「じゃあ始めるとしましょうか。――――全員、杯を掲げ持ちなさい」
レミリアの声に合わせ、全員が手元のワイングラスなりコップなりを斜め上に掲げ持ち、少々神妙な面持ちになる。
そしてレミリアの「乾杯」の声に合わせ、全員が近くの者と杯を合わせる。
空間にガラス同士のぶつかる澄んだ音が響くと、それに合わせてそれそれが神妙さを崩し、思い思いの表情に変わっていった。
12月24日。
この日は外の世界や幻想郷、冥界や魔界、彼岸だろうと関係無く、この日はクリスマス・イブである。
紅魔館では毎年館内の者だけでささやかなクリスマスパーティーが開かれている。
メンバーは当然主のレミリアを始めとして、従者の咲夜に友人のパチュリー、その使い魔の小悪魔に今年で初参加のフランドール、そして館内で働くメイド達である。
会場は館内の大きな食堂が使われており、席順は上座にレミリア、後ろに咲夜、レミリアの右にフランドール、その向かい側にパチュリー、その後ろには小悪魔。それから以下は館のメイド達で、乾杯が成された後はそれぞれが好きな場所にいくつかのグループを形成して陣取り、思い思いに楽しんでいる。
テーブルの上には料理や飲み物が所狭しと並べられていて、パーティーの規模そのものは決して”ささやか”の範囲に収まるものでは無かった。
さて、ここである疑問を持っていると思うが、この場に門番の美鈴の姿は無い。
これには理由がある。
美鈴は毎年、ある大任を任されているからである。
その大任はと言うと――――
「メリークリスマース!」
突如勢い良く扉が開かれ、そんな陽気な声とともに現れたのは白と赤のみで構成された暖かそうな服装に同じく暖かそうな帽子、そして大きな白い袋を抱えて髭と白眉で顔の殆どが隠れている人物だった。声は老人のもの。パチュリー謹製の声質変換マジックアイテムを使って老人の声を出しているだけである。
それは所謂サンタクロースというものだ。
館内の者全員は一瞬固まったがすぐにそちらを振り返る。
そして毎年の事だから分かっているのだろう。直ぐにその人物――基、美鈴の元へと殺到した。動いていないのは上座と、その付近に座っているレミリアやパチュリー、フランドール達ぐらいのものである。
つまり、美鈴に任された大役とはコレの事である。
美鈴はすぐに袋を肩から下ろし、袋に手を突っ込んで手早く中から少し小さめの袋を取り出した。それもやはり丸く膨れていた。そして美鈴はすぐにそれを持って袋から離れた。その瞬間、袋に殺到するメイド達。少しでも遅れていれば、メイドの波に飲まれてそれはそれは大変な目に遭っていたところである。
美鈴はデパートか何かのバーゲンセール状態のメイド達を尻目に、動かない主達の所へと向かった。
「毎年ご苦労様。今年はどんな物を用意しているのか楽しみね」
とはレミリア。言葉通り、レミリアは笑顔でとても上機嫌。それは後ろに控える咲夜やパチュリー、小悪魔も一緒である。フランドールは何が起こっているのか理解が追いついていないらしく、目を白黒させていた。
「ねぇねぇお姉さま。この人、誰?」
「フランは知らなかったわね。ソイツはサンタクロースと言う名で、毎年クリスマスにプレゼントを運んでいるのよ。貴女はずっと貰えなくて申し訳無いって思っていたけれど……今年は貰えるわね」
レミリアはフランドールに微笑みかけ、フランドールはプレゼントが貰えるという事実に瞳を輝かせている。
パチュリーは興味無さげに本を読んでいる――が、ちらちらとサンタを見ていた。性格上、素直に喜べないのだろう。小悪魔はそんなパチュリーをにこにこと眺めている。プレゼントにはあまり興味が無いのかもしれない。むしろ、パチュリーの様子そのものがある意味で小悪魔にとってはプレゼントになっていそうである。
美鈴扮するサンタは一度、全員の顔を見渡し、瞳が期待に輝いている事を確認した。
