ユキが風邪を引いた。
「うぅ~……昨日裸で寝たのが原因かな……」
「……馬鹿なのに風邪引いた」
「マイは病人にも辛辣だね……」
「……病人である前にユキだから」
「ひどい~……」
自室のベッドに横たわるユキの隣にマイは腰掛けている。
「……しばらく大人しくしているが良い」
「何で上から目線なのかな~……それにしてもマイ、ご機嫌だね」
「……弱っているユキにあんなことやこんなことを出来ると思うとね」
マイは嫌な笑みを浮かべてユキを見た。
「ひいぃ、貞操の危機!」
「仲良しなのは良いけど、少し静かにしてなさいよ」
いつの間にか部屋に入って来た夢子がユキに向けて言う。
「助けて、私の貞操が!」
「……よいではないか、よいではないか」
「本当に仲良しね……」
夢子は溜め息をつくと、手に持っていたお盆をベッドの横に置いた。
「お粥作ったけど、食べれる?」
「うん、大丈夫」
「なら……はい、自分で食べられるでしょ?」
ユキに手渡されたお粥は、マイの手によって遮られる。
「……私が食べさせてあげる」
「あら、ならユキの看病お願いしていい?私は神綺様のお世話しなくちゃならないから」
「任せて」
「あれ?私の意見は……?」
胸を張るマイと溜め息をつくユキ。いつもなら逆である。
「それじゃあ、お願いね。何かあったら呼んでちょうだい」
「ねぇ、私は無視?」
ユキの主張も虚しく、夢子は部屋から出ていった。
「……という訳で、今日の私はユキの面倒を見る。言わばメイド的なもの」
「マイがメイドかぁ……」
ユキは弱った頭で、瞬間的にマイのメイド服姿を想像する。
「これはなかなか……」
「……ふむ、メイド服ね」
「あれ?心読まれてる?」
「……しばし待たれよ」
マイは部屋から出ていく。
そしてしばらくすると戻ってきた。
「……これでどう?」
戻ってきたマイは、青いメイド服を着ていた。
「どこから取ってきたのそれ……」
「……夢子姉さんから。あの人、隠れメイド服マニアだから、言ったら貸してくれた。ちなみにサイズぴったり」
「やっぱり神綺様の娘なんだね……」
この調子だと、私や他の姉さん達、神綺様の分も用意してそうだななどと思うユキ。
「……ユキは人の事言えない」
「返す言葉も無いよ……」
えぇ、マイのメイド服姿を想像しましたとも。
胸が高鳴りましたとも。
現に今もテンション上がってますとも!
「マイ!お願いだから一回抱きしめさせて!」
「……風邪がうつる」
「風邪なんだし甘えさせてくれても……」
「……風邪引いた程度で甘えられると思うな」
「あう~……私のメイドは厳しい……」
寝ながらうなだれるマイ。
「……夢子姉さんは神綺様に甘すぎる」
「まあ、それは言えてるけど……」
「……それはともかく、お粥が冷める」
マイが手に持ったお粥を強調して言う。
「そうだね。せっかく作ってもらったんだし」
上半身を起こすユキの口元にマイはお粥を一口近付けた。
「……あ~ん」
「今のマイはツンなの!?デレなの!?」
「いいから食えや」
「あ、熱っ!口に突っ込まないで!」
ユキはひいひい言いながらやっとの事でお粥を飲み込んだ。
「……このくらい耐えるべき」
「口に突っ込んだ本人が何を!」
「……二回戦、あ~ん」
マイは再びユキの口元にお粥を近付ける。
「あ、あ~ん……って熱っ!そこ鼻!鼻だから!」
鼻を抑えてベッドを転げ回るユキ。
「……おいしいとこ取り」
「誰も見てないから!誰得のおいしさだよ!むしろ私損だよ!」
「……ツッコミは好調」
「おかげさまでね!休む暇は無いですけど!」
そう言った直後、ユキは咳込む。
「……ごめん」
「いや、いいよ。それよりお粥の続きやろ。あ~ん」
少し反省したマイは、大人しくお粥をユキの口に運んだ。
「ふぅ、ごちそうさま」
食べ終えたユキは両手を合わせて言う。
「……お粗末様。と夢子姉さんが言っている気がする」
「言っていてもマイに言われたくないと思う」
「……病人は寝るべき」
「ま~た、都合悪くなると話そらす~」
ユキはそう言って笑うのだが、呼吸は先程よりも荒くなっている。
「……おしゃべりは終わり。寝て」
マイはベッドに上がり、ユキを押し倒す。
「はは……さっきよりも体があっついや……」
「……私のせい」
「違うよ、私の体調管理」
無理矢理浮かべた笑顔で、ユキはマイを見る。
「……あつい?」
「ちょっとね……」
それを聞くと、マイは小さな声で呪文を呟く。
「魔法?何するの?」
呟き終わったマイは、首を傾げるユキのおでこに優しく触れた。
「……どう?」
