Coolier - 新生・東方創想話

林檎の花の咲いたあと

2013/07/06 09:09:01
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 朝起きて顔を洗う。
 それだけの行動に違和感。
 んー、もう二年くらい続けてるのに慣れないなーこの生活スタイル。
 新聞のネタは昼の方が多いから、取材しようと思ったらこうするしかない。
 規則正しく朝日と共に……か。人間みたいだなぁ……私、妖怪なのに。
 いや別に後悔してるわけじゃないけどさ? あーもう、誰に対しての言い訳なんだろ。
 とっとと朝ごはんにしちゃお。顔を拭って歯を磨いて、軽く編んでた髪をほどいて――
 鏡に映るゆるく波立つ長い髪。朝日を浴びてより色を失ったように見えるそれが、気に障る。
 どうにもハッキリしない、茶色い髪。
「……ハンパな色だなぁ」
 脳裏に過ぎるのは二人の天狗。
 一人は鮮やかな黒髪で、もう一人は雪のように真っ白だった。
 どちらもこの上なくハッキリした髪の色。私みたいなハンパな色じゃない。
 茶色は茶色で味があるって自負してるけどさー、なーんか、コンプレックス感じちゃう。
 こんなん生まれつきなんだからどうしようもないのにさ。
 もう癖になっている流れ作業で二つに分けた髪を髪紐で括る。
 慣れ切っちゃってて鏡で左右のバランスを確認するのも必要ないくらい。
 でも、慣れ切るほどに癖になってるから鏡を見てて――嫌でも自分の髪に注目しちゃって。
 真っ黒な髪。真っ白な髪。それらが頭の中でぐるぐる回って。
「切っちゃおうかな――」
 呟きが口から漏れた。
 この髪のことでなんか言われたってことはない。好きとも嫌いとも言われなかった。
 軽くほめられはしたけど、そんな社交辞令じみたのカウント外。
 いい加減ウザったくなってきて、目を閉じる。視覚情報を遮断して、髪弄りに集中する。
 だけど集中って言ってもこんなのすぐに終わってしまう。
 髪紐で縛った上からリボンを結んではいおしまい。
 目を閉じたまま、口が開いた。
「どうせ、見てなんかいないだろーし、あいつ」
 あいつは……どんな髪型が、どんな色が、好きなんだろ。
 ……なんで――こんなことで、悩んでんのかな、私。
 目を閉じたままでも、苦虫を噛み潰したような顔をしていることだけは自覚した。





