよお姉ちゃん!」
「明日はもうでかけるの?」
「そうだなぁ……しばらくここにいようかな」
「わかったわ」
地上でチルノと大ちゃんが仲良くなれるかは私にはわからない。けど少し自分勝手だけど素直なチルノと気が弱いけど優しい大ちゃん。二人はうまくいくんじゃないかと思うし何より上手く行って欲しいと思う。明日のおやつはチョコレートのケーキにしようかしら。そんなことを考えながら寝室に向かった。
新鮮な解釈でした。
ただ、ちょっと読み辛かったので改行をもう少し入れた方が良いなと思いました。
次回の作品楽しみにしてますね。
楽しかったです。
一つばかり思ったのが、日常的すぎて、心にひっかかるものが無いという所。狙って書いたのでしたら余計な口出しでしたね。
ちなみにこの作品は初めて紅魔郷をやった時に思ったこととある曲から思いついた作品です。
8さん
書いてて思ったんですが、地の文と改行が難しい……。これはしばらくの間苦労しそうです。日々精進!読みにくくてすいません、こういうアドバイスはほんとうに有難いです。
32さん
心に引っかからない作品……。まだまだ実力不足ですね……。
日常の話を書いてると何か癒されます。それにしてもチルノとさとりん書くの難しい……。前者はどこまでの頭脳にするか、後者は心を読むキャラの書き方が難しい。さとりん好きなんだけどなぁ……。