それから袋を広げ、フランドールを最初に、レミリア・パチュリー・咲夜・小悪魔の順にそれぞれ手渡していった。
フランドールには丁度胴体ぐらいの大きさの長方形の箱。レミリアにはそれの3分の1程度の大きさの箱。パチュリーにはあまり厚みの無い長方形の箱。咲夜も長方形なものの、こちらは手で握れる程度の大きさ。小悪魔にはパチュリーと同じくあまり厚みは無いが、少し大きめで正方形の箱。誰一人として同じ大きさの箱が無い事から、全て中身が異なる物である事が見て取れる。
そして 真っ先に箱を開けた――というより壊して中身を出したのはフランドールだった。
「……魔理沙だ」
その中身は、丁度フランドールの胴体ぐらいの大きさの魔理沙人形。いや、ぬいぐるみと言った方が正しいか。非常に可愛らしく、表情は魔理沙らしい強気と元気さが窺える。
フランドールは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべてギュッと抱き締めた。目の端には、少しだけ涙の粒が浮かんでいる。
「魔理沙……これでいつでも一緒だね。会えない間も、きっと寂しくないよ……」
レミリアもパチュリーも咲夜も小悪魔も、そして美鈴も。そんなフランドールを穏やかな眼差しで、見守るようにして見つめていた。
続いて箱を開けたのはパチュリー。
「……これは驚きね。アルマデルの書、それも原本だなんて」
中身は一冊の魔道書。アルマデルの書というのは天使召喚の本で、原本には写本には載っていない、執筆者が没にしたモノも含まれており、悪魔召喚も若干ながら扱われている。当然、原本であるからして、これはとても貴重な魔道書である、
魔女であり、本を読む事こそが第一を自負するパチュリーにとってはとても嬉しいプレゼント。いつもの半眼ながら、瞳には期待という名の光が灯っている。このパーティーが終われば、すぐにでも図書館に戻って表紙を捲るのだろう。
続いて箱を開けたのはレミリア。
中身はある意味で異様だった。レミリアも一瞬それに目を丸くしたが、すぐにその意味を察して僅かに微笑んだ。
中身というのは、所謂ティーセット一式。ただ違うのは、全てが紅一色である事だ。それも鮮やかというよりは何処となく粘着質な印象を受ける紅さだった。
「ふん……いい趣味じゃないか。真っ赤な館の紅い主に紅一色のティーセットで真紅色の紅茶を飲めという事か。まったく、誰が考えたのかは知らないが……」
そう言って、レミリアはちらりと背後の咲夜を見やる。が、咲夜は視線に気づいていないかのように表情を崩さず、自身の手に収まっているプレゼントに視線を落としたままだった。レミリアはその様子に少しだけ嘆息して、「まあいいか」と小さく呟いた。
そして次に箱を開けたのは咲夜。主が開けるのをずっと待っていたのだろう。
箱を開けて中身を見た瞬間、咲夜は思わず息を飲んだ。
小さな箱の中で綿に包まれて出てきたのは、細かく美しい装飾を施された銀製のナイフだった。我に返った咲夜はゆっくりとナイフの柄を握り、目線より少しだけ上に掲げた。
ナイフの刀身は照明の光を反射させ、キラリと瞬いた。咲夜はその光を見て、口元にどこか冷たさを感じさせる笑みを宿らせて近くにいた小悪魔をびびらせていた。咲夜はナイフ収集が趣味のひとつであるので、咲夜なりに喜んではいるのだろう。
そして最後に箱を開けたのはつい今しがた咲夜の微笑でびびっていた小悪魔。びびって”いた”というか、現在進行形でびびってはいるが。すぐ近くで咲夜が俯いてナイフを眺めながら「ククク……」という怖い笑いを漏らしているので。レミリアは少々呆れており、フランドールは魔理沙人形に頻りに話しかけていて、パチュリーは既に我慢出来なくなってアルマデルの書を開いていた。美鈴は何故か薄ら寒さを覚えてこの場から離れたい思いに駆られていた。普段からナイフを食らっている所為だろう。
