地底の奥底。旧地獄の上に建つ地霊殿。
廊下には大勢のペット達が昼寝したり散歩したりしていた。
そんな中を地霊殿の主、古明地さとりは歩いて行く。ペット達に聞きながら、お目当てのペットの姿を探す。
「あ、さとり様。ここにいましたか」
後ろからお燐に声を掛けられ、さとりは振り向いた。お燐が手を振って、駆け寄ってくる。
「あらお燐。丁度よかった。ちょっと、あなたにお願いしたい事があるのよ」
「ええ、そう聞いてあたいも探していたんですよ」
「そうなのね。わざわざ、有り難う。あなたに伝えてくれたのは……そう、あの子なのね。後で、ご褒美を上げましょう」
お燐の心に、白い毛並みの猫又の姿が思い浮かんだ。まだ幼いため、人の姿を取ることは出来ないが、同じ猫同士だからかお燐も仲がいい。お燐の事を姉のように慕っているようだ。
「それでお燐、あなたにお願いしたい事っていうのは、一つお使いを頼みたいのよ。地上に遊びに行ったときのついででいいから」
地上に遊びに行っても大丈夫なペットは、お燐くらいしかいない。お空もたまに出かけているようだが、彼女だとお使いの内容を忘れてしまいそうだ。
「お使いですか? 地上に? どなたにですか?」
お燐が首を傾げた。
それを見て、さとりがちょっとだけ口篭もる。覚悟はしていたが、少しだけ恥ずかしい。
「え~とその……。適当に、天狗の新聞記者を見付けたら、頼んで欲しいのよ。『ペンフレンド募集』の広告を載せて欲しいの」
そう言うと、お燐は目を瞬きした。
「何よお燐。別にいいじゃないの? わ、私が友達を募集するのがそんなにも変だって思うの?」
「何も、そこまで思ってないじゃないですか。ちょっと意外だったというか、驚いただけですよ。どういう心境の変化なのかって。だって今まで、全然そんなこと無かったじゃないですか」
とはいえ、ペンフレンド募集自体にお燐は反対していなかった。むしろ、好意的に思っているようだ。主の交友関係が広がることは、ペットとしても嬉しいらしい。
でも、それでもさとりは気恥ずかしいものを感じた。
「その……別に深い理由は無いわよ? ただちょっと、お仕事の都合もあるけどこの地霊殿に篭もりっきりっていうのもどうかと思ったのよ。別に、あなた達のことが嫌いになったとかそういうんじゃなくて……そんな、閉じた交友関係っていうのも……ね? 私はサトリ妖怪だし、嫌われ者だけど……でも、文通だったら心を読むようなことも無いし、私だって友達を作れるかも知れないって思ったの。何で今までこんな事に気付かなかったのかって思うけど」
「はあ、なるほど」
うんうんと、お燐は納得したと頷いた。
「ちょっとっ!? だからお燐? 違うのよ。別に『こいしに友達が出来て羨ましい』とか『姉として妹に負けた気がして悔しい』とか、そんなんじゃ全然無いんだから?」
「あたい、何も言ってませんよ?」
「でも、思っているじゃないのっ!」
さとりが口を尖らせるが、お燐はにやぁ~と笑みを浮かべるだけだ。
それは確かに、そういう感情が全く無いと言えば嘘になるかも知れないが。でも、それはあくまでも切っ掛けであって、友達というものがどういうものかという興味の方が大きい。そのはずだとさとりは思っている。
「はいはい、ではそういうことにしておきます。でも、さとり様?」
「何かしら?」
「一口に天狗の新聞記者と言っても、色々いますよ? それに、頼むのならどうせならこの手の話題に強そうな人に頼んだ方がよくないですか?」
「そう? でも、こういう話題に強そうって……、ああなるほど」
お燐の心に、いつぞや押しかけてきた、髪の短い鴉天狗と、ツインテールの鴉天狗の姿が浮かんでいた。どうやら、彼女らは弾幕ごっこや異変に関わる少女達をよく記事にしているようだ。
確かに、やたらと硬派で専門的なものだったり、逆にえげつないゴシップ記事のようなものを書く記者よりは良さそうだ。彼女らの書く新聞は、ちょっと気軽に茶店で読めるような内容で、読者層もそういう……人外の事情にも興味があったり、理解のある存在だろう。仮に募集者が来たとしても、付き合いにくい癖は無い気がする。
それに、あの天狗達なら少しは面識もあるし、そういう意味でも安心する。
「そうね。じゃあ、彼女たちのどっちでもいいわ。地上で見かけたら、お願いしてね。頼んだわよ」
「にゃあい。了解です」
「あら? さっそく地上に行くの?」
「はい。善は急げって言いますから」
「そう? 気をつけてね。あと、お夕飯までには帰るのよ?」
「は~い」
お燐は踵を返し、鼻歌を歌いながら地霊殿の出口へと向かっていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さとりは、応接室のソファに座りながら、苦笑を浮かべた。
「ごめんなさい、さとり様。こんな事になってしまって……」
傍らに立つお燐が、申し訳なさそうに項垂れていた。
そんなお燐に、さとりは優しく微笑んだ。
「いいのよお燐。あなたのせいじゃないわ」
さとりの正面には、二人の天狗が座っていた。射命丸文と、姫海棠はたて。どちらも、過日に地霊殿まで取材に来たことがあり、弾幕ごっこや異変といった内容を書く記事にする記者だ。
二人の鴉天狗は、営業スマイルを浮かべながら、お互いにお互いを牽制していた。心の中で、激しい火花が飛び散っている。
同じネタを追うことが多い記者として、互いに強く意識し合う仲のようだ。
お燐は地上で先に文を見かけて、彼女に依頼しようと思ったのだが、そのすぐ傍にはたてもいた。その様子をはたてが見付けて、付いてきた形だ。
「さとりさん。広告を出すなら、是非我が文々。新聞にっ! 紙面を大きく割いて、大々的に取り上げさせて頂きますからっ!」
「いえいえ、さとりさん。私の花果子念報に、よろしくお願いします。さとりさんの魅力を120……いえ、150%以上引き出した、アピール力のある、質の高い広告を出して見せますっ!」
名刺を差し出し、熱い視線を送ってくる鴉天狗達に、さとりは苦笑を浮かべた。
「別に、そんなに熱くならなくてもいいですよ? 別に、コンペじゃないんですから」
「へ?」
「え?」
天狗達はきょとんとした顔を浮かべた。
「お二人に来て頂けたのなら、丁度いいです。両方に頼みますから」
「え? そうなんですかさとり様?」
お燐も驚いた声を上げた。
「ええそうよ? 別にお二人に頼むお金を心配していたわけじゃ……。ええ? 両方に頼むより、どちらか一人を見付けた方がお燐も楽だと思っただけよ?」
「あ、なんだ。そういうことでしたか」
あははは、とお燐は安心した笑みを浮かべた。
「あ、じゃあさとり様――」
「ダメ」
「まだ何も言ってないじゃないですか?」
「お小遣いの値上げは、しません」
「うぅ~」
再び、お燐がしょぼくれた。
どうやら先日、ペットショップで可愛い玩具を見付けたらしい。買ってあげたい気持ちもあるが、ここは心を鬼にして、我慢と計画性を躾けるべきだとさとりは思った。甘やかすのは、きっとこの子のためにならない。
肩を落として、お燐は応接室を出て行った。その後ろ姿に心は痛むが、決意は揺るがない。
文が咳払いをした。
「え~っと、その。いいんですか? 本当に? 私達二人に頼むということで」
「ええ、勿論よ」
そう答えると、なんだ、そういうことかと鴉天狗達の間から緊張が解けた。
“その方が、お二人とも燃えるでしょう?”
片目を瞑り、くすりと笑ってさとりは言った。
その一言に、鴉天狗の緩んでいた表情は再び引き締まる。同じネタを扱う以上、尚更負けられなくなったということだ。天狗達の記者魂は、先程以上に熱く燃え上がっていた。
そんな様子を見て、さとりは「ライバルっていいものねぇ」などと思った。少しだけ羨ましく、そして微笑ましい。言えば、本人達は心外だと言ってくるだろうが。
そして、互いに競い合ってくれるのなら、よりよい広告が期待出来るというものだ。
「じゃあ、さっそく――」
「そうね」
文とはたてが互いに目を合わせ、頷いた。
「……え?」
彼女らの心に浮かんだ声に、さとりは表情を凍り付かせた。
「しゃ……写真ですか? あの、それはちょっと、勘弁を……。写真は、苦手なんですよ」
ダメダメと、さとりは慌てて胸の前で両手を振った。
「え~? でもさ? 写真も無しにっていってもねえ?」
「そうですよさとりさん。直接はお会い出来ないにしても、お相手の方もさとりさんがどういう方なのか、やっぱり興味はあるでしょうし」
ねぇ? と天狗は互いに頷いた。
「大丈夫だって、さとりさんなら可愛いから、載せたらきっと応募者が沢山来るって」
「いえ、別にそんなに沢山の方と遣り取りしたいわけではないですし」
朗らかに、邪気の無い笑顔を浮かべる鴉天狗達に、さとりは冷や汗を流した。
「まあ、そんなに警戒しないで下さいよ。ちゃんと、可愛く撮りますから」
「そうそう、何て言ったって私達もプロだし」
天狗がカメラを取り出した。無造作にレンズをこちらに向けてくる。
「はい、笑って~?」
「う……うぅ」
さとりは、強ばった顔の筋肉を歪めて、無理矢理に笑顔の形を作った。天狗達の心で、その様子が視えるが、やっぱり可愛くない。
「それっ!」
シャッターが切られた。
「……あれ?」
天狗達は首を傾げた。
「さとりさん? 逃げないで下さいよ」
部屋の隅から、天狗達の様子を見る。彼女達は呆れたように苦笑していた。
「ご、ごめんなさい。つい……ほら、突然だったから?」
「そんなに、突然でもないでしょう? ……ほら」
再び、シャッターが切られた。
「……さとりさん?」
今度は、さとりは部屋の反対側の隅へと移動していた。
「だから、幾ら写真が苦手だからってスペルカードを使ってまで逃げなくてもいいじゃない」
「う~、その……ごめんなさい。やっぱり写真は苦手なのよ。だから、写真は無しというわけにいかないかしら? お願いだから」
精一杯に懇願するが、天狗には通じないようだ。
「ダメです。よりよい記事を作るためにっ! さとりさんの写真が絶対に必要なんですっ!」
「そうよ。記者魂に懸けて、それは絶対に譲れない話よ」
「私、依頼主なんだけどっ!?」
どうやら、天狗達の記者魂を煽りすぎたようだ。さとりは後悔した。
“問答無用っ!!”