「ん……冷たくて気持ちいい……。マイ、こういう魔法得意だもんね」
マイは細かな所を操作したりする精密な魔法を得意としている。
ユキは広範囲に影響を及ぼす良く言えば壮大、悪く言えばがさつな魔法が得意だ。
「……全身魔法だから」
静かに布団に入ったマイは、ユキにそっと抱き着いた。
「気持ちいい……でも、こんな近くじゃマイにうつっちゃうよ」
「いいの。……私とユキは一心同体。ユキが風邪引いてるなら、私が引いても問題無い」
「マイ……ありがと」
「……早く治して、悪戯しよう」
マイは珍しく微笑んでユキをぎゅっと抱きしめる。
「そうだね、何しようか?」
「……夢子姉さんのおっぱい揉む」
「ルイズ姉さんのパンツも盗んじゃお」
「……サラ姉さんには落とし穴掘ろう」
「神綺様には性的な事を!」
「……アリスは逆さ吊りに」
二人は微笑みを交わす。
「……みんなユキを心配している」
「早く治さなくちゃね!」
「……ユキがまだ治ってないのはまだしも、なんでマイまで風邪引いちゃったのよ?」
夢子は腕を組んで、困ったように溜め息をつく。
「……面目ない」
「私がうつしちゃったから……」
申し訳なさそうにしている二人を見て、再び溜め息をつく。
「まあいいわ。仲良く二人で休んでなさい」
そう言って夢子は部屋の扉を開く。そして、「何かあったら呼んで」と言い残し、部屋から出て行った。
「ごめんね、マイ」
二人で一つのベッドに寝ている為、二人の距離はとても近い。
「……謝らないで。私達は一心同体」
「……昨日今日のマイはデレだよね」
「なっ……」
顔を赤くしたマイはユキに背を向ける。
「ふふっ、今回は私の勝ちだね」
「……私はメイドだから……主人に勝ちを譲る」
「それも負け惜しみと言うより、デレっぽいよ」
「っ!…………私の完全敗北」
マイは再びユキに向き直った。
「……ご褒美として、私を抱きしめても良い」
「えっ?」
「……昨日言っていたはず」
ユキは飛び付くようにマイに抱き着いた。
「あぁ~、もうっ!マイ可愛すぎる!」
強く抱きしめられたマイは、ユキに聞こえないくらい小さく呟いた。
「……こんなのも悪くない」
彼女達の風邪がなかなか治らなかったのは言うまでもない。
「うぅ~……昨日裸で寝たのが原因かな……」
「……馬鹿なのに風邪引いた」
「マイは病人にも辛辣だね……」
「……病人である前にユキだから」
「ひどい~……」
自室のベッドに横たわるユキの隣にマイは腰掛けている。
「……しばらく大人しくしているが良い」
「何で上から目線なのかな~……それにしてもマイ、ご機嫌だね」
「……弱っているユキにあんなことやこんなことを出来ると思うとね」
マイは嫌な笑みを浮かべてユキを見た。
「ひいぃ、貞操の危機!」
「仲良しなのは良いけど、少し静かにしてなさいよ」
いつの間にか部屋に入って来た夢子がユキに向けて言う。
「助けて、私の貞操が!」
「……よいではないか、よいではないか」
「本当に仲良しね……」
夢子は溜め息をつくと、手に持っていたお盆をベッドの横に置いた。
「お粥作ったけど、食べれる?」
「うん、大丈夫」
「なら……はい、自分で食べられるでしょ?」
ユキに手渡されたお粥は、マイの手によって遮られる。
「……私が食べさせてあげる」
「あら、ならユキの看病お願いしていい?私は神綺様のお世話しなくちゃならないから」
「任せて」
「あれ?私の意見は……?」
胸を張るマイと溜め息をつくユキ。いつもなら逆である。
「それじゃあ、お願いね。何かあったら呼んでちょうだい」
「ねぇ、私は無視?」
ユキの主張も虚しく、夢子は部屋から出ていった。
「……という訳で、今日の私はユキの面倒を見る。言わばメイド的なもの」
「マイがメイドかぁ……」
ユキは弱った頭で、瞬間的にマイのメイド服姿を想像する。
「これはなかなか……」
「……ふむ、メイド服ね」
「あれ?心読まれてる?」
「……しばし待たれよ」
マイは部屋から出ていく。
そしてしばらくすると戻ってきた。
「……これでどう?」
戻ってきたマイは、青いメイド服を着ていた。
「どこから取ってきたのそれ……」
「……夢子姉さんから。あの人、隠れメイド服マニアだから、言ったら貸してくれた。ちなみにサイズぴったり」
「やっぱり神綺様の娘なんだね……」
この調子だと、私や他の姉さん達、神綺様の分も用意してそうだななどと思うユキ。
「……ユキは人の事言えない」
「返す言葉も無いよ……」
えぇ、マイのメイド服姿を想像しましたとも。
胸が高鳴りましたとも。
現に今もテンション上がってますとも!
