「フランは好きな人いる?」
「いや……いないよ」
「ほんと~?」
「ほんとだよ。そう言うぬえこそどうなの」
「私はそんな……」
「噂じゃヨット部の村紗先輩と……」
「なに言ってるのよこいし!!」
「図星なんだ」
「いや……その……あー……そんなこと言うこいしはどうなのよ!!」
「私は……」
私の名前はフランドール、恋に恋する華の女学生。
もちろん全てを破壊しちゃうような不思議な力なんてない普通の女の子。
そんな私にも好きな人がいるの。
「あっ、むこうにレミリアさんが」
「そんなこと言ったって誤魔化され……ほんとに生徒会長だ。相変わらず格好いいな」
「でも村紗先輩のほうが好みなんだよね」
「こいしぃぃぃぃぃ!!」
それは私のお姉様。お姉様は学園の生徒会長なの。
私なんかと違ってとっても綺麗でみんなが憧れる学園のアイドルなんだ。
そんなお姉様には人に知られていないもう一つの姿があるの。
それはね……
「フラ~ン、そこのほんとって~」
「自分でとってよ。手を伸ばせば届くじゃない」
「え~めんどくさ~い」
家ではもの凄く怠け者だってこと。
学園ではあんなに格好いいのに、一歩家に入ると立っているのも面倒みたいで、いつもソファーで横になってる。
「フラ~ン、ページめくるのめんどうだからかわりにめくって~」
「もうお姉様ってば……」
だから私は家に帰ってくると、ずっとお姉様に付きっきりになる。
でもこんなお姉様も大好きだから、こうしてるのもとっても幸せ。
ずっとずっとお姉様と一緒にこの生活を送ることが私の夢なの。
「お姉様髪梳かして、後これ朝ご飯のトマトジュースとパンのケチャップ添え。急がないと遅れちゃうよ」
「う~」
「う~じゃなくてはやく制服に着替えて!! お弁当鞄の中に入れとくよ!!」
朝のお姉様はこんな感じ。お姉様は朝が特に弱いの。
私が朝ご飯の準備して、身支度も整えてあげる。
「ほらいくよ」
「う~」
「天気が良くて気持ちいいね」
「う~」
お姉様を引きずって登校するのが私の日課。お姉様が無遅刻無欠席なのは私のおかげだね。
でも学園が近づくとお姉様の足取りも確かになって、校門につく頃にはすっかりカリスマ生徒会長になるんだ。
凄い変わり身だっていつも感心するよ。
「「おはようございます会長」」
「おはよう咲夜、美鈴」
この二人は生徒会の人達で秘書の咲夜さんと庶務の美鈴さん。
お姉様も頼りにしている側近中の側近なんだって。
でもきっとこの人達も怠け者のお姉様なんて知らないんだろうな。
私しか知らないお姉様、そう思うとなんか優越感みたいなものが湧いてくる。
「おはようフラン」
「おはようこいし」
後ろから私に声を掛けてきたのはクラスメイトのこいし。私が学園で初めてできた親友なんだ。
もう一人のぬえと合わせてクラスじゃ三人娘なんて呼ばれてる。
「ここでお別れねフラン。授業頑張るのよ」
「うん、お姉様も頑張って」
下駄箱の前でお姉様と別れる。
私たちのクラスは東館にあって、お姉様のクラスは西館にあるから一緒の登校もここでおしまい。
「それじゃ急ご、こいし」
「……うん」
こいしの顔がちょっと赤かった。風邪かな?
「フラン……あの……これ」
「……なに? 手紙?」
昼休み、屋上でお弁当を食べてた私にこいしは一通の手紙を差し出してきた。
薄いピンク色の封筒にハートマークのシールで封がしてある手紙。
どう見ても……その……ラブレターだよね。
どうしよう……こいしのことは親友として大切に思ってるけど……
「……」
言葉が出ない。
どうやったらうまく説明できるかな。
どうしたらこいしと今まで通りの仲を続けていけるかな。
わからない、わからないよ。教えてお姉様。
「……これ、レミリアさんに渡してほしいの」
そう、お姉様に……へっ……お姉様?
