『なんだ!?お前は!!!』
私は教会に着くと、その場に居た客は全員驚いた表情をしていた。
『香霖は!?香霖はどこに居るんだ!!』
『香霖!?森近さんならこの崖の向こうですよ』
その言葉を聞き、私はその紋章の向こうへ走った
私は、道でいじけている場合では無かったのだ。
香霖があの花畑に行こうとする理由、
その理由がまだ分かっていなかった。
ただ、結婚をするのがショックでそこまで頭が回って居なかった。
そんな自分を恨んだ。
全員が私の方を見てざわめいている。
だが、そんな事を気にしては居られなかった。
私は、崖から飛びたつように箒にまたがり、空を滑空しながら紋章に突っ込んだ。
だが、たどり着いた所は前に見た白い花畑ではなかった。
真っ黒な夜の羽の花畑に変わっていたのだ。
それに目の前には、香霖が居ない
霊夢とアリアはその場にいるが、香霖だけ居ないのだ。
それに、周りはあの天使が黒くなっている者が多数居る
私は、いきなり囲まれていたのだ。
『うわぁ!!』
その唐突な光景を見て私は驚きの声を上げた。
傍に居た霊夢に、この状況は何か少しでも情報を得ようとした
『おい霊夢!!これは一体どんな状況だ!?』
だが、霊夢はただ上を見ているだけだった。
私も上を見て見たら、そこには白い布をまとい羽を生やした女性が飛びあがっていた。
霊夢がその女性に攻撃をしている事が分かった。そいつが黒幕なのか?
一体、あいつが何をしたんだ?何が香霖をここまで引きつけたんだ?
だが、そんな思いが一瞬で吹っ飛んでしまった。
泣き崩れているアリアがその場に居た。似合わない白いドレスを来たその少女が泣いていたのだ
『おい……………』
声をかけようとしたが、止めた。
私は今見えたのだ、少女が泣き崩れてすがっている者の正体が
それは、腕と頭が無くなっている香霖だった。
それを見た私は、体の中で何かが吹っ切れた
目から液体が、涙線が崩壊したようだ。涙が制御ができずにどんどん流れてきた。
その間にも、黒い布を纏った天使が襲いかかってきた。
私は、それらを全てマスタースパークを周りにまとい、吹っ飛ばした。
自分にも火が当り、火傷してしまったが全く痛みを感じなかった。
そうか霊夢、あいつが殺したのか。
あの白い羽の生やした女が香霖を殺したのか。
私の中の何かが逆上した
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
それは、私も見たことが無いくらいの大きな炎が八卦炉から出てきたのだ。
だが、その女はそんな炎など、どうでもいいかのように払った。
それが隙になっていた。だから私は無数の弾幕を放ち、その女にぶつけた。
だが、何も起こっていなかったかのように女は平然としていた。
私は、どうしてもその女に成敗を加えたいと思った。殺しても良い
香霖を殺した、殺したのだこの女は
『アリアァァァァァァァ!!!!』
私がアリアを呼ぶと、アリアは反応したようにこちらを向いた
『なんだよこれ………………ふざけんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉ!!!!』
私は、ただ叫ぶしかなかった。
それでも私の中の怒りは、収まる事はないのに
その瞬間、女の頭上から何か黒い集まりができていた。
その黒い集まりは、下におちてきて、そして爆発した。
私達はその爆風によって崖の下に落ちようとしていた。
だが、私は箒を握りしめていたので。それで空を飛ぶ事も出来た。
霊夢も空を飛ぶ事ができるため、心配する必要はないが、アリアと香霖の遺体も崖の下に真っ逆さまになっているはずだ。
アリアは、落ちる時に叫んで居た為、見つかりやすかったが、香霖の遺体が見つからなかった。
『霊夢――――!!!』
私がそう叫んだとき、上から霊夢の声がした。
『魔理沙!!早く上がってきて!!!』
『ふざけんな!!香霖はどこに居るんだよぉぉぉ!!!』
その時、下には大量の天使が居た。
それは、ちゃんとした白い天使だった、だが、その天使は今餌を食べている。
そう、男の死体を食べていたのだ。
私は、それがすぐに霖之助だと分かった。
分かった瞬間、私の中が真っ暗になった、