 特に目的も無く歩く。
 陽射しが強くなってきた――木漏れ日の陰影の濃さに季節が変わるのを観る。
 もう春も終わりかー。夏より春や秋の方が好きなんだけどな。夏は夏で嫌いじゃないけどね。
 あ、でも日焼けは嫌だなー。私黒くならないから痛いだけなんだよね。でも長袖は暑いし。
 やっぱ春や秋の方が好きだな。ファッションで悩まなくていいもんね。
 悩むの嫌いだからさ、私。
「はたて」
「げっ」
 低くてよく通る、嫌な声に顔を顰めながら振り向いた。
「ひっどい顔してるなぁ」
「100%あんたのせいよ」
 ザンバラの白い髪を風に揺らせながら、そいつ――犬走椛は笑う。
 相変わらず笑顔の似合わない奴。目が金色で三白眼で、鋭い感じだから笑っても怖いだけだ。
 つーかその辺は慣れてるからいいけど、なれなれしいのが嫌。むかーしご近所だったからってさ、いつまでも子供扱いして……うっとーしーったらないわ。話すのも嫌って程じゃないけど、苦手ってわけじゃないけど。
「取材?」
 当たり前みたいに横に並んで歩調を合わせてくるのは、やっぱ嫌かも。
 付き合い長いから色んな事に慣れてるけど、この距離感は慣れない。
「兼さんぽ」
「善き哉善き哉。最近は籠りっきりじゃないから安心したよ」
「うっさいなー、別にメーワクかけてたわけじゃないっしょ」
「迷惑はかけてないけど心配はさせてたよ。ちっちゃい頃は遊びまわってたのに全然家から出てこなくなったんだもの」
「あん時の取材スタイルだとそれで十分だったのー。引き籠りとか言うのやめてくんない?」
「言ってないよ。自覚あったんじゃないの? はたて」
 思わず見上げれば、意地の悪い笑みを浮かべていた。
 ヤな奴……何年言い続ける気だっつーの。
「はたてはなんでもかんでも唐突だからねー。いきなり記者になるーとか言い出したと思ったら引き籠ったりさ」
 ほんとに何年言い続ける気だっつのっ!
 もう一年以上前のことじゃんさ!
 言い返したいけど、こいつに口で勝てないことはわかってるから我慢する。
 我慢したくないけど。思いっきり馬鹿にしたいけど。
「~~……で、椛サンはどこ行くのよ」
 投げやりな問いは適当で、返ってくる答えなんてわかってる。
「怒らない怒らない。私は仕事だよ」
 でしょうよ。いつも通りでっかい剣を腰からぶら下げてるし。
 非番の時はもっと小ぶりの、脇差? とかいう剣を持ってるからそんぐらい見ればわかる。
「仕事ねぇ」
 こいつの仕事は山の自警団。その中でも精鋭で、有事の際には真っ先に戦うっていう哨戒部隊に務めてる。ごっつい剣を持ってることからわかるように、チャンバラするのがお仕事だ。しょーじき、そんなの要るのかって思うけど。有事ったって精々巫女とかが入ってくる程度じゃん。
「どーせ誰も来ないんじゃないのー」
「あはは、白狼天狗は暇がいい、ってね。私たちが給料泥棒してるのは平和の証だよ」
 その理屈は、わからないでもない。
 彼女の仕事が忙しいということは山の治安が乱れてるってことだし。
 平和なのは悪いことじゃないし、平和の為に備えることも必要だってのはわかる――んだけどね。理解は出来ても納得には至らないって感じ、なのかな。無駄とまでは言えないし必要だとは理解してるし――ああもう、もやもやするな。悩むの嫌いだってのに。
「文の新聞読んだ?」
 強引に話を逸らす。
 しかし返事は、予想外のものだった。
「射命丸様。もしくは文様。偉大な妖怪なんだから敬いなさい」
「うぇー。いいじゃん別に……私と文はライバルなんだからさー」
「立場が台頭でも文さんの方が年上でしょうが」
 きたよお説教。
 そーいうとこが文にも煙たがられてんじゃないのかなー。
 お説教じゃなくて、主義ってかスタンスってか、そういうの。ウザいとか関係なしに。
 椛はネンコージョレツとやらを順守する性格だから、年上に対する態度と年下に対する態度がまるで違う。私はそういうの、よくわかんないけど――見てて、あんまし気分が良くなるものじゃない。他人ギョーギっていうか、礼儀だってのはわかるけどさ。こーゆー椛をあんま見たくないって気がする。
 見てるとなんか――イライラする。
「じゃー椛サンって呼んだ方がいいんだ」
 皮肉も込めて私より大分年上の彼女にそう問いかけると、
「私は別にいいよ」
 さらっと流された。
「は? なんでよ。あんたの大好きなネンコージョレツじゃないの?」
「私以外にだったら口も出すけどね。ほら、はたては赤ん坊の頃から知ってるから」
「なにそれ……」
 理屈がわかんない。付き合い長ければそれでいいってこと?
 なんか違う気がするけど……んー、私、ネンコージョレツ嫌いだからなあ。
 嫌いなものはよく知らないっていうか、考察するには色々不足というか……
「はは、おしめ換えてあげた仲じゃないの。憶えてない?」
「憶えてるかそんなもん!!」
 いきなり何言いだすかこの馬鹿犬は!!
 誰に聞かれるかわかったもんじゃない天下の往来で言うことか!
 乙女心をなんと心得てんだこのアホ自警団!
 これだから昔っからのご近所さんってのはー!!
「年上には下手に出た方がいいって一例」
「脅迫じゃんか!」
 それでいいのか自警団! 犯罪者がここにいますよー!
 とは、流石に口に出さなかったけど。
 笑ってるし。明らかにからかってるし。
 むっかつくなこいつ。
 笑えないんだよその天狗ジョーク。
「はたてのことならなんでも知ってるからねー」
 余裕の顔が尚更ムカつく。
 ちょーっと年上だからって調子に乗りやがって……!
「私だってあんたのことくらいなんでも知ってるわよ!」
「そいつはおっかない。記者さんに知られるのは首を掴まれるのと同じだからね」
「んな卑怯な真似するかぁ!」
 前っから思ってたけどこいつの記者への認識間違ってる!
 そりゃ弱みをばら撒くみたいなの書く奴も多いけどさ、私は書いてないっての!
 真実を報道するのが記者なのよ! 目的は晒し上げじゃないっての!
「そりゃごめん。仕事終わったらケーキ奢るから許してよ」
「ぬ、ケーキ? ……それって九天の滝の近くの?」
「うん。番所に近いから」
 ならしょうがなーい……なんてあっさりいくと思うなよ。
 甘味ひとつで静まるほど私の怒りは安くない。奢らせるけど。
 人里で外来人から直接菓子作りを学んだっていう「ぱちしえ」を名乗る天狗のケーキは絶品で、機会が無くとも食べたくなる程度で私の怒りには吊りあわない。奢らせるけど。
 あの店のは甜菜から育てて砂糖も手作りな上乳製品や卵は契約牧場から新鮮かつ上等なものを毎朝仕入れてるからどのケーキも他の店とは比べ物にならないし喫茶店とか山のお偉いさんとかから引っ張りだこなほどに美味しいけど関係ない。奢らせるけど!
 空振りに終わるのは目に見えてるけど、このままじゃ土俵にも上がれないのよね。
 よし、奢らせるためにほんの少し誘導してやろう。
「ふ、ふふん。詰めが甘いわね椛」
「え? なにが?」
「あの店のケーキ、すっごい人気だからあんたの仕事が終わる頃には売り切れてるわよ」
「そうなの? へえ、そういうとこは流石記者さんだねえ」
「こんなのジョーシキよジョーシキ。ちなみ私が好きなのはショートケーキ!」
「はいはい、了解しました」
 ふふん! 計画通りね!
 これでこいつは私の怒りが静まらないのも知らずに無駄にケーキを献上するのよ。
 今からケーキが……じゃない、こいつのがっかり顔が楽しみだわ!
「――って、なに声を殺して笑ってんのよ。カンジ悪いんですけど」
「っく、く……いや、はたては変わらないなぁって」
「は?」
「ちっちゃい頃から飴玉一つで機嫌直してたから、変わってないなあって、くくっ」
 な、直してねーっての! 演技だっての!
 単にあんたが私の策略にひっかかってるだけですぅー!
「っち!」
 言えないけど! 言ったら台無しだから言えないけど!
 くっそ、なんで私がスカッとするための策略で私が歯ぎしりしてんのよ!?
「く、く……舌打ち、はしたないよ?」
「……っ……わ、わかったわよ……」
 もう一度なんて言わず何度も舌打ちしたい気分だったけど、すれば余計にからかわれる。
 ぜんっぜん似合ってないにやけ面の張り付いた顔を引っ叩きたいけど、手を出したら負けな気がするから我慢。
 口惜しいけど、嫌味でカンベンしてやるわ。
「あんたってほんっと笑うの似合わないわよね」
「そう?」
「鏡見てみなさいよ。文に話しかけてる時みたいに無表情の方がモテるわよ絶対」
「別にもてたくはないけどねぇ」
 苦笑する横顔をなんとなしに見上げる。
 すらっとした長身で、剣を振るい続けることで鍛えられた体は服の上からでもわかるくらいに引き締まってる。顔だちも悪くないし、ザンバラに切られた髪も野生的で、彼女に限れば美点だろう。金色の三白眼もそれを助長してて、とてもじゃないけどブサイクとは言えない。ぶっちゃけ、ほっといてもモテる。
 こいつ知ってんのかな。椛の写真って若い妖怪にバカ売れしてんの。知らないんだろな、朴念仁だし。まあ買うの女子だけなんだけど。……考えてみたら、念写するといつでも無表情なのよねこいつ。そんなに何度も撮ったことがあるわけじゃないけど、笑顔の写真なんて撮れたためしがない。私の前以外だと――どこで笑ってるんだろう、こいつ。
 って、何考えてんのよ私。こいつがどこで誰に笑おうが知ったことじゃないじゃん。
 あーもーウザったいウザったいウザったい!
「ねえ椛」
「うん?」
「あんたさぁ、なんでそんなに私に構うわけ?」
 目つきの悪い金色の瞳を見上げる。
「あんた、基本的に中立じゃん。深く付き合わないっていうか、人嫌いじゃないけどさ」
「まあ――私は狼だからね。群を大事にするよ、場合によっては個人よりもね」
「それよ。群じゃないじゃん私。鴉天狗じゃん」
 なんて言ってみたけど、難癖に近い。椛の交友関係は大体把握してるけど、あくまで大体。全てじゃない。それに鴉天狗だ白狼天狗だって言っても、天狗という大きな括りの中での話。彼女が認識する群というものが天狗社会そのものを指しているのなら、私の指摘なんて的外れだ。
「それは……」
 しかし、椛は言いよどむ。
 迷っている。だがそれは答えが見つからないというより、どれから言えばいいのか、という感じだった。
「そうだね……姫海棠さん――はたてのご両親に頼まれたってのもあるし」
「は? うちの親? 頼むって、なんの話よ」
 初耳だ。そりゃご近所だったからうちの親とも付き合いがあったろうけど……
「それ」
 彼女が指で示したのは、私の腰――ケースに入ってるカメラ?
「念写。ほら、私は千里眼を持ってるでしょ? だからだよ」
「え? いやちょっと待って。念写と千里眼?」
 ……はい? 何の関係があるの?
「どちらも遠くを見る能力で――あなたは子供の頃から使えてたから、親御さんに頼まれたんだよ。力の使い方を教えてやってくれって」
 教えられた、って実感は言われても湧かないけど、そういえば小さい頃から不自然なくらい椛といっしょにいた記憶がある。椛だって仕事があるし、私には両親がいるんだから……考えてみればほとんど毎日椛といっしょだったなんて、変だ。
 って、まさか、プライベートは撮るべきじゃないとか、そういう私の倫理観って、こいつに育てられたわけ?
「ご両親は遠見の力は無かったし……あと、可愛かったからねえ、はたてが」
「へ」
「今でも憶えてるよ、あれははたてが五歳の頃だったかな。おっきくなったら椛おねーちゃんのお嫁さんになるーとか言い出してさ」
「へぅっ!?」
「指切りしたんだよ、約束だって。……甘いもの好きなんかはあの頃から変わってないし、これも変わってなかったりする?」
「な、なななななな何言ってんのよこの変態! へんったい!!」
 ぎゃー! ぎゃーっ!
「他にも私の家に泊まった時に、お嫁さんになるんだからいっしょに寝るって」
「わー! ぎゃー!」
「ま、そういう理由だよ」
 なに、なにこの馬鹿。なにこの駄犬。なにこの変態。
 十年以上前のことほじくり返してなに勝ち誇ってんのよー!!
「同じ遠見の力ってことで親近感もあるしね」
「今更キレイにまとめられると思ってんのかー! バーカバーカ! バーカッ!!」
 さっきの考え破棄! 切り捨て! こんなのに私の倫理観育てられててたまるか!
 わ、私がこんな変態のお嫁さんとかありえないっつーの! バッカじゃないの!?
「なんでこんなのに預けられてんのよー!!」
 恨むわよ……お父さん、お母さん。
「はは、これであなたを贔屓する理由はわかったでしょ?」
「……い、妹みたいなもんだってのは、わかったわよ」
 こんなんが身内とか認めたくないけど。
 こんなんが身内とか認めたくないけど!
 通りでいやに距離が近いと思ったよ! 身内感覚なら当たり前よね! はっ!
 ほんっとウザったいな! あーイライラする!!
「あ、私こっちだから」
 イライラし過ぎて、適当な口実を作って背を向けた。
 しかし、私の足は止められる。他ならぬ椛の視線によって。
 なんだろ。なんか熱視線。
「――はたて」
「ん?」
 視線には気づかなかったふりして振り返る。
「あんまり、うなじ出さない方がいいよ」
「はあ? ついに髪型にまで口出す気? おかーさんかっての」
 ん、下ろした方がいいのかな?
 いやこいつの言うことなんか気にするつもり無いけど。
 てか、私の髪に触れるなんて珍しい……え?
「いやそういうわけじゃないけどさ」
 口調は穏やか。身に纏う気配もピリピリしたものじゃない。
 口元は笑みさえ浮かべているのに――だから、尚更に、違和感。
 椛は、金色に鈍く光る眼だけが、笑っていなかった。
「無防備なのは良くないよ」
 目だけ笑ってない笑顔。
 元々目つき悪いけど、それを差し引いても、なんか。
 視線だけが異質で――
「噛みつきたくなるから、ね」
 ――わけわかんない。





