「ナズーリンか。お疲れさん。それにしても、さっきの星は随分と気持ち悪そうだっが。大丈夫かの?」
「うん、マミゾウさん。私が背中をさすって、ひとしきり吐かせてきたから。ご主人一人、もうほうっておいても問題ないさ」
「それにしても、最近の星は」
「なんだい?」
「しょっちゅう気持ち悪くなって厠へ駆け込むのう。案外、(子供)できちゃってたりなんかして」
「うん。(毛玉)できてたよ」
沈黙。五秒。
「……マジかえ」
「そんなのに冗談言ってどうするのさ」
「つまり、できちゃった、と」
「だからできてたって」
「じゃあ……マジなのか」
「だからマジだって。ご主人本来の、獣の気質が出てきてしまったんだろうねえ」
「獣の気質が?!」
「ああ」
「それで、相手に心当たりは?」
「相手? あえて言うなら、八雲さんとこの式の子かな。あの子が(毛繕いを)しているのを見て、ご主人も思わずしたくなっちゃったんだろうなあ」
「八雲ん所の式の狐(コ)の影響を受けたのか?!」
「そう。見かけはそんな事しなさそうな、まじめそうな子なんだけどね。案外自由奔放に生きてるから、あの子」
「いやいや、ナズーリン、おぬしは知らんのか? 今でこそあの狐、清廉潔白ぽいまじめ妖怪な外面をしているが。昔のあやつはもうはっちゃけ過ぎもいいとこまでやらかした恐ろしい妖怪じゃぞ?」
「そうなの?」
「本当じゃぞ。あやつが、というよりもあやつの種族全体がそうなんじゃが。人類の『あぶのーまる』なプレイのほとんどは、元はといえばあやつらの種族が編み出したものなんじゃ」
「それは初耳だな」
「一時期、ちょいと儂も血迷った時期があってな? そういう方面で対抗しようとした事もあったんじゃが……そのう、ひどく失敗して、もうほんっとうに後悔したんじゃから!」
「マミゾウさんは一体なにしたんだい?」
「聞くな! とにかく、儂が今思い出すだけで顔から火が出るような恥ずかしい事を、あやつらは平然とできるおそろしい妖怪種族なんじゃ」
「そ、そうなんだ」
「普段はおとなしいように見えるが、とんでもはっぷん! あれは猫じゃ、猫かぶっておるんじゃ」
「……確かに、猫だしねぇ」
「その本質はまさに女狐じゃからな。ナズーリン、おぬしも十分注意せえよ!」
「そうなんだ。てっきり私は、女狐はあの子のご主人のほうだと思っていたよ」
「いやいや、あの狐(コ)の主人はあれぞ。精一杯経験豊富な『れでぃ』をがんばって装っているが、あれこそ女狐の振りをした純情少女ぞ」
「そうなの? あの子のご主人のほうが。あの人こそ見かけからしてまさに女の狐って感じなのに」
「そうとも。いつだったかの宴会で、あやつとしこたま飲んだときの話なんじゃがな」
「ふむ」
「悪く酔ったせいか、あやつ、恋愛話を話し出したんじゃが。それがな? 博麗の巫女と、偶然何かの拍子に唇と唇が触れ合ったとかで」
「はあ」
「もうそれでドギマギしちゃっただの結婚を考えただの。もう、儂がその時飲んでた純米の味が、ミルクセーキに変わるかというウブさで」
「へえ。あの子のご主人が。というか、あの子のご主人と霊夢か。なんというか初耳な組み合わせ」
「話がずれたな。戻して、まとめるとじゃ」
「うん」
「八雲ん所の式の狐(コ)が」
「うん。八雲さんトコの式の子が」
「ヤッってる現場にでくわして、星も思わず」
「やってるのを見て、ご主人も思わず」
「星も、その、ヤッちゃったのかえ?」
「そうだと思うよ。実際、ついついやっちゃってたご主人を、私がしかりつけて止めさせたことが何度かあったから」
「現場を見たんか?!」
「うん。見なきゃとめられないからね」
「じゃあ、相手は誰だったんじゃ?」
「相手?」
「その……ヤッておったんじゃろ?」
「うん。やってたね」
「ならば、その場に居合わせたのは一体誰じゃ?」
「私だね」
「他には?」
「いや、私だけだったよ」
「じゃ、相手はおぬしではないか!」
「あいてって?」
「すっとぼけるでない! やってた現場には、おぬしと星しかいなかったんじゃろ?」
「そうだね」
「『やめさせた』といったが、『何度か』ともいったな?」
「いったね」
「こんな事を仲間のおぬしにいうのもなんじゃが。実際は、とめきれずに、その……星に最後までやらせてしまった事があったんじゃないかえ?」
「……まあ、そうだね。実を言うと、私が口で言うだけではとめきれず、ご主人が最後まですっきりするまでやらせてしまった事が二、三度」
「ほらやっぱり」
「やってる最中のご主人は、やっぱりかわいいからね」