“心花「カメラシャイローズ」”
シャッターが切られるのと同時、さとりはまたも移動した。
「くそっ! 速いっ!」
「文、あそこっ!」
「ふふっ! ……それは、残像よ」
「後ろっ!?」
「違う。それも残像ですよ。はたて」
シャッターの魔の手からギリギリのところで、さとりは躱し続けていく。そのスピードは、もはや目で追いきれるものではない。
「ふっ、ふふふ……そうですか。この鴉天狗に……幻想郷最速のスピードを誇る私に速さで競おうというのですね。さとりさん」
「サトリ妖怪が、いい根性ね。……いいわ、本当のスピードって奴を見せてあげるわよっ!」
新聞記者魂だけではない。今度は最速の誇りを煽ってしまったようである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗達の魔の手から逃げること約十数分。
さとりは、はたてに後ろから羽交い締めにされていた。藻掻くものの、逃げ出すことが出来ない。
「ちょっとこらっ! 暴れんな……暴れんな……」
「(迫真)とか、何考えているんですかあなた達っ!? やめて……本当に止めて下さいっ! 何でもしますから」
「じゃあ、脱いでみます?」
「何でですかっ?」
「ん? 今『何でもする』って」
「そういう意味じゃないですからっ! ……んんっ!?」
もう、本気で彼女達にトラウマを抉り出してやろうかと思ったその矢先、さとりの体がビクリと震えた。
「ちょっ!? ちょっと文さん……どこ触って……やだっ! そんなところ……」
「ふっふっふっ。さとりさんの羞恥心は、私達に崩されるために築いてきたんですね」
さとりの顔が真っ赤に染まった。
「くっ……いつもの力が出せれば……こんな鴉天狗なんかにっ!」
「よかったじゃないですか、運動不足のせいに出来て」
「んんんんんんんっ!」
「ふっふっふっ、さあ、カメラを準備しましょう。たっぷりと激写してあげますよ」
耐えなきゃ……今は耐えるしかないと、さとりは必死に自分に言い聞かせる。
「さとりさんの生写真ゲ~ット!」
さとりの体が、再び大きく震えた。さとりは恐怖する。いけない……文の手が、徐々に自分の弱いところに近付いているのを悟られたら……。
「生さとり様の生お臍を拝見してもよろしいでしょうか?」
「こんな奴等に……悔しいっ! でもっ!」
そこが、さとりの限界だった。
「ああああぁぁぁぁぁ~~~っ!? も、もうダメえええぇぇっ! あはっ! ぶははははははははははは~~っ!」
「ほ~れ、こちょこちょこちょ~」
文に脇腹をくすぐられて、さとりは悶絶した。
その瞬間、シャッターが切られる音が響いた。
「ちょっとっ!? ですからっ! こんな写真を撮らないで下さいっ!」
しかし、またもやシャッターが切られた。
「うん、怒った顔も可愛くて魅力的ですよ」
「いい笑顔で言っても、誤魔化されませんからねっ!」
「嘘じゃありませんよ。心を視ているんですから、ご存じでしょう?」
「うっ……ぐ、まあ、そうですけど……」
笑顔の文に、さとりは押し黙った。
そして、笑顔ではあるが、文の瞳には真剣な光が宿っていた。
「確かに、さっき撮った写真の表情は崩れていました。美術的な価値観で考えれば、美しい写真というのとは違うでしょう。けれどね? 私は魅力的な写真になると思いますよ? さとりさんが変に気取らず、素直に感情を表現した姿を切り取ったのですから」
さとりは、反論しなかった。
文の心に映った自分の姿は、確かに綺麗では無かったけれど……でも、生き生きとしていた。それは確かに、ある意味では魅力的だとも感じた。何より、文が本気でそう思っている。
「そうそう、変に構えちゃって、自分をよく見せようと思うから、変な感じになっちゃうんだよ。昔何があったのか知らないけどさ、肩の力を抜いて、私達を信じてよ? きっと、いい写真を撮ってみせるからさ」
砕けた口調と心で、そう言ってくる鴉天狗の言葉に、さとりは戸惑いながらも頷いた。自分の心の中でわだかまっていた何かが、解けてくる気がした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから数時間後。
さとりは地霊殿の出口まで鴉天狗達を見送った。
「それじゃあさとりさん。写真が出来たら持ってきますので、期待して待ってて下さい」
「そうそう、記事の方もね。あ、文の方はしなくてもいいけど」
「それはこっちの台詞ですよ。はたて」
そう言って睨み合う二人に、さとりはくすりと笑った。
「どちらも、期待しています。あと、くれぐれもその……変な写真は使わないで下さいね? それと、こちらこそ多くの写真を撮らせてしまってすみません」
「いえいえ、いいんですよ。こっちこそ、材料が沢山ある方がありがたいですし」
「そうそう」
「それじゃあ、失礼します」と鴉天狗達は飛び立っていった。あっという間にその姿は遠ざかり、小さくなって見えなくなった。
それを見送って、さとりは踵を返した。
「今日は、本当にいっぱい写真を撮って貰ってしまったわね。写真嫌いの私がこんなに写真を撮って貰う日が来るなんて、世の中本当に何があるか分からないものね」
けれど、不快ではなかった。むしろ、ちょっと恥ずかしかったけれど……どこか充実感すら感じた。
お世辞抜きに、彼女たちの仕事に期待したいとさとりは思った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗達にペンフレンド募集の広告を依頼して数日後。
さとりは自室でお茶を飲み、読書を楽しんでいた。
「さとり様~。すみません。開けて下さい」
扉の外からお空の声が聞こえてきた。
「鍵は掛かってないわよ。入ってらっしゃい」
「いえ、手がふさがっているんです。なので、開けられないんですよぅ」
「あら、そうなの? 待ってなさい。今開けるから」
さとりは椅子から立ち上がり、ドアへと向かった。ドアノブを回し、開いてあげる。
ドアの外には、お空が胸の前に大きな箱を抱えていた。確かにこれを抱えたままドアを開けるのは難しいし、一端床に置いて、それから持ち上げるのも大変だろう。
「どうしたの? その荷物」
「いえ……よく分からないんですけど。何でも、地上から送られてきたそうです」
「地上から? 何かしら? これ、持ってきたのはどんな人だった?」
「う~んと……うにゅ?」
「ああ、覚えてないのね。なら、仕方ないわね」
届けてきたのはおそらく、宅配か何かの人だろう。特に覚える必要は無いと、お空が覚えていなくても無理は無い。
お空が荷物を持って部屋に入ってくる。そして、床の上に置いた。ずっしりと、重そうな印象だ。
「さとり様。何でしょうねこれ?」
「さあ? 本の注文も、最近はした覚え無いのよねえ」
怪訝に想いながら、さとりは箱の封を解いた。
「……何これ?」
さとりは目を丸くした。箱の中にはみっちりと封筒が詰まっていた。
その中の一通。一番上に積み重ねられていた封筒を手に取る。そして、中を見た。
「え? これって……まさか? 本当に?」
「うにゅ? どうしたんですか? さとり様」
お空が首を傾げた。
「あ、うん。この前、天狗に頼んで文通相手の募集を載せて貰うようにお願いしたのよ。これ……その申し込みみたいね」
ちょっと、あの鴉天狗達……いくらなんでも、本気出しすぎではないだろうか?