「よろしくねフラン」
ちょっとまって!! あれ? どこいったのこいし?
周りを見渡しても誰もいない。残されたのは私と手紙だけ。
……私、どうしたらいいの。
午後の授業のときもこいしの姿は見えなかった。
こいしは昔からふらっと消えちゃうことがあった。
そうなるともう先生たちでも見つけることはできない。
今ではこいしが居なくなっても誰も気に止めなくなっちゃった。
「はぁ……困ったな」
授業が終わった私は図書館に来ていた。
だってこのまま家に帰ってお姉様に会ったら、この手紙を渡さなきゃいけなくなる。
このまま隠そうかな、とかちょっとだけ考えたけど、そんな事したらこいしを裏切っちゃう気がしてできなかった。
「あら……悩み事?」
「あっ、パチュリー」
「学園では先輩をつけなさいってレミィにも言われてるでしょ」
「は~い、パチュリー先輩」
「……まあ良しとするわ。で、どうしたのため息なんてついて?」
「実はね……」
この人は図書委員長のパチュリー・ノーレッジ。
学園で一番頭が良くて、家も本屋っていう根っからの本好き。
お姉様の昔からの親友で私以外に怠け者のお姉様を知る唯一の人。
お姉様とは『レミィ』『パチェ』って愛称で呼びあう仲で息もピッタリ。
私もいつかこいしやぬえとそんな関係になれるのかな。
「なるほどね。あなたの友達がレミィにね」
「……うん。それでこの手紙どうしたらいいかなって」
「渡しちゃえばいいじゃない」
「えっ……でも……」
「大丈夫よ。レミィがラブレターを受け取るなんて日常茶飯事だもの」
「そうなの!!」
「そうよ。知らなかった?」
ほんとに知らなかったよ。
でもちょっと考えれば当たり前か。お姉様がもてないわけ無いよね。
「でもレミィったら今まで一度も相手にしたこと無いのよ。
それこそ昔私と噂になっちゃうぐらいにね」
へぇ……パチュリーとお姉様が……悔しいけどお似合いかも。
「だから大丈夫よ。それを渡したからってレミィがその子とつきあうなんてあり得ないわ
大体レミィが好きなのは……」
「へっ?」
「……なんでもないわ」
「変なパチュリー」
「だから先輩をつけなさいと……まあいいわ。もう閉館時間だから気をつけて帰りなさい」
「は~い!!」
「ふ~ん、こいしちゃんね~」
家に帰った私は真っ先に手紙をお姉様に渡した。
お姉様は手紙の封を自分できると、夕食ができるまでずっと読んでた。
……パチュリーは大丈夫って言ってたけど、正直不安だよ。
怠け者のお姉様があんなじっくり何かを読むなんて久しぶりに見るから。
「お姉様、ご飯できたよ」
「ありがとフラン……ねえ」
「なに?」
「こいしちゃんってどんなこ?」
「……え~と」
どうしよ!! なんて答えればいいんだろ!!
こいしのことを悪くなんて言えないし、でもお姉様がこいしを好きになっちゃったら……
「……私の親友、クラスで一番最初に声を掛けてくれたの。
いつも元気いっぱいで明るくて、たまにふらりとどっかに消えちゃうこともあるけど」
結局思った通りのことを伝えることにした。
「ふ~ん……ねえフラン……ちかいうちにこいしちゃんとはなしがしたいわ」
「なっ……」
なんですってーー!!
どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ
これってあれだよね。お姉様がこいしに……
どうしよう。
「ねえパチュリーどうしたらいいの?」
「だから先輩と……」
「今はそんなことどうでもいいの!!」
思わず勢い良く机を叩いちゃった。
周りに迷惑だったよね。反省反省。
「むきゅっ……まあいいわ。私にもちょっと責任あるし。
そうね……それなら実際に会わせてしまえばいいんじゃないかしら」
「えっ、でも……」
「その子が学園でのレミィに憧れてるのなら、家でのレミィをみれば幻滅するでしょ」
なるほど……確かにそうかも……よし……そうと決まれば。
「ねえこいし。今日うちに遊びに来ない?」
「いいの?」
「もちろん。お姉様も会いたがってたし」
「レミリアさんが!! ホント!!」
嬉しそうに笑うこいし。本当にお姉様のことが好きなんだね……
「ただいま~」
「おっ、お邪魔します」
がっちがちに固まってるこいし。そんなに緊張すること無いのに。
さてお姉様は……相変わらず居間のソファーで横になってる。
「ただいまお姉様」
「おかえり~」
完全に怠け者になってる。
どうやら私の後ろにいるこいしにも気がついてないみたい。
でもこれなら……
「えっと……あれ……レミリアさん……だよね?」
こいしが目を白黒させてる。
目の前でぐーたらしてるのがお姉様だって信じられないみたい。
まあ気持ちはすっごくよくわかるよ。たぶん私がこいしなら同じ感じになると思うし。
「うん。あれがお姉様。家だとああなっちゃうの」
「……そうなんだ」
まだ受け入れがたいみたい。
さて、お姉様にも声を掛けないと。
「お姉様、お姉様」
「な~に~」
「こいしを連れてきたよ」
「ほんと~」
えっ……
立った!! お姉様が立った!! のっそりと立った!!
ご飯とお風呂と私に引きずられる時以外で起きたの久しぶりに見たよ!!
顔も凛々しくてまるで学園にいるときのお姉様みたい!!
「こんにちわこいしちゃん」
「こっ、こんにちわ」
お姉様なに話す気だろ?
……私ここにいていいのかな。
う~ん、居たいような居たくないような……
「こいしちゃんには一度会ってお礼を言いたいと思ってたの」
「お礼、ですか?」
「いつもフランと仲良くしてくれてありがとね」
えっ?
「いえ、そんな……それにぬえもいますし」
「ほら、フランって人見知りが激しいでしょ。
学園に入学しても友達とかできないんじゃないかって心配してたの」
そう……なんだ……
心配してくれてたんだ……
「でもあなたやぬえちゃんのおかげでフランも学園生活を楽しんでいるわ。
これからもフランと仲良くしてあげてね」
「はい!!」
私からもありがとこいし、お姉様。
これからもよろしくね。
「……それで……あの……お手紙……読んで頂けたでしょうか」
そうだ!! その事忘れてた!!
「ええ、読んだわ」
ごくり……
こいしも緊張した顔してる。
鏡がないからわからないけど、たぶん私も同じ顔してると思う。
「ごめんなさい。貴女の気持ちには応えられないわ」
「……そんな」
こいし……
やっぱここに居なければ良かったかな。見てるのがつらい。
それにちょっとほっとしている自分がなんか恥ずかしい。
「実は私ね……」
あれ? 今一瞬お姉様と目があったような気が。
気のせいかな。ずっとこいしの方を向いてるし。
それになんか顔が赤いような……
「もう好きな子が居るの」
……へっ?
……………………………なんですってぇぇぇぇぇ!!
誰!? 誰!? 誰!? 誰!? 誰!?
やっぱりパチュリー? それとも咲夜さん? 美鈴さん?
クラスメイトの霊夢って人かも、いやもしかしたら紫理事長なんてことも……
いったい誰よぉぉぉぉぉぉ!!
「ずっと私を支えてくれている子で、私は……その……その子が大好きなの」
だから誰!!
「そう……ですか」
「ごめんね」
「いえ……でもその子にはまだ告白とかしてないんですよね」
「ええ」
そうなの!!
ならまだ……
「ならまだ芽はありますね」
そう芽が……ってこいし?
「おじゃましました。今日の所はお暇させて頂きます」
「帰り道気をつけてね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあね、こいし」
玄関まで送ってきたけど、なんて声を掛けたらいいのかわからないよ。
でもこのまま別れていいのかな? なんか話したほうが……
「ねえフラン」
悩んでたらこいしから声をかけてきた。
「なに?」
「いままでフランのこと親友だと思ってたけど……」
なんかこいしが笑ってる。
この笑い方は……体育の授業で対戦したときの顔に似てる気がする。
正直、嫌な予感がした。
「明日からは親友でライバルだね」
えっ……なんで?