私は、箒から体を崩し、そこから真っ逆さまに落ちようとしていた時、
アリアの声が聞こえたが、もうどうでもいい。
私が箒から落ちると、箒も落ちてアリアも落ちた。
それとは逆に、天使もこちらに向かってきていた。
アリアは叫んでいた。だが、もうなんでもいい、
そう思った時、上から弾幕が降ってきたのが分かった。
その弾幕は、天使の羽に当たり、バランスを崩した天使は下に真っ逆さまに落ちていった。
霊夢か。
霊夢は、私の手を掴むと上に登って行った。
アリアは、まだ箒を握っていた。
『魔理沙!!魔理沙!!』
霊夢が私の名前を必死で呼んでいる。
だが、私は当然動かない。もういい。もういいんだ。
花畑の上に辿り着くと、霊夢は息が切れたように息を荒く呼吸した。
『霊夢……………………………。』
結局、香霖は助けられなかった
私のせいだ。
変にいじけなければこうならなかったかもしれない。
どうして香霖が死んだのか、霊夢に理由を聞かなかった
聞きたくなかった。死因など
その時、すぐそこにあの女が来た。
『お前らなど興味も無いし、関係も無い。』
女は、見下すようにそう言った。
そして、何かスイッチのような物を取りだした
『そのボタンを押せ、そうすればお前らだけは解放して家に帰れるぞ』
その言葉を聞いて、私は笑った。笑って腰を上げた
帰れる?ふざけんな
解放?ざけんな
『何かの手違いでお前らもこの世界に来ただけだ。さぁ帰れ』
ふざけんな。
私の拳は、握りすぎて血が流れていた。
『おい』
次に、私は声を張り上げて叫んだ
『ふざけんな!!!!!!ブス!!!人殺しがぁぁぁ!!!ああああああああああああああああああああ!!!』
霊夢も、何かを叫ぼうとしたようだが、私が先だったのか叫ぶのを止めたようだ。
『そうか。なら残念だ』
その後、女は怒りの表情になった
『私の顔を侮蔑した貴様は、世界で一番醜くしてやるぞ』
そう言った後、女の手は鋭利な物でできていた。
その時、女は私の顔をめがけて突き立ててきた。
幸い私はその手に反応して横に移動したため、その鋭利な物が顔にぶつかる事は無かった。
『なんだよこいつ…………心も不細工なのか!!!』
私がそう言った後、女はカウンターのように裏拳でその鋭利な物をまた私の顔にめがけた
とっさに私は手で顔を覆うようにしてしまったため、手の甲に2センチほどの深さの傷ができてしまった
攻撃された時は、自分の手が豆腐のように綺麗に斬れてしまっていた。
斬られた後は、ものすごく痛かった
『ぁぁ………あああ!!!!』
手から多くの血が沢山流れていた。
女は、舌打ちしながらまた私の方を見た。
そして、また私の顔を攻撃しようとした。
だが、その時霊夢が結界を張った。
その結界の場所は、女の体を半分包んでいた。
はみ出ていたのだ。上半身の部分が
『ああああああああ!!!』
結界の中に入っている下半身は、ミイラ化して砂になってしまった。
羽は上半身の方にあるので、空は飛ぶ事ができるようだ。
『私の…………私の美しい脚が…………!!!!』
女は非常に恐ろしい顔をしていた。
恨みを持っている私でさえ身ぶるいしてしまうほどのだ。
『死ね!!お前らも死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!』
女の手から、またどす黒いオーラが現れていた。
それが、マスタースパークのような攻撃になって放たれた。
私は、幸い霊夢から離れていた為、無傷だったが、霊夢は直撃だった。
煙が晴れた時、霊夢は自分の体に結界を張っていた為、平気だったらしい。
『あああああああああああああああああああああ!!!』
女は非常に悔しそうだった。
その時、私たちから離れていった。
崖の向こうの空の上で、止まった。
『殺す!!ぶっ殺してやる!!!』
女はそう言うと、今度は大きな黒いオーラを一つにして、私達の所に放そうとしていた。
だが、霊夢はそれを許さない様に、また結界を女の手の上にしたのだが、オーラの力は強く、手を結界の中に入れる前に割れてしまった。
『くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
そのオーラは、結界を張った霊夢では無意味のように思えた。だが、