 結局、あのまま椛とは別れた。
 話は途切れてしまったし、続けようがなかったから。
 だから歩きながら思い出されるのは最後の会話だけ。
 それだけで。
 あーイライラする!
 なんだっつーのよあの別れ際のセリフ! 噛みつきたいって何!?
 思わせぶりにも程があるっつーの!
 遠まわしに叱ってる風でもなしなんだっつのよ!
 あれか、また話の流れに乗ってからかってたのか。
 私自身が知らないようなことでも知ってるよーって挑発か!?
 私だって椛のことくらいなんでも知ってるっつの!
 知ってる、けど――あのセリフの意味は、わからない。
「あーもー気分悪い」
 なんかもー頭ん中こんがらがってきた。
 注意力散漫ってレベルじゃないわ。こんなんじゃ記事のネタ探しなんて出来やしない。
 もうこのままネタ探しの散歩って気分じゃないし……はあ、用事先に済ませちゃお。急ぎじゃないから後回しにするつもりだったんだけどなー。予定なんて言うほど綿密に組んでたわけじゃないけど、椛のせいでガタガタだわ。あんの疫病神。
 そんなわけで行先変更、というより、行先決定。
 空を見上げて風の道を探す。麓の方に吹く風は――あった。とんと地を蹴りその風に乗る。目的をもって飛ぶのって気分良くないなあ。なんか体が重くなったカンジする。なんて考えてたら目的地が見えてきた。大した距離じゃないから着くの早いなーっと。
 風から降り、河城工房と書かれた看板を掲げる店の前に着地する。
「ごめんくださーい」
 からからと引き戸を開ける――客の姿も、店主の姿も無し、と。
 まーた奥でなんか作ってんのかなー。いつも思うけど、来客への対応どーなってんだろこの店。
「にとりー? いないのー?」
 返事は無し。耳を澄ますと……奥の方から微かな物音。金属音? ってことは寝てるってわけじゃないわね。勝手知ったるなんとやらで土間からそのまま続いてる廊下を進む。途中扉とか階段とかあるけど無視。この家の一番奥にある作業場には果たして――店主の河城にとりの姿があった。
 河城にとり。河童。科学信奉者にして極度のマニア。どの程度かと言えば、仮に世界を滅ぼす機械の設計図を手に入れたら迷うことなく作ってしまう程度。結果なんて最初から考えちゃいない、いわゆるマッド気質ってやつだ。関わりたくない部類の妖怪だけど、私のカメラの製作者な上に私の家の持ち主だからそうもいかない。ああ悲しきは借家住まい。お金溜まったら家買お。
「にとりー」
 返事無し。雑然とした部屋の中、なにやら作業机に向かったまま背を丸めてぶつぶつ独り言呟いてる。
 自分の世界に入っちゃってんなー。さてどうやってこっちに注意を向けるか……ん、小ぶりの木槌と……クズ鉄の山の上にぼっこぼこの釜、か。うん、こんだけぼこぼこなら何してもいいだろ。
 木槌を振り上げ、力いっぱい釜に、がんっ。
「おひょぅっ!?」
 うわっ、クズ鉄の山が崩れてすっごい音した。……けど、部屋のごちゃごちゃっぷりが崩れる前とあんま変わってないな?
「ちょ、なになに? え? 何の騒ぎ、って、え? なんでハンマー構えてらっしゃるので?」
 ん? なんで顔引き攣らせてんの。
 まーいいや。さっさと用事済ませよ。木槌を棚の上に戻して改めてにとりに顔を向ける。
「呼んだら返事くらいしなさいよねー」
「あー失敬失敬、ちょっと面白いもんが手に入って集中しちゃって」
 スカートの埃をはたき落としながらにとりは立ち上がって、手袋を外した。
 まだ笑顔引き攣ってんだけどぶん殴られるとでも思ったのかこいつ。
 そーいうことされるかもって自覚あんなら客のこと意識しろっつーのよ。
「なに面白いのって」
「外の世界の新型カメラ! 香霖堂よりも先に見つけてさ! 鑑定だけさせたんだけど、世界最軽量、最薄のカメラだったんだって! しかも二百万画素っていうすっごく綺麗に撮れる機能持ち! 残念ながら動かないけど、こいつをバラし尽くせば山のカメラもどーんと進歩しちゃうよ! なんつっても三十連写機能ってのがすごくてさ! 驚くなかれなんと三十枚の写真をずばばばーって一瞬で撮れるから動体撮影時に撮り逃すことが無くなるって言っても過言じゃないね! フィルム使い切っちゃうからそこも改良しなきゃいけないけどこれさえあれば」
「わかったわかったおっけーおっけー、落ち着いて?」
 っとに立て板に水の勢いで話されてもさー。そりゃ商売道具だから興味がないと言ったら嘘になるけどそこまで拘ってないっつーか、新聞に使えればそれでいいんだけど。連写なんて自力で出来るし。いや三十連写とか無理だけど。
「てか三十連写? 妖力使い切りそうで怖いんだけど」
「あー、使い手のことまで考えてなかったな……」
「おい技術屋。ダメじゃんソレ」
「ん? ダメじゃないよ? 私ら作る、アンタら使う。使い道なんてのは使い手が考えるもんでしょ」
 出たよ河童の技術偏重主義。とにかく思いついたら即実現、だもんなあ。私のカメラとか私の能力がなきゃほぼ意味がない機能いっぱいついてるし……コレと同型のって他のに売れてんだろうか。文字入力って念写技能がないと意味ないよね。写真に印字できるわけでもなし。
「んで姫海棠様。何の御用で?」
「家賃の支払いよオーヤさん。つか今誰もいないじゃん、いつもどおりでいいって」
「アイアイ、そりゃ悪かったねはたて」
 わかってて言ってんだろうなー。ほんっと私の周りには性格の悪い奴ばっか。
 天狗だからってだけで遜られんの嫌だって何度も言ってんのにさ。
 思いっきり顔を顰めて家賃を渡す。流石にからかい過ぎたと思ったのか、にとりはごめんごめんと苦笑しながらそれを受け取った。そしてすぐさま商売人の顔になって金を数え始める。あーほんっとにセーカク悪い。
「ほいほい確かに。いやーはたては払いが良くて助かるよ」
「なに拝金主義に鞍替え? 記事書こっか」
「いやいや勘弁してよオダイカン様ー、いやほらね? 鴉天狗って印刷費の方優先すっからね?」
「ますます記事にした方がいいんじゃないのそれ。あんた以外の河童は泣いてるかもよ」
「そうでもないんじゃない? 河童の借家に住んでる天狗ってあんまいないし。皆工房持ってっからそっちで稼いでるよ」
 天狗は里から出ないからねー。私が住んでる借家はぎりぎり天狗の里から外れてっけど、そんだけで変な目で見られるもんなー。てかなんで天狗の里近くの土地持ってんだろこいつ。わりかし謎が多い河童だな。
「あんたら何か作り続けてないと死ぬからねー」
「そんな魚がいるって本で読んだなあ」
「なんで他人事よ」
 けっこうマジで言ったんだけど。知らぬは本人ばかりなりってやつなのかな。
 にとりは作業机に渡した金を放り出す。やっぱこいつ拝金主義者じゃないなー。
「今日の用事はこれだけ? カメラの調子はどーよ?」
「ん、調子いいよ。今まで意識しなかったけど防水のって助かるわ」
「あはは、ヒッキーだったもんねーはたては」
 う。やっぱそーいう認識なのか私。早く払拭したいなあ……
 羞恥心に身を捩ったら、足が何かに当たった。
 どうせぐちゃぐちゃの部屋だけど散らかすのは気が引けるな、って目を向ける。
「ん? ナニコレ」
 なんか見覚えがある……幅広の大剣。一目見ただけでその重量で叩き割ることを主眼に置いた、頑丈さが際立つ剣だとわかるデザイン。見覚えがある、というより、見慣れた剣。鞘に入っていても、ううん、鞘に入っている姿こそよく知っている。
 白狼天狗がよく使ってる剣、っていうか、これは――
「ああそれ? 椛の剣。目釘と柄が擦り減ってきたから修理よ」
「……いつ持ってきたの?」
「昨日だけど? 代えの剣持ってるし、別に急ぎじゃないって話だけど――どうかした?」
「いや……なんでも」
 剣、違ってたのか。
 今朝会ったばかりなのに気づかなかったな。
 見慣れてると思ってたのに。見間違えることなんて無いって思ってた。
 私のことならなんでも知ってるって得意げに笑うあいつの顔が頭に浮かぶ。
 私だって知ってるって反論した。あいつのことなら何でもって。だけど。
 知ってるつもりで――あいつのこと、知らなかったりするのかな。
「はたて?」
「ん、えっと、用事済んだし帰るね」
「……ん、気ぃつけてね」
 にとりが向ける視線には戸惑いがあった。
 引き止められなかったことに安堵の息を吐きながら踵を返す。
 戸惑われて当然。私は、今なんで安堵の息を吐いたのかも理解してない。
 頭の中がこんがらがってて、自分でも何してるのかわからない。
 なんで急に帰るとか言い出してんのかな私。いつもならもうちょっと話し込むのに。
 わかんないわかんない。こんがらがったままの頭は、足だけじゃなく口まで勝手に動かす。
「……ああ、そだ。にとり」
「ん?」
「私さ、髪型変えた方がいい?」
「んん? いや別にそのままでいいんじゃない? その二つ縛り、似合ってんよ?」
 意味のわからない問いに返された答え。
 当然、それは納得も理解も出来なかった。