「マイ!お願いだから一回抱きしめさせて!」
「……風邪がうつる」
「風邪なんだし甘えさせてくれても……」
「……風邪引いた程度で甘えられると思うな」
「あう~……私のメイドは厳しい……」
寝ながらうなだれるマイ。
「……夢子姉さんは神綺様に甘すぎる」
「まあ、それは言えてるけど……」
「……それはともかく、お粥が冷める」
マイが手に持ったお粥を強調して言う。
「そうだね。せっかく作ってもらったんだし」
上半身を起こすユキの口元にマイはお粥を一口近付けた。
「……あ~ん」
「今のマイはツンなの!?デレなの!?」
「いいから食えや」
「あ、熱っ!口に突っ込まないで!」
ユキはひいひい言いながらやっとの事でお粥を飲み込んだ。
「……このくらい耐えるべき」
「口に突っ込んだ本人が何を!」
「……二回戦、あ~ん」
マイは再びユキの口元にお粥を近付ける。
「あ、あ~ん……って熱っ!そこ鼻!鼻だから!」
鼻を抑えてベッドを転げ回るユキ。
「……おいしいとこ取り」
「誰も見てないから!誰得のおいしさだよ!むしろ私損だよ!」
「……ツッコミは好調」
「おかげさまでね!休む暇は無いですけど!」
そう言った直後、ユキは咳込む。
「……ごめん」
「いや、いいよ。それよりお粥の続きやろ。あ~ん」
少し反省したマイは、大人しくお粥をユキの口に運んだ。
「ふぅ、ごちそうさま」
食べ終えたユキは両手を合わせて言う。
「……お粗末様。と夢子姉さんが言っている気がする」
「言っていてもマイに言われたくないと思う」
「……病人は寝るべき」
「ま~た、都合悪くなると話そらす~」
ユキはそう言って笑うのだが、呼吸は先程よりも荒くなっている。
「……おしゃべりは終わり。寝て」
マイはベッドに上がり、ユキを押し倒す。
「はは……さっきよりも体があっついや……」
「……私のせい」
「違うよ、私の体調管理」
無理矢理浮かべた笑顔で、ユキはマイを見る。
「……あつい?」
「ちょっとね……」
それを聞くと、マイは小さな声で呪文を呟く。
「魔法?何するの?」
呟き終わったマイは、首を傾げるユキのおでこに優しく触れた。
「……どう?」
「ん……冷たくて気持ちいい……。マイ、こういう魔法得意だもんね」
マイは細かな所を操作したりする精密な魔法を得意としている。
ユキは広範囲に影響を及ぼす良く言えば壮大、悪く言えばがさつな魔法が得意だ。
「……全身魔法だから」
静かに布団に入ったマイは、ユキにそっと抱き着いた。
「気持ちいい……でも、こんな近くじゃマイにうつっちゃうよ」
「いいの。……私とユキは一心同体。ユキが風邪引いてるなら、私が引いても問題無い」
「マイ……ありがと」
「……早く治して、悪戯しよう」
マイは珍しく微笑んでユキをぎゅっと抱きしめる。
「そうだね、何しようか?」
「……夢子姉さんのおっぱい揉む」
「ルイズ姉さんのパンツも盗んじゃお」
「……サラ姉さんには落とし穴掘ろう」
「神綺様には性的な事を!」
「……アリスは逆さ吊りに」
二人は微笑みを交わす。
「……みんなユキを心配している」
「早く治さなくちゃね!」
「……ユキがまだ治ってないのはまだしも、なんでマイまで風邪引いちゃったのよ?」
夢子は腕を組んで、困ったように溜め息をつく。
「……面目ない」
「私がうつしちゃったから……」
申し訳なさそうにしている二人を見て、再び溜め息をつく。
「まあいいわ。仲良く二人で休んでなさい」
そう言って夢子は部屋の扉を開く。そして、「何かあったら呼んで」と言い残し、部屋から出て行った。
「ごめんね、マイ」
二人で一つのベッドに寝ている為、二人の距離はとても近い。
「……謝らないで。私達は一心同体」
「……昨日今日のマイはデレだよね」
「なっ……」
顔を赤くしたマイはユキに背を向ける。
「ふふっ、今回は私の勝ちだね」
「……私はメイドだから……主人に勝ちを譲る」
「それも負け惜しみと言うより、デレっぽいよ」
「っ!…………私の完全敗北」
マイは再びユキに向き直った。
「……ご褒美として、私を抱きしめても良い」
「えっ?」
「……昨日言っていたはず」
ユキは飛び付くようにマイに抱き着いた。
「あぁ~、もうっ!マイ可愛すぎる!」
強く抱きしめられたマイは、ユキに聞こえないくらい小さく呟いた。
「……こんなのも悪くない」
彼女達の風邪がなかなか治らなかったのは言うまでもない。