急に結界からヒビが入ったのだ。馬鹿な、こんな事は…………。
そしてついに結界は割れてしまい、その黒い物体が直撃した霊夢は吹っ飛んでしまった。
だが、食らったのは少しの間だけだったので、なんとか死には至らなかったようだ。
傷だらけのまま空で停止すると、反撃する気満々で女の方を見た。
『図に乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
また攻撃を繰り返そうとしている女に、私はマスタースパークを放った。
今度は直撃したらしく、女はその場所で爆発した、
だが、まだ生きている。ピンピンしていた。
『貴様ら………………!!!』
どうやらこいつは、驚くほど単純だそうだ。
一人の相手にしか絞れないのだろうか。
これなら勝機はある、私は霊夢とアイコンタクトを取ろうとした。
だが、霊夢はこちらを見ていなかった。ただ女の方を恨みがましく睨んでいた
香霖が殺された事で、理性が失っている状態に近かった
女は、両手を広げてまた黒いオーラを出そうとしている。今度は私に当たるのだろう。
だが、今度は両手にオーラを集めて私達の方に向けていた。
さらに、そのオーラには目がついていた。
『当たるまで、永遠に追跡される』
女はそう喋っていた。そして笑っていた。
単純だ、こいつは本当に単純なんだ。
単純すぎると、こんな考え方につくのか。
だが、これは確かに不利な状況だ。
確かに完全に私達に当たるであろう、その攻撃
怖くはないと思っていたが、ある光景を見て身ぶるいがした。
そのオーラに触れた天使が塵になったのだ。鏖にされたのだ、そのオーラに
それほど酷い物なのか、それに当たったら私達はどうなるんだ!?
女は、勝ち誇ったように私達を見た。
そうか、この女は初めから私達に勝てたのか
ふざけんな。
頭の中で再びその言葉が駆けまわった。
『あああああああああああああああああああはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
女がそう叫ぶと、今にも発射されますと言うように手が光りだした。
殺される、私の頭にはそう流れていた。
だが、私は死んでいなかった。
光が終わったと思った瞬間、目の前の女の顔は真っ赤になっていた。
女の顔から下が、砂になって消えていった。
その砂の下から、ミイラ化した人間のあごが現れた
『顔が…………私の顔がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
女の声も、老婆のようなかすれた声になっていた
誰がやったのか
私は、後ろを振り向いた、
そこには、香霖の剣を握りしめているアリアが居た。
霊夢が持ちあげた時、持っていたのは箒ではなくそれだったのか。
その時は、箒かどうか確認する隙もなかったのだ。
それに、柄の部分しか見ていなかった。
そして、またアリアが剣を振ると、女にはまた亀裂が入った。
女は、苦しそうに声を上げた。体がどんどん砂になっていくからだ。
不思議と、血は全く流れていないようだった。
『あああ!!体が………私の体ぁぁぁぁぁぁ!!!』
『まさに血も涙も無くなった女神さまって訳………ね………』
霊夢が何かをつぶやいたが、私には何も聞こえなかった。
『神や妖怪は心の病気にかかりやすい』
霊夢がそう言い終えた後、アリアはさらに一閃を女に向けた。女は綺麗に斬れていた
女の叫び声が周りに響く、その後、黒い花がどんどん白い花に変わっていった。
『うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
アリアは、さらに叫び続け女の顔に一閃を向けた。
女神は見るからにみすぼらしくなった。今にも消えそうだ。
『あ………………あ………………』
女の体から、黒い煙がどんどん溢れだして来た。
どこか燃えているのだろうかと思ったが、その煙はアリアの方に向かって行った。
その煙がアリアの口に入っていくと、アリアは叫んでいた。
『アリア!!!』
私は彼女の名前を呼んだが、もう間にあわない。
霊夢も、アリアを助けようとはしなかった。
全ての煙がアリアの中に入った後、女の姿は完全に消えていた。
その瞬間、女の声がどこからか響いていた。