ともあれ、小悪魔は咲夜を見ないようにしつつ、中を覗き込んだ。
「……わぁ。マフラーと手袋だ。暖かそう……」
中身は赤のマフラーに白の手袋というクリスマスカラーのもの。
小悪魔は早速マフラーを巻き、手袋を嵌めて満面の笑顔を浮かべた。
「これ、手編みですね。とても暖かいです。ありがとうございますっ」
美鈴扮するサンタに小悪魔はぺこりと丁寧に頭を下げ、感謝を示した。小悪魔も中身が美鈴である事を知っており、編んだのが美鈴であると読んだのだろう。
そしてそれは事実だったらしく、サンタは顔の前で片手を左右に振って慌てて”自分ではない”というアピールを繰り返していた。今この場では美鈴ではなく、サンタでなければいけないので、当然である。
ともあれ、これで全員にプレゼントが行き渡った事になる。
「これで全員に行き渡ったようじゃのう。ワシはまだプレゼントを配らねばならんので、これで失礼するぞい。ではまた来年、それまで良い子にしてるんじゃぞ~」
美鈴は一度パーティー会場を見回して宙に浮かんで中央で静止し、全員に向かってそう発言すると、そのままゆっくりと会場を後にした。
会場を後にした美鈴は同じ階の端の部屋まで行き、ドアノブを捻って中へと入った。
その部屋は所謂使われない客室だが、普段から手入れされている為に普通に使ったところで支障が無い程に綺麗である。
部屋に入った美鈴は部屋奥にあるクローゼットに向かい、扉を開いた。
中には、いつも美鈴が着ているチャイナ風の服がかかっている。
美鈴はそれを出してからベッドに向かい、ベッドの上にチャイナ服を放った。そして着ているサンタ服を脱ぎ、付け髭やボイスチェンジャーを外して着替えると、そのままベッドの上に”ばふっ”という擬音を伴って仰向けに倒れこんだ。
「皆、楽しそうだったなぁ……」
天井を見上げながら呟いた言葉は、美鈴しかいないこの部屋では誰の耳に届く事も無かった。言葉は虚空に消え、月明かりに照らされた部屋の中は静寂が支配している。
前年までは美鈴は着替えたらすぐに会場に戻り、皆と一緒に騒いで楽しんでいた。
だが、今年は前年までに無い変化が美鈴に訪れていた。
それは「紅魔の霧」事件から始まった事。門番としての退屈な毎日は霧雨魔理沙という魔法使いによって変化させられていた。門番としての務めを果たそうと迎撃に上がっては撃墜され、咲夜のお仕置きで痛い目に遭う。――それがいつの間にか紅美鈴の日常になっていた。
このクリスマスパーティーというのは、一年間頑張って従事し、勤めを果たしたプレゼントとも言える程に紅魔館で働く者達の楽しみになっている。つまり、門番として侵入者を追い返せないのは意味が無い。
「”私”じゃ顔を出せないもんね。だって私はこの一年、魔理沙が来るようになってからは務めを果たせていないから。侵入者を撃退出来ない門番にいる意味は無いって咲夜さんは言うし、パチュリー様や小悪魔は迷惑してるって聞いた。……駄目だなぁ、私……」
独り言も先ほどと同じく宙に消え、吐き出された溜息も白い煙と共に消え去った。
そうして幾分時が過ぎた頃。
「……いるの? 美鈴」
扉の向こう側から、咲夜の声。
美鈴は別に寝ている訳では無いが、声に反応する事も無く、ただ暗い天井を見つめ続けていた。
幾度かノックの音が室内に響いたが、美鈴はいずれも無視を決め込んでいた。
「しょうがない。……勝手に入るわよ」
やがて咲夜は業を煮やしたらしく、扉を開けて中へと踏み入った。
咲夜は扉横のスイッチを押し、部屋に魔術照明の明かりを灯して部屋内を見渡した。
ベッドに横たわる美鈴には当然、すぐに気がついて咲夜は速くも無く、また遅くも無いペースで近づいていった。
それに合わせたのか、美鈴はひとつ溜息を中空に吐き出して上体を起こした。
すぐに咲夜は美鈴の前に辿り着く。咲夜が見下ろし、美鈴が見上げるような位置である。
咲夜は口を開き、まずは少々遠回りな疑問をぶつける事にした。