「えっ」
「それに本能由来の行動だから、いくら口で厳しくしかりつけても、なかなか止められないみたいで」
「まあ本能じゃろうなあ。しかし……」
「一度など、『ごめんなさいごめんなさい』って口では必死に謝りながら、私の体まで色々と嘗め回してきた事が」
「おぬしは抵抗しなかったのか?」
「まあ、びっくりした事は確かだけど、相手がご主人だからね。ご主人の野生のサガが暴走しただけだから、ま、許せる範囲さ」
「サガとな」
「うん、サガ。本当は無理にでもとめるべきだったんだろうけどね。でも。必死に謝りながら、それでも本能に逆らえず欲望のままに行動するご主人をみて、なんだか、『かわいいな』って、その時思っちゃったのさ」
「で、え。……許しちゃったのかえ?」
「うん、つい許しちゃった」
「おぬしなあ……そこはきっちり止めなくちゃいかんじゃろ」
「うん。色々と失格だね、私。これからはもっと厳格にご主人に接するようにするよ」
「でも本当なのか? 星の相手が、その、おぬしなのに?」
「なにが?」
「相手がおぬしでも、ちゃんとできるのか?」
「そういえばそうだね。(毛玉は)できるみたいね。私の(毛)でも」
「できるのか……おぬしのでも……」
「できちゃった物は仕方ないだろう?」
「仕方ないと開きなおられても」
「だって本来、私とご主人は種族も違うし。できるできない以前に、そういうシチュエーションがおこること事態、自然界ではありえないことだからね?」
「まあ、そうじゃろうけど」
「でしょ?」
「て、ことは、じゃ」
「て、ことは?」
「いや、つまりおぬしは、その……ついてる?」
「何が?」
「いやその、なんというか、股に尻尾がついてる?」
「尻尾? そりゃついてるよ」
「マジかえ」
「っていうか、むしろマミゾウさんが、私の見た事ないの?」
「ないに決まってるじゃろ」
「私にはそっちのが驚きだよ。今日は私パンツ(ズボン)履いてるから隠れて見えないけど、パンツはかずにスカートはいてる日は、外に出しっぱなしとか普通にあるじゃん」
「パンツ履かずに外に出しっぱなしの日も? スカートはいてるときに?」
「うん、たしか昨日がそうだったじゃないか」
「……マジかえ」
「うん、マミゾウさん。私が背中をさすって、ひとしきり吐かせてきたから。ご主人一人、もうほうっておいても問題ないさ」
「それにしても、最近の星は」
「なんだい?」
「しょっちゅう気持ち悪くなって厠へ駆け込むのう。案外、(子供)できちゃってたりなんかして」
「うん。(毛玉)できてたよ」
沈黙。五秒。
「……マジかえ」
「そんなのに冗談言ってどうするのさ」
「つまり、できちゃった、と」
「だからできてたって」
「じゃあ……マジなのか」
「だからマジだって。ご主人本来の、獣の気質が出てきてしまったんだろうねえ」
「獣の気質が?!」
「ああ」
「それで、相手に心当たりは?」
「相手? あえて言うなら、八雲さんとこの式の子かな。あの子が(毛繕いを)しているのを見て、ご主人も思わずしたくなっちゃったんだろうなあ」
「八雲ん所の式の狐(コ)の影響を受けたのか?!」
「そう。見かけはそんな事しなさそうな、まじめそうな子なんだけどね。案外自由奔放に生きてるから、あの子」
「いやいや、ナズーリン、おぬしは知らんのか? 今でこそあの狐、清廉潔白ぽいまじめ妖怪な外面をしているが。昔のあやつはもうはっちゃけ過ぎもいいとこまでやらかした恐ろしい妖怪じゃぞ?」
「そうなの?」
「本当じゃぞ。あやつが、というよりもあやつの種族全体がそうなんじゃが。人類の『あぶのーまる』なプレイのほとんどは、元はといえばあやつらの種族が編み出したものなんじゃ」
「それは初耳だな」
「一時期、ちょいと儂も血迷った時期があってな? そういう方面で対抗しようとした事もあったんじゃが……そのう、ひどく失敗して、もうほんっとうに後悔したんじゃから!」
「マミゾウさんは一体なにしたんだい?」
「聞くな! とにかく、儂が今思い出すだけで顔から火が出るような恥ずかしい事を、あやつらは平然とできるおそろしい妖怪種族なんじゃ」
「そ、そうなんだ」
「普段はおとなしいように見えるが、とんでもはっぷん! あれは猫じゃ、猫かぶっておるんじゃ」
「……確かに、猫だしねぇ」
「その本質はまさに女狐じゃからな。ナズーリン、おぬしも十分注意せえよ!」
「そうなんだ。てっきり私は、女狐はあの子のご主人のほうだと思っていたよ」