それは、霊夢も同じだったらしい。
≪私はただ、あの剣士に私の愛と嫉妬を見せつけたかっただけよ≫
その言葉が聞こえた後は、何も無かったかのように女の何もかもが消えていた
目の前には、白く輝くアリアの姿が合った。
背中には羽が生えており、肌の色もさらに白くなっていた。
ただ、髪の色だけは赤く染まっていた。
その姿はまさしく、あの女の格好と同じだった
『これで、あなたが3代目の女神ね』
霊夢がアリアにそう伝えると、アリアは何も嬉しそうでない顔をしていた。
だが、少しだけ笑っていた。何かに笑っていた
だが、目は笑っては居なかった。心底は笑えなかったのか。
すると、アリアは急に崩れた女神の銅像の顔の方に走り出した
『アリア!?』
私は、彼女を呼んだが、彼女はただ微笑むだけだった。
彼女は女神だと言うのに、まだ涙を流していた。
だが、微笑みの顔は崩していなかった。
『お前の能力で、香霖を生き返らせる事ってできねえか?』
私は、とっさにそう言うと、霊夢は俯きながら私を目を逸らして言った。
『無理よ、女神でも死んだ人間は生き返らせる事は出来ないもの』
霊夢は、冷たい態度で私に向かった。
私は、また悲しくなった。
だが、アリアは微笑みを崩さずに、私達にこう叫んだ
『大丈夫』
アリアはそう言っていた。霊夢は信じられないように顔を上げた
『魔理沙、霊夢、……………ありがとう』
アリアはそう私達に伝えると、その顔の中に入っていった。
そして、その顔は修復され、まるで彫られたばかりの銅像のようになった、
だが、そのおかげでアリアは閉じ込められてしまった。
目が覚めると、そこは真っ暗な空間の中に僕は居た。
腰にはあの剣が無い、一体どういう事だろうか。
僕は慌てて探した、そして、ある奴にも警戒した
まさか、あの女神の仕業なのか
真っ暗の中で、僕は戸惑っていたが、
後ろを振り向いた時、僕は息を吸い込んだ。
そこには、羽の生えた女が居た。それは、女神かと思ったが、
『アリア………………これはどういう事だ…………?』
アリアが、背中に羽を生やしてそこに佇んでいた、
彼女の体は少し発光していた。その姿は神々しかった。
『師匠………………。』
アリアは、僕にすがりつくように見つめ、そして抱きついてきた。
その瞬間、彼女は咳き込み血を吐いていた
『アリア!?』
僕は彼女の顔を見ると、彼女は笑っていた、そして泣いていた
『良かった…………。よかった…………』
アリアは、泣きながらそれだけを呟いていた。
その後、また咳き込んで血を吐いた
『アリア、急いで応急処置を』
『無理だよ。』
アリアは、僕の服を掴みながら俯いて喋りだした
『だって私、女神殺しちゃったんだもん……………。』
『……………君が殺したのか』
『殺した奴が女神なの。あの女神の過去を見たでしょ?』
何と言う事だ、私の弟子が女神になっていたのか。
だが、僕は何も敗北感も感じず、ただ笑った
『そうか、それは師匠を越えられちゃったな』
僕はそう笑うと、アリアは怒りだした
『ちょっと!!今良い雰囲気だったじゃない!!』
その後沈黙が続いたが、今度はアリアが微笑みだした
『そうだよね。超えちゃったかもね。』
その後、また血を吐いた、それで僕は我に帰った。
そうだ、治療はしなくてもいいのだろうか。だが、女神がこれほどの重傷ではどうにもならない気がした
『でもね、師匠はずっと、私の師匠』
アリアは、僕の手を握った
『私のたった一人の師匠だから、私の寿命を引き換えに師匠を生き返らせたの。』
『そうか、………………』
残りの寿命はどのくらいか聞こうかと思ったが、
聞いていはいけない気がした。聞けなかった。
『女神は、自分の寿命の為にただ人を生き返らせたくなかったんだね。』
『恨んでいる奴だったらしいしな。』
女神のアリアが握っている力が、だんだん増していくのを感じた
『私ね、本当はずっと師匠の下で居たかったかなぁ………。』
アリアは、僕の首に手を回し、体も僕の方に近づけた。
気づいたら、僕は口で息ができなくなっていた。
口の中に、血の味が広がった。
決して良い味とは言えなかったが、
今は、アリアと一番近い距離に居た。
一番、一番近い距離に、
アリアは、しばらくして僕から少し離れた。