さとりは頬を掻いた。嬉しいのだけれど、これはこれで困る。これ、全部で何通あるのだろうか? 下手すると幻想郷の相当な割合の相手から送られていないだろうか? そんな沢山の人達と文通は出来ない。
「さとり様、文通を始められるんですか?」
「ええ、ちょっと思うところがあってね? って、お空? 違うからっ! お燐だけじゃなくあなたまで……そういうのと、全然違うわよ?」
肝心のことは忘れてばっかりのくせに、こういう所では変に頭が回るんだから……と、さとりは小さく嘆息した。
「とにかく、一度は目を通さないとね」
気合いを入れて、さとりは次の封筒に手を伸ばした。
「『その可憐なお姿に、僕の心は一目見たときから虜になりました――』『素敵な笑顔に、私は雷に撃たれたような衝撃を感じました――』『さとりさんに飼われているペットが羨ましいです。僕もあなたのペットになりたい――』。何だか、妙に情熱的な申し込みが多いわねえ? それも、男性の方からばかり」
出来れば、もっと普通にお友達としてやっていけそうな感じの相手を求めていたのだけれど。それに、どちらかと言えば男性よりは女の子の方が精神的に近くて、文通相手には良さそうな気がしたのだが。何と言っても、初心者なのだから。
「うーん、応募者を絞るように頼んだ方がよかったかしら?」
「そうですねえ。……う~ん、さとり様。ここって何て読むのですか?」
「あ、こらお空っ!? あなた、何勝手に人の手紙を読んでいるの? ダメでしょ、もぅ」
顔を赤らめ、さとりは慌ててお空の手から手紙を奪い取った。
「う、ごめんなさい。さとり様。私……読むのお手伝いしようと」
叱られて、お空は肩を落とした。
「まあ、悪気が無いのは分かったから。次からは気をつけなさい。こういうのは、勝手に読んじゃダメなの。これは、お空の手紙じゃなくて、私の手紙なんだからね? お空だって、自分のお茶碗を勝手に使われたら嫌でしょ? それと同じよ」
「はい、ごめんなさい」
お空は頷いた。悪い事だと分かって、素直に反省しているようだ。
「分かってくれればいいの。いい子ね。あと、お空? もうちょっと、漢字のお勉強もしましょうね?」
「はい」
さとりは小さく笑った。
「ええと、それでさっき読めなかったところはね? ……え? 何これ?」
お空に、読めなかったところを教えてあげようと、彼女から取り返した手紙に目を落とし、さとりは目を丸くした。
“写真集”
そんな単語が、書かれていた。その前後も読む。写真集を買いました。大ファンです。次の写真集が出るのが本当に楽しみです。そんな感じの内容が書かれていた。
「写真集っ!? ええっ? どういうこと? 私、そんなの出した覚え無いわよ?」
“さとり様~っ!! 大変っ! 大変です~っ!”
「お燐っ!?」
ドアが勢いよく開かれ、お燐が部屋の中に飛び込んできた。
「どうしたのよお燐。そんなに慌てて」
「どど、どうしたもこうしたも無いですってっ! これっ! これを見て下さい。地上……地上が。さとり様、凄いことにっ!」
よほど慌てていたのだろう、お燐が息も絶え絶えに、新聞を見せてきた。
それを見て、さとりが固まった。
“古明地さとりファースト写真集 『地底の妖薔薇』 大好評発売中!!”
“古明地さとり、初めての写真集 『瞳に恋して』 祝、人里で最も売れた写真集一位!!”
そんな文字が、広告欄に……というか、もはや広告欄が本体と化した誌面いっぱいに、でかでかと載っていた。
「な……なな、何よこれえええええええぇぇぇぇ~~~~っ!? どういうこと?」
「どうもこうも無いですよ。さとり様っ! 一体いつ、こんな写真集なんて出したんですかっ!?」
「知らないっ! 私、こんなの全然知らないわ」
「じゃあ、これはどういうことですか? これっ! この表紙の顔、さとり様ですよね?」
「そ、そうだけど……でもっ!」
あぅあぅと、さとりは呻いた。
何が起きているのか、慌てた頭ではさっぱり整理出来ない。
“お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!! これ、どういうことなの~っ!!”
今度は、こいしが部屋に飛び込んできた。何だか凄い剣幕だ。
「こいし、どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないよお姉ちゃんっ! 写真集なんて、どういうことなのっ? しかもこんな……こんなのっ!」
こいしの手には、問題の写真集が二冊あった。ペットなお小遣いのお燐にはともかく、こいしには写真集を買うだけの持ち合わせがあったようだ。
「どういうことも何も――」
「いいからっ! これ見てよっ!」
そう言って、こいしが勢いよく写真集を開いて見せた。
「ぶふへっ!?」
そして、それを見て即座にさとりは吹いた。お燐とお空も赤面して硬直する。
写真集の中、大見開きでさとりはスカートをたくし上げていた。そりゃもう、下着が見えてしまうんじゃないかというぐらいに、ギリギリいっぱいまで攻めた感じで。太腿が実に眩しい、セクシー路線だった。恥じらう笑顔が、扇情的だ。
「他にも、これとかっ!」
こいしが、別のページをめくった。今度のページでは上目遣いになって、胸元を大きく開いて、それこそ胸の膨らみが見えるか見えないかといった具合だった。
「こんなのもっ!」
今度は、もう一方の写真集を開いて見せてきた。そっちでは、かなり面積の小さい、ビキニの水着を着て、四つん這いになっていた。俗に言う女豹のポーズという奴だった。
それらを見て、さとりはあんぐりと口を開け、真っ赤に顔を染めた。
「さとり様……これって?」
「ち、ちが……違うのっ! 違うの~っ!! 私、そんなつもりは全然無くてっ! みんな、そんな目で見ないでっ! これは全部、天狗の……そう、天狗の仕業なのっ! ペンフレンド募集の広告を依頼したら、写真が必要だって言ってきて……。沢山撮られている内に、何だかそれが嬉しいというか、気持ちいいというか……天狗の要求もエスカレートしてきて、私もついハイになっていたから、ちょっぴり大胆になってみたくて……それで、つい乗ってしまったというか……。そう、あのときは私であって私じゃない感じになっちゃったのっ! だから、こんな本を出すとかそんな話、私も知らないのっ! お願い、信じてっ!」
「そんな話、どうでもいいよ」
「こいしっ!?」
怒気を孕んだこいしの声に、さとりはふためく。
「私だってっ! 注目されるのが嬉しいのにっ! もっともっと注目されたかったのにっ! それが、お姉ちゃんのせいで、注目がみんなお姉ちゃんに移っちゃったっ! 私……私だって、弾幕ごっこで頑張ったのに、それがお姉ちゃんの……お姉ちゃんのせいで……また、誰も私を見てくれなくなっちゃうんだ」
「こいし。違うわ。私、そんなつもりは全然」
“知らないっ! お姉ちゃんなんて、大っ嫌いっ!”
写真集を床に叩き付け、こいしは部屋から走って出て行った。
「こいしっ! 待ってっ! お願いだから話を聞いてえええええぇぇ~~っ!!」
さとりは叫んだ。しかし、こいしの足音は無情にも遠ざかっていくだけだった。
さとりは床に崩れ落ちた。はらはらと、涙が零れる。
「おのれ……天狗めぇ……」
さとりは拳を握り締め、彼女らにきっちりと話を付けることを決定した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
突如として、妖怪の山にけたたましくサイレンが鳴り響いた。
にわかに、外の様子が慌ただしくなる。
文は写真集第二弾に使用するための写真の選別作業の手を止め、顔を上げた。
「これは、何かあったのですかね?」
緊迫した気配が外からも伝わってくる。ただ事ではない、何かが起きているとしか思えない。
いてもたってもいられず、文は外へと出た。
“白狼天狗警備隊は集結せよ。繰り返すっ! 白狼天狗警備隊は総員、集結せよっ!”
“非戦闘員は速やかに避難せよ。非戦闘員は速やかに避難せよ。これは、訓練ではない”
「白狼天狗が集結ですって? そんな……何事だと言うんですか? それに、避難って」
そんな事態が起こるとは……一体何が起きているというのだ?
「文っ! あんた、こんなところで何やってんのよっ! 通達が聞こえていないわけじゃないでしょ? 避難しないと」
「あ、はたて。どうしてここに?」
空を見上げると、はたてが舞い降りてきた。
「何でもいいでしょ? ちょっと、あんたの様子を見に来ただけよっ! 勘違いしないでよね? ただ、私の知らないところで何かあって、勝手にくたばられると、私の新聞作りがちょっぴり張り合いが無くなるってだけなんだからね?」
「何ですか、そのベタベタは……」
はたての弁明に、文は苦笑した。
「でも、一体何なんでしょうねこれ? はたて、あなたは何か知っています?」
はたては首を振った。
「ううん、知らない。けど……こんなのって……」
不安げな表情を浮かべるはたてに、文はニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほど、このネタの渦中に飛び込んでいく気は無いということですか? ま、確かに引きこもりにはハードルが高いかもですね」
「んなっ!? そ、そんなわけないでしょ? ただ、私は――」
「何です?」
「……嫌な予感がするのよ」
目を逸らして、はたては我が身を抱いた。その口調には、真剣な色が混じっていた。
「はたて?」
そんな彼女の様子に、文は「らしくない」と思った。いつもなら、こんな軽口にもムキになって言い返してくるというのにだ。
ふと、文はどこか空気が冷えた気がした。浮ついていた何かが、霧消した感じ。
周囲を見渡す。多くの白狼天狗達が、慌ただしく走っていた。お隣の白狼天狗も、やはり向かうようだ。
「それじゃあ、行ってくるよ。そんな、心配そうな顔するなって、すぐに帰ってくるから」
「きっと……きっとよ? 約束だからね?」
「ああ、分かっている」
「あのっ!」
「うん? どうした?」
踵を返そうとする男を女が呼び止めた。
「う、ううん。何でもないの。帰ったら話すわ。それじゃあ、気をつけてね」
そんな女の様子に、男は首を傾げたが、帰ったら分かる話だとすぐに思い直したようだ。
「ああ、行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
女はお腹に手を当て、手を振って男の背中を見送った。
そんな光景が、そこかしこで見られる。どうやら、白狼天狗達もただ事で無いことは感じ取っているらしい。それぞれが覚悟を決めて、そして悲壮感を打ち消そうと励んでいるようだった。
“よう、お前もあと数日で長期休暇だっていうのに、ついてないな”
“なあに、大丈夫ですよ。俺はこんなところで死ねません。妹の、晴れ姿を見るまでは……”
そんな会話をしているのは、同じ班の先輩後輩だろうか?
