雨の中の人里を二人の少年少女が楽しそうに紫色の傘をさしながら歩いていました。正確には、人間の少年と妖怪の少女でした。その妖怪の名は、唐笠お化けの多々良小傘でした。
「こんな雨の日でデートでよかったの?私は大丈夫だけど…」
「僕…晴れの日が苦手なんだよね。特に太陽が出ている日なんて、最悪なんだよ。眩しいし…」
少年は笑いながら、小傘が濡れないように傘を傾けると、慌てて小傘が傘を落としてしまった。
「何してるの?濡れてもよかったの!?」
「私は傘の付属神だし、平気だよ!」
「妖怪でも、女の子。少しは守らせて…」
落ちた傘を拾うと、小傘と一緒に入って再び歩き出した。何となくだが、小傘がもじもじしている。
(う…私の分身とも言える傘を、男の子に持たせてるなんて…恥ずかしい…)
「小傘。大丈夫?何処かで休む?」
「そ、そうだね!何処がいいかな?」
近くに無人の小屋があったので、その中に入り雨宿りをする。今日は大雨のため、暫く雨が降り続ける。
「暫く止みそうにないね。」
「二人っきりだから、よかったけどね…」
「え!?」
少年は小傘を抱き締める寸前に、天気が荒れて立て掛けていた紫色の傘が飛んでいってしまった。
「私の傘が!?」
「僕が取ってくるよ!」
「ダメ!こんな雨の中で危ないよ!私も一緒に行くから!」
「……一緒に行こう!」
二人が小屋から出ると、雨が止んで空に虹が出てきていた。少年と小傘は手を繋いで、飛んでいった傘を取りに行った。傘を見つけると、壊れていなかったので、小傘は一安心。
「これからどうしよ…?」
「家に親は今日いないんだ。明後日の夜に帰ってくるから…小傘は…泊まりに来ない?」
「行く!でも、怒られないかな?私…妖怪だよ?」
「僕が認めさせるから!安心してよ!」
小傘は少年の優しい気持ちに涙を流しながら、少年の家に行ったのでした。