冬の澄んだ空気に包まれた博麗神社。
境内では『酉の市』と書かれた大きな看板が広げられていた。そこに霊夢と魔理沙が鳥の絵を描きこんでいる。
「酉の市だから鳥の絵って、今更だけど安直だよな」
「わかりやすいし、簡単でいいじゃない。お手本もいっぱいあるんだから」
「へいへい。図鑑見てしっかり模写させていただきますよっと」
「あんまり雑に書かないでよ? それ入口に出す看板なんだから……あっ」
霊夢の唐突な声に、作業を続けていた魔理沙が反応する。
霊夢の目の前には、自分で書いた鳥の絵があった。しかしその鳥は何とも妙な見た目をしていた。
木に掴まれそうもない、ペタンとした足。そして小鳥が地面を這うときの前傾姿勢ではなく、ぽけっと棒立ちしている直立姿勢。なんとも奇妙な、しかしどことなく愛嬌のある鳥の姿が描かれていた。
「なんだこれ? 鳥にしては人みたいだな」
「話しながら描いてたら、よくわからないものが描けてた……」
「まあ、これはこれで愛嬌はあるな。見てて気が抜けるぜ」
「可愛げがあるって言いなさいよ」
「しかしこの見た目……、なんか見覚えあるんだよなぁ」
魔理沙は霊夢の間違いで生まれた鳥をじっと見つめる。
当然、こんな鳥を見たことは霊夢にはない。正真正銘、偶然の産物だった。
「いるわけないでしょ、こんな鳥」
「いや、外の世界の動物図鑑を鈴奈庵で読んだ。その時にこんな奴がいたな」
「外の世界の? ふーん。どんなやつ?」
「確かペンギンって名前だ。こんな感じに普段は立ってて、とんでもなく寒い所にいるんだそうだ」
魔理沙の話を、霊夢は鼻で笑った。
「そんな所に鳥なんか、いるわけないじゃない。餌だってないでしょ、寒い場所には」
「それがこいつ、水の中をすごい早く泳げるんだそうだ。それで魚とか食べてるんだってよ」
「水の上じゃなくて中? ないない、そんな創作の話みたいな鳥。妖怪なんじゃないの?」
「ずいぶん疑うじゃないか。妖怪見すぎて、変なものは全部妖怪に見えてないか?」
霊夢と魔理沙がペンギンに対して議論をしていると、神社に一人の少女がやって来た。
「やっほー二人とも。あれ? ペンギンだ。可愛く描けてるじゃん!」
「ほら見ろ、外の世界から来てる菫子がいうんだ。いるんだって、ペンギン」
「えー? まあ、外の世界の人間がいうならそうなのかな……」
魔理沙は菫子に、これまでの経緯を説明した。
外の人間からすれば、ペンギンはありふれた可愛い動物だ。菫子は自分のスマホを持ち出すと、水族館で撮ったペンギンの写真を見せた。
「ほら、これがペンギン。ちょこちょこ歩いてて可愛いんだよ」
「む、確かにこれがよちよち歩いてたら、ちょっと可愛いかも……」
「へー、世の中面白い鳥もいるもんだなー」
菫子のスマホにあったペンギンたちを見る霊夢と魔理沙。その可愛らしい姿は、二人の心を掴む。二人とも、根っこの部分はしっかり乙女なのである。
「こんなに可愛いんだったら、このまま酉の市の看板に乗せておきましょうか」
「マスコットとかになりそうだな、こいつ。幻想郷じゃまったく見かけないけど」
「マスコット……。あ、そうだ!」
霊夢はひらめいた衝動のまま、菫子に詰め寄る。
「ねえ、このペンギンってさ、何かのマスコットとかで売られたりしてない!?」
「お、落ち着いてレイムッチ! まあ、水族館とかじゃぬいぐるみとか売ってるよ」
「やっぱりね。私の見る目に狂いはないわ! そうと決まれば作るわよ!」
そう言って神社を飛び立とうする霊夢。しかし魔理沙がその腕を掴んで止めた。
「落ち着け霊夢。いくら可愛いからって、全然知りもしないやつの人形なんか売れないぞ……」
「何言ってんの! 可愛い物はいつだって人気なのよ! ペンギンだって売れる!」
「さっきまでの疑り深さはどこ行ったんだ……」
「やっぱりこの二人はいつ見ても面白いなー」
霊夢の抗議の声が寒空に響く。それを必死に止める魔理沙、さらにそれを見て笑う菫子。
博麗神社の日常が、今日も穏やかに流れていた。