なんでライバル? なんのライバル?
「ばいばいフラン!!」
ちょっと待ってよ!!
だからなんで……ってもういない!!
こいし~どこ~
「ほらお姉様いくよ」
「う~」
昨日はほとんど眠れなかった。
ずっとこいしの言葉の意味を考えてたけど、結局よく判らなかった。
後でパチュリーに聞いてみようかな。
「おはようございます!!」
「う~?」
「あれ?」
なんでこいしがここに居るの?
「今日から一緒に登校しようと思ってきました」
そう言うとこいしはお姉様の腕に抱きついた。
……ちょっと!! なにしてるのよこいし!!
「行きましょレミリアさん。お弁当も作ってきたんですよ」
「う~」
「ちょっと待ってよ!!」
慌てて私も二人の方に近づく。
するとこいしが私のほうにそっと顔を近づけて、
「うかうかしてると、レミリアさん貰っていくからね」
って耳打ちしてきた。
……ライバルってそういうことなんだ。
それなら……よし!!
「フラン?」
私もお姉様の反対側の腕に抱きついた。
私はお姉様が好き。今はまだ恥ずかしくて言い出せないけど、いつかきっと告白してみせる。
だからこいしにも、お姉様が好きな人にも絶対に負けないよ!!
「あれ?」
変な夢を見た。
私がぬえの家の船長さんみたいな格好して、お姉様と学園ってところに通う夢。
お姉様と一緒に太陽の下を歩いて、こいしやぬえも一緒で、ちょっと楽しかったかな。
でも私とこいしがお姉様の取り合いをしててやっぱり変な夢だったな。
「おかしなの」
首を横にむけるとお姉様の寝顔がある。
ぐっすり寝てるみたい……綺麗な寝顔
そしてお姉様の向こう側には、お姉様に抱きついてるこいしが……
「フラン!! これは何かの間違いよ!!」
「浮気する人はみんなそう言うってパチュリーが言ってたわ」
私の名前はフランドール、恋に恋する華の495歳。
全てを破壊する程度の能力を持つ普通の吸血鬼。
そんな私にも好きな人がいるの。
「こいしちゃんとはなにもしてないわぁぁ!!」
「ひどいな~レミリアさん。昨日はあんなにも激しく愛し合ったのに。無意識で」
「こいしちゃぁぁぁん!!」
「うふふ、これで言い逃れはできないわねお姉様」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
それは私のお姉様。お姉様は紅魔館の主。
私なんかと違ってみんなに慕われる紅魔館のカリスマなんだ。
「お姉様、これで何度目?」
「……記憶にないわ」
そんなお姉様には誰でも知ってるもう一つの姿があるの。
それはね……
「え~と、先週がパチュリーでその前が美鈴でその前が霊夢でその前がスキマ妖怪でその前が咲夜……うふふ」
「はわわわわわわわわ」
どうしようもない女たらしの浮気者だってこと。
「ゆるしてフラン……」
「ダーメ♪」
だから私はいつもお姉様にお仕置きしている。
でもこんなお姉様も大好きだから、こうしているのもとっても幸せ。
ずっとずっと放さないからね。お姉様。
「いや……いないよ」
「ほんと~?」
「ほんとだよ。そう言うぬえこそどうなの」
「私はそんな……」
「噂じゃヨット部の村紗先輩と……」
「なに言ってるのよこいし!!」
「図星なんだ」
「いや……その……あー……そんなこと言うこいしはどうなのよ!!」
「私は……」
私の名前はフランドール、恋に恋する華の女学生。
もちろん全てを破壊しちゃうような不思議な力なんてない普通の女の子。