 だらだらと飛びもしないで山道を歩く。
 目的が無いのなんていつものこと。ネタ探しというものは移動することが目的みたいなもんだし、こうしてぶらつくのは当たり前なのに、どうにもしっくりこない。鵜の目鷹の目っての? そういう記者としての気構えっていうか、そんなのが椛と別れてから……にとりのとこ出てから、とんでもなく酷いことになってる。今自分がどこを歩いているのかすら見失ってる。
 そんなことを考えてたら、強い陽射しに目がくらんだ。
 木々が途切れて陽射しが直に降り注いでいる。飛んでる時は気にならないのに、歩いていたから目が慣れてなくて、立ち眩みにも似た気持ち悪さに頭が揺れた。木々が途切れたってことは道から外れたか……いつから道じゃないとこ歩いてたんだろ。あたりを見回して現在地を確認する。ここは……もう山の麓か。あーもう山の領域から出ちゃうな。あとちょっとで紅魔館の領内か……あそこ新聞ネタの宝庫だけどどうすっかなー。行けばなんかしら収穫ありそうだけど気が進まないっつーか。
「――ん」
 人影? 熊にしては小柄で上背のある影が視界の端で動いた。
 こんな道外れのとこうろつくなんて山の住人とも思えない。
 目を細めて探ると――棺桶を引きずる人影を、見た。
 うっわ、近寄りたくねー。何棺桶って。引くわ。ドン引き。
 きょろきょろしてる……何か探してる? あの棺桶埋める場所探してるとか? いやそんなの墓地に持ってきゃ済むことだし無いか。人探し……にしては探し方に規則性が無い。強いて言えば私みたいな新聞記者がネタを探してる時、をさらに強調したような感じ。っていうか、妖怪的な外見的特徴が見当たらないけど、もしかして人間? 人間がこんなとこで何してんのよ危ないな。
 パッと見――人間だったら20を超えるか超えないかって感じの若い女。背丈は私と同じくらいだけど、服の上からわかるくらいスタイルがいい。顔も間違いなくキレイで、美人としか言いようがない。
 ん……? なんか、あの顔見覚えがある……ような?
 なんだっけな、最近どこかで見たぞ。山じゃなく、いや山で? でもあんなの山に住んでたっけ。
 違う、新聞だ。文の新聞で読んだ気がする。確か――仙人、だったかな?
 仙人ってことは、私は全然そんな気にならないけど……ほっとくのも、後味悪いよね。
 しょーがない。義を見てせざるはナントヤラってね。
「おねーさん」
 歩いて近寄り声をかける。
 驚いた様子もなく、そいつは振り向いた。
「はいはい、巷で噂の嘘しか言わない邪仙ちゃん、です♥」
 ……山の麓で天狗に声をかけられたというのにびびりもせず笑顔。
 こいつ、警戒心ってもん知らないのかしら。
「そんな邪仙に何の御用かしら? お嬢さん」
「いや別に用は無いけど。見かけたから声かけてみただけ」
「へえ?」
 なんかもー忠告する気失せてきた。
 けどまーここまできたんだから言うだけ言っとこ。
「……ここさー、妖怪の山の麓だから危険だよ。あなた仙人なんでしょ? 食われちゃっても知らないよ」
「ふふ、私を食べようなんて悪食の妖怪がいるとは思いませんが……ご忠告感謝しますわ、お嬢さん」
 でも、と女の笑みは歪んだ形に変化する。
「その優しさは美点であると同時に欠点ね――ご自分が害されるとは思いませんでしたの?」
「害、って」
「私が仙術使いだと天狗のあなたが知る手段は噂か新聞。そのどちらも同じことを示している。あなたのご同輩には随分取材を受けましたわ。そして、そこには同じことが書かれていた筈ですよ? 私は危険な邪仙だ――って」
 それは憶えてる。幾度目かの記事で、文にしては珍しく注意を促す形で締めくくっていた。
 あいつは裏が取れたことしか記事にしないから――多分、こいつが妖怪にとっても危険な奴だって確信したのだろう。文、射命丸文。山の古参で面白い記事を書く新聞記者。私の知る限り、他の天狗の新聞なんか比べ物にならないくらいあいつの書く記事は信用できる。だから、あいつが注意を促したってことは……こうして話しかけたりなんかしちゃいけないヤツだってこと。
「危険人物にそんな心構えで近づくなんて、感心しませんわ」
 そりゃそうなんだろうけど、あんま……悪人には見えないんだよね。
 自分で近づいたらダメよなんて言ってるし。しかも笑顔で。
 粋がってるわけじゃないと思う。この人には、絶大な自信で裏打ちされた何かがある。悪党だと言いふらしたところで揺るがない決定的な何かを持っている――そう感じさせる強さが、ある。
 ……強い悪人なんてそれこそ最悪。関わるべきじゃない。例え記者としての立場であっても、報道の自由や社会正義を掲げていても、逃げの一手以外を選ぶべきじゃない。私はこのままサヨナラするべきなんだ、けど。
「あら――ここまで言ってもお逃げにならないの? お嬢さん」
 笑顔のまま、邪仙を自称する女は訝しんでいる。
 当然だ。こんだけ言われれば馬鹿でも立ち去る。
 天狗のプライドとか持ち出すんなら見逃したとでも言えばいい。
 でも私は立ち去る気にも逃げる気にもならなかった。
 ……警戒心が無いのは私の方だ。
 いつもの私なら、こんな迂闊な真似しない。
 きっと疲れちゃってるんだろう、私は。
 逃げるのさえ億劫で、足を動かす気にならない。
 判断力失くしてて、危機感薄れてて、だからこんな馬鹿な真似してる。
 自棄だ。自暴自棄。身投げと変わらない。カラスの身投げなんて、笑い話だろうけど。
「カクセイガーさんだっけ?」
「私、ロボットじゃないので霍青娥ですわお嬢さん。カク・セイガですわお嬢さん」
 お、おう。発音が悪かったらしくすっごい訂正された。
 うん反省。名前を間違えるのはダメだよね。カク・セイガさんね。
「セイガさん、セイガさんね」
「はいそうです。それで、あなたの名はなんというのかしら?」
 そういえば名乗ってなかったっけ。
「姫海棠、姫海棠はたて」
「ヒメカイドウ? ヒメカイドウ……姫街道? 中山道――いえ、林檎の花の姫海棠?」
「お、正解。よくわかったね」
「これでも仙人ですから、それなりの知識は持ち合わせておりますわ」
 言うだけのことはあるか。ぶっちゃけマイナーな名前なのにな。
「姫海棠……桷の別名だったかしら。小さくて白い綺麗な花ね」
「地味で私はあんま好きじゃないけどね」
「あらそうなの? どれじゃどんな花が好きなのかしら」
「染井吉野。ばーっと咲いてばーって散る、派手さの頂点みたいな花じゃん。人間の里に咲いてんの見たことあるけど、桁違いだわ。あれ人間が作ったんでしょ? すごいよねあんな綺麗な桜を作るなんてさ。そーいうとこは尊敬できるわ」
「あらあら、妖怪が人間を尊敬するだなんて」
 笑って告げる言葉にはどこかトゲがある。
 普通に会話してるのに、自分の領域に踏み込ませない。
 ただ、そうやって人を遠ざける計算された言動に興味を惹かれる。
 今の私には欠けている冷静さに縋りたくなってしまう。
 ああそうか。
 私はもう逃げているからこの人から逃げなかった。
 逃げ込んだ先が――この人だったんだ。
 我ながら愚かだと思う。逃げる先を間違えた逃避行動。
 でも、もう……逃げるのにも、疲れちゃった。
 自覚したから、逃げ続けてたってわかったから、もう走れない。
「セイガさん」
 今度こそ、本当の身投げをする。
「あなたさ、すっごい美人だし、詳しそうだから訊きたいんだけど」
「はい、なんでも訊いてくださいな。なんでもお答えいたします。どなたの話を語りましょう? ナポレオン? 千年狐狸精? 悪魔の竜を語りましょうか? それともはるか昔の大王様でも語ります? どんなことでもお教えしましょう。嘘ですが」
「いやそーいうわけわかんない人の話じゃなくてさ」
 聞いたこともない人の話とかされても困っちゃう。
 なんか胡散臭いし。
 嘘だって言ってるし。
