あれは、何年、何十年と前に起こった事。古ぼけた記憶の隅に未だに残る幼少時代。
そう、相棒であり親友の魔理沙と出合ったばかりの事について…
・・・・・
「れーいーみゅー!あーそぼーぜー!」
と、博霊神社から遥か遠く先にある人里にまで聞こえそうな程の、元気な声を上げて毎日遊びに来るちっちゃな魔女。昔の魔理沙である。「~なのだぜ」はこの頃からの口癖であった。
昔から魔理沙は活発で、好奇心旺盛であった。今現在もそう大して変わらない、と言っても良いがあの幼少時代と比べると、酷く落ち着き冷静な判断を下せるようにはなっている。
勿論、この私、博麗霊夢もそうであろう。今は冷めた性格ではあるが、昔は魔理沙とそう大差ない程活発…悪く言えばお転婆である。
「ちょっと待ってて、まりしゃ!」
今、思い出すだけでも頬が真っ赤になる。ちっちゃいが故に、言語は覚束無く、満足にものも言えない。私の友人で長生きな八雲紫曰く「あの時の霊夢と魔理沙。もの凄く可愛かったわよ、食べちゃいたいぐらいに…」等と言う始末だが、当の本人達から見ると恥ずかしいものは恥ずかしい。
「今日も行くぞ、森へ!」
「うん!」
この頃の私達は、お互いの親に「修行」と言っては魔法の森へと出かけ、冒険ごっこなどとて言う危険極まりない遊びを頻繁に行なっていた。魔法の森を散策するだけなのだが、幼い私達にとっては超が付く程面白い遊びだった。このお遊びが、後の私達を作り出したのであろう。
今では、魔法の森に蔓延る妖怪が急に暴走し始め、それ以来、魔理沙と森に来る用事の理由は「修行」から「お仕事」へと変わった。何と難儀な事か…。
話しは戻り、春の麗らかな昼下がり。昼食を終え、呼びに来た魔理沙と共に私は魔法の森へと徒歩で、魔理沙は愛用している竹箒に跨り、低空飛行で私の後をついて来た。律儀にも、私の歩くスピードに会わせて飛んでいる。たまによそ見をして、私の後頭部に箒の先端がぶつかったり、私を追い越してしまったりする。
意外にも泣き虫だったこの頃の私は、ちょっとの痛みやちょっと置いて行かれるだけですぐ泣いた。
そんな時、魔理沙は私の頭を優しく、そして恥ずかしがりながら撫でてくれた。
「ねぇ、まりしゃ。今日は森のどの辺を冒険するの?」
少し小高い山の山頂に佇む神社の境内を降り、神社と森を繋ぐ一本道を進んでいる最中、私は魔理沙に後ろ歩きしながら喋りかけた。
「そうだなぁ。この前は森の東側を冒険し尽くしたから…」
少し間を空けて
「今度は西側を冒険してみようぜ!」
と、微笑み混じりに答えて私の数歩先を飛んだ。
森の入り口に立っている「この先、危険。立ち入るべからず」と言う看板をいつもの如く無視し、私達は太陽の光が木々に遮られ、昼間だと言うのに薄暗い森の中をひたすら進んだ。
この森の特産物は茸だ。至る所から生えている木々の根元には、お店で売っている美味しい茸から、気味が悪い色をした何とも言えない茸まで多々ある。その種類は数百、数千種を越えているそうだが、現在の魔理沙はそれを全て覚えてしまったと言うから驚きだ。
そんな多々ある茸の中で、食べられる茸はたったの10種類しか無いと聞く。
「ねぇ、まりしゃー。この茸食べれるー?」
歩いては立ち止まり、茸を収穫しては魔理沙に見せた。流石に何百と言う種類の中から、適当に食べれる10種類を探し出すのは至難の業。更にこの頃の魔理沙と言ったら、食べられる茸の種類は4つしかないと言い張っていたのだ。更に見つかる訳がない・・・。
「それは無理だな。物凄い毒を持っているから捨てた方が良いよ」
「どんな毒?」
「頭から茸が生えてくる」
「えっ・・・」
両手でしっかりと握っているその異様な色をした茸を眺め、魔理沙の言葉を真面目に受け取った私は怖くなり、その場でその茸を後ろへと放り投げた。
その後も必死に食べられる茸を西側へと移動しながら探した。茸を採集しては見せ、違うと言われ捨て…それを繰り返しながらようやく西側へと辿り着いた時には、腰と腕がつりそうな程の痛みが神社へ帰った後も残っていたのは今でも鮮明に覚えている。
森の西側は人里に近いせいか、至る所で木々が伐採された後があった。そのお陰で木の量は丁度良くなり、木々の合間からすり抜けてくる太陽の木漏れ日は美しく、燦燦と地面を照らしつくしていた。