“何だ。お前、いつもそんなお守り、していたか?”
“いや、この前、父さんから貰ったんだ”
“何だって? ずっと喧嘩していたんじゃなかったのか? 危険だからって、お前がこの仕事をするのに反対して――”
“ああ。でも、ようやく分かって貰えたんだ”
照れくさそうに、その白狼天狗は笑った。
「あ、椛も行くんだ」
はたてが呟いた。
その声に、文も気付く。道の向こう。少し離れたところに集まる白狼天狗達の中に、椛の姿も見えた。集結するのは警備隊すべてという話だから、当然と言えば当然か。
おそらくは上司だろう。風格のある白狼天狗の前に固まっている。
「お前達は、足止めを頼む。少しでも、時間を稼ぐんだ。椛、みんなを頼む」
こくりと、椛は頷いた。
「でも、隊長?」
「何だ?」
“足止めするのはいいですが、別にアレを倒してしまっても構わないのでしょう?”
そんな椛の返答に、隊長は苦笑を浮かべた。
「……ねぇ、はたて?」
「何よ、文?」
「何だか私も、猛烈に嫌な予感がしてきました」
というか、生き残れる気がしなくなってきた。白狼天狗というのは、死亡フラグを立てるのが趣味なのか? あと、もし万が一にも生きて帰ってきたなら、椛はきっちりと締めてやらないといけないと思った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
久しぶりに妖怪の山に出かけて、一週間が過ぎた。
さとりは、深く溜息を吐いた。
首謀者となった鴉天狗二人には、深く反省して貰うことにした。念入りに言い聞かせたのだから、今度こそ分かってくれたことだろう。
元々、彼女らもあんな破廉恥な写真集を出す気は無かったようだ。募集広告を載せたところ、思った以上に反響がよくて、いけないことと思いつつも、ついつい魔が差してしまったらしい。清く正しい記者魂を忘れるとは、何事だ。
しかし、だからといって文通応募やファンレターの類いが無くなったりはしない。流石に一時期よりは減ったが、それでも依然として送られ続けてきた。
「それも、男性の方ばかり。女の子の方がいいのに……そういうのは、全然来ないのよね」
でもひょっとしたら、希望に添った相手からの手紙が来るかも知れないと、中身の確認は怠らない。読まずに捨てて、その中に希望通りの相手がいたら悲しすぎる。
もっとも、一通だけは女の子からの手紙が来ていたが。差出人は稗田阿求。でも、ほとんどが質問尽くしで、文通というより取材のようだった。お燐に聞くと、彼女は地上で妖怪の事を纏めた本を出しているらしい。返事に迷うので、取り敢えず保留にしている。
「こいしも、まだ怒っているみたいだし。……どうして、こうなっちゃったのかしら?」
やっぱり、写真なんて断固として断るべきだった。そんな気がする。
と、部屋の外からノックの音が響いた。
「どうぞ、空いているわよ」
「さとり様、入ります」
「お燐じゃない。どうしたの?」
「はい、手紙を預かってきました」
その答えに、さとりは肩を落とした。
しかし、お燐は苦笑を浮かべた。
「そんな顔しないで下さい、さとり様。今度は、男の人からの手紙じゃないですから」
「え? そうなの?」
「そうですよ。まあ、お友達とはちょっと違うかもですけど」
そう言って差し出すお燐から、さとりは手紙を受け取った。
「どれどれ? ……って、これ?」
その手紙には、文字が書いてなかった。その代わり、ちっちゃい猫の手が沢山スタンプされていた。当然、読めない。
「あたいが、代わりに書いてあげようかって言ったのに、自分で書くって聞かなかったんですよ。あの子ったら」
くすくすと、お燐が笑う。
「さとり様が手紙でお話ししたいんだから、私も手紙でお話しするって……。『さとり様、元気出して下さい。私は、さとり様が大好きです。さとり様が悲しい顔をしていると、私も悲しいです。さとり様が笑っていると、私も嬉しいです。だから、手紙を書きました。さとり様が、ちょっとでも元気になりますように』――だそうです」
その言葉に、さとりは顔を綻ばせる。
「さとり様。あの子だけじゃないです。私達、みんなの気持ちですよ。元気出して下さい。いつかきっと、本当に仲良くなれる文通相手が見付かりますよ。ひょっとしたら、その阿求さんとだって、これを切っ掛けに仲良くなれるかも知れないですし」
「……そうね。その通りね。心配掛けてごめんなさい。それと、有り難う」
さとりは、ほろりと零れた涙を拭った。この肉球スタンプの手紙は、ずっとこれから、大切な宝物になることだろう。
それだけでも、このペンフレンド募集には意味があった。そんな気がする。
「あ、でもそういえばさとり様?」
「何お燐? どうしたの?」
「あの、こいし様が――」
お燐の心に浮かんだ光景。それを見るなり、さとりは血相を変えた。
「こいしっ! 早まっちゃダメえええええええええええぇぇぇぇぇ~~~~っ!!」
慌てて、さとりはこいしの部屋へと駆け出していく。いくら注目を集めたいとはいえ、写真集デビューなんて、姉として許せるわけが無かった。
まだまだ、この騒動の終わりは見えなさそうである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗の住む里。
文とはたては、仲良く部屋に閉じこもっていた。
「ねぇ文? ……私達、いつになったら外に出られるんだろうね?」
「……飽きっぽい幻想郷の住人達です。そろそろ、ほとぼりも冷めるはず」
「そう言って、もう何日も経っているんだけど?」
はたてが深く溜息を吐いた。
「というか、二人とも何で私の家に居候なんですか?」
包帯だらけの姿となった椛が、布団の中からジト目を浮かべてきた。
「仕方ないじゃないですか。私達の家はがっちり囲まれているんですから。あなただって、身動き取れなくて、私達がいないと何も出来ないくせに」
「別に、頼んだわけじゃないです。まったく、自業自得ですね? 気分はどうです? 自分達がネタの対象にされた気分は?」
「五月蠅いです。だいたい、あなたがきっちり倒しておけばこんな事にならなかったんでしょうがっ! 何が『別に、アレを倒してしまっても構わないんでしょう?』ですかっ! 大口叩いた割に、時間稼ぎすら出来なかったくせにっ!」
「ふんっ! 騒ぎの元凶が偉そうに」
文は椛と睨み合った。
「ちょっと、二人とも止めてよ。騒いだら見付かっちゃうかも知れないじゃない」
はたての仲裁に、文は睨み合うのを止めた。確かに、それは得策ではない。
勝手に人の写真集を出した罰として、自分達も写真集を出せという話になってしまった。少しでも自分の注目を逸らそうという、さとりの考えだった。どうせ、売れるわけないと、文とはたては高をくくっていたのだが、思いの外大人気になってしまった。世の中、何が当たるか分かったものではない。
あと、先日のさとり襲来。白狼天狗達に壊滅的な被害をもたらした事件の元凶としても、その真相を追う記者達の標的になってしまった。
そういった結果が、今のこの状況である。
いくら売れるからといって、約束を破ってはいけない。新聞記者としてやってはならないことをやってしまった罰だと考えれば、さとりを恨むことも出来ないが。というか、白狼天狗を壊滅させ、この世に地獄を生み出した彼女に逆らうとか、もう無理だが。本気を出したサトリ妖怪は恐ろしい。山の平和のためにも、永遠に地下に篭もっていて貰いたい。
ポチポチと、はたてが手にした携帯をいじった。念写の能力を使ったらしい。
そして、がっくりと肩を落とした。
「はたて、どうしました?」
「私達の写真集。売れ行き絶好調だってさ。ランキングにも入っちゃった」
「わー。すっかり有名人ですね。凄いなー。憧れちゃうなー」
「棒読みで言うなっ! このっ!」
声を潜めて、文は椛に怒鳴った。
まだまだ、人目を潜む生活は続きそうである。いっその事、異変でも起きてそっちに注目が移らないかと願う天狗達であった。
―END―
廊下には大勢のペット達が昼寝したり散歩したりしていた。
そんな中を地霊殿の主、古明地さとりは歩いて行く。ペット達に聞きながら、お目当てのペットの姿を探す。
「あ、さとり様。ここにいましたか」
後ろからお燐に声を掛けられ、さとりは振り向いた。お燐が手を振って、駆け寄ってくる。
「あらお燐。丁度よかった。ちょっと、あなたにお願いしたい事があるのよ」
「ええ、そう聞いてあたいも探していたんですよ」
「そうなのね。わざわざ、有り難う。あなたに伝えてくれたのは……そう、あの子なのね。後で、ご褒美を上げましょう」
お燐の心に、白い毛並みの猫又の姿が思い浮かんだ。まだ幼いため、人の姿を取ることは出来ないが、同じ猫同士だからかお燐も仲がいい。お燐の事を姉のように慕っているようだ。
「それでお燐、あなたにお願いしたい事っていうのは、一つお使いを頼みたいのよ。地上に遊びに行ったときのついででいいから」
地上に遊びに行っても大丈夫なペットは、お燐くらいしかいない。お空もたまに出かけているようだが、彼女だとお使いの内容を忘れてしまいそうだ。