 私が訊きたいのはもっと地に足ついた話っていうか。
「恋って――どんなのかな?」
 もっと浮いた話っていうか。
 問われたセイガさんは、目を丸くしていた。
「――お嬢さんはおいくつ?」
「え? おいくつって、歳? 十六だけど」
「ん? ああ、人間年齢だとってこと?」
「人間年齢って、どう計算するのよ。妖怪の寿命なんて統計とれないじゃん。数年でぽっくりいくのから数千年生きて退治されるのまで幅あり過ぎ。だいたいこんくらいって平均ないんじゃ6・70年の人間と比べらんないっしょ。私は正真正銘の十六歳よ」
「……随分と若い天狗、なのねえ」
「まーね」
 正真正銘の十六歳。
 正真正銘の若輩者。
 正真正銘のお子様。
「同年代のヤツなんて一人もいないし。一番歳が近いのでも二十は離れてるしね」
 この辺、人間がうらやましい。私らよりずっと歳の差が少ないし、歳が近いのも多いから。
 違う種族には冷たいヤツらだけど、天狗も似たり寄ったりだしねー。白狼天狗がどーの鴉天狗がどーのって、天狗の中だけでもハバツ争いだのなんだの鬱陶しいったらないわ。生活用品とか便利な道具とかすっごい利用してる河童を見下すとかさ、バッカじゃないのって話。
「ふうん……そういう相談をできるお友達もいない、とか?」
「……話、合うヤツいないし」
 文は、できそうだけどなーんかね。こーいうの苦手そうっていうか、私以上にダメそうだし。
 河童には歳近いのいるけど……トモダチってわけじゃないし、ね。
 椛になんて――言えるわけ、ないし。
 それでも、嘘でもいいから答えが欲しい。
 誰にも話せないなら、誰でもない通りすがりの他人に求める。
 だからこれは、捨て鉢でヤケッパチの身投げ。
 始めから、正解なんて期待しちゃいなかった。
「はあ……」
 傍メーワクだなー、私。
 こんなのにつき合わせて悪いことしちゃったな。
 賢そうだし、こんなのすぐ見抜かれて呆れて帰っちゃうかな。
 悪人だって話だし、怒られてなんかされちゃう、かな……
「……なんで私に訊いたのかしら?」
 話を続けられたことに軽く驚いた。
 見抜けなかった? まさか、そんな鈍臭くは見えない。
 でも続けられたのだから、私も続けなきゃ。
「えっと、あなたが……美人だから」
「美人?」
「うん、物語に出てきそうな美人だから、物語みたいな恋してるのかなって」
「――ふぅん」
 私の答えに、彼女は目を細めた。
「物語みたいな恋、ね」
 噛み砕くように、咀嚼するように、ゆったりと彼女は笑顔を変えていく。
 美しいままだけれど、邪仙を名乗るに相応しい歪で邪まな微笑みに。
「恋に恋するお年頃――なのに、わからないのね?」
 それでも私は逃げる気にならなかった。
 彼女が切り上げるまで続けようって思うほどに、自棄のまま。
「うん。さっぱりわかんない。わかんなくてわかんなくて、考えるのが、嫌になっちゃう」
 悩むのが嫌いな私は、終わらせてほしかった。
 どんないい加減な答えでもいい。私自身から逃げ切れるのなら、嘘だって構わない。
 嘘しか言わないって宣言したこの人なら、そんなまやかしの答えをくれそうだから。
「察するに」
 セイガさんは誰のものかもわからない棺桶に腰かける。
「気になる方が出来た、とか」
「……よくわかるね」
「でなければ、恋がどういうものかなんてことでそんな真剣に悩みませんわ」
 真剣。真剣かな。どーでもいいってカンジなんだけど。
 私も彼女に倣って近くの岩に腰かけた。本題に入りそうだし、長くなりそうだったから。
「意中のお相手……いえ、あなたを悩ます方は、どんな方?」
「んー、セーカク悪いヤツ」
 ぐちゃぐちゃの頭の中からあいつのことを引き出す。
「私が子供の頃からのご近所さんってヤツで、ちっちゃい頃からの付き合い。んで、私をからかって遊ぶような捻くれモノ。悪人じゃないけど、イジワルでオトナぶってて、目の上のタンコブってーの? そんなカンジ」
「ふむふむ」
 相槌がテキトーだなぁ。どうでもいいけど。
「そんなヤツよ。仕事には真面目だけど、物語に出てくるようなカッコいいのじゃないわ」
「なるほど。では、なんでその方を気にしてらっしゃるの?」
 なんで、か。
 どうしてあいつを気にするか。
 何故こんなにも思い悩むのか。
 胸元に落ちてきた自分の髪を弄る。
「最近、ちょっとね」
 茶色い髪。はっきりしない色。白と黒の中間でさえない私の髪。
 物語のお姫様みたいな、美しいと形容される鴉の濡れ羽みたいな、綺麗な黒じゃない髪。
 あいつが――褒めてくれない、地味で、目立たない、私の髪。
「なんか、さぁ……そいつ、家族みたいなもんなんだけどさ。最近、私を見る目が違うっていうか、私の知らない顔してるって、感じで。なんでそんな顔するのかわかんなくて。嫌われた、ってわけじゃなさそうだし、私もそいつのこと嫌いじゃないし。ただ、なんかさ、距離……感じちゃって」
 髪の毛を弄る。
「ちょっと前まで私のことおんぶしたり肩車したりしてたのに、触ってもこなくなってさ。でも声はかけてくるし、意味のないこと話したりするのに……近いのに、遠ざかってる気がする。だから、あいつが私のこと、意識してんのかなって考えちゃって」
 あいつが触れもしない私の髪を弄る。
「……私のこと、どう思ってるのかなって考えても、わかんなくて」
 あいつみたいにはっきりした色じゃない私の髪を弄る。
「なんでも知ってるって思ってたあいつのことが、今はわかんない。考えれば考えるほど、逃げれば逃げるほど、あいつのことわかんなくなって、知らないことだらけだってわかって。悩むの嫌いなのに、あいつのこと考え出したら止まんなくて。考えるの嫌になってるのに四六時中考えちゃって。だって私、あいつに好かれるところ、無いし。記者になって家を出て、独り立ちしたつもりになっても、追いついた気がしなくて、新聞そんなに売れないしさ、認められた気がしなくてさ、派手な服着たって私自身は地味なまんまだし、髪とか、地味でキレイじゃないしさあ、己惚れられないんだよ。逆にも考えてみたよ、私はあいつのことどう思ってるんだって。椛は、あいつ、セーカク悪いけどいいヤツだし、真面目だし、ちっちゃい頃からいっしょだったし……でも、それもわかんなくなっちゃったんだ。もし私だけがあいつを好きだったらどうすればいいの? 単純にあいつが私から離れていってるだけだったら、私がキレイじゃないからどうでもよくなっただけだったら、って、イライラして、気持ち悪くて、なんなのよこれ。本で読んだ恋物語なんかに似てるんだけどしっくりこないの。恋じゃないかって疑ってもわかんなくて、好き嫌いとかわかるけどさ、恋の好き嫌いと同じなの? それとも違うの? 私の好きって、あいつの好きって、恋なの?」
 くしゃりと、地味な髪を握りしめた。
「恋って、なんなの?」
 一気に胸の内を吐き出した。
 空っぽになっちゃって、自分でも何を話したのか把握できないくらい。
 視界が暗い。いつの間にか俯いてて、胸の中は空っぽの筈なのに重苦しくて、顔を上げられない。
 吐き出せば楽になると思ったのに。やっぱり、嘘でも答えがなきゃダメなのかな。
「……恋とは何か、ね」
 呟きの続きを待つ。
 この重苦しさから早く解放してほしい。
 それがどんなに酷い嘘でも文句は言わない。
 耐え切れずに無理矢理顔を上げる。
 なのに、彼女は薄ら笑いを浮かべたまま黙っていた。
「……どうしてなにも言ってくれないの」
 苦しいのに、助けてほしいのに。
「教えてよ、あなた仙人なんでしょ? なんでも知ってるんでしょ?」
 縋る声に返されたのは、
「私が教えられるのは、あなたは桜の花じゃなく林檎の花だってことくらい」
 さっぱり意味のわからない答えだった。
「なによ、それ。答えになってない」
「言い換えましょうか? あなたは林檎の花なのに、染井吉野に憧れて自分を見失ってるって」