境内では『酉の市』と書かれた大きな看板が広げられていた。そこに霊夢と魔理沙が鳥の絵を描きこんでいる。
「酉の市だから鳥の絵って、今更だけど安直だよな」
「わかりやすいし、簡単でいいじゃない。お手本もいっぱいあるんだから」
「へいへい。図鑑見てしっかり模写させていただきますよっと」
「あんまり雑に書かないでよ? それ入口に出す看板なんだから……あっ」
霊夢の唐突な声に、作業を続けていた魔理沙が反応する。
霊夢の目の前には、自分で書いた鳥の絵があった。しかしその鳥は何とも妙な見た目をしていた。
木に掴まれそうもない、ペタンとした足。そして小鳥が地面を這うときの前傾姿勢ではなく、ぽけっと棒立ちしている直立姿勢。なんとも奇妙な、しかしどことなく愛嬌のある鳥の姿が描かれていた。
「なんだこれ? 鳥にしては人みたいだな」
「話しながら描いてたら、よくわからないものが描けてた……」
「まあ、これはこれで愛嬌はあるな。見てて気が抜けるぜ」
「可愛げがあるって言いなさいよ」
「しかしこの見た目……、なんか見覚えあるんだよなぁ」
魔理沙は霊夢の間違いで生まれた鳥をじっと見つめる。
当然、こんな鳥を見たことは霊夢にはない。正真正銘、偶然の産物だった。
「いるわけないでしょ、こんな鳥」
「いや、外の世界の動物図鑑を鈴奈庵で読んだ。その時にこんな奴がいたな」
「外の世界の? ふーん。どんなやつ?」
「確かペンギンって名前だ。こんな感じに普段は立ってて、とんでもなく寒い所にいるんだそうだ」
魔理沙の話を、霊夢は鼻で笑った。
「そんな所に鳥なんか、いるわけないじゃない。餌だってないでしょ、寒い場所には」
「それがこいつ、水の中をすごい早く泳げるんだそうだ。それで魚とか食べてるんだってよ」
「水の上じゃなくて中? ないない、そんな創作の話みたいな鳥。妖怪なんじゃないの?」
「ずいぶん疑うじゃないか。妖怪見すぎて、変なものは全部妖怪に見えてないか?」
霊夢と魔理沙がペンギンに対して議論をしていると、神社に一人の少女がやって来た。
「やっほー二人とも。あれ? ペンギンだ。可愛く描けてるじゃん!」
「ほら見ろ、外の世界から来てる菫子がいうんだ。いるんだって、ペンギン」
「えー? まあ、外の世界の人間がいうならそうなのかな……」
魔理沙は菫子に、これまでの経緯を説明した。
外の人間からすれば、ペンギンはありふれた可愛い動物だ。菫子は自分のスマホを持ち出すと、水族館で撮ったペンギンの写真を見せた。
「ほら、これがペンギン。ちょこちょこ歩いてて可愛いんだよ」
「む、確かにこれがよちよち歩いてたら、ちょっと可愛いかも……」
「へー、世の中面白い鳥もいるもんだなー」
菫子のスマホにあったペンギンたちを見る霊夢と魔理沙。その可愛らしい姿は、二人の心を掴む。二人とも、根っこの部分はしっかり乙女なのである。
「こんなに可愛いんだったら、このまま酉の市の看板に乗せておきましょうか」
「マスコットとかになりそうだな、こいつ。幻想郷じゃまったく見かけないけど」
「マスコット……。あ、そうだ!」
霊夢はひらめいた衝動のまま、菫子に詰め寄る。
「ねえ、このペンギンってさ、何かのマスコットとかで売られたりしてない!?」
「お、落ち着いてレイムッチ! まあ、水族館とかじゃぬいぐるみとか売ってるよ」
「やっぱりね。私の見る目に狂いはないわ! そうと決まれば作るわよ!」
そう言って神社を飛び立とうする霊夢。しかし魔理沙がその腕を掴んで止めた。
「落ち着け霊夢。いくら可愛いからって、全然知りもしないやつの人形なんか売れないぞ……」
「何言ってんの! 可愛い物はいつだって人気なのよ! ペンギンだって売れる!」
「さっきまでの疑り深さはどこ行ったんだ……」
「やっぱりこの二人はいつ見ても面白いなー」
霊夢の抗議の声が寒空に響く。それを必死に止める魔理沙、さらにそれを見て笑う菫子。
博麗神社の日常が、今日も穏やかに流れていた。
ペンギンかわいいですよね