「お使いですか? 地上に? どなたにですか?」
お燐が首を傾げた。
それを見て、さとりがちょっとだけ口篭もる。覚悟はしていたが、少しだけ恥ずかしい。
「え~とその……。適当に、天狗の新聞記者を見付けたら、頼んで欲しいのよ。『ペンフレンド募集』の広告を載せて欲しいの」
そう言うと、お燐は目を瞬きした。
「何よお燐。別にいいじゃないの? わ、私が友達を募集するのがそんなにも変だって思うの?」
「何も、そこまで思ってないじゃないですか。ちょっと意外だったというか、驚いただけですよ。どういう心境の変化なのかって。だって今まで、全然そんなこと無かったじゃないですか」
とはいえ、ペンフレンド募集自体にお燐は反対していなかった。むしろ、好意的に思っているようだ。主の交友関係が広がることは、ペットとしても嬉しいらしい。
でも、それでもさとりは気恥ずかしいものを感じた。
「その……別に深い理由は無いわよ? ただちょっと、お仕事の都合もあるけどこの地霊殿に篭もりっきりっていうのもどうかと思ったのよ。別に、あなた達のことが嫌いになったとかそういうんじゃなくて……そんな、閉じた交友関係っていうのも……ね? 私はサトリ妖怪だし、嫌われ者だけど……でも、文通だったら心を読むようなことも無いし、私だって友達を作れるかも知れないって思ったの。何で今までこんな事に気付かなかったのかって思うけど」
「はあ、なるほど」
うんうんと、お燐は納得したと頷いた。
「ちょっとっ!? だからお燐? 違うのよ。別に『こいしに友達が出来て羨ましい』とか『姉として妹に負けた気がして悔しい』とか、そんなんじゃ全然無いんだから?」
「あたい、何も言ってませんよ?」
「でも、思っているじゃないのっ!」
さとりが口を尖らせるが、お燐はにやぁ~と笑みを浮かべるだけだ。
それは確かに、そういう感情が全く無いと言えば嘘になるかも知れないが。でも、それはあくまでも切っ掛けであって、友達というものがどういうものかという興味の方が大きい。そのはずだとさとりは思っている。
「はいはい、ではそういうことにしておきます。でも、さとり様?」
「何かしら?」
「一口に天狗の新聞記者と言っても、色々いますよ? それに、頼むのならどうせならこの手の話題に強そうな人に頼んだ方がよくないですか?」
「そう? でも、こういう話題に強そうって……、ああなるほど」
お燐の心に、いつぞや押しかけてきた、髪の短い鴉天狗と、ツインテールの鴉天狗の姿が浮かんでいた。どうやら、彼女らは弾幕ごっこや異変に関わる少女達をよく記事にしているようだ。
確かに、やたらと硬派で専門的なものだったり、逆にえげつないゴシップ記事のようなものを書く記者よりは良さそうだ。彼女らの書く新聞は、ちょっと気軽に茶店で読めるような内容で、読者層もそういう……人外の事情にも興味があったり、理解のある存在だろう。仮に募集者が来たとしても、付き合いにくい癖は無い気がする。
それに、あの天狗達なら少しは面識もあるし、そういう意味でも安心する。
「そうね。じゃあ、彼女たちのどっちでもいいわ。地上で見かけたら、お願いしてね。頼んだわよ」
「にゃあい。了解です」
「あら? さっそく地上に行くの?」
「はい。善は急げって言いますから」
「そう? 気をつけてね。あと、お夕飯までには帰るのよ?」
「は~い」
お燐は踵を返し、鼻歌を歌いながら地霊殿の出口へと向かっていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さとりは、応接室のソファに座りながら、苦笑を浮かべた。
「ごめんなさい、さとり様。こんな事になってしまって……」
傍らに立つお燐が、申し訳なさそうに項垂れていた。
そんなお燐に、さとりは優しく微笑んだ。
「いいのよお燐。あなたのせいじゃないわ」
さとりの正面には、二人の天狗が座っていた。射命丸文と、姫海棠はたて。どちらも、過日に地霊殿まで取材に来たことがあり、弾幕ごっこや異変といった内容を書く記事にする記者だ。
二人の鴉天狗は、営業スマイルを浮かべながら、お互いにお互いを牽制していた。心の中で、激しい火花が飛び散っている。
同じネタを追うことが多い記者として、互いに強く意識し合う仲のようだ。
お燐は地上で先に文を見かけて、彼女に依頼しようと思ったのだが、そのすぐ傍にはたてもいた。その様子をはたてが見付けて、付いてきた形だ。
「さとりさん。広告を出すなら、是非我が文々。新聞にっ! 紙面を大きく割いて、大々的に取り上げさせて頂きますからっ!」
「いえいえ、さとりさん。私の花果子念報に、よろしくお願いします。さとりさんの魅力を120……いえ、150%以上引き出した、アピール力のある、質の高い広告を出して見せますっ!」
名刺を差し出し、熱い視線を送ってくる鴉天狗達に、さとりは苦笑を浮かべた。
「別に、そんなに熱くならなくてもいいですよ? 別に、コンペじゃないんですから」
「へ?」
「え?」
天狗達はきょとんとした顔を浮かべた。
「お二人に来て頂けたのなら、丁度いいです。両方に頼みますから」
「え? そうなんですかさとり様?」
お燐も驚いた声を上げた。
「ええそうよ? 別にお二人に頼むお金を心配していたわけじゃ……。ええ? 両方に頼むより、どちらか一人を見付けた方がお燐も楽だと思っただけよ?」
「あ、なんだ。そういうことでしたか」
あははは、とお燐は安心した笑みを浮かべた。
「あ、じゃあさとり様――」
「ダメ」
「まだ何も言ってないじゃないですか?」
「お小遣いの値上げは、しません」
「うぅ~」
再び、お燐がしょぼくれた。
どうやら先日、ペットショップで可愛い玩具を見付けたらしい。買ってあげたい気持ちもあるが、ここは心を鬼にして、我慢と計画性を躾けるべきだとさとりは思った。甘やかすのは、きっとこの子のためにならない。
肩を落として、お燐は応接室を出て行った。その後ろ姿に心は痛むが、決意は揺るがない。
文が咳払いをした。
「え~っと、その。いいんですか? 本当に? 私達二人に頼むということで」
「ええ、勿論よ」
そう答えると、なんだ、そういうことかと鴉天狗達の間から緊張が解けた。
“その方が、お二人とも燃えるでしょう?”
片目を瞑り、くすりと笑ってさとりは言った。
その一言に、鴉天狗の緩んでいた表情は再び引き締まる。同じネタを扱う以上、尚更負けられなくなったということだ。天狗達の記者魂は、先程以上に熱く燃え上がっていた。
そんな様子を見て、さとりは「ライバルっていいものねぇ」などと思った。少しだけ羨ましく、そして微笑ましい。言えば、本人達は心外だと言ってくるだろうが。
そして、互いに競い合ってくれるのなら、よりよい広告が期待出来るというものだ。
「じゃあ、さっそく――」
「そうね」
文とはたてが互いに目を合わせ、頷いた。
「……え?」
彼女らの心に浮かんだ声に、さとりは表情を凍り付かせた。
「しゃ……写真ですか? あの、それはちょっと、勘弁を……。写真は、苦手なんですよ」
ダメダメと、さとりは慌てて胸の前で両手を振った。
「え~? でもさ? 写真も無しにっていってもねえ?」
「そうですよさとりさん。直接はお会い出来ないにしても、お相手の方もさとりさんがどういう方なのか、やっぱり興味はあるでしょうし」
ねぇ? と天狗は互いに頷いた。
「大丈夫だって、さとりさんなら可愛いから、載せたらきっと応募者が沢山来るって」
「いえ、別にそんなに沢山の方と遣り取りしたいわけではないですし」
朗らかに、邪気の無い笑顔を浮かべる鴉天狗達に、さとりは冷や汗を流した。
「まあ、そんなに警戒しないで下さいよ。ちゃんと、可愛く撮りますから」
「そうそう、何て言ったって私達もプロだし」
天狗がカメラを取り出した。無造作にレンズをこちらに向けてくる。
「はい、笑って~?」
「う……うぅ」
さとりは、強ばった顔の筋肉を歪めて、無理矢理に笑顔の形を作った。天狗達の心で、その様子が視えるが、やっぱり可愛くない。
「それっ!」
シャッターが切られた。
「……あれ?」
天狗達は首を傾げた。
「さとりさん? 逃げないで下さいよ」
部屋の隅から、天狗達の様子を見る。彼女達は呆れたように苦笑していた。
「ご、ごめんなさい。つい……ほら、突然だったから?」
「そんなに、突然でもないでしょう? ……ほら」
再び、シャッターが切られた。
「……さとりさん?」
今度は、さとりは部屋の反対側の隅へと移動していた。
「だから、幾ら写真が苦手だからってスペルカードを使ってまで逃げなくてもいいじゃない」
「う~、その……ごめんなさい。やっぱり写真は苦手なのよ。だから、写真は無しというわけにいかないかしら? お願いだから」
精一杯に懇願するが、天狗には通じないようだ。
「ダメです。よりよい記事を作るためにっ! さとりさんの写真が絶対に必要なんですっ!」
「そうよ。記者魂に懸けて、それは絶対に譲れない話よ」
「私、依頼主なんだけどっ!?」
どうやら、天狗達の記者魂を煽りすぎたようだ。さとりは後悔した。
“問答無用っ!!”