 染井……私の好きな桜のこと? 私が林檎の花って、姫海棠って姓だけのことじゃない。
「それともこう言い換えましょうか。あなたは姫海棠だけれど、私は染井吉野なのよって」
 ……ますます意味がわからない。自分でカク・セイガだって名乗ったじゃない。
 もしかしてあなたは地味ーだけど私はド派手にキレイなのよって宣言してる? ムカつく。
 ちょっと考えみよう。染井吉野って名前、ってわけじゃないだろうし……桜? えっと、私が桜に憧れて――自分を見失ってる? 林檎に――桜? 話しぶりからして、林檎が桜に憧れるのは間違ってる……ってこと? つまり、どういうこと?
「なんなのよ……結局あなたも恋なんて知らないの?」
「うふふ、恋はいーっぱいしてきましたわ」
 苛立ち混じりの声はするりと否定された。
 恋を、いっぱいしてきた? じゃあなんで答えてくれないのよ。
「素敵な歌人や旅の武道家、お貴族様に王様とも恋をしました」
 歌うような語りに機先を制される。
「死神と愛を語らったこともありますよ?」
 あからさまな夢物語。まるで本の登場人物紹介欄。何度聞いても嘘だとわかる語り口。
 彼女が初めて口にした言葉が正確に履行されている。
 カク・セイガは言った。
 嘘しか言わない邪仙です、と。
「西へ東へ南へ北へ。世界中どんなところも旅をしました。旅した先でいろんな方とめぐり会い、いろんな事を知りました。まずはこの国にやってきて、貴族の方や王様に、しばらくそのまま留まって、歌人の方と出会います。次に西へ西へと旅をして、シルクロードで武道家と。ヨーロッパから帰ってきたら死神の方と鬼ごっこ。そんな風に、世界中で恋をしました」
 話のスケールが大き過ぎてついていけない。私なんて、日本地図ですら把握し切れてないのに。
 彼女の語る世界なんて欠片も知らない。海だって、知ったつもりになってるけど本でしか知らない。
 どんなに強がっても追いつけない。だから、こんなの想像も出来ない夢物語だ。
「どれもこれも素敵な恋。夢のような時間を過ごしました。お嬢さんのおっしゃったとおり、物語のような恋でした。歌人の方とは互いの想いを詩に籠め、武道家の方とはお芝居のような冒険を共にし、お貴族様には様々な宝物を与えられ、王様には私の全てを求められました。死神なんて、私をお迎えに来たのに結局私を連れて行かずに大左遷だったとか。ふふ、悪いことをしたって思ってますよ? 死ぬつもりはないけれど、不幸にしたいなんて思いませんから」
 花嫁の微笑、悪女の嘲笑、少女の如き憫笑。
 とても同じ人とは思えぬほどにころころと変わる笑みを浮かべながら彼女は語る。
「歌人の方は死後も私を想ってくれると約束してくれました。王様は私が邪仙だと承知の上で求めてくれました。嬉しいことに、誇らしいことに、誰も彼も真摯に私を愛してくださったのです。恋せずにはいられないほどに、愛された」
 どこか遠く、幻想郷よりもはるかに広い世界に向かう視線。
「何十年も何百年も何千年も、私はそうやって恋をしながら生きてきたの」
 私にはわからない。たった十六年しか生きてない私には彼女の語ることは遠すぎる。
 これが恋というもの? 私には早すぎるもの、なのかな……
「でもね」
 また、表情が変わる。
「実らせたことは、一度も無いの」
 それはとても儚くて、キレイで、だけど――寂しそうな笑みだった。
「だって、実った果実は、腐って落ちるだけじゃない?」
 自ら嘘つきだ、なんて名乗るひと。
「そんなの怖くて、悲しくて、苦しいじゃない? だから私はね、恋の花を咲かせるだけで――終わらせちゃうの」
 語る話は全てが胡散臭かった。
「恋の花が咲いたら終わらせて、思い出にする。切り花? 押し花? さて、何になるのかしらね」
 だけど。
「――何にもならないのかしら、ね」
 これは――嘘じゃないって、直感した。
 嘘つきな邪仙、カク・セイガ。
 彼女は何度も恋をした。請われ、共に歩み、無償の愛を向けられて。
 ひどくシンパシーを感じる。私は、彼女みたいな美人じゃないけど……でも、理解できる。
 この人は――臆病だったんだ。私と同じように、恋をしてもどうすればいいのかわからなくて、相手も自分も傷つけたくなくて、何度も何度も恋を終わらせてきた。きっと彼女から好きになったことだってあったろう。何千年も生きていると言ったけれど、この人は他人を全く見下してない。天狗とは真逆で、いつでも他人を見上げてきた。だから、彼女の方から誰かを好きになることだってあった。それでも、臆病さは変えられない。他人を見下せない彼女は誰より自分の価値を信じられない。価値の無い自分が好きになったって迷惑なだけじゃないかって考えちゃって、恋をしたとしてもそれを続けられなくて――逃げだすことしか出来なくなったんだ。
 彼女の人を寄せ付けない態度は……ちっぽけな自分を守るための、悲しくなるほどに惨めな、鉾と盾だった。
「……っ」
 なんでセイガさんが呆れもせず私の話に付き合ってくれたかわかった。
 頭の中ぐちゃぐちゃで、投げやりになってる私は、過去のこの人そっくりだったから。
「でもさ」
 反射的に口を開いてしまう。
 言うべきことなんて見つからないのに、悔しくて。
「でも、さ」
 似てるから、同じだから、未熟な私は違うって叫びたい。
 だけど、どんなに悔しくても……
「それって、寂しいよね」
 私では、彼女の過去に届かない。
 臆病な私には、それが間違ってるなんて、言えなかった。
「ええ、とても――寂しいわ」
 また俯いてしまった私に、言葉が返ってくる。
 顔を上げれば、セイガさんは、私をまっすぐに見ていた。
 その目が問答はもうお終いと語っている。じゃあ、最後に問いかけよう。
「……結局、恋ってどんなのなわけ?」
「ふふ、答えはね」
 最後の問い。
 それに彼女は目を伏せるように細め――
「こんな咲かせるだけで実らせない女に訊いちゃダメ、よ」
 幸せになりたいのなら尚更ね、と微笑んだ。
 ……そっか。訊く相手、間違えたか。
 落胆は無かった。彼女が語ってくれた物語は、十分にそれを教えてくれた。
 納得は出来なくとも、理解は出来た。このままなら私は、彼女と同じ道を辿るって。
 いや、私セイガさんみたいに美人じゃないから何度も恋をするってのも難しいかもだけど。
「はぁ――どうしよっかなー」
 そんな先のことは正直考えられない。
 今悩んでることを放り出したいとまでは、思わないし。
 たださ、逃げ出すっての、魅力的なんだよね。納得は出来なくても理解はしちゃってんだし。
 臆病だっての、自覚しちゃったからなぁ――
「今は初夏。ちょうど、姫海棠の花が咲く季節ね」
 独白に顔を向ける。
 セイガさんはもう私を見てない。
 姫海棠の花? ああ、確かにそうだけど。
「花が咲いて、秋には実をつけて――来年には芽吹くのでしょうね」
 唐突に――理解した。
 姫海棠と染井吉野の例え話。
 あの時、セイガさんは自分を染井吉野と言った。
 それは、花の美しさを指していたんじゃなくて……後に続かない、花のことを言ってたんだ。
 染井吉野は人間が作った桜で、実をつけてもそれが芽吹くことはないって聞いたことがある。
 キレイだけど、歪だなって思って、よく憶えている。
 実らない恋。咲くだけで終わる花。
 だけど、姫海棠はそうじゃない。
 花は地味で、実も食べられたものじゃないけど――その実は芽吹く。
「林檎の花のお嬢さん」
 呆然としていたらセイガさんはいつの間にか立ち上がっていた。
 座っていた棺桶になんかの術をかけて浮かせる。
「年上のお姉さんからアドバイス」
 浮かせた棺桶を引っ張って歩き出した。
「立ち止まるのは、おやめなさい?」
 私と似ていると思った邪仙。
 嘘つきを自称した人は、最初から最後まで笑顔のままで――立ち去った。





