Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙の松茸

2009/01/06 03:45:17
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お茶を、飲んでいた。

「……ふー」
「……はー」

神社の縁側で、巫女と魔法使いがお茶を飲んでいた。

「やっぱり冬は熱いお茶に限るわね」
「ああ、やっぱり冬は熱いお茶だな」

特に何かをするわけでもなく、ひたすらにお茶を飲んでいた。

「ところで魔理沙、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん? どうした霊夢」

お茶が半分になったところで、霊夢が魔理沙に問う。

「あなた、一日に一回、生えてくるって本当?」
「えっ?」

霊夢の問いに魔理沙は戸惑った、
目を見開かせ、揺れた手が僅かにお茶をこぼす。

「は、生えてくるって、何の話だ?」
「とぼけないでよ、分かってるんでしょう?」

反応からして魔理沙が知らぬはずはない、
けれども魔理沙は知らぬふりをする。

「(まずい、誰だ、誰から話が漏れたんだ?)」

これは魔理沙にとっての最高機密である、
誰にも話したことのない、自分だけの秘密。

「あーもう、キノコよキ・ノ・コ」
「ぎくっ!!!」

とうとう霊夢が痺れを切らし、生えてくるものの名を言った、
魔理沙は身体を強張らせ、お茶を全て地面にこぼす。

「(キノコと言ってはいるが、間違いなく霊夢が言ってるのはアレのことだ……!)」

魔理沙の頬に冷や汗が一つ、
もはや自らの最高機密は完全に霊夢に漏れている。

「い、いや、知らないな、知らないぜ!」

だがそれでも魔理沙は否定した、
否定せざるを得なかったのだ。

「ふぅん……今更隠したって無駄よ、もう皆知ってるんだから」
「(何だと!?)」

皆が知っている、それは魔理沙にとって死刑宣告にも等しかった、
射命丸文か、それとも伊吹萃香か、一体誰が秘密を漏らしたというのか。

「い、一体誰から聞いたんだ!?」
「霖之助さんだけど」

その名前に、魔理沙が愕然とした表情を浮かべる、
心の底から信頼していた相手に裏切られたのだ。

「……ううっ……そうだよ、生えるよ! 一日に一回生えてくるさ! それがどうかしたのか!!」

そしてとうとう魔理沙は事実を認めた、
霧雨魔理沙は一日に一回、体からキノコが生えてくる事を。

「そう……それでそのキノコなんだけど、どんな匂いがするの?」
「匂いっ!?」

霊夢は魔理沙から生えてくるキノコに興味津々である、
ためらう事無く、自らの疑問を魔理沙に問うた。

「そ、その……いい匂いがするぜ?」
「そうじゃなくて、具体的によ!」

霊夢が少し魔理沙に寄り、さらに問う。
魔理沙は少し霊夢から離れ、さらに戸惑う。

「具体的にって……美味しい匂いが、する……ぜ」
「ふぅん、美味しい匂いね」

美味しい匂いで納得したのか、
霊夢はうんうんと頷きつつも続けて魔理沙に問いかける。

「じゃあ味は?」
「味だと!?」

匂いに続けて味を問う霊夢、
そしてその二つを問われた魔理沙は何かに気付いた。

「霊夢、お前まさか……」
「何よ?」

魔理沙は震えた口調で、気付いたそれを問い返す。

「もしかして、私のキノコを食べる気なのか!?」
「あー……」

霊夢は右手で自らの頭をかきながら、
その問いへの答えを一拍二拍と考える。

「そうね、魔理沙のなら……別に食べてもいいわよね」
「いいっ!?」

魔理沙が霊夢から飛びのいて、腰からへたり込む、
すると霊夢はそれを追って、四つんばいで魔理沙に迫った。