“心花「カメラシャイローズ」”
シャッターが切られるのと同時、さとりはまたも移動した。
「くそっ! 速いっ!」
「文、あそこっ!」
「ふふっ! ……それは、残像よ」
「後ろっ!?」
「違う。それも残像ですよ。はたて」
シャッターの魔の手からギリギリのところで、さとりは躱し続けていく。そのスピードは、もはや目で追いきれるものではない。
「ふっ、ふふふ……そうですか。この鴉天狗に……幻想郷最速のスピードを誇る私に速さで競おうというのですね。さとりさん」
「サトリ妖怪が、いい根性ね。……いいわ、本当のスピードって奴を見せてあげるわよっ!」
新聞記者魂だけではない。今度は最速の誇りを煽ってしまったようである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗達の魔の手から逃げること約十数分。
さとりは、はたてに後ろから羽交い締めにされていた。藻掻くものの、逃げ出すことが出来ない。
「ちょっとこらっ! 暴れんな……暴れんな……」
「(迫真)とか、何考えているんですかあなた達っ!? やめて……本当に止めて下さいっ! 何でもしますから」
「じゃあ、脱いでみます?」
「何でですかっ?」
「ん? 今『何でもする』って」
「そういう意味じゃないですからっ! ……んんっ!?」
もう、本気で彼女達にトラウマを抉り出してやろうかと思ったその矢先、さとりの体がビクリと震えた。
「ちょっ!? ちょっと文さん……どこ触って……やだっ! そんなところ……」
「ふっふっふっ。さとりさんの羞恥心は、私達に崩されるために築いてきたんですね」
さとりの顔が真っ赤に染まった。
「くっ……いつもの力が出せれば……こんな鴉天狗なんかにっ!」
「よかったじゃないですか、運動不足のせいに出来て」
「んんんんんんんっ!」
「ふっふっふっ、さあ、カメラを準備しましょう。たっぷりと激写してあげますよ」
耐えなきゃ……今は耐えるしかないと、さとりは必死に自分に言い聞かせる。
「さとりさんの生写真ゲ~ット!」
さとりの体が、再び大きく震えた。さとりは恐怖する。いけない……文の手が、徐々に自分の弱いところに近付いているのを悟られたら……。
「生さとり様の生お臍を拝見してもよろしいでしょうか?」
「こんな奴等に……悔しいっ! でもっ!」
そこが、さとりの限界だった。
「ああああぁぁぁぁぁ~~~っ!? も、もうダメえええぇぇっ! あはっ! ぶははははははははははは~~っ!」
「ほ~れ、こちょこちょこちょ~」
文に脇腹をくすぐられて、さとりは悶絶した。
その瞬間、シャッターが切られる音が響いた。
「ちょっとっ!? ですからっ! こんな写真を撮らないで下さいっ!」
しかし、またもやシャッターが切られた。
「うん、怒った顔も可愛くて魅力的ですよ」
「いい笑顔で言っても、誤魔化されませんからねっ!」
「嘘じゃありませんよ。心を視ているんですから、ご存じでしょう?」
「うっ……ぐ、まあ、そうですけど……」
笑顔の文に、さとりは押し黙った。
そして、笑顔ではあるが、文の瞳には真剣な光が宿っていた。
「確かに、さっき撮った写真の表情は崩れていました。美術的な価値観で考えれば、美しい写真というのとは違うでしょう。けれどね? 私は魅力的な写真になると思いますよ? さとりさんが変に気取らず、素直に感情を表現した姿を切り取ったのですから」
さとりは、反論しなかった。
文の心に映った自分の姿は、確かに綺麗では無かったけれど……でも、生き生きとしていた。それは確かに、ある意味では魅力的だとも感じた。何より、文が本気でそう思っている。
「そうそう、変に構えちゃって、自分をよく見せようと思うから、変な感じになっちゃうんだよ。昔何があったのか知らないけどさ、肩の力を抜いて、私達を信じてよ? きっと、いい写真を撮ってみせるからさ」
砕けた口調と心で、そう言ってくる鴉天狗の言葉に、さとりは戸惑いながらも頷いた。自分の心の中でわだかまっていた何かが、解けてくる気がした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから数時間後。
さとりは地霊殿の出口まで鴉天狗達を見送った。
「それじゃあさとりさん。写真が出来たら持ってきますので、期待して待ってて下さい」
「そうそう、記事の方もね。あ、文の方はしなくてもいいけど」
「それはこっちの台詞ですよ。はたて」
そう言って睨み合う二人に、さとりはくすりと笑った。
「どちらも、期待しています。あと、くれぐれもその……変な写真は使わないで下さいね? それと、こちらこそ多くの写真を撮らせてしまってすみません」
「いえいえ、いいんですよ。こっちこそ、材料が沢山ある方がありがたいですし」
「そうそう」
「それじゃあ、失礼します」と鴉天狗達は飛び立っていった。あっという間にその姿は遠ざかり、小さくなって見えなくなった。
それを見送って、さとりは踵を返した。
「今日は、本当にいっぱい写真を撮って貰ってしまったわね。写真嫌いの私がこんなに写真を撮って貰う日が来るなんて、世の中本当に何があるか分からないものね」
けれど、不快ではなかった。むしろ、ちょっと恥ずかしかったけれど……どこか充実感すら感じた。
お世辞抜きに、彼女たちの仕事に期待したいとさとりは思った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗達にペンフレンド募集の広告を依頼して数日後。
さとりは自室でお茶を飲み、読書を楽しんでいた。
「さとり様~。すみません。開けて下さい」
扉の外からお空の声が聞こえてきた。
「鍵は掛かってないわよ。入ってらっしゃい」
「いえ、手がふさがっているんです。なので、開けられないんですよぅ」
「あら、そうなの? 待ってなさい。今開けるから」
さとりは椅子から立ち上がり、ドアへと向かった。ドアノブを回し、開いてあげる。
ドアの外には、お空が胸の前に大きな箱を抱えていた。確かにこれを抱えたままドアを開けるのは難しいし、一端床に置いて、それから持ち上げるのも大変だろう。
「どうしたの? その荷物」
「いえ……よく分からないんですけど。何でも、地上から送られてきたそうです」
「地上から? 何かしら? これ、持ってきたのはどんな人だった?」
「う~んと……うにゅ?」
「ああ、覚えてないのね。なら、仕方ないわね」
届けてきたのはおそらく、宅配か何かの人だろう。特に覚える必要は無いと、お空が覚えていなくても無理は無い。
お空が荷物を持って部屋に入ってくる。そして、床の上に置いた。ずっしりと、重そうな印象だ。
「さとり様。何でしょうねこれ?」
「さあ? 本の注文も、最近はした覚え無いのよねえ」
怪訝に想いながら、さとりは箱の封を解いた。
「……何これ?」
さとりは目を丸くした。箱の中にはみっちりと封筒が詰まっていた。
その中の一通。一番上に積み重ねられていた封筒を手に取る。そして、中を見た。
「え? これって……まさか? 本当に?」
「うにゅ? どうしたんですか? さとり様」
お空が首を傾げた。
「あ、うん。この前、天狗に頼んで文通相手の募集を載せて貰うようにお願いしたのよ。これ……その申し込みみたいね」
ちょっと、あの鴉天狗達……いくらなんでも、本気出しすぎではないだろうか?
さとりは頬を掻いた。嬉しいのだけれど、これはこれで困る。これ、全部で何通あるのだろうか? 下手すると幻想郷の相当な割合の相手から送られていないだろうか? そんな沢山の人達と文通は出来ない。
「さとり様、文通を始められるんですか?」
「ええ、ちょっと思うところがあってね? って、お空? 違うからっ! お燐だけじゃなくあなたまで……そういうのと、全然違うわよ?」
肝心のことは忘れてばっかりのくせに、こういう所では変に頭が回るんだから……と、さとりは小さく嘆息した。
「とにかく、一度は目を通さないとね」
気合いを入れて、さとりは次の封筒に手を伸ばした。
「『その可憐なお姿に、僕の心は一目見たときから虜になりました――』『素敵な笑顔に、私は雷に撃たれたような衝撃を感じました――』『さとりさんに飼われているペットが羨ましいです。僕もあなたのペットになりたい――』。何だか、妙に情熱的な申し込みが多いわねえ? それも、男性の方からばかり」
出来れば、もっと普通にお友達としてやっていけそうな感じの相手を求めていたのだけれど。それに、どちらかと言えば男性よりは女の子の方が精神的に近くて、文通相手には良さそうな気がしたのだが。何と言っても、初心者なのだから。
「うーん、応募者を絞るように頼んだ方がよかったかしら?」
「そうですねえ。……う~ん、さとり様。ここって何て読むのですか?」
「あ、こらお空っ!? あなた、何勝手に人の手紙を読んでいるの? ダメでしょ、もぅ」
顔を赤らめ、さとりは慌ててお空の手から手紙を奪い取った。
「う、ごめんなさい。さとり様。私……読むのお手伝いしようと」
叱られて、お空は肩を落とした。
「まあ、悪気が無いのは分かったから。次からは気をつけなさい。こういうのは、勝手に読んじゃダメなの。これは、お空の手紙じゃなくて、私の手紙なんだからね? お空だって、自分のお茶碗を勝手に使われたら嫌でしょ? それと同じよ」
「はい、ごめんなさい」
お空は頷いた。悪い事だと分かって、素直に反省しているようだ。
「分かってくれればいいの。いい子ね。あと、お空? もうちょっと、漢字のお勉強もしましょうね?」
「はい」
さとりは小さく笑った。
「ええと、それでさっき読めなかったところはね? ……え? 何これ?」
お空に、読めなかったところを教えてあげようと、彼女から取り返した手紙に目を落とし、さとりは目を丸くした。
“写真集”
そんな単語が、書かれていた。その前後も読む。写真集を買いました。大ファンです。次の写真集が出るのが本当に楽しみです。そんな感じの内容が書かれていた。
「写真集っ!? ええっ? どういうこと? 私、そんなの出した覚え無いわよ?」
“さとり様~っ!! 大変っ! 大変です~っ!”