そこで、また再び血を吐いた
『………………』
僕は、もう何も言えなかった。
『師匠………………………』
アリアは、また悲しそうに、でも嬉しそうに僕の方を見た。
『師匠は…………ずっと師匠だよね。ずっと私の師匠だよね。』
そう言った後、アリアの体が浮いた。
急に、大きく大きく浮き上がった。
もう、手を伸ばしても届かないくらいに
『この世界には、もう女神は必要ないから…………。』
そうつぶやいて行くと、アリアの体が急に透け出した。
それとは対照的に、どんどん翼が大きくなっていった。
寿命、
アリア、お前はどのくらいの寿命を犠牲にしたんだ。
僕は、心の中で罪悪感が湧いた。
そして、だんだん薄くなっていくアリアと同時に、周りの壁がどんどん崩れていった。
壁の向こうには、魔理沙と霊夢が居た。
だが、壁が消えていくと同時に白い羽が花弁の花も、砂になり、空気に混じって消えていった
壁が完全に崩れた時、女神の花は完全に消えていた。
アリアも消えていた。完全に
『そんな………………』
僕の弟子は、完全に消えてしまった。
ただ、何も残さずに消えてしまったのだ。
僕は、そこで崩れてしまった。
でも、結局涙は出なかった。
周りにはもう、女神の花は消えていた。
その時、空から水が降ってきた。
その水は、宝石のような青い光の水だった。
空を見上げると、青い星がどんどんこちらに降って来る、
宝石のような水が、
宝石をばらまいたかのようにここに落ちてきた。
それは、輝く大雨のようだった
そして、だんだん空の青い光は消えていった。
この青い光は、女神の涙だったかな。
だが、もう確かめるすべもない。
そらには、もう完全に女神の涙が消えていたのだ。
代わりに、僕たちの世界にきらめく、さまざまな光を発する星が輝いていたのだ。
その夜空は、本当に女神が消えた事を教えていたかのようだ。
そして、女神はもうこの世界には居ない。
この世界は、普通に戻ったのだ。
天使も居ない、ただ普通の世界へ。
魔理沙と霊夢は、僕のそばに駆け寄ってきた。
『香霖……………』
魔理沙は、涙声で僕に話しかけていた。
霊夢も、目に涙を浮かべていたが。
二人とも心底喜んでなかった。
そりゃそうだ。死んだんだ。
僕の代わりにアリアが
最後の女神となって
そして、この島は急に崩れ出した。
『!!』
そうか。女神が居なくなったから崩れるのか、この島は
『香霖!!』
どうやら、落ち場所が悪かったようだ。
僕は、彼女からどんどん離れていっていた。
ああ、僕も死ぬのかな
魔理沙と霊夢が、崩れた島の死角に居て全くどこに居るのか見当がつかなかった。
アリア、悪かったな
僕は、さようならと口で囁いた瞬間、
誰かに手を握られた気がした
目を開けると、そこは結婚式場だった。
ただ、目の前の紋章が消えていた。
周りの人達もざわめいていた。
『森近さん?』
神父が、不安そうな顔で僕を見ていた。
『どうして、上から降ってきたのですか?アリアさんは?』
そうか、僕は上から降ってきたのか。
そう言えば、さっきから雪のように降っていた羽が、嘘のように止んでいた
『森近さん、これは一体………………。』
神父が、何かに怯えるようにガタガタ震えている。
その瞬間、紋章の奥の崖の向こうに大きな大陸が落ちてきた
『ひぃ!!』
大きな音を立てて海を揺らしたその大陸は、だんだん小さくなり、
最後には何も無くなってしまった。
周りの皆が、ざわめいたような雰囲気で沈んだ大陸を見ている。
『森近さん!!あなた一体何をやっていたんですか!!!!』
『女神にあったんだ。』
その一言を言うと、周りはさらにざわめいた。
『女神さまが…………!?一体どんな事を話したんですか!?』
『もう、あの花畑には行けないらしい。』
後ろから、男が叫ぶように討論した
『どっどういう事だ!!』
『あの大陸を見たでしょう。もうあの花畑は海に沈みました。』
『そっそれは何を意味するのですか!?』
このままではらちが開かない。
だが、この人達に僕たちがやった事、これからの事を全て教える必要はない。
ただ、しばらくして意味が分かるようになるのを待つだけだ。
だから、僕はこの言葉だけを送った。
『もう、この街には二度と羽は降りません。』
僕はそう言った後、この教会を後にした。