 日が暮れて何時間経ったかな。
 時計、持ち歩かないから時間わかんないな。 
「――あれ、はたて?」
 番所の戸が開いて椛が出てきた。
 よーやく仕事上がりか。こんな時間まで働いてるってのも、知らなかったな。
「ん……」
「待っててくれたの? 一声かけてくれれば……てか番所に入っちゃえばよかったのに」
「もう寒くないし」
「初夏でも夜は冷えるよ。梅雨寒ってこともあるし」
「わっ」
 ばさりと上着がかけられる。
 ……椛の体温であっためられてて、ちょっとぬるい。
「あ、ケーキ買ってあるか心配した? ちゃんと買ってあるよ」
「どんだけ食い意地張ってると思われてんのよ!」
 もらうけどさ! それはそれで楽しみだけどさ!
「いやはたてと言えばお菓子だし」
「その等号外せ! せめてニアリーイコール!」
「努力するよ」
 笑って誤魔化すな! なによ、もしかして肉付きいいのが悪いっての!?
 文とかが痩せすぎなのよ! 私は標準より痩せてる方だし! ペチャパイよりいいじゃんよ!!
 決めた! 私の新聞にはぜーったいダイエット記事載せない!
 ストップ痩せすぎノーモア不健康!
「ほら、前留めて」
 気炎を吐く私を無視して椛はかけた上着が落ちないように紐を結んでくる。
 ……だーかーらー……子供扱いすんなってのよ……!
「じゃ、送ってくから」
 ぽんと背中を叩かれる。
 手際良すぎて、文句を言うタイミングが無い。
 くっそ、ペース完全に握られてる……
「途中で弁当屋寄っていい?」
 予定まで立てられちゃってるしもー。
 皮肉くらいしか言えないじゃんよ。
「たまには自炊くらいしなさいよ」
「面倒でねぇ。私はお給料そんなに使わないし、外食でいいかなって」
「体が資本なんでしょうがあんたは。教えてやるから作りなさいよ」
「食材腐らせちゃうし……」
「そうしないように作れつってんの」
 また背中を叩かれて、つい椛と並んで歩き出す。
 ……コントロールされてんな私。今まで無自覚だったけどこれ、癖になってる。
 う~、ムカつくムカつくムカつく! なんでもいいから言い負かしたい!
「こんの……送り狼」
「っ……」
 咄嗟にとんでもないこと言ってしまった。
 こりゃお説教かな、しくじった。と思ったが椛は何も言い返さない。
 なんで反論しないんだこいつ? こーゆー冗談はあんま好きじゃないと思ってたけど。
「……はたて?」
 気づいたら私の足は止まってた。
 えっと、んん? あれ、足が動かない。
 いや、まさか――そんな、ね。椛がさ、私をそういう対象に見てるかもって、怖くなったとか。
 ひ、飛躍し過ぎだっての! 考え過ぎ! 今日はほら、セイガさんとかと話したから、意識しすぎちゃった、とかさ!
「どうかした?」
「な、ななななんでもない!」
 あああ動揺してるってまるわかりじゃん!
 選択ミスってレベルじゃないわよこれ!
 ヤバ、顔赤くなってんじゃ……!
「――――」
 視線。視線、感じる。椛が私を見てる。
 椛の目は千里眼で、そんなのなくても高性能で。
 見られたら、どういう顔されんのか、怖い。
 暗くて、椛がどんな顔してんのかよく見えない。
 鳥目って程じゃないけど私、あんま夜に向いてないし……
「……もう暗いからね」
 手をぎゅって握られる。
 柔らかくない、ごつごつした、鍛えた人の手。
 椛の手は熱かった。
 普段は、私の手は冷たいとか言ってるけど、立ちんぼしてた私の手にはひどく熱い。
 私の冷たさと彼女の熱さが溶けて混ざって、意識から外れる温度になっていく。
 こうしているのが当然みたいな、熱に。
「さ、いこ」
 手を引かれて、歩き出す。
 止まってた足が、勝手に動いていた。
 大きな、ぶかぶかの上着被せられて、手を握られて。
 私の周りが全部椛になったみたいで、思考回路がぐちゃぐちゃで。
 考えられないなら、言えるかもなんて、思っちゃって。
「あのさ、もみ――」
 喉が、引き攣った。
「ん?」
 顔を上げられないのに視線だけを感じる。
 椛の顔、見れない。
「――――なんでも、ない」
 ……この、臆病者。ヘタレ。イジケ虫。
 ニワトリか私は。飛べなくなったカラスに何の価値があるってのよ。
 今なら勢いに任せて言えたじゃん。なにビビってんのよ姫海棠はたて。
 そりゃ好きとかそういうのわかんなくなったままだけど今のはさあ……
「っぷ」
 なんだよ今の。
 吹き出したかこいつ。
「はは、変な顔」
「へ、変な顔はないでしょっ!?」
「だって変だったよ、カメラ持ってたら撮ってた」
「~~っ、趣味わるっ!」
「記者さんには言われたくないなー」
 あーもーしっちゃかめっちゃかじゃない!
 なんかそーゆーフンイキだったのに流れちゃった!
 こうさあ! ムードとか――よく、わかんないけど、さ。
 恋がどういうものかなんて渦中の私にはわからないまま。
 終わった時に、わかるのかもしれない。いや、始めてもいないから、わかんないのかな。
 臆病な私には終わらせる勇気も、始める勇気も足りてなかった。
 こうやってほんのちょっと歩み寄るのがせいいっぱい。
 目を閉じて、手を引く椛に歩みを委ねる。委ねちゃう。
 立ち止まるな、なんて言われたけどさ。