「ねぇいいでしょ? 私にも食べさせてよ」
「だ、駄目だ! あれは私の大切なキノコなんだ!」

迫ってくる霊夢を、魔理沙は必死に両手で押し返す。

「お願い、大事に食べるからぁ……」
「駄目なものは駄目だー!」

霊夢が熱い吐息を吐きながら、潤んだ瞳でキノコをねだるが、
魔理沙も顔を逸らし、それを見ないようにして必死に拒否した。

「どうしても駄目?」
「どうしても駄目だ!」

魔理沙は強固な意志で耐え、霊夢の願いが叶うことはなかった。

「そんなぁ……酷いわ、独り占めするなんて……」
「ふぅ……」

がっくりと肩を落とす霊夢を見て、魔理沙も安堵の溜め息をつく、
何とかしのぎきった魔理沙の顔には僅かな笑みも浮かんでいた。

「じゃ、じゃあ舐めるだけ! 舐めるだけでいいから!」
「舐めるだけっ!?」

だが霊夢も諦めない、魔理沙から引き出せる僅かな妥協点を狙い、
必死にすがりつく、全てはキノコの為に。

「な、舐めるってお前……」
「いいじゃない、味を見てみたいのよ、減る訳じゃないんだからいいでしょう?」

霊夢は両手を合わせて必死に懇願の視線を送る、
逆に魔理沙は帽子の唾で目を隠し、その視線を遮る。

「(どうする? 舐めるだけなら許してもいい、か?)」

魔理沙は自らの思考を全力で回転させ、
霊夢にキノコを舐めさせた場合どうなるかを考える。

「(待てよ、舐めるということは一度霊夢の手の内にキノコが入るということ……)」

その一瞬の閃きから、魔理沙の思考が霊夢にキノコを舐めさせた場合の結果を導き出した。

「駄目だ! そのままキノコを食べてしまうかもしれないからな!」
「ええーっ!!」

霊夢も、舐めるだけなら許してくれると思っていたのだろう、
しかし長年の相棒から出てきた言葉は、否定の言葉だった。

「うわーん! 魔理沙の馬鹿! 鬼! 悪魔ー! 一体今までに何人の女を泣かせてきたのよー!!」
「人聞きの悪い事を言うなよ……」

霊夢の半分はキノコを舐めることすら出来ない悲しみで泣いていた、
もう半分は魔理沙が自らを信じてくれなかった事実で泣いていた。

「ふぇぇん……」
「何も本気で泣くことないじゃないか」

ぼろぼろと涙をこぼす霊夢を、魔理沙は慣れた様子でなだめる、
霊夢も泣く必要が無いことに気付いたのか、すぐに普段の状態に戻った。

「キノコねぇ……」
「もうその話題はいいだろ、なんか他の話題にしようぜ」

霊夢はまだ諦めていないのか、小さくキノコキノコと呟いている、
このままではまたも迫られかねないと、魔理沙も何とか話を逸らそうとする。

「そうだ、そういえばお茶がもう無い――」
「アリスも、食べたがっていたのよ?」

霊夢が、少しあくどい笑みを浮かべて魔理沙を見る、
対する魔理沙は、世界の時が止まっていた。

「嘘だろ……? アリスは、あいつは、キノコなんか嫌いだって……」
「魔理沙のキノコだけは別って言ってたわよ?」

魔理沙の顔を伝う汗の量が鼠算式に増える、霊夢だけでなく、
アリスですら自らのキノコを狙っているのかと、倍の恐怖がその身を襲う。

「だってほら、魔理沙のキノコは特別なキノコ、でしょ?」
「いや、確かに特別だが……!」

魔理沙は深呼吸を繰り返し、何とか心を落ち着けようとする、
しかし霊夢も揺さぶるだけ揺さぶりたいのか、さらにアリスの話を続けた。

「匂いは結構好きだって言ってたわ」
「っ!!」

一刻も早くこの場から逃げ出したい衝動が魔理沙を襲う、
逃げさえすれば、少なくともキノコだけは無事ですむのだから。

「そ、そうだ、私は用事があったんだ、じゃあな!」
「待ちなさい!!」

魔理沙は飛び立とうと箒にまたがるが、
すんでのところで霊夢に服を掴まれて縁側に引き戻される。