この人達は、もう残り少ない寿命に怯える事は無い。
延々と長く、美しく生きる事ができるのだから。
『おーい!!香霖…………居た―――――!!!!』
僕は握られていたはずの手を見たが、誰も僕の手を握っては居なかった。
代わりに、僕の手には一つの白い羽が握りしめられていた。
朝、図書館
僕はここで、ある人物の書物を調べた。
………………あった。≪バーガン・ブロッセル≫
この人はどんな人物なのか、もう少し興味が湧いたのだ。
『おい、こいつ香霖そっくりじゃねーか?』
魔理沙が、油絵の人物に指を指した。
確かに、僕にそっくりだった。
この人に違いない、そして生暦を調べて見た。
…………どうやらこの人は、生まれつき女性を愛せない人間らしい。
だからと言って同性愛者でもない。
ただ、体に≪毒≫という物を持っていたのだ。僕たちの世界で言う病気だ。
だから彼は、女も男を寄りつかせなかった。孤独のままで生きてきたのだ。
彼女に対する酷い仕打ちは、ただ彼女を守るための行動だったのか。
彼女の逆恨みで起きたこのスケールの大きな復讐劇。
長く続いたであろうその復讐劇は、たった今終わってしまったのだが、
全てはこの男が起こした行動だった。だが今となってはもうどうでもいい事だ。
僕は、もう一冊の本を取り出して貸出の紙に記入した。
『向こうの世界に行ったら、どうやって返すつもり?』
霊夢が、少し痛い事を言ってきた。
『なんだ香霖、泥棒すんのか?』
魔理沙の言葉に、僕は少し微笑んだ
『まぁ、たまにはいいだろう。君達もやってるんだ』
僕はそう言って、その図書館を後にした。
入口の穴は、今よりはるかに小さくなっていた。
かがめばやっと入れるくらいの大きさだ。
『やべえぞ香霖、これは早く行かねえと』
魔理沙がそう言って、最初に穴に入っていった。
『僕が一番最後かい?』
『今さら帰れないかもしれない時に私達の心配なんかしなくていいわよ』
霊夢がそうふてくされて言った。
いや、そういう意味ではないのだが
だが、僕もかがんで入るとかなり窮屈だった。
前に進む事がこんなに大変だとは知らなかったと実感するくらいだ
手足が思うように上手く動かせず、少し動くだけでも一苦労だ。
前も見ても出口が見えない。邪魔だ、魔理沙と霊夢が邪魔だ。
だから最後は嫌だったんだ。
僕たちは、何時間くらいだろうか、それをどんどん同じ動きを繰り返した。
だが、だんだんその動きが難しくなるのを感じた。
『!!おいやべぇぞ!!この穴どんどん小さくなってやがる!!』
魔理沙が慌てた口調でそう言ったのを聞き、僕もいくだんと驚いてしまった。
そして、二人のペースがさらに早くなった。
だが、僕の体は二人より大きいのか、なかなか上手く動かせない。
そして、魔理沙がようやく穴の向こうにたどり着いたようだ。
霊夢と手をつなぐ音が聞こえ、引き上げる音も聞こえた。
あとは僕だけだ。
『おい香霖!!早く!!』
魔理沙と霊夢はそう言って、僕に手を差し出した。
だが、手がなかなか前に動かない。
その時、さらに穴が小さくなっているのを感じた。
『香霖!!』
さすがにこの中では死にたくないな。僕は必死の思いで前に進んだ。
そして、やっと頭だけは出口に出れたのだ。
後は手も外に出せばいいのだが、その後に急ぐように魔理沙と霊夢が首を掴んだ。
手伝ってくれているのだろうが、正直ものすごく痛い。
じりじりと穴の端につながる時に来た時、
ようやく手が穴の外に出られた。これでようやく楽になれたのだ。
その瞬間、穴はみるみる小さくなっていった。だが、その時僕は焦った。
穴の中に、僕が握りしめていた白い羽があったのだ。
だが、手の届かない所に存在していたその羽は、もう無理かと思われた。
そして僕は、近くにあった掛け軸を丸めて羽を取り出すことにしたのだ。
あと2センチ………。あと1センチ……………
あと少しの時、家に振動が起こった。
そのおかげで、羽は丸めた掛け軸の空洞の中に入ったのだ。
そして僕はすぐに掛け軸を穴から出し、羽を取りだした。
その瞬間、穴は急激なスピードで縮んでいき、そして消えていった。
これで、もうあそこの世界には行けないのか。
少し寂しくなったと同時に、また焦りが出てきた。
そうだ、草薙の剣は?