そんな私にも好きな人がいるの。
「あっ、むこうにレミリアさんが」
「そんなこと言ったって誤魔化され……ほんとに生徒会長だ。相変わらず格好いいな」
「でも村紗先輩のほうが好みなんだよね」
「こいしぃぃぃぃぃ!!」
それは私のお姉様。お姉様は学園の生徒会長なの。
私なんかと違ってとっても綺麗でみんなが憧れる学園のアイドルなんだ。
そんなお姉様には人に知られていないもう一つの姿があるの。
それはね……
「フラ~ン、そこのほんとって~」
「自分でとってよ。手を伸ばせば届くじゃない」
「え~めんどくさ~い」
家ではもの凄く怠け者だってこと。
学園ではあんなに格好いいのに、一歩家に入ると立っているのも面倒みたいで、いつもソファーで横になってる。
「フラ~ン、ページめくるのめんどうだからかわりにめくって~」
「もうお姉様ってば……」
だから私は家に帰ってくると、ずっとお姉様に付きっきりになる。
でもこんなお姉様も大好きだから、こうしてるのもとっても幸せ。
ずっとずっとお姉様と一緒にこの生活を送ることが私の夢なの。
「お姉様髪梳かして、後これ朝ご飯のトマトジュースとパンのケチャップ添え。急がないと遅れちゃうよ」
「う~」
「う~じゃなくてはやく制服に着替えて!! お弁当鞄の中に入れとくよ!!」
朝のお姉様はこんな感じ。お姉様は朝が特に弱いの。
私が朝ご飯の準備して、身支度も整えてあげる。
「ほらいくよ」
「う~」
「天気が良くて気持ちいいね」
「う~」
お姉様を引きずって登校するのが私の日課。お姉様が無遅刻無欠席なのは私のおかげだね。
でも学園が近づくとお姉様の足取りも確かになって、校門につく頃にはすっかりカリスマ生徒会長になるんだ。
凄い変わり身だっていつも感心するよ。
「「おはようございます会長」」
「おはよう咲夜、美鈴」
この二人は生徒会の人達で秘書の咲夜さんと庶務の美鈴さん。
お姉様も頼りにしている側近中の側近なんだって。
でもきっとこの人達も怠け者のお姉様なんて知らないんだろうな。
私しか知らないお姉様、そう思うとなんか優越感みたいなものが湧いてくる。
「おはようフラン」
「おはようこいし」
後ろから私に声を掛けてきたのはクラスメイトのこいし。私が学園で初めてできた親友なんだ。
もう一人のぬえと合わせてクラスじゃ三人娘なんて呼ばれてる。
「ここでお別れねフラン。授業頑張るのよ」
「うん、お姉様も頑張って」
下駄箱の前でお姉様と別れる。
私たちのクラスは東館にあって、お姉様のクラスは西館にあるから一緒の登校もここでおしまい。
「それじゃ急ご、こいし」
「……うん」
こいしの顔がちょっと赤かった。風邪かな?
「フラン……あの……これ」
「……なに? 手紙?」
昼休み、屋上でお弁当を食べてた私にこいしは一通の手紙を差し出してきた。
薄いピンク色の封筒にハートマークのシールで封がしてある手紙。
どう見ても……その……ラブレターだよね。
どうしよう……こいしのことは親友として大切に思ってるけど……
「……」
言葉が出ない。
どうやったらうまく説明できるかな。
どうしたらこいしと今まで通りの仲を続けていけるかな。
わからない、わからないよ。教えてお姉様。
「……これ、レミリアさんに渡してほしいの」
そう、お姉様に……へっ……お姉様?
「よろしくねフラン」
ちょっとまって!! あれ? どこいったのこいし?