「ひっ! もう帰してくれ! 頼むよ!」
「そうね、じゃあ最後にこれだけ聞いたら帰してあげるわ」

霊夢は魔理沙を後ろから羽交い絞めにすると、
あくどい笑みを隠す事無く魔理沙に問いかける。

「キノコの生やし方を教えなさい」
「……生やし方?」

魔理沙のを食べることが出来ないなら自ら生やしてしまえばいい、
それが霊夢の辿り付いた妥協案だった。

「やり方を知ったところで、魔法使いぐらいしかこういうのは作れないぜ?」
「だったらアリスに協力してもらうだけよ」

アリスの名前が出たところで魔理沙が一瞬反応するが、
その数秒の後、魔理沙は諦めたのか、それとも教えれば開放されるという
安堵感からか、小さな溜め息と共に説明を始めた。

「その、キノコが生える元を作るだろ?」
「うんうん」

魔理沙は羽交い絞めにされたまま、身振り手振りで霊夢に教える。

「そこに私の作った特性の薬をかけるんだ」
「ふんふん」

確かに、薬を必要とする時点で霊夢には作れないだろう。

「それを身体に付けて、半日ほど魔力を送り続けて熟成させるんだ」
「ふーん」

そして長時間にわたる魔力の投与が必要となる、
つまり、これこそが一日に一本の理由なのだ。

「熟成し終えたら、後は好きなときに一気に魔力を注入したら、立派なキノコになるんだ」
「そーなのかー」

魔理沙が説明を終え、本日三度目の溜め息をついた、
霊夢も生やし方がわかって納得したのか、にこやかな笑みを浮かべる。

「で、どんな風に魔力を注入したらキノコが生えるの? やってみてくれない?」
「あー、こうやるんだよ」

それはもう開放されるという気の緩みを突いた霊夢の巧みな誘導だった、
完全に霊夢の術中にはまった魔理沙は、まんまと衣服の一部を膨らませる。

「……あっ!!」
「けひひっ」

ようやく魔理沙も自らのしでかした失敗に気付く、
しかしその時すでに、霊夢の目は獲物を狙う野獣の目になっていた。

「もらったぁ!!」
「させるかっ!!」

だが魔理沙もただでは奪われない、霊夢の両腕を掴み、何とかキノコを死守する。

「霧雨魔理沙を……舐めるなっ!!」
「もう舐めたりなんかしないわ……美味しくいただかせてもらうだけよ!」

両者の腕力は拮抗し、互角の競り合いが続く、
衣服の下の膨らみを狙う霊夢と、それを必死に遮り続ける魔理沙、
二人の戦いは長くなると思われていた。

「アリス!!」
「はいはーい、今手伝うわー」
「何だって!?」

魔理沙の敗因は主に三つ、
一つ目はキノコの話題になった時点で逃げなかったこと、
二つ目は霊夢の誘導にまんまと引っかかってしまったこと、
三つ目は第三者の存在に気付かなかったことだ。

「はい、抵抗しちゃ駄目よ」
「や、止めろ! 離してくれアリスー!!」

アリスに身体を束縛され、霊夢に衣服の下をまさぐられる、
逆転の手段は何一つ無く、魔理沙は霊夢にまたも敗北を強いられた。

「あったわ! うふふ、私のキノコ……いっただっきまーす」
「止めてくれ! それは私のキノコだ! あっ……あぁーっ!!」

そして魔理沙の悲しき絶叫が、むなしく境内に響き渡った。













「二人とも、松茸ご飯が出来たわよー」
「うっうっ……私の大切な松茸が三分の一に……」
「ほらもう泣き止みなさいよ、毎日作れるんでしょ?」

魔理沙を慰めているアリスを横目に、霊夢がおひつをちゃぶ台のど真ん中へと置いた、
蓋を開ければ、松茸の香りが三人を包み込み、天にも昇る気持ちに誘う。

「うう……普段キノコを食さないお前達に松茸の価値がわかってたまるもんか」
「価値なんか分からなくていいわ、この匂いと味だけで十分よ」
「そうね、では食物の神と魔理沙に感謝して、いただきます」

