「次の方どうぞー……あら」
永琳は薬学のついでに一通りの医学も修めていて、永遠亭で診療所を営んでいる。
診療室に入ってきたのは上白沢慧音だった。ハクタクという種族だからか彼女は丈夫で、診療所に来ることは珍しいほうだった。
「タイミングが悪かったわね、さっき優曇華に常備薬を届けに行かせたのよ」
慧音は寺子屋の教師をしている。
子供たちに怪我は付き物なので、寺子屋には永琳製の常備薬を置いてある。月に一度、使った分だけ補充されて代金を支払う仕組みだ。いわゆる置き薬である。
「いや、それじゃないんだ。診察でもない」
「?」
永琳は首をかしげた。
慧音が妙に深刻な顔をしているので、てっきり体調が悪いと思っていたのだ。
「少し相談に乗ってもらいたいんだ」
「相談? まあいいけど」
どうせ今日はもうそろそろ閉めようと思っていたの。
そう言って永琳は、「診察終了」の看板を出しておくよう、近くにいた兎に命じた。
「で、何かしら。生理がこない? おめでとう」
「いや断じて違う」
永琳は首をかしげた。
これで百パーセントあっていると思っていたのだ。
「妹紅のことなんだけどな」
「のろけ話を聞けって?」
「なんでそうなる。そうじゃないんだ。怒らせてしまって」
「しまって」のあたりで慧音は涙目になった。
のろけ話じゃないのは良いけど、結局その手の話じゃないの。そう思った永琳は、面倒に感じた。
ある人が抱える恋愛の悩みや人生の悩みは、他人が聞いたら阿呆かと言いたくなるようなものばかりだ。だから永琳はあまり関わりたがらない。
本人は真剣だからタチが悪いのだ。怒られるから、いい加減な対応もできないのである。
しまいには「ちょっと、聞いてる!?」である。肯定すると、事実に関わらず嘘つき呼ばわりされるので注意が必要だ。
永琳は黙っていたのだが、慧音は話を続ける。思いつめている証拠であった。
「原因がわからないんだ。妹紅に聞いても『うるさい変態』の一点張りで、ちっとも解決しない」
「だからって私が知ってる道理は無いと思うけれど」
「だから考えてほしいんだ。聡明だろう、永琳殿は」
褒められて悪い気はしなかったが、しかし永琳は、慧音の人を見る目は曇っていると思った。
永琳は自他共に認める天才であるが、「ああここが分からないんだな」と理解できるタイプの天才ではなく、「何でこんなことが分からないのか分からない」タイプの天才である。
つまり人の心に疎い天才であり、それは彼女自身がよく知っている。
自分を選んだのは正直人選ミスだろう。永琳はそう思っていた。
それはともかくとして、うるさい変態などという言葉は、よほどのことが無ければ言うまい。まして慧音と妹紅は親しい仲である。
その台詞だけなら、非は慧音にありそうなものだ。
「――いったいどういう状況でどうなったのか整理して欲しいんだけど」
「あ、ああ」
慧音いわく。
寺子屋の授業に興味を持った妹紅が、見学をした。
慧音はいつも通りに授業をしていたのだが、いきなり妹紅が「慧音のアブノーマル!」と叫んで出て行ってしまった。
そういうことらしかった。
「ふむ」
永琳はそう言った。
彼女には分かっていた。慧音が致命的ミスをやらかしたのだと。
いつも通りやっていたのにいきなり怒られて、原因が分からない。
典型である。典型であるのに、本人がミスを自覚できていない分、問題は深刻で面倒だ。言って納得するならまだ良いが、言ってもそれがミスだと理解できない場合、とても面倒になる。
「何を教えたの?」
「ああ、その日は外の世界の歴史について教えた。大体三・四世紀のローマについてだ」
自分の昔のことに触れられて逆上、というわけではないのだろうと、彼女は可能性を一つ潰した。
ローマという国のことを永琳は知らないが、日本のことでなければ妹紅が知るよしもない。第一、三・四世紀というならば、妹紅など産まれていないのだ。
「どういう形式で教えたの? 口述? 教科書を使った?」
「ああ、プリントを配布した。私が持ってるテキストを要約してあって、重要な箇所がカッコ抜きになっているから、穴埋めしていくんだ」
「なるほど」
なるほどとしか言いようがないほどに、ありそうな歴史の授業である。
慧音の授業がつまらないと言われる理由が垣間見えたように、永琳には思えた。
「そのプリントはある? あなたの持っているテキストでもいいけど」
「ああ、テキストなら常に持ち歩いているよ」
そう言うと彼女は、診療室備え付けの手荷物カゴから一冊の本を取り出して、永琳に手渡した。
永琳はそれを眺める。「詳説世界史」と題された青表紙の本。ざっと目を通す。時代・場所別に歴史が図表や写真とともに書き綴られており、なるほど学習に適した本のようだった。
慧音によって几帳面に書き込まれたメモが、使い込まれていることを物語っている。しかし表紙も中身もさほど色あせていなかった。大事にされているのだろう。
「怒らせてしまったときは、どのあたりを?」
「ああ、ええと――ここだ。ローマ帝国に急速に広まった、キリスト教についての記述だ」
慧音は永琳からテキストを受け取ると、問題となっているページを開いて見せた。
ローマにおいて、キリスト教が迫害を乗り越えて国教となるまでの流れが、簡潔に分かりやすく並べられているようでした。
「ちょっと貸してちょうだい、読むから」
永琳はテキストを受け取ると、問題となりそうな部分を探し始めた。
おそらく問題は、教えた内容にあるはずだ。彼女はそう推測していた。
そして永琳は、その原因を見つけた。
それは、偶然にしてはひどすぎた。
四世紀後半、異教復興をくわだて失敗し、「背教者」と呼ばれたローマ皇帝。
――フラウィウス・クラウディウス・「ユリアヌス」。
ひでぇ話でした(ほめ言葉
「風雲児達」
チンコ川盆地
本当に語呂合わせで覚えるんですね。てっきりギャグの世界の話だと思ってました。
男子は「せいし」で大爆笑、女子はキョトンとして教師は苦笑い
生死を賭けた戦い
エローラ(インドの地名)
チチメカ族(10世紀頃のメキシコにいた部族)
語呂、「いちごパンツ本当に変」
ホテル「ヴェルサイユ」
歴史が苦手だけどこれは勉強になる!!!
>>57
kinky…アブノーマル…後はお察しください
勉強になりました。
F、Cl、Br、I、At
ふっ、くら、ブラジャー、愛の、跡。
希ガスはもっとひどかった・・・・
たくさんの同士がいて嬉しい