周りを見渡しても誰もいない。残されたのは私と手紙だけ。
……私、どうしたらいいの。
午後の授業のときもこいしの姿は見えなかった。
こいしは昔からふらっと消えちゃうことがあった。
そうなるともう先生たちでも見つけることはできない。
今ではこいしが居なくなっても誰も気に止めなくなっちゃった。
「はぁ……困ったな」
授業が終わった私は図書館に来ていた。
だってこのまま家に帰ってお姉様に会ったら、この手紙を渡さなきゃいけなくなる。
このまま隠そうかな、とかちょっとだけ考えたけど、そんな事したらこいしを裏切っちゃう気がしてできなかった。
「あら……悩み事?」
「あっ、パチュリー」
「学園では先輩をつけなさいってレミィにも言われてるでしょ」
「は~い、パチュリー先輩」
「……まあ良しとするわ。で、どうしたのため息なんてついて?」
「実はね……」
この人は図書委員長のパチュリー・ノーレッジ。
学園で一番頭が良くて、家も本屋っていう根っからの本好き。
お姉様の昔からの親友で私以外に怠け者のお姉様を知る唯一の人。
お姉様とは『レミィ』『パチェ』って愛称で呼びあう仲で息もピッタリ。
私もいつかこいしやぬえとそんな関係になれるのかな。
「なるほどね。あなたの友達がレミィにね」
「……うん。それでこの手紙どうしたらいいかなって」
「渡しちゃえばいいじゃない」
「えっ……でも……」
「大丈夫よ。レミィがラブレターを受け取るなんて日常茶飯事だもの」
「そうなの!!」
「そうよ。知らなかった?」
ほんとに知らなかったよ。
でもちょっと考えれば当たり前か。お姉様がもてないわけ無いよね。
「でもレミィったら今まで一度も相手にしたこと無いのよ。
それこそ昔私と噂になっちゃうぐらいにね」
へぇ……パチュリーとお姉様が……悔しいけどお似合いかも。
「だから大丈夫よ。それを渡したからってレミィがその子とつきあうなんてあり得ないわ
大体レミィが好きなのは……」
「へっ?」
「……なんでもないわ」
「変なパチュリー」
「だから先輩をつけなさいと……まあいいわ。もう閉館時間だから気をつけて帰りなさい」
「は~い!!」
「ふ~ん、こいしちゃんね~」
家に帰った私は真っ先に手紙をお姉様に渡した。
お姉様は手紙の封を自分できると、夕食ができるまでずっと読んでた。
……パチュリーは大丈夫って言ってたけど、正直不安だよ。
怠け者のお姉様があんなじっくり何かを読むなんて久しぶりに見るから。
「お姉様、ご飯できたよ」
「ありがとフラン……ねえ」
「なに?」
「こいしちゃんってどんなこ?」
「……え~と」
どうしよ!! なんて答えればいいんだろ!!
こいしのことを悪くなんて言えないし、でもお姉様がこいしを好きになっちゃったら……
「……私の親友、クラスで一番最初に声を掛けてくれたの。
いつも元気いっぱいで明るくて、たまにふらりとどっかに消えちゃうこともあるけど」
結局思った通りのことを伝えることにした。
「ふ~ん……ねえフラン……ちかいうちにこいしちゃんとはなしがしたいわ」
「なっ……」
なんですってーー!!
どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ
これってあれだよね。お姉様がこいしに……
どうしよう。
「ねえパチュリーどうしたらいいの?」
「だから先輩と……」
「今はそんなことどうでもいいの!!」
思わず勢い良く机を叩いちゃった。
周りに迷惑だったよね。反省反省。
「むきゅっ……まあいいわ。私にもちょっと責任あるし。
そうね……それなら実際に会わせてしまえばいいんじゃないかしら」
「えっ、でも……」
「その子が学園でのレミィに憧れてるのなら、家でのレミィをみれば幻滅するでしょ」
なるほど……確かにそうかも……よし……そうと決まれば。
「ねえこいし。今日うちに遊びに来ない?」
「いいの?」
「もちろん。お姉様も会いたがってたし」
「レミリアさんが!! ホント!!」
嬉しそうに笑うこいし。本当にお姉様のことが好きなんだね……
「ただいま~」
「おっ、お邪魔します」
がっちがちに固まってるこいし。そんなに緊張すること無いのに。
さてお姉様は……相変わらず居間のソファーで横になってる。
「ただいまお姉様」
「おかえり~」
完全に怠け者になってる。
どうやら私の後ろにいるこいしにも気がついてないみたい。
でもこれなら……
「えっと……あれ……レミリアさん……だよね?」
こいしが目を白黒させてる。
目の前でぐーたらしてるのがお姉様だって信じられないみたい。
まあ気持ちはすっごくよくわかるよ。たぶん私がこいしなら同じ感じになると思うし。
「うん。あれがお姉様。家だとああなっちゃうの」
「……そうなんだ」
まだ受け入れがたいみたい。
さて、お姉様にも声を掛けないと。
「お姉様、お姉様」
「な~に~」
「こいしを連れてきたよ」
「ほんと~」
えっ……
立った!! お姉様が立った!! のっそりと立った!!
