Coolier - 新生・東方創想話

バレンタインの悲劇を嘆いたフランドールのお話。

2011/02/14 21:05:19
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私は倒れていた。
そこは何もかもが壊れた世界。身体は石のように重く、首を動かすことで精一杯。
左を向けば瓦礫の山、所々で聞こえる呻き声が場の残酷さを物語っている。
右を向けば大好きなお姉様。可愛らしい服は泥で汚れ、ピクリとも動かない。
私は手を伸ばそうとしたが、出来なかった。身体が痛く、もう動けない。私はそのまま空を見上げた。


―――そして私は眼を閉じる。

目を閉じた世界は最初は真っ暗。でも、少し考えを巡らせばどんな世界だって見ることが出来る。
暗闇に映るのは大好きなお姉様。そのまま手にはティーカップ、座る椅子、パラソルのついた机、後ろで笑うメイド長、上に広がる青い空―――暗闇の世界がだんだん世界を色づける。
その後は何故だかお姉様がこっちを見て微笑んでくれる。手招きをして私を呼んでいる。
これは昔の光景、とても楽しかった日々、そして―――大好きなお姉様と初めて一緒のティータイム。


―――世界は変化する。
私がいるのは地下のお部屋。何年もいた、最近は使うことのなかった場所。
その中心には私がいて、人間の黒魔術師と弾幕ごっこをしている。私は笑顔、彼女も笑顔。きっと彼女のおかげで今の私があるのだろう、でも今回だけは後悔している。
次の瞬間、私の世界に映る私は地に伏していた。それでも笑顔だ。私は思い出す―――あんなに笑ったのは初めてだったかもしれない。


―――世界は変化する。
そこは外にある花壇。門番が身体を汚しながらお花の世話をしている。
その中の私はパラソルを片手に、おっかなびっくりといった様子で見ている。これは初めてお外に出た日。今では慣れたけど、この時は太陽の光が当たらないかどうか怖がっていた。
気がつくと門番の後ろにはメイド長が立っていた。ちょっと怒った顔をしているけど、何故だか楽しそうにしている。彼女は門番の汚れた顔を拭き、門番は照れたように頭を掻いて申し訳なさそうに彼女を見上げた。
その横でパラソルを持った私は花壇へと近づいて、お花に水を上げている。それを見るメイド長と門番はとても嬉しそうだ。私はこの時―――初めて『生かす』という言葉を学んだ。


―――世界が変化する。
そこは夕食の席、私とお姉様の二人で座っている。
お姉様の後ろにはメイド長、私の後ろには門番がいる。お姉様は慣れた手つきでナイフとフォークでお肉を切り分けていく。私は戸惑いながら切り分けるけど、なかなかうまくいかない。ちょっと恥ずかしい思い出だけど、今でも上手に切り分けられないので上手に切る様子が思い浮かばない。
困る私を見ながらお姉様がこっちにやってきた。メイド長は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になった。お姉様が私の手を持って、お肉の切り分け方を教えてくれたのだ。
切り終わると、お姉様は真っ赤になって席へと戻った。私も真っ赤になって「ありがとう」と呟いた。この時私は―――初めてお姉様の照れ顔をみた。


―――世界が変化する。
今度はまた同じ夕食の席。そこにはさっきの皆に、お姉様の友人も座っている。
私とお姉様は睨み合っている。よくみるとお皿の上には二つのチョコレートケーキ。これはさっきまでの光景だ。どちらが大きい方を食べれるか口論していたのだ。
メイド長が毅然と立っている。さっきまで笑顔ばかりだったけれど、今回は全く笑っていない。さっきまでは苦笑していたけども、きっと時間がものすごく経っていたからだろう。
お姉様が私に後ろを指さして何かを叫んだ。そして私は振り返るが、そこには何も無い。
そのまま向き直ると、お姉様はチョコレートケーキを頬張っていた。その世界の私はお姉様に対して怒鳴っている。ああ、そうだ―――彼女は私を騙して、大きいチョコレートケーキを食べたのだ。


―――私は眼を開ける。
私は全て思い出した。中央には小さい方のチョコレートケーキ。そのまま頬張りながら逃げようとするお姉様。
その時私は思い出したのだ、人間の黒魔術師が「気にくわないことがあったら全力でぶつけろ」と教えてくれたことを。
私は激昂していた。力のかぎりお姉様に対して弾幕を放つ、でもお姉様は避けてしまう。だからこの館を壊すほどの大きな弾幕を上空から放ち、そして―――




「お嬢様、フラン様」

―――ビクゥッ、と私とお姉様は震えた。
恐る恐る声のした方を見ると、そこにはメイド長が立っている。

彼女は眼を閉じた世界と同じく笑っていたが、笑い方が違う。ものすごく怒っている、私は逃げようとするが身体が動かない。お姉様も同じようだ。




―――こんなことなら、チョコレートケーキを食べてからにすればよかった。




私はこの時初めて―――お姉様と一緒にげんこつをされ、夜通し説教をされた。
「私もチョコが欲しかった―――」


久々の投稿です、後悔はしていない。
ぜくたん
http://
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コメント



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3.80名前が無い程度の能力削除
前に似たようなことで喧嘩したから笑えないな…

あの頃は若かったw
4.90名前が無い程度の能力削除
やったやった

妹に同じ手段で騙されて
大きいほうのケーキに唾つけられて負けたわ
5.100名前が無い程度の能力削除
帰宅したら4人家族なのに、ケーキが8分の1しかなかった

やられたぜ