私、博麗霊夢は此処、幻想郷の要。そして、博麗神社の巫女である。
今日も今日とて、縁側でいつものように煎餅をお供にお湯で薄まった緑茶を飲んでいた。
「……っ」
急に、軽い眩暈がした。今まではこんなことなかったのに、なんで今更、、?
あぁ、また変な気配がする。ずっとこの神社にまとわりついている嫌な気配。全く、こんな怪奇現象、胡散臭いったらない。
だって此処は“都会”なんだから。
こんなに寂れて廃れてはいるけれど、れっきとした都会の中の神社だ。季節の折々にはきちんとお祭りだってやっている。
大きな神社みたいに何百人も何千人も、とはいかないけれど、近所の小学生や中学生、小さな子供を連れたお母さんも五十人くらいはやってきて、屋台のご飯を食べて歩きながら好き勝手に喋くったり射的やらスーパーボールすくいやらをやったりして、時に笑い時に叫び、時に泣き時に走る。
私だって別に世間知らずというわけでもなくて、神社に一番近い公立高校に通っている。成績はまぁまぁいい方で、先生には大学受験は心配ないとも言われたくらいだ。
でも少しだけ、ほんの少しでいいから絵本の中みたいな出来事が起こってもいいんじゃないかと思う。
その点、この神社のモヤモヤとした気配は嫌いではない。うざったるいしやかましいけれど、どこか懐かしくて嫌いになれない。
なんだかずっと前から当たり前のようにそこに居た、友達のような気配が、薄ら寒い境内に形なく漂っていた。
でも──あれは一体誰だっただろう?
ずっと私の隣にいた、やかましい文鳥のような人間。あの人は、一体今どうしているのだろう──?
──本物か妖怪か分からない烏の声で目が覚める。
「……あ、あれ? 夕焼け、、あ! いけない、おゆはん作らなきゃ、、今日は確か、、」
いつの間に眠ってしまっていたのか、あっという間に時間は過ぎて空は赤くなっていた。さっと飛び起きて何気ないことを呟きながら、台所に行ってお湯を沸かし始める。それを待っている間にも、頭の中では背の高いぴかぴかの建物や、人里のものとは似ても似つかない服装をした人たちの姿が、ぷつぷつと途切れながら断片的に飛び交っていた。
しかしその光景も意識して思い出そうとした次の瞬間には幻のようにふぅと掻き消えてしまって、そうなるともうそれが一体どんな形のどんな色のものだったかなんて、ちっとも見当がつかなくなってしまう。
果たしてそれが、夢だったのかただの疲れからくる幻覚だったのかさえも。
「──人は夢を見る。それはとても捻じ曲げるには惜しい人の心理であり特権だ。人は夢を見るべきだ。例えば階段の影の闇に。あるいは、自分の家の階段の先や道に植っている木の向こう側に。またある時は──」
──あなたの後ろに。今もほら、ずっと、ずっと、これまでもこれからもずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、──がいるでしょう?
今日も今日とて、縁側でいつものように煎餅をお供にお湯で薄まった緑茶を飲んでいた。
「……っ」
急に、軽い眩暈がした。今まではこんなことなかったのに、なんで今更、、?
あぁ、また変な気配がする。ずっとこの神社にまとわりついている嫌な気配。全く、こんな怪奇現象、胡散臭いったらない。
だって此処は“都会”なんだから。
こんなに寂れて廃れてはいるけれど、れっきとした都会の中の神社だ。季節の折々にはきちんとお祭りだってやっている。
大きな神社みたいに何百人も何千人も、とはいかないけれど、近所の小学生や中学生、小さな子供を連れたお母さんも五十人くらいはやってきて、屋台のご飯を食べて歩きながら好き勝手に喋くったり射的やらスーパーボールすくいやらをやったりして、時に笑い時に叫び、時に泣き時に走る。
私だって別に世間知らずというわけでもなくて、神社に一番近い公立高校に通っている。成績はまぁまぁいい方で、先生には大学受験は心配ないとも言われたくらいだ。
でも少しだけ、ほんの少しでいいから絵本の中みたいな出来事が起こってもいいんじゃないかと思う。
その点、この神社のモヤモヤとした気配は嫌いではない。うざったるいしやかましいけれど、どこか懐かしくて嫌いになれない。
なんだかずっと前から当たり前のようにそこに居た、友達のような気配が、薄ら寒い境内に形なく漂っていた。
でも──あれは一体誰だっただろう?
ずっと私の隣にいた、やかましい文鳥のような人間。あの人は、一体今どうしているのだろう──?
──本物か妖怪か分からない烏の声で目が覚める。
「……あ、あれ? 夕焼け、、あ! いけない、おゆはん作らなきゃ、、今日は確か、、」
いつの間に眠ってしまっていたのか、あっという間に時間は過ぎて空は赤くなっていた。さっと飛び起きて何気ないことを呟きながら、台所に行ってお湯を沸かし始める。それを待っている間にも、頭の中では背の高いぴかぴかの建物や、人里のものとは似ても似つかない服装をした人たちの姿が、ぷつぷつと途切れながら断片的に飛び交っていた。
しかしその光景も意識して思い出そうとした次の瞬間には幻のようにふぅと掻き消えてしまって、そうなるともうそれが一体どんな形のどんな色のものだったかなんて、ちっとも見当がつかなくなってしまう。
果たしてそれが、夢だったのかただの疲れからくる幻覚だったのかさえも。
「──人は夢を見る。それはとても捻じ曲げるには惜しい人の心理であり特権だ。人は夢を見るべきだ。例えば階段の影の闇に。あるいは、自分の家の階段の先や道に植っている木の向こう側に。またある時は──」
──あなたの後ろに。今もほら、ずっと、ずっと、これまでもこれからもずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、──がいるでしょう?