ご飯とお風呂と私に引きずられる時以外で起きたの久しぶりに見たよ!!
顔も凛々しくてまるで学園にいるときのお姉様みたい!!
「こんにちわこいしちゃん」
「こっ、こんにちわ」
お姉様なに話す気だろ?
……私ここにいていいのかな。
う~ん、居たいような居たくないような……
「こいしちゃんには一度会ってお礼を言いたいと思ってたの」
「お礼、ですか?」
「いつもフランと仲良くしてくれてありがとね」
えっ?
「いえ、そんな……それにぬえもいますし」
「ほら、フランって人見知りが激しいでしょ。
学園に入学しても友達とかできないんじゃないかって心配してたの」
そう……なんだ……
心配してくれてたんだ……
「でもあなたやぬえちゃんのおかげでフランも学園生活を楽しんでいるわ。
これからもフランと仲良くしてあげてね」
「はい!!」
私からもありがとこいし、お姉様。
これからもよろしくね。
「……それで……あの……お手紙……読んで頂けたでしょうか」
そうだ!! その事忘れてた!!
「ええ、読んだわ」
ごくり……
こいしも緊張した顔してる。
鏡がないからわからないけど、たぶん私も同じ顔してると思う。
「ごめんなさい。貴女の気持ちには応えられないわ」
「……そんな」
こいし……
やっぱここに居なければ良かったかな。見てるのがつらい。
それにちょっとほっとしている自分がなんか恥ずかしい。
「実は私ね……」
あれ? 今一瞬お姉様と目があったような気が。
気のせいかな。ずっとこいしの方を向いてるし。
それになんか顔が赤いような……
「もう好きな子が居るの」
……へっ?
……………………………なんですってぇぇぇぇぇ!!
誰!? 誰!? 誰!? 誰!? 誰!?
やっぱりパチュリー? それとも咲夜さん? 美鈴さん?
クラスメイトの霊夢って人かも、いやもしかしたら紫理事長なんてことも……
いったい誰よぉぉぉぉぉぉ!!
「ずっと私を支えてくれている子で、私は……その……その子が大好きなの」
だから誰!!
「そう……ですか」
「ごめんね」
「いえ……でもその子にはまだ告白とかしてないんですよね」
「ええ」
そうなの!!
ならまだ……
「ならまだ芽はありますね」
そう芽が……ってこいし?
「おじゃましました。今日の所はお暇させて頂きます」
「帰り道気をつけてね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあね、こいし」
玄関まで送ってきたけど、なんて声を掛けたらいいのかわからないよ。
でもこのまま別れていいのかな? なんか話したほうが……
「ねえフラン」
悩んでたらこいしから声をかけてきた。
「なに?」
「いままでフランのこと親友だと思ってたけど……」
なんかこいしが笑ってる。
この笑い方は……体育の授業で対戦したときの顔に似てる気がする。
正直、嫌な予感がした。
「明日からは親友でライバルだね」
えっ……なんで?
なんでライバル? なんのライバル?
「ばいばいフラン!!」
ちょっと待ってよ!!
だからなんで……ってもういない!!
こいし~どこ~
「ほらお姉様いくよ」
「う~」
昨日はほとんど眠れなかった。
ずっとこいしの言葉の意味を考えてたけど、結局よく判らなかった。
後でパチュリーに聞いてみようかな。
「おはようございます!!」
「う~?」
「あれ?」
なんでこいしがここに居るの?