「さて、本日の我が探検隊が行く場所は…」
「行く場所は…?」
「あの滝の裏にある洞窟なのだぜ!」
そう言って、魔理沙が指差した場所は数十メートルもの高さから水底へ勢い良く流れ落ちていく多量の水。規模は小さいが滝は滝。
太陽の光に照らされた滝の水壁は透き通って見え、なるほど、魔理沙が言った通り滝の裏に真っ暗な暗闇の奥へと続く小さな穴が見えた。
「どうやってあそこまで行くの?」
「どうやってって、飛んで・・・。・・・あ・・・」
魔理沙はそう言うと、少し項垂れて考え込んだ。
この頃の私はまだ未熟な見習い巫女。スペルカードを扱えるどころか空すら飛べなかった。
魔理沙が頭を捻らせながら必死に考え込んでいる中、一つの妙案を考え付いた。
それは
「まりしゃーあの壁、使えないかな?」
私が目を付けた物は、滝を覆い囲むようにして聳え立つ白い壁。ゴツゴツした岩肌は足場に使えそうだ、と言う単純な理由から意見を述べたものの、リスクは高い。
しかしながら、魔理沙の小さな箒に二人乗せて飛ぶ訳にもいかず、他に方法も無かった為、その行動を取る事にした。
・・・・・
「れいみゅー、大丈夫かー?」
先に狭い洞窟の入り口まで箒で飛び、小さな入り口から顔だけ覗かせてこちらの様子を不安な顔で伺っている魔理沙。正直、この一件があってから、私は必死に空を飛ぶ能力を身に付けようと修行を頑張ったような気がする。
ゴツゴツした岩肌の足場は最悪で、いつ水底へ落ちてもおかしくなかった。
泣きべそをかきながらも、魔理沙の声援もあってか、ようやく命からがら洞窟の入り口まで辿り着いた。
「死ぬかと思ったぁ・・・」
息を切らせながら、洞窟の入り口を改めて見渡す。子供一人がようやく通れる穴だ。
「この洞窟には、きっと大きな宝が眠っているに違いないぜ!行こう!」
魔理沙が息を弾ませて言った。その言葉が私の心を大きく、明るくふくらませてくれた。
先行する魔理沙の後に続いて、私も狭い洞窟の入り口をようやく通り抜け、広い内部へと出た。内部の天井は真っ直ぐ小さく縦に割れ、少しだけ陽の光が入り込んでいた為か、薄暗いながらも魔理沙の後姿、そして、奥まで見通せそうであった。
「見てみろよ、れいみゅ!」
ふと、魔理沙が叫び、洞窟の側面を指差した。魔理沙の声は洞窟内に響き、反響して返ってきた。
指差す方向を見てみると、そこには陽の光に反射し、煌々と輝く美しい鉱石郡が―――
・・・・・
「ふぅ。今、思い出せば、中々滑稽だわね・・・」
「???いきなり何を言いだすんだ?霊夢・・・?」
歳と年月が経った今現在、昔と余り変わらない私達は、相変わらず、二人仲良くやっている・・・。
「ちょっと昔の事を思い出していただけよ」
「いつの頃のだよ・・・?」
「秘密」
そう言って、私は珍しく魔理沙に笑顔を見せた。
そう、相棒であり親友の魔理沙と出合ったばかりの事について…
・・・・・
「れーいーみゅー!あーそぼーぜー!」
と、博霊神社から遥か遠く先にある人里にまで聞こえそうな程の、元気な声を上げて毎日遊びに来るちっちゃな魔女。昔の魔理沙である。「~なのだぜ」はこの頃からの口癖であった。
昔から魔理沙は活発で、好奇心旺盛であった。今現在もそう大して変わらない、と言っても良いがあの幼少時代と比べると、酷く落ち着き冷静な判断を下せるようにはなっている。
勿論、この私、博麗霊夢もそうであろう。今は冷めた性格ではあるが、昔は魔理沙とそう大差ない程活発…悪く言えばお転婆である。
「ちょっと待ってて、まりしゃ!」
今、思い出すだけでも頬が真っ赤になる。ちっちゃいが故に、言語は覚束無く、満足にものも言えない。私の友人で長生きな八雲紫曰く「あの時の霊夢と魔理沙。もの凄く可愛かったわよ、食べちゃいたいぐらいに…」等と言う始末だが、当の本人達から見ると恥ずかしいものは恥ずかしい。
「今日も行くぞ、森へ!」
「うん!」
この頃の私達は、お互いの親に「修行」と言っては魔法の森へと出かけ、冒険ごっこなどとて言う危険極まりない遊びを頻繁に行なっていた。魔法の森を散策するだけなのだが、幼い私達にとっては超が付く程面白い遊びだった。このお遊びが、後の私達を作り出したのであろう。