「もうそろそろパーティーの佳境よ?」
「ああ、もうそんな時間なんですね」
「そうね。もうそんな時間ね。貴女、戻らないつもり?」
その質問に美鈴は言葉では無く、首を縦に動かす事で肯定とした。
「……何か、あったの?」
「そうですねぇ。あった、と言えばありましたね。――今年は私、参加する資格を取れませんでしたから」
咲夜の問いに対しての美鈴の答え。些か話が飛びすぎている所為だろう。咲夜は腕を組み、眸を閉じて考える仕草をした。そうして若干の間の後、咲夜は再び眸を開いた。
「――――どういう事か、説明して貰える?」
だが考えたところでそもそもが美鈴の都合である為、咲夜には察しようが無かった。
「簡単な事です。私、ずっと魔理沙に勝っていません。ずっと負けて侵入を許しちゃってました。門番は外敵を排除する為の防衛線……でも侵入を許してしまえば、門番の価値は無いんですよ。だから私は今年一年、お役目を半分も果たせていません」
だから、参加は出来ない――美鈴は最後にそう付け加えて、口を閉じた。
「何を今更。貴女が魔理沙を追い返せないのは今に始まった事じゃないし、お嬢様だって何も言わないでしょ。だったらそんなの気にせず、楽しめばいいじゃない」
「このパーティーがここで働く皆にとって、一年間頑張って務めを果たしたご褒美みたいなものなのは、咲夜さんだって分かってますよね? だから、そういう意味では私は相応しくありません。それに、咲夜さんやパチュリー様にもそれで迷惑を掛けてる筈です……だから、私は参加しません」
そうキッパリと、美鈴は咲夜の瞳を見つめて言った。
美鈴には仕事に対して律儀で真面目な部分を持っており、今回はそれが影響しているのだろう。故に、美鈴には自身の仕事ぶりを低く評価する事しか出来ず、また、それは周囲も同だと思っているのかもしれない。
「迷惑、ね……確かにそうかもしれないわね。でもね、私は別に気にしちゃいないし、パチュリー様は表には出さないけど魔理沙を甚く気に入ってるみたいだし。だから貴女が気に病む事じゃないし、さっきも言った通り、お嬢様が何も言わないなら気にしたって仕方ないわよ。いい? 皆参加してるのよ。なのに貴女が参加してはいけない道理なんてないのよ」
最初は通常のテンポで、後半はまるで言い聞かせるようなスローテンポで咲夜はそう口にした。そうして言葉を紡ぎ終わり、咲夜は自然と口を噤んだ。視線は美鈴の双眸へと注がれている。
それに対し、美鈴は口を開こうとはしなかった。そして、それが答えでもあった。
「……納得出来ない、か……。分かったわ。それだけ頑固なら私からはもう何も言えない」
咲夜はそれだけを言うとくるりと反転し、部屋を訪れた時と同じペースで扉へと向かった。
ドアノブを捻り、咲夜はドアを開く。部屋を出る間際に咲夜が発した「――ま、気が向いたら顔ぐらい出しなさい」という言葉は、果たして美鈴に届いたのだろうか。美鈴は何も返さず、動かず、言葉はただ虚空へと消え去っただけなのかもしれない。
咲夜が戻り、更に幾分の時間が過ぎて夜も深まった時間。パーティーもいよいよ終わろうかという頃。
会場のドアに静かに手を掛ける人物がいた。
その人物はゆっくりと、音が立たないように少しだけドアを開き、中を覗き込んだ。
「皆疲れちゃってる筈なのに、とても楽しそう……。お嬢様も妹様も、咲夜さんもパチュリー様も、小悪魔も」
呟いたのは、美鈴だった。
それを知りたかっただけなのか、美鈴は開ける時と同じく音が立たないように、静かにドアを閉めた。
そしてすぐ左側――ドアの開く方向と反対側の壁に座り込み、天井を見上げた。暗い廊下に相応しく、天井にはただただ闇しか無かった。
美鈴はその闇を夜空のようだ、とぼんやりと思った。
廊下には静寂が。すぐ傍のドアの向こうでは今も尚賑やかな音と声が。美鈴を嘲笑うかのうようなコントラストを醸していた。