「今日から一緒に登校しようと思ってきました」
そう言うとこいしはお姉様の腕に抱きついた。
……ちょっと!! なにしてるのよこいし!!
「行きましょレミリアさん。お弁当も作ってきたんですよ」
「う~」
「ちょっと待ってよ!!」
慌てて私も二人の方に近づく。
するとこいしが私のほうにそっと顔を近づけて、
「うかうかしてると、レミリアさん貰っていくからね」
って耳打ちしてきた。
……ライバルってそういうことなんだ。
それなら……よし!!
「フラン?」
私もお姉様の反対側の腕に抱きついた。
私はお姉様が好き。今はまだ恥ずかしくて言い出せないけど、いつかきっと告白してみせる。
だからこいしにも、お姉様が好きな人にも絶対に負けないよ!!
「あれ?」
変な夢を見た。
私がぬえの家の船長さんみたいな格好して、お姉様と学園ってところに通う夢。
お姉様と一緒に太陽の下を歩いて、こいしやぬえも一緒で、ちょっと楽しかったかな。
でも私とこいしがお姉様の取り合いをしててやっぱり変な夢だったな。
「おかしなの」
首を横にむけるとお姉様の寝顔がある。
ぐっすり寝てるみたい……綺麗な寝顔
そしてお姉様の向こう側には、お姉様に抱きついてるこいしが……
「フラン!! これは何かの間違いよ!!」
「浮気する人はみんなそう言うってパチュリーが言ってたわ」
私の名前はフランドール、恋に恋する華の495歳。
全てを破壊する程度の能力を持つ普通の吸血鬼。
そんな私にも好きな人がいるの。
「こいしちゃんとはなにもしてないわぁぁ!!」
「ひどいな~レミリアさん。昨日はあんなにも激しく愛し合ったのに。無意識で」
「こいしちゃぁぁぁん!!」
「うふふ、これで言い逃れはできないわねお姉様」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
それは私のお姉様。お姉様は紅魔館の主。
私なんかと違ってみんなに慕われる紅魔館のカリスマなんだ。
「お姉様、これで何度目?」
「……記憶にないわ」
そんなお姉様には誰でも知ってるもう一つの姿があるの。
それはね……
「え~と、先週がパチュリーでその前が美鈴でその前が霊夢でその前がスキマ妖怪でその前が咲夜……うふふ」
「はわわわわわわわわ」
どうしようもない女たらしの浮気者だってこと。
「ゆるしてフラン……」
「ダーメ♪」
だから私はいつもお姉様にお仕置きしている。
でもこんなお姉様も大好きだから、こうしているのもとっても幸せ。
ずっとずっと放さないからね。お姉様。
とても素晴らしかったです!
これ東方キャラのとこ入れ替えても成立しますよね?
東方キャラでやる必然性が感じられない。
最後にとってつけたような夢オチで無理やり東方と
関連つけてるのもどうかと思いますし。
いや、それを抜きに純粋に作品として見ても薄すぎる気がします。
結局は東方でやる意味あるの?という事に尽きるのかなぁ。
形式守ってるなら何書いてもまあ自由だとは思うんですが。
作者さんの過去作とか殆ど条件反射で100点入れるくらい
好きだったんですが、この作品は少し躊躇ってしまいました。
でもでも、そろそろ他の娘達の絡みもみてみたいな~なんて
いいね
各キャラ"らしさ"が感じられない。
東方キャラのイメージを借りてるのに、
東方キャラらしさを取っ払ってるのが凄いチグハグ。
ちょっと前に炎上した東方キャラに喋らせてみた
シリーズと同レベルなのに、
こっちは評価されてるのは不思議な気がする。
固有名詞を出せばオーケーみたいな雰囲気最近あるな。
頑張れフラン!
つか、東方でやる必要があるのかとかキャラらしさがどうとか言い始めたらきりがないと思うけど。ここのss九割方がそんなもんだし。
まずはお顔真っ赤にして書いた人叩く事を考えるよりも、気に入らないならそっと閉じる我慢強さを身につけられるよう心がけようよ。
何にせよ、このssは良いものだと思います。長文失礼しました。