今では、魔法の森に蔓延る妖怪が急に暴走し始め、それ以来、魔理沙と森に来る用事の理由は「修行」から「お仕事」へと変わった。何と難儀な事か…。
話しは戻り、春の麗らかな昼下がり。昼食を終え、呼びに来た魔理沙と共に私は魔法の森へと徒歩で、魔理沙は愛用している竹箒に跨り、低空飛行で私の後をついて来た。律儀にも、私の歩くスピードに会わせて飛んでいる。たまによそ見をして、私の後頭部に箒の先端がぶつかったり、私を追い越してしまったりする。
意外にも泣き虫だったこの頃の私は、ちょっとの痛みやちょっと置いて行かれるだけですぐ泣いた。
そんな時、魔理沙は私の頭を優しく、そして恥ずかしがりながら撫でてくれた。
「ねぇ、まりしゃ。今日は森のどの辺を冒険するの?」
少し小高い山の山頂に佇む神社の境内を降り、神社と森を繋ぐ一本道を進んでいる最中、私は魔理沙に後ろ歩きしながら喋りかけた。
「そうだなぁ。この前は森の東側を冒険し尽くしたから…」
少し間を空けて
「今度は西側を冒険してみようぜ!」
と、微笑み混じりに答えて私の数歩先を飛んだ。
森の入り口に立っている「この先、危険。立ち入るべからず」と言う看板をいつもの如く無視し、私達は太陽の光が木々に遮られ、昼間だと言うのに薄暗い森の中をひたすら進んだ。
この森の特産物は茸だ。至る所から生えている木々の根元には、お店で売っている美味しい茸から、気味が悪い色をした何とも言えない茸まで多々ある。その種類は数百、数千種を越えているそうだが、現在の魔理沙はそれを全て覚えてしまったと言うから驚きだ。
そんな多々ある茸の中で、食べられる茸はたったの10種類しか無いと聞く。
「ねぇ、まりしゃー。この茸食べれるー?」
歩いては立ち止まり、茸を収穫しては魔理沙に見せた。流石に何百と言う種類の中から、適当に食べれる10種類を探し出すのは至難の業。更にこの頃の魔理沙と言ったら、食べられる茸の種類は4つしかないと言い張っていたのだ。更に見つかる訳がない・・・。
「それは無理だな。物凄い毒を持っているから捨てた方が良いよ」
「どんな毒?」
「頭から茸が生えてくる」
「えっ・・・」
両手でしっかりと握っているその異様な色をした茸を眺め、魔理沙の言葉を真面目に受け取った私は怖くなり、その場でその茸を後ろへと放り投げた。
その後も必死に食べられる茸を西側へと移動しながら探した。茸を採集しては見せ、違うと言われ捨て…それを繰り返しながらようやく西側へと辿り着いた時には、腰と腕がつりそうな程の痛みが神社へ帰った後も残っていたのは今でも鮮明に覚えている。
森の西側は人里に近いせいか、至る所で木々が伐採された後があった。そのお陰で木の量は丁度良くなり、木々の合間からすり抜けてくる太陽の木漏れ日は美しく、燦燦と地面を照らしつくしていた。
「さて、本日の我が探検隊が行く場所は…」
「行く場所は…?」
「あの滝の裏にある洞窟なのだぜ!」
そう言って、魔理沙が指差した場所は数十メートルもの高さから水底へ勢い良く流れ落ちていく多量の水。規模は小さいが滝は滝。
太陽の光に照らされた滝の水壁は透き通って見え、なるほど、魔理沙が言った通り滝の裏に真っ暗な暗闇の奥へと続く小さな穴が見えた。
「どうやってあそこまで行くの?」
「どうやってって、飛んで・・・。・・・あ・・・」
魔理沙はそう言うと、少し項垂れて考え込んだ。
この頃の私はまだ未熟な見習い巫女。スペルカードを扱えるどころか空すら飛べなかった。
魔理沙が頭を捻らせながら必死に考え込んでいる中、一つの妙案を考え付いた。
それは
「まりしゃーあの壁、使えないかな?」
私が目を付けた物は、滝を覆い囲むようにして聳え立つ白い壁。ゴツゴツした岩肌は足場に使えそうだ、と言う単純な理由から意見を述べたものの、リスクは高い。
しかしながら、魔理沙の小さな箒に二人乗せて飛ぶ訳にもいかず、他に方法も無かった為、その行動を取る事にした。
・・・・・
「れいみゅー、大丈夫かー?」
先に狭い洞窟の入り口まで箒で飛び、小さな入り口から顔だけ覗かせてこちらの様子を不安な顔で伺っている魔理沙。正直、この一件があってから、私は必死に空を飛ぶ能力を身に付けようと修行を頑張ったような気がする。