「お燐っ!?」
ドアが勢いよく開かれ、お燐が部屋の中に飛び込んできた。
「どうしたのよお燐。そんなに慌てて」
「どど、どうしたもこうしたも無いですってっ! これっ! これを見て下さい。地上……地上が。さとり様、凄いことにっ!」
よほど慌てていたのだろう、お燐が息も絶え絶えに、新聞を見せてきた。
それを見て、さとりが固まった。
“古明地さとりファースト写真集 『地底の妖薔薇』 大好評発売中!!”
“古明地さとり、初めての写真集 『瞳に恋して』 祝、人里で最も売れた写真集一位!!”
そんな文字が、広告欄に……というか、もはや広告欄が本体と化した誌面いっぱいに、でかでかと載っていた。
「な……なな、何よこれえええええええぇぇぇぇ~~~~っ!? どういうこと?」
「どうもこうも無いですよ。さとり様っ! 一体いつ、こんな写真集なんて出したんですかっ!?」
「知らないっ! 私、こんなの全然知らないわ」
「じゃあ、これはどういうことですか? これっ! この表紙の顔、さとり様ですよね?」
「そ、そうだけど……でもっ!」
あぅあぅと、さとりは呻いた。
何が起きているのか、慌てた頭ではさっぱり整理出来ない。
“お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!! これ、どういうことなの~っ!!”
今度は、こいしが部屋に飛び込んできた。何だか凄い剣幕だ。
「こいし、どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないよお姉ちゃんっ! 写真集なんて、どういうことなのっ? しかもこんな……こんなのっ!」
こいしの手には、問題の写真集が二冊あった。ペットなお小遣いのお燐にはともかく、こいしには写真集を買うだけの持ち合わせがあったようだ。
「どういうことも何も――」
「いいからっ! これ見てよっ!」
そう言って、こいしが勢いよく写真集を開いて見せた。
「ぶふへっ!?」
そして、それを見て即座にさとりは吹いた。お燐とお空も赤面して硬直する。
写真集の中、大見開きでさとりはスカートをたくし上げていた。そりゃもう、下着が見えてしまうんじゃないかというぐらいに、ギリギリいっぱいまで攻めた感じで。太腿が実に眩しい、セクシー路線だった。恥じらう笑顔が、扇情的だ。
「他にも、これとかっ!」
こいしが、別のページをめくった。今度のページでは上目遣いになって、胸元を大きく開いて、それこそ胸の膨らみが見えるか見えないかといった具合だった。
「こんなのもっ!」
今度は、もう一方の写真集を開いて見せてきた。そっちでは、かなり面積の小さい、ビキニの水着を着て、四つん這いになっていた。俗に言う女豹のポーズという奴だった。
それらを見て、さとりはあんぐりと口を開け、真っ赤に顔を染めた。
「さとり様……これって?」
「ち、ちが……違うのっ! 違うの~っ!! 私、そんなつもりは全然無くてっ! みんな、そんな目で見ないでっ! これは全部、天狗の……そう、天狗の仕業なのっ! ペンフレンド募集の広告を依頼したら、写真が必要だって言ってきて……。沢山撮られている内に、何だかそれが嬉しいというか、気持ちいいというか……天狗の要求もエスカレートしてきて、私もついハイになっていたから、ちょっぴり大胆になってみたくて……それで、つい乗ってしまったというか……。そう、あのときは私であって私じゃない感じになっちゃったのっ! だから、こんな本を出すとかそんな話、私も知らないのっ! お願い、信じてっ!」
「そんな話、どうでもいいよ」
「こいしっ!?」
怒気を孕んだこいしの声に、さとりはふためく。
「私だってっ! 注目されるのが嬉しいのにっ! もっともっと注目されたかったのにっ! それが、お姉ちゃんのせいで、注目がみんなお姉ちゃんに移っちゃったっ! 私……私だって、弾幕ごっこで頑張ったのに、それがお姉ちゃんの……お姉ちゃんのせいで……また、誰も私を見てくれなくなっちゃうんだ」
「こいし。違うわ。私、そんなつもりは全然」
“知らないっ! お姉ちゃんなんて、大っ嫌いっ!”
写真集を床に叩き付け、こいしは部屋から走って出て行った。
「こいしっ! 待ってっ! お願いだから話を聞いてえええええぇぇ~~っ!!」
さとりは叫んだ。しかし、こいしの足音は無情にも遠ざかっていくだけだった。
さとりは床に崩れ落ちた。はらはらと、涙が零れる。
「おのれ……天狗めぇ……」
さとりは拳を握り締め、彼女らにきっちりと話を付けることを決定した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
突如として、妖怪の山にけたたましくサイレンが鳴り響いた。
にわかに、外の様子が慌ただしくなる。
文は写真集第二弾に使用するための写真の選別作業の手を止め、顔を上げた。
「これは、何かあったのですかね?」
緊迫した気配が外からも伝わってくる。ただ事ではない、何かが起きているとしか思えない。
いてもたってもいられず、文は外へと出た。
“白狼天狗警備隊は集結せよ。繰り返すっ! 白狼天狗警備隊は総員、集結せよっ!”
“非戦闘員は速やかに避難せよ。非戦闘員は速やかに避難せよ。これは、訓練ではない”
「白狼天狗が集結ですって? そんな……何事だと言うんですか? それに、避難って」
そんな事態が起こるとは……一体何が起きているというのだ?
「文っ! あんた、こんなところで何やってんのよっ! 通達が聞こえていないわけじゃないでしょ? 避難しないと」
「あ、はたて。どうしてここに?」
空を見上げると、はたてが舞い降りてきた。
「何でもいいでしょ? ちょっと、あんたの様子を見に来ただけよっ! 勘違いしないでよね? ただ、私の知らないところで何かあって、勝手にくたばられると、私の新聞作りがちょっぴり張り合いが無くなるってだけなんだからね?」
「何ですか、そのベタベタは……」
はたての弁明に、文は苦笑した。
「でも、一体何なんでしょうねこれ? はたて、あなたは何か知っています?」
はたては首を振った。
「ううん、知らない。けど……こんなのって……」
不安げな表情を浮かべるはたてに、文はニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほど、このネタの渦中に飛び込んでいく気は無いということですか? ま、確かに引きこもりにはハードルが高いかもですね」
「んなっ!? そ、そんなわけないでしょ? ただ、私は――」
「何です?」
「……嫌な予感がするのよ」
目を逸らして、はたては我が身を抱いた。その口調には、真剣な色が混じっていた。
「はたて?」
そんな彼女の様子に、文は「らしくない」と思った。いつもなら、こんな軽口にもムキになって言い返してくるというのにだ。
ふと、文はどこか空気が冷えた気がした。浮ついていた何かが、霧消した感じ。
周囲を見渡す。多くの白狼天狗達が、慌ただしく走っていた。お隣の白狼天狗も、やはり向かうようだ。
「それじゃあ、行ってくるよ。そんな、心配そうな顔するなって、すぐに帰ってくるから」
「きっと……きっとよ? 約束だからね?」
「ああ、分かっている」
「あのっ!」
「うん? どうした?」
踵を返そうとする男を女が呼び止めた。
「う、ううん。何でもないの。帰ったら話すわ。それじゃあ、気をつけてね」
そんな女の様子に、男は首を傾げたが、帰ったら分かる話だとすぐに思い直したようだ。
「ああ、行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
女はお腹に手を当て、手を振って男の背中を見送った。
そんな光景が、そこかしこで見られる。どうやら、白狼天狗達もただ事で無いことは感じ取っているらしい。それぞれが覚悟を決めて、そして悲壮感を打ち消そうと励んでいるようだった。
“よう、お前もあと数日で長期休暇だっていうのに、ついてないな”
“なあに、大丈夫ですよ。俺はこんなところで死ねません。妹の、晴れ姿を見るまでは……”
そんな会話をしているのは、同じ班の先輩後輩だろうか?
“何だ。お前、いつもそんなお守り、していたか?”
“いや、この前、父さんから貰ったんだ”
“何だって? ずっと喧嘩していたんじゃなかったのか? 危険だからって、お前がこの仕事をするのに反対して――”
“ああ。でも、ようやく分かって貰えたんだ”
照れくさそうに、その白狼天狗は笑った。
「あ、椛も行くんだ」
はたてが呟いた。
その声に、文も気付く。道の向こう。少し離れたところに集まる白狼天狗達の中に、椛の姿も見えた。集結するのは警備隊すべてという話だから、当然と言えば当然か。
おそらくは上司だろう。風格のある白狼天狗の前に固まっている。
「お前達は、足止めを頼む。少しでも、時間を稼ぐんだ。椛、みんなを頼む」
こくりと、椛は頷いた。
「でも、隊長?」
「何だ?」
“足止めするのはいいですが、別にアレを倒してしまっても構わないのでしょう?”