自分の腰には掛けていない。向こうの世界に置いてきてしまったのか!?
だが、魔理沙の服の中で物音がした。
良く見ると魔理沙は、箒ではなく草薙の剣を持っていた。
僕は、その草薙の剣を何も言わずに取り上げるた。
『魔理沙、箒はどこに行った?』
『化け物に食われました。』
魔理沙はふてくされて僕から目を逸らした。
私が持って来たんだぞ!!というような表情をしていたので、僕はその表情に答えるように微笑んだ。
その後、手に持っていた羽が急に手から離れていったのだ。
僕はその羽の後についていって捕まえようとするが、なかなか捕まらない。
そしてついに店の外に出てしまった時、
その羽は光る砂となって地面に落ちていったのだ。
その光る砂は、店の前の地面を明るく照らした。
だが、驚く所はその後だった。その光る地面から白い羽が花弁の花が生えてきたのだ。
それもいっぱい、いっぱい、まるであの花畑のように
その花の一つ一つが、月の明かりに反射して蛍光のように輝いていた。
この花にはそんな特徴があったのか。向こうの世界には月など無かったからこんな光景など見れなかった
『綺麗ね…………』
魔理沙と霊夢はその光景を見て、安らぐような笑顔になっていた。
だが、魔理沙は急に顔色を変えた
『でも、この羽ってあっちでは不吉の羽だろ?ここに生えても大丈夫なのか?』
僕は、その言葉に自信満々に反論した
『大丈夫さ。この花はアリアが作った花だからね。』
僕はそう言って、図書館から持ち帰った本を読んだ。
霊夢と魔理沙が、その本を覗いた時、顔をしかめていた
『何これ?全く読めないわよ?』
『香霖………。この本読めるのか?』
僕も不思議に思った。この本が幻想郷に来ても読めるようになっていたのだ。
まぁ、心当たりはあるのだが、魔理沙と霊夢には言わないでおこう。
多分、女神アリアの血を飲み込んでしまったからだろうか。
だが、この珍しい本を読めるとなると、それは嬉しかった。
僕以外、誰も読む事はできないし、誰もこの本を盗む事はしないからだ。
魔理沙と霊夢が自分の家に帰った後、花畑に誰かがやってきた。
紫か誰かと思ったが、その者は傘をしていたが緑色の髪の色だった。
その者が花に触れようとしていたので、僕は店の外に出た。
『何をしているんだ』
僕はそう質問すると、その女性は微笑んだが、僕の目を見なかった
『珍しい花ね。こんなの長年生きてきたけど見た事がないわ』
『そうかい。嬉しいね。で、何の用だい?』
僕はそう言うと、彼女はこちらの方を向いた。
『そうね、この花を少し分けて欲しいのだけど』
『冗談じゃない』
この先も、この花を一本も誰にもあげる事は絶対に無いだろう。
だが、彼女は少し残念そうな顔をした。
『そう、この花、結構気に入ったのだけれどね』
『なら時々眺めるだけにしてくれ』
僕はそう言うと、急に風が吹いてきて、羽の花弁は鳥のように風に任せて飛んで行った。
『まるで、不死鳥が飛んでいるみたいね。』
『この世に永遠に生きる奴なんて居ないよ』
僕はそう言って、店に戻ろうと足の向きを変えると、羽の花弁の中に赤い髪をした少女が居たような気がした。
だが、すぐに消えてしまった。
『種ができる季節になったら、一つだけでもいいから分けてくれないかしら?』
今度は少しだけ寂しそうな顔をしていた。
何か、あったのかはよく分からないが。悲しそうだった。
『まぁ、その時にな。』
僕がそう言うと、彼女は笑顔になりこちらに向いた。
だが、僕はそんな笑顔など見ずに羽が空を羽ばたく光景を見ていた。
図書館でパクッた本の中に、花言葉についての本が混じっていた。
その本に書かれている、女神の花。
その花言葉の意味は、アリアが伝えたかった物なのだと理解した。
さようなら、 ありがとう。
≪一番大切な人が大きな空へ羽ばたけますように。≫
終
何故かPWが正しく無いと言われちゃうので追記ですいません