「いやいや、あの狐(コ)の主人はあれぞ。精一杯経験豊富な『れでぃ』をがんばって装っているが、あれこそ女狐の振りをした純情少女ぞ」
「そうなの? あの子のご主人のほうが。あの人こそ見かけからしてまさに女の狐って感じなのに」
「そうとも。いつだったかの宴会で、あやつとしこたま飲んだときの話なんじゃがな」
「ふむ」
「悪く酔ったせいか、あやつ、恋愛話を話し出したんじゃが。それがな? 博麗の巫女と、偶然何かの拍子に唇と唇が触れ合ったとかで」
「はあ」
「もうそれでドギマギしちゃっただの結婚を考えただの。もう、儂がその時飲んでた純米の味が、ミルクセーキに変わるかというウブさで」
「へえ。あの子のご主人が。というか、あの子のご主人と霊夢か。なんというか初耳な組み合わせ」
「話がずれたな。戻して、まとめるとじゃ」
「うん」
「八雲ん所の式の狐(コ)が」
「うん。八雲さんトコの式の子が」
「ヤッってる現場にでくわして、星も思わず」
「やってるのを見て、ご主人も思わず」
「星も、その、ヤッちゃったのかえ?」
「そうだと思うよ。実際、ついついやっちゃってたご主人を、私がしかりつけて止めさせたことが何度かあったから」
「現場を見たんか?!」
「うん。見なきゃとめられないからね」
「じゃあ、相手は誰だったんじゃ?」
「相手?」
「その……ヤッておったんじゃろ?」
「うん。やってたね」
「ならば、その場に居合わせたのは一体誰じゃ?」
「私だね」
「他には?」
「いや、私だけだったよ」
「じゃ、相手はおぬしではないか!」
「あいてって?」
「すっとぼけるでない! やってた現場には、おぬしと星しかいなかったんじゃろ?」
「そうだね」
「『やめさせた』といったが、『何度か』ともいったな?」
「いったね」
「こんな事を仲間のおぬしにいうのもなんじゃが。実際は、とめきれずに、その……星に最後までやらせてしまった事があったんじゃないかえ?」
「……まあ、そうだね。実を言うと、私が口で言うだけではとめきれず、ご主人が最後まですっきりするまでやらせてしまった事が二、三度」
「ほらやっぱり」
「やってる最中のご主人は、やっぱりかわいいからね」
「えっ」
「それに本能由来の行動だから、いくら口で厳しくしかりつけても、なかなか止められないみたいで」
「まあ本能じゃろうなあ。しかし……」
「一度など、『ごめんなさいごめんなさい』って口では必死に謝りながら、私の体まで色々と嘗め回してきた事が」
「おぬしは抵抗しなかったのか?」
「まあ、びっくりした事は確かだけど、相手がご主人だからね。ご主人の野生のサガが暴走しただけだから、ま、許せる範囲さ」
「サガとな」
「うん、サガ。本当は無理にでもとめるべきだったんだろうけどね。でも。必死に謝りながら、それでも本能に逆らえず欲望のままに行動するご主人をみて、なんだか、『かわいいな』って、その時思っちゃったのさ」
「で、え。……許しちゃったのかえ?」
「うん、つい許しちゃった」
「おぬしなあ……そこはきっちり止めなくちゃいかんじゃろ」
「うん。色々と失格だね、私。これからはもっと厳格にご主人に接するようにするよ」
「でも本当なのか? 星の相手が、その、おぬしなのに?」
「なにが?」
「相手がおぬしでも、ちゃんとできるのか?」
「そういえばそうだね。(毛玉は)できるみたいね。私の(毛)でも」
「できるのか……おぬしのでも……」
「できちゃった物は仕方ないだろう?」
「仕方ないと開きなおられても」
「だって本来、私とご主人は種族も違うし。できるできない以前に、そういうシチュエーションがおこること事態、自然界ではありえないことだからね?」
「まあ、そうじゃろうけど」
「でしょ?」
「て、ことは、じゃ」
「て、ことは?」
「いや、つまりおぬしは、その……ついてる?」
「何が?」
「いやその、なんというか、股に尻尾がついてる?」
「尻尾? そりゃついてるよ」
「マジかえ」
「っていうか、むしろマミゾウさんが、私の見た事ないの?」
「ないに決まってるじゃろ」
「私にはそっちのが驚きだよ。今日は私パンツ(ズボン)履いてるから隠れて見えないけど、パンツはかずにスカートはいてる日は、外に出しっぱなしとか普通にあるじゃん」
「パンツ履かずに外に出しっぱなしの日も? スカートはいてるときに?」
「うん、たしか昨日がそうだったじゃないか」
「……マジかえ」
本能に負けてナズーリンの毛繕いをしてしまう星ちゃんとか素敵じゃないですか
こういう話を考えるのはすごく大変なように思えます。
凄いです
にやにや