それは博麗神社の何でもない日常だった。

「あ、次は本シメジでお願い」
「本シメジ? それって美味しいの?」
「お前らな……」
        ,.-ー-、
       /    \
     , '        \
    /,  _,.へ、_   ,.ヘ、
    ´7  ゝ、  _,.r⌒i´ 〈ヘ
    ,'-'"く__ィ__,.-=ニ=ニ=-=`ヽ、    
    / _,.イノ´         ', `'、_  
   ,!ィ,.ィ´ γ   ハ  i  ハ-_ i  ハ>
  ,.' .イノ  /  ハ_ニ、.ハノ,ィ'ハi イ i ,ゝ 
 <、  i  イレ/イト ´ i `   ヒノ' i ハノ !  ……松茸以外の何だというんだ?
  `ヽ)  .(、ハ.,,'ー'     "从ハノ
    ノ    Yヽ、   )~ ,.イ ハi_ゝノ⌒ヽ 
   〈 i  / ',ヘ i`=rー=ニ´Y)ヽイ (    `;
    )ハ γ  `(ヽヘ、_,.〉}><{〉、_~;ーr ''
     ´〈,ヘハ、_,.、_ノ      i〉、____つ(ノ
       /  ,.イk 、_,,...-='iヽ、  `ー'  
      ,〈  J´  Yi´   'イ  '.,
      i >ー'    Y   !'  _ゝ,
      ゝ)、 _/   `ー-= ´ イン
       `ーr=ゝ、____ハ、__,.イ'´
        ヽ__/´   `ー´
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.2380簡易評価
2.70名前が無い程度の能力削除
立派な松茸ですね
4.80名前が無い程度の能力削除
AAがかわいいから許す
5.90名前が無い程度の能力削除
なんの問題もなく健全なSSだぜ
12.80煉獄削除
AAも可愛いし、内容も面白かったです。
で、一体どこから生えてくるんですか?
教えて。
13.80名前が無い程度の能力削除
ご立派なエリンギ生やしてくれればむしゃぶりつきます
14.90名前が無い程度の能力削除
AAがかわいいからいいや
16.50名前が無い程度の能力削除
タグでネタバレしちゃってるのが残念なのと、ほんわか要素が何一つ見つからなかったなぁ。
22.70名前が無い程度の能力削除
股間から生えているなら100点
23.80名前が無い程度の能力削除
魔理沙かわいすぐるw
35.90名前が無い程度の能力削除
生える場所が気になるな
どこ?
42.80名前が無い程度の能力削除
松茸が生えた場所はもちろん…
頭頂部少し後辺りだよね!バカ殿~
44.70名前が無い程度の能力削除
健全だな。うん。
生えれる場所によっては議論の余地はあるが、健全だな。
51.80名前が無い程度の能力削除
と、当然・・・あ、頭から生えてくるんですよね???
わ・・・わかります。
52.100名前が無い程度の能力削除
健全なSSだな…
そんでキノコはどこから生えてきたんだ?
53.100名前が無い程度の能力削除
AAがかわいすぎる
55.100名前が無い程度の能力削除
イイSSキターーー                                                  服のー部ってことは頭じゃないよな?じゃあ

キノコはどこから生えてるんだ・・・
59.100名前が無い程度の能力削除
作者、なぐりてぇww
60.80名前が無い程度の能力削除
だ…だよな!!キノコは松茸だよ…な!!
なっ…別に、あれだぞ?そんな考えしてないからな?

みすちー「チンチン」
75.70ミスターX削除
松に生えるのでないなら、それは松茸でなく松茸に似た別の何かだろう
敢えて言うなら股茸とか
あるいは、魔理沙以外の人に生えない(あるいは、同等の品質にならない)なら、魔理茸というのもいいかも
いや、「魔法使いなら生やせる」ということらしいから、魔女茸か?