 いつか

 言える日が来るのかな

百二度目まして猫井です

とりあえず、林檎の花は咲きました


はたて

可愛いですよね

はたて、可愛いですよね

はたて可愛い

ここまでお読みくださりありがとうございました
猫井はかま
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コメント



0.1660簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
恋するはたて可愛い。もみじも可愛い
青娥さんもいいキャラしてるよ
全く飽きずに楽しめました
3.無評価野口ゲラ削除
カクセイガーさん素敵ね。おお、青い青い
4.100名前が無い程度の能力削除
はたてが初々しくていい
6.100絶望を司る程度の能力削除
結局棺桶の中身はなんだったんだ??
7.80名前が無い程度の能力削除

カクセイガーさんひょっとして大左遷させられた死神さんって割とご近所にいませんか?w

それはそうとはたてかわいい
そして椛もかわいい
8.80奇声を発する程度の能力削除
良かったです
9.100名前が無い程度の能力削除
くどさのないすっきりとした良い読後感
表面澄ましてるけど椛もぐるぐる回してんのかなとか妄想が膨らみます
せーがもいい対比になってました
15.90名前が無い程度の能力削除
はたてかわいい
17.100名前が無い程度の能力削除
うん、はたて可愛い
21.100名前が無い程度の能力削除
安定の猫井さんヒャッホイ
はたてかわいいかわいいはたてめんどくさいかわいい
26.90名前が無い程度の能力削除
はたては可愛いけどそれよりも、こんなに綺麗な青娥さんは初めて見たかもしれない。
28.90名前が無い程度の能力削除
惚れちまいそうなかっこよさ。
32.90名前が無い程度の能力削除
セイガーさんが出てきた時点でちょっと焦りましたが、恋するはたてちゃんにやきもきしながら読むことできました。かわいい。
39.100名前が無い程度の能力削除
猫井さん安定です
はたてちゃんめんどかわいい

椛視点とか…(小声)
40.100名前が無い程度の能力削除
はたてちゃんめんどい可愛い
41.100名前が無い程度の能力削除
咲いたのなら実るまで見たくなりますよね(ボソッ

初めての感情にあわあわするはたて超かわいい。
全体的にピュアピュアな印象を受けましたが最後のシーンでやられました…。
送り狼発言から態度には出さないけど椛も意識してたらいいなーなんて。

もみはたはもっと書かれるべきカプだと思います。
45.100名前が無い程度の能力削除
花のたとえが実に良いですねぇ
悩むはたてはもちろんですが、青娥も素敵です
46.80名前が無い程度の能力削除
淡いお話で終わるのかなーと思いきや、青娥がまさかのアドバイザー登場とは驚きました。
47.90名前が無い程度の能力削除
おもしろかったです。いろいろ悩んでるはたてさんかわいい
48.100名前が無い程度の能力削除
乙女はたてちゃん、いい。
49.100名前が無い程度の能力削除
猫井さんとこのカクセイガーは安心できる

さて、次は結実と収穫ですね
53.803削除
なんと人間らしい悩みを持ったはたてでしょう。
16って若いなんてレベルじゃないですね。まだ赤子じゃないですか。精神の成熟は人間と同じスピードなんでしょうかね。
そして青娥さんを応援したくなりますね。
56.90愚迂多良童子削除
送り狼側の心情が書いてあるとすごく良かったんだけども。そこが惜しい。
はたての年齢は文と比べて若く設定され勝ちですが、これほど若いってのは中々珍しい。
はたてが可愛いのは間違いない、うん。そりゃ狼が牙を立てたくなるのも致し方ない。

>>「立場が台頭でも文さんの方が年上でしょうが」
対等
>>その二つ縛り、似合ってんよ?」
ツインテだから「二つ結い」のが良いかなー、とか。
58.100名前が無い程度の能力削除
いやー