美鈴は天井を見上げたまま大きな声にならないよう、小さく口を開いた。
「私はいないけど、やっぱり言わないと、ね。――――皆、メリー……クリスマス」
「はい、メリークリスマス」
「――!?」
唐突な、すぐ横からの明るい声に、美鈴は驚いて飛び上がるようにして立ち上がった。
すぐに誰だろう、と見やる。
「まったく……遅いわよ。美鈴」
そこには咲夜の姿。頭にはヘッドドレスの代わりにパーティー用の三角帽が乗っかっており、妙に可愛らしかった。
「さ、咲夜さん、なんでっ」
「何でも何もないわよ。まったく、そんな所で祝われたって誰も分からないでしょ」
少々呆れた声。美鈴は未だに事態の急展開にあたふたしており、咲夜はその隙を見逃さず、有無を言わせずに手を掴んだ。
「へ? え、ちょっ、咲夜さんっ!?」
美鈴の非難交じりの声も咲夜は聞いていないかのように沈黙を保ち、だが行動だけはその間逆で美鈴を引っ張って会場内へと無理やりに連れ込んだ。
「メリークリスマースっ!!」
幾つもの声と、同じ数だけの破裂音が会場内に響き渡った。
声の正体は未だに元気にパーティーを楽しんでいる参加者。破裂音はクラッカーだ。
美鈴はまたもやの急展開についていけず、目を白黒させている。
そうしている内にもメイドの壁を押し分け、やって来たのはレミリアを始めとしたメイド以外のメンバーだった。
「やっと来たか。もう宴も酣よ」
「美鈴おそーいっ!」
「天使~悪魔~」
「まだお酒も料理も残ってますから、今からでも楽しんでくださいっ」
美鈴の前に辿り着くなり、一同はそれぞれに言葉を掛けた。若干一名、意味不明ではあるが。
おろおろと困惑する美鈴は、助けを求めるかのように横の咲夜に視線を送る。
咲夜はにこりと微笑み――
「キャッ!?」
トン、と背中を押し、一歩美鈴を前に出させた。
「咲夜から話は聞いたよ。まったく、くだらない事で悩んでたのね」
相変わらず困惑する美鈴に最初に言葉を発したのは、主であるレミリア。
「だ、だって……」
美鈴は下らない、と一言え切り捨てたレミリアに何かを言おうとするが、混乱の残った思考は上手く働かなかったらしく、言い淀んでしまっていた。
「私は別に魔理沙に突破されてる事は気にしちゃいないわよ。貴女は100あれば99を落とせばそれでいい。たかが1など、通したところでどうという事も無いよ」
だから参加する資格は充分にある、とレミリアは暗に言葉尻を伝えた。それは美鈴にしっかり伝わり、困惑の表情は驚きへと変わっていた。
「やっぱり皆いないとね。美鈴が楽しく笑ってれば、私も楽しいもん」
フランドールの素直で無邪気な言葉。
「メタトロン~サタン~」
……こんな時ぐらい本を手放すべきである。
「滅多に無い機会なんです。資格云々なんて野暮な事は放っといて、楽しまないと損ですよ」
笑顔で優しく、また少しだけ厳しさを含んだ言葉を紡いだのは小悪魔。
それは周囲のメイド達とて例外では無く、それぞれが料理や酒を手にして、美鈴に渡そうと機を窺っていた。
そう。こういう事は皆が皆参加し、楽しまなければいけない。それはきっと、どんな例外とて許されない。
「皆――あ、ありがとう、ございますっ」
涙交じりの声。いや、眸には今にも零れそうな程に雫が溜まっていた。もう後少しもすれば溢れる事だろう。
美鈴は俯き、腕で涙を拭って鼻を啜り、再度顔を上げた。
そこに浮かんでいたのは、相変わらずの涙。
そして、笑顔――
-FIN-
あと誤字発見したので報告
>従者の咲夜に友人のレミリア
レミリアではなくパチュリーかと
あと脱字発見したので報告
>規模のものは
>チャイナ服放った
美鈴美鈴・・・
中国中国!
( ´Д`)あるぇ?
美鈴の可愛さが伝わったようで何よりでございます(*´ヮ`)
和みました。
おぜう様がクールだけど
美鈴抱きしめたいょ美鈴
おもしろかったです