「ひふひー」
「……あ? なんて??」
「ひふひー、ほへんほーはい」
「だから、なんて?」
「ほへん」
「さっぱり分からん。ばんきっき分かる? 分からんか」
「ほへんほーはい」
「だからレティさん分からんてば。てか氷頬張りながら喋らないでよ、下品だなぁ」
「んべぇ」
「うっわ、汚い! 吐き出すな!」
「だってしょーがないじゃない、暑いんだし」
「だからってねえ」
「私は雪女だから暑さに弱いの!」
「まあ、まだまだ残暑は厳しいけどねえ」
「あーだめ、もう暑いあついあふひ」
「また氷喰ったのあんた」
「わふへへは、ひふひー、ほへんほーはい」
「わからんて」
「ひふひー、ほへん」
「やめろ、氷頬張りながらしゃべるのやめろ」
「ひふひはほーへはい」
「ええい、もう帰れ、この酔いどれ雪女!」
「んべぇ……。だから、おでんちょーだいって」
「お客さま、いつもありがとうございますぅ」
「てのひらリバーシブル」
「はい、おでん。……わかったわかった、ばんきっきにもあげるって。てかあんた、暑いの駄目なのにこんなん喰えんの?」
「ヨユウっすわ、ヨ・ユ・ウ」
「ほんとにぃ?」
「うわあっつゥ!」
「やっぱじゃん」
「熱すぎでしょコレ! 客を殺す気?」
「いやばんきっき普通に食ってるじゃん。あんたが猫以下のクソザコナメク舌なんでしょ」
「こんなん喰えるなんて、お前ら人間じゃねぇ!」
「うん」
「あー……だめこれ。マジ、だめだわこれマジ、やばいわ」
「そんなん注文するから」
「だめ、あーだめこれもう、べろ火傷しちゃってつらい辛いつらひ」
「まーたぁ」
「あー、ひひはえふは~」
「食い物を粗末にするな!」
「ひぇん……」
「あのね。氷はめっちゃ貴重なの。夏場に氷が食べられるのはね、真冬に切り出した湖の氷を、夏でも涼しい山の洞窟までわざわざ運んで保存してるからなのよ? 手間かかってんの。お高いの!」
「ひっへふ」
「氷はね、厳しい夏の暑さから人々を一時解放してくれる、貴重なきちょ~な存在なの。それをあんた、無駄遣いしくさって! 帰れ、お前もう帰れ!」
「んべぇ……。でも私、雪女だから吹雪呼んで涼しく出来るけど」
「ずっとここにいてもいいのよ、レティさん」
「手のひらW大回転」
「やめろよぉ~、そういう卑猥なこと言うの! 営業停止になったらどうすんだよ! ただでさえ最近本職の奴が出てきちまって肩身が狭いんだからぁ!!!」
「ミヨイー、ミヨイー!」
「やめろ! いつかの全裸メンバーみたいな口調で言うのやめろ!」
「古過ぎない?」
「ちくしょー、あたしのほうが先に女将設定出てたってのにさあ! あたしの土俵に後からやってきて土足で踏みにじってさあ!」
「思ったより闇が深い」
「妖怪の飲み屋っつったらあたしでしょ! それがお前、後から本職出してあたしの立場潰しに来てさあ! あんだけ夜雀屋台ネタ書いといてそりゃないでしょ! 散々遊んで飽きたらポイかよォォお前らァ!」
「泣くほど? ま、まあまあ、あっちは女将じゃなくて看板娘だし」
「しねぇぇぇえぇ! みよいぃぃいぃ!」
「みすちー、ちょっとこの煮物食べてみ」
「あん? ……うわ、なにこれ美味しい」
「鯢呑亭の煮物よ、それ」
「美宵ちゃん大好き」
「手首スクリューじゃん、スクリュークラッシャーパンチじゃん!」
「ままままあまあまあ? ここここのくらいの煮物ならミスティアさんでも作れるし??? るし?」
「え!! 同じ値段で煮物を!?」
「できらぁっ!」
「大丈夫よ、このおでん美味しいし、全然負けてないわよ。ねー、ばんきっき……あっつ! あっつ!」
「IQチンパンかよ」
「ひふひー、ひふひー!」
「ったく、ばんきっきもなんか言ってやってよ、この酔っぱらいにさぁ。カニばっか喰ってんじゃないわよ、あんたも。カニもう品切れよ?」
「ひふぶふっ」
「ぎゃっぶ! きったねえ、氷飛ばすな馬鹿!」
「ごめんごめん」
「サイアク、顔にかかったぁ!」
「あー、だめこれもう、おでん熱くて食べられないわ。冷めるまで美宵ちゃんの煮物食べてよう」
「あ? ウチの席に座ってそういうこと言う?」
「ヒエッ、怖い顔」
「今度という今度は流石にトサカに来たわ。あんたに出す酒はない。帰れ。二度と来るな」
「もう、そんなに怒っちゃって。冗談なんですよぉ、じょ・お・だ・ん」
「うっさい。お高い氷を粗末にするような馬鹿は出禁だ、出禁」
「でも私、雪女だしいくらでも氷作れるけど」
「次はなに飲みます? レティさん」
「歯車的砂嵐の小宇宙!」
「大体ね。新キャラのくせに調子のりすぎでしょあいつ」
「またその話」
「なんか鬼と親しげだし、夢とは言えあの鬼巫女を翻弄するなんて、ボスキャラでもないのにさあ。あいつぜってー枕してるって。陰でW大回転してるって」
「ひっどい言いがかりねえ」
「だって無理やん、あんなおっぱい勝てるわけないやん。なんなんあの衣装、常時パイスラしとるやん。持たざる者には勝ち目ないやん。あんたもそう思うでしょ、ばんきっきー!」
「ばんきっきならさっき鯢呑亭でカニ補給するって出ていったけど」
「ばんきっき!?」
「じゃあ、私も鯢呑亭行くわ。このあと二次会があるの」
「ちょちょちょ、待ちなさいよぉ!」
「またお土産持って来るから」
「いや、私も行くわ。煮物食べたい」
「……もう屋台やめてW大回転してたほうがいいんじゃないの、みすちー」
レティさん、みすちー、ばんきっきとは珍しい組み合わせ。
漫才じみたやり取りに笑わせていただきました。クソザコナメク舌の語感、嫌いじゃない
あまりにも平和で笑いがこみ上げてきました
手のひらドリルなミスティアがよかったです
笑わせて頂きました。笑うしかないじゃん。