そんな椛の返答に、隊長は苦笑を浮かべた。
「……ねぇ、はたて?」
「何よ、文?」
「何だか私も、猛烈に嫌な予感がしてきました」
というか、生き残れる気がしなくなってきた。白狼天狗というのは、死亡フラグを立てるのが趣味なのか? あと、もし万が一にも生きて帰ってきたなら、椛はきっちりと締めてやらないといけないと思った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
久しぶりに妖怪の山に出かけて、一週間が過ぎた。
さとりは、深く溜息を吐いた。
首謀者となった鴉天狗二人には、深く反省して貰うことにした。念入りに言い聞かせたのだから、今度こそ分かってくれたことだろう。
元々、彼女らもあんな破廉恥な写真集を出す気は無かったようだ。募集広告を載せたところ、思った以上に反響がよくて、いけないことと思いつつも、ついつい魔が差してしまったらしい。清く正しい記者魂を忘れるとは、何事だ。
しかし、だからといって文通応募やファンレターの類いが無くなったりはしない。流石に一時期よりは減ったが、それでも依然として送られ続けてきた。
「それも、男性の方ばかり。女の子の方がいいのに……そういうのは、全然来ないのよね」
でもひょっとしたら、希望に添った相手からの手紙が来るかも知れないと、中身の確認は怠らない。読まずに捨てて、その中に希望通りの相手がいたら悲しすぎる。
もっとも、一通だけは女の子からの手紙が来ていたが。差出人は稗田阿求。でも、ほとんどが質問尽くしで、文通というより取材のようだった。お燐に聞くと、彼女は地上で妖怪の事を纏めた本を出しているらしい。返事に迷うので、取り敢えず保留にしている。
「こいしも、まだ怒っているみたいだし。……どうして、こうなっちゃったのかしら?」
やっぱり、写真なんて断固として断るべきだった。そんな気がする。
と、部屋の外からノックの音が響いた。
「どうぞ、空いているわよ」
「さとり様、入ります」
「お燐じゃない。どうしたの?」
「はい、手紙を預かってきました」
その答えに、さとりは肩を落とした。
しかし、お燐は苦笑を浮かべた。
「そんな顔しないで下さい、さとり様。今度は、男の人からの手紙じゃないですから」
「え? そうなの?」
「そうですよ。まあ、お友達とはちょっと違うかもですけど」
そう言って差し出すお燐から、さとりは手紙を受け取った。
「どれどれ? ……って、これ?」
その手紙には、文字が書いてなかった。その代わり、ちっちゃい猫の手が沢山スタンプされていた。当然、読めない。
「あたいが、代わりに書いてあげようかって言ったのに、自分で書くって聞かなかったんですよ。あの子ったら」
くすくすと、お燐が笑う。
「さとり様が手紙でお話ししたいんだから、私も手紙でお話しするって……。『さとり様、元気出して下さい。私は、さとり様が大好きです。さとり様が悲しい顔をしていると、私も悲しいです。さとり様が笑っていると、私も嬉しいです。だから、手紙を書きました。さとり様が、ちょっとでも元気になりますように』――だそうです」
その言葉に、さとりは顔を綻ばせる。
「さとり様。あの子だけじゃないです。私達、みんなの気持ちですよ。元気出して下さい。いつかきっと、本当に仲良くなれる文通相手が見付かりますよ。ひょっとしたら、その阿求さんとだって、これを切っ掛けに仲良くなれるかも知れないですし」
「……そうね。その通りね。心配掛けてごめんなさい。それと、有り難う」
さとりは、ほろりと零れた涙を拭った。この肉球スタンプの手紙は、ずっとこれから、大切な宝物になることだろう。
それだけでも、このペンフレンド募集には意味があった。そんな気がする。
「あ、でもそういえばさとり様?」
「何お燐? どうしたの?」
「あの、こいし様が――」
お燐の心に浮かんだ光景。それを見るなり、さとりは血相を変えた。
「こいしっ! 早まっちゃダメえええええええええええぇぇぇぇぇ~~~~っ!!」
慌てて、さとりはこいしの部屋へと駆け出していく。いくら注目を集めたいとはいえ、写真集デビューなんて、姉として許せるわけが無かった。
まだまだ、この騒動の終わりは見えなさそうである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
天狗の住む里。
文とはたては、仲良く部屋に閉じこもっていた。
「ねぇ文? ……私達、いつになったら外に出られるんだろうね?」
「……飽きっぽい幻想郷の住人達です。そろそろ、ほとぼりも冷めるはず」
「そう言って、もう何日も経っているんだけど?」
はたてが深く溜息を吐いた。
「というか、二人とも何で私の家に居候なんですか?」
包帯だらけの姿となった椛が、布団の中からジト目を浮かべてきた。
「仕方ないじゃないですか。私達の家はがっちり囲まれているんですから。あなただって、身動き取れなくて、私達がいないと何も出来ないくせに」
「別に、頼んだわけじゃないです。まったく、自業自得ですね? 気分はどうです? 自分達がネタの対象にされた気分は?」
「五月蠅いです。だいたい、あなたがきっちり倒しておけばこんな事にならなかったんでしょうがっ! 何が『別に、アレを倒してしまっても構わないんでしょう?』ですかっ! 大口叩いた割に、時間稼ぎすら出来なかったくせにっ!」
「ふんっ! 騒ぎの元凶が偉そうに」
文は椛と睨み合った。
「ちょっと、二人とも止めてよ。騒いだら見付かっちゃうかも知れないじゃない」
はたての仲裁に、文は睨み合うのを止めた。確かに、それは得策ではない。
勝手に人の写真集を出した罰として、自分達も写真集を出せという話になってしまった。少しでも自分の注目を逸らそうという、さとりの考えだった。どうせ、売れるわけないと、文とはたては高をくくっていたのだが、思いの外大人気になってしまった。世の中、何が当たるか分かったものではない。
あと、先日のさとり襲来。白狼天狗達に壊滅的な被害をもたらした事件の元凶としても、その真相を追う記者達の標的になってしまった。
そういった結果が、今のこの状況である。
いくら売れるからといって、約束を破ってはいけない。新聞記者としてやってはならないことをやってしまった罰だと考えれば、さとりを恨むことも出来ないが。というか、白狼天狗を壊滅させ、この世に地獄を生み出した彼女に逆らうとか、もう無理だが。本気を出したサトリ妖怪は恐ろしい。山の平和のためにも、永遠に地下に篭もっていて貰いたい。
ポチポチと、はたてが手にした携帯をいじった。念写の能力を使ったらしい。
そして、がっくりと肩を落とした。
「はたて、どうしました?」
「私達の写真集。売れ行き絶好調だってさ。ランキングにも入っちゃった」
「わー。すっかり有名人ですね。凄いなー。憧れちゃうなー」
「棒読みで言うなっ! このっ!」
声を潜めて、文は椛に怒鳴った。
まだまだ、人目を潜む生活は続きそうである。いっその事、異変でも起きてそっちに注目が移らないかと願う天狗達であった。
―END―
誤字訂正
白狼天狗警備隊、終結せよ
→集結?
「このさとりって『モデル撮影と偽ってAVの収録をしたら…』みたいなのに出演させられそうな気がする…」
と妄想してしまいすいません
つか、さとり様強いっすw 流石白狼天狗達が”終結した”だけの事はあるっすw。
しかし事後の地霊殿のペット達の優しさに胸ホッコリっす。
ところで、さとり様写真集はどこの書店で発売ですかね?(文・はたてのも含む)
あと、こいしちゃんの写真集マダー?
すみません。直しました。教えて頂き、本当に有り難うございます。
改めて、後ほどちゃんとした返信をさせて頂きます。
さとりは可愛いですよねえ
そんなさとりを可愛いと言って頂けて、書いたこちらも嬉しいです。
あと、「集結」でしたね(汗 改めて、教えて頂き有り難うございます。
拙作をお読み頂き、多謝です。
>3さん
いえ、そんな妄想が働いてくれるなら、楽しんで頂けたんだなあと嬉しいです。
さとりは、「何考えているんですかっ!」とか怒りそうですが(苦笑)
お読み頂き、有り難うございました。
>4さん
さとり様の写真集&文&はたての写真集は、きっと鈴奈庵で買えるはずです。
定価以上の値段が付いて凄い状態になっていそうですが。
こいしちゃんの写真集は、こいしがさとりを説得出来るかどうかに掛かっています。
拙作をお読み頂き、多謝です。あと、誤字を教えて下さり、有り難うございました。
>人生チャンタ野郎さん
有り難うございます。
楽しんで頂けたようで、嬉しい限りです。
拙作をお読み頂き、有り難うございました。
>奇声を発する程度の能力さん
面白いと言って頂き、嬉しいです。
お読み頂き、多謝です。
>11さん
お値段については、鈴奈庵の小鈴ちゃんに聞いて下さい。
今、大人気につきものすごい高値になっていると思いますが。
拙作をお読み頂き、多謝です。
だからペットになるお!
こうですかわかりません
本気を出したさとりは恐ろしい。舐めてかかっちゃいけません。つまりはそういう事です。
お読み頂き、有り難うございました。
>32さん
さとりが殴りに行くようです。自分には、無事を祈ることしか出来ませんが、お気を付け下さい。
拙作をお読み頂き、多謝です。
>33さん
さとりが文通に慣れてきて、男とでも大丈夫そうだと思ったら、きっとチャンスはありますよ。
早まらないで下さい。
拙作をお読み頂き、多謝です。