「師匠、腕が痛いんです。今日休んでもいいですか?」
「……しょうがないわね、優曇華院、今日は休んでいいよ」
永遠亭は毎日忙しい、優曇華院もいつも忙しいだから時々体調も崩すときもあるだろう。彼女は部屋に戻っていった。
優曇華院の穴は派遣社員の姫様で埋めることにしよう。この間、私が少しは働けと恐れ多くも日頃の鬱憤が爆発して叱り付けた。そのときに、じゃあ、仕方ないからと派遣会社に登録はしておくと言ってそれきりのやつだ。
それきりになっていたから、今日はそれを利用しよう。
「絶対やだ!」
「ははははははは」
はははははははは! そうですよね、姫様。あきらめて私が二人分働くことにしようか。
……はあ、今日は疲れた。二人分も働くと疲れる。今日は早く寝ることにしよう。
「師匠、今日ちょっと耳の調子が悪いので休みます」
朝一番、開口一番に優曇華院はそう言った。
「……そう、二日連続でやすむのね。めずらしいわね。養生しなさいよ」
そういうと、彼女は部屋に戻っていった。
やっぱり、今日も忙しい永遠亭だ。昨日、二人分働いたのだから、今日こそ姫様に働いて貰うことにしよう。
「はい? 何言ってるの? 永琳」
「ははは、ですよね」
ですよね。だろうね。はぁ、今日も二人分頑張ろう。
…………今日はとても疲れた。突然の飛び込みの仕事があっていつもの105%程度の稼働率だった。
明日は少し仕事減る予定だけど、疲れたから早く寝よう。
「師匠、あの、今日はお腹が痛いので休みます」
「………………おい、……まあ、しょうがないわ。明日こそ出てくるのでてきなさいよ」
本当なのか、疑うところはあるが調子が悪いのなら仕方がない。彼女は、普通に部屋にもどって行った。
こういうときも、ある。と、思う。私は社会人になってから、2日以上休んだことはないけれどこういうこともあるものだろう。
……姫様......今日こそ働いてくれるかな?
「ねえ、最近のあなたは、仕事しろってうるさいわ」
「……姫様......。申し訳ありません」
私が馬鹿だった。そういうことにしよう。そもそも、姫様は私のつかえる人だ。そういうことは言うものじゃない。
今日は、仕事が少ないから皆で頑張れば何とかなる。楽勝よ。
……今日は、てゐの定休日だった。うかつだった。あの子の分も働かなければならなかった。
はぁ、疲れた。なんだか、働きすぎなのか熱っぽい、早く寝よう。
「ねえ、今日は優曇華院の定休日だけど。三日も休んだのだから、変わりに今日、仕事してくれない?」
「師匠、今日は用事がありまして、また明日にしてください」
はあ、そう。まあ、そうね。定休日だし用事があってもおかしくない。彼女は、楽しそうな表情で出かけていった。
今日の朝に鏡を見たら、なんだか顔色が悪かった。私が調合した薬を飲んでみたが、直りそうもない。薬を作る能力があったはずなのに私はどうしたのだろう? 後でわかったことだけれども、薬も毒物扱いだった。
姫様に顔だけ見せて、仕事を始めることにしよう。わずかな、期待を持って、この顔色で会えばもしかしたら気まぐれで手伝ってくれるかもしれない。
「おはよう、永琳」
「おはようございます」
「今日は、なんだか顔色が悪いわね」
「はい、ここのところ、特に忙しくて」
「まあ、早く仕事を終わらせて、休むことね」
「……はあ、はい」
それは、仕事中のことだった。医者の不養生とはこのことなのだろう。私は仕事中に、寝てしまった。顕微鏡、レンズがひとつので、ミドリムシを見ている時だった。あまりにも、単調な動きにうとうとしてしまい寝てしまった。
それから、てゐが見つけてくれるまで寝てしまった。だから、片目には丸い輪の痣が出来てしまい恥ずかしく痛い。
ジンジンして痛い、今日は寝れそうもない。
「師匠、これは昨日の土産です。それと、申しわかりません。今日は、背中が痛いので休ませてもらいます」
「なんで? 背中痛いの?」
「知りませんが、痛いんです。休ませてください」
「……好きに、しなさい」
はぁ、優曇華院はきょうも休みだ。そうか、背中が痛いのか、痛いのか、痛いのか、い、た、い、のか、そうなのか。
「私はね、世界はもっと幸せで美しく優雅であるべきなのだと思うのよ。私は働かなくても、生きていける。皆が家で引きこもっていても幸せな世界を作りたいのよ。だからね、私をね、これからも黙って引っ張って行ってくれる? これからも私を養ってくれる?」
「え? は、はぁ?」
なんだ、姫様はなんなんだ。反論する気力さえない。仕事を終わらそう。
今日の仕事は終わらなかった。重要な仕事は何とか終わらせた。しかし、明日中には終わらせなければならない。はぁ
「師匠、今日は」
「何処が痛いの?」
「え? えっと、胸の辺りが痛いです」
「それで?」
「今日も休みます」
「あっそ」
嘘なんでしょう、言いかけた。でも、言わなかった。だって、すごい笑顔で申し訳なさそうな複雑な表情で胸を張っていうのだから聞く必要もないということがわかった。
ああもう、早く、夜になってほしい。早く休みたい。
「永琳、頑張れ! 頑張れ!」
「姫様、えっと、ありがとうございます」
「頑張れ、頑張れ!」
と、襖の向うの姫様と話した。
顔すら見せてくれない。
医者の不養生というのは、こういうことなのだろうか? 仕事中に私は倒れてしまった。
気がついた時は、ベットの中に居た。自己診断するまでもない過労だ。
てゐが倒れている、私を見つけてここまで運んでくれたそうだ。
私は、少し寝た後に仕事に戻ることにした。本来なら、二、三日は、休養が必要だけれども、自分が居なければ仕事が終わら無い。
ベットから出て仕事に戻ろうとしたときだった。優曇華院が、やってきた。
もしかして、今までの仮病を悔い改めて、これから仕事してくれるのだろうか?
きっと、そうに違いない。
「優曇華院、仕事にもどる。仕事の勘は、鈍っていない?」
「あの、師匠。明日は、目が痛くなるんで休みます」
ああそうなのか、そういうことなのか。
優曇華院そういうことなか。
あははははははは、と思ったときには再び倒れたことを後で、てゐに伝えられた。
流石です。
数ヶ月前のリクエストがこんな形で実現するとわ…。
優雅はここからどう持ち直すのか気になります。期待をこめて90点いれさせてもらいます。
後書きの話と本文中で繋がって欲しかった気がします
後書きは笑ってしまったので点入れる