ゴツゴツした岩肌の足場は最悪で、いつ水底へ落ちてもおかしくなかった。
泣きべそをかきながらも、魔理沙の声援もあってか、ようやく命からがら洞窟の入り口まで辿り着いた。
「死ぬかと思ったぁ・・・」
息を切らせながら、洞窟の入り口を改めて見渡す。子供一人がようやく通れる穴だ。
「この洞窟には、きっと大きな宝が眠っているに違いないぜ!行こう!」
魔理沙が息を弾ませて言った。その言葉が私の心を大きく、明るくふくらませてくれた。
先行する魔理沙の後に続いて、私も狭い洞窟の入り口をようやく通り抜け、広い内部へと出た。内部の天井は真っ直ぐ小さく縦に割れ、少しだけ陽の光が入り込んでいた為か、薄暗いながらも魔理沙の後姿、そして、奥まで見通せそうであった。
「見てみろよ、れいみゅ!」
ふと、魔理沙が叫び、洞窟の側面を指差した。魔理沙の声は洞窟内に響き、反響して返ってきた。
指差す方向を見てみると、そこには陽の光に反射し、煌々と輝く美しい鉱石郡が―――
・・・・・
「ふぅ。今、思い出せば、中々滑稽だわね・・・」
「???いきなり何を言いだすんだ?霊夢・・・?」
歳と年月が経った今現在、昔と余り変わらない私達は、相変わらず、二人仲良くやっている・・・。
「ちょっと昔の事を思い出していただけよ」
「いつの頃のだよ・・・?」
「秘密」
そう言って、私は珍しく魔理沙に笑顔を見せた。
そこの理由づけが無いために、物語が薄くなってしまっている。逆に言うと、その理由づけをするだけでしっかりとした良作に化けると思う。
幼いはずの魔理沙と霊夢の台詞に漢字が多かったように感じた。
適度に漢字を開いていけば、かなり雰囲気を出せると思う。
お互いの呼称を舌足らずにしただけでは不十分。
話の中身については、申し分ないほのぼのした物で良質的だと思う。
それだけに、理由というファクターの抜け落ちは非常に痛い。
非共有さんの言う通りの感想を僕もいだきました。
ただし、子供っぽさという点では、回想という事もあり漢字の使用も許されると僕は思います。
鉱石郡で何があったのか、なぜ霊夢は思い返したのかほのぼのと言うだけでは足りない要素もある気がします。
個人的にはほのぼのしていて良かったです プチの方ならもっと楽しめたかな。
幼い魔理沙と霊夢のちょっとした冒険、良いですよね!
こういうどきどきは幼い頃に経験している人も多いでしょうから、
私含めてどこか懐かしさを感じながら読み進めました。
ただ、上で挙げられているように物語として薄く、
なんだか完結していないような感じが否めないことも確かです。
そこでちょっとした工夫をしてみるとぐぐっと深みが増すことがあったりなかったりするかも知れません。
私なりにいろいろと考えてみましたので
語りたがりが無駄に長くうだうだ言ってるな、なんて気分で軽く読み流して頂けると幸いです。
本当に一例ですので、まあこんなこと考えてるやつもいるんだなー、
などと思っていただければ……w
例えば物語のはじめですが、
回想に入る前に霊夢が神社の周辺を掃除し、縁側に座り、空を見上げて昔を思い出す、
という流れを少々長めに書けばすうっと物語に引き込まれていきますし、
また、二人の小さな冒険の最後に見た情景の描写をこれまたある程度長く行い、
会話をそこにぽつりぽつりと混ぜ込ませるとぐっと情感が増すと思います。
また、小さな工夫ではありますが、この手法を採る場合、
現代の霊夢が回想に入る前と、回想に入ってすぐを昼間、
回想の終わりの部分と物語全体の結びである現代の魔理沙と霊夢の会話を夕方、
と分かるような描写を取ることで、更に時間の流れを感じさせることができるかもしれません。
空の青色、あかね色なんていう描写をちょこちょこと混ぜてみるわけです。
これだけでも印象がぐっと変わることがある……かもしれません。
ほのぼのとしたお話の中にちょっとした冒険のワクワク感を含んだ構成はとっても良いなあ、と思いました。
物語の流れもさらさらとしていましたし、起承転結における起と結をもう少し膨らませるだけで、
ずっとずっと素敵な作品になると思います。
こういう雰囲気のお話は大好きですので、是非また氏の描く世界を覗いてみたいと思いました!
それでは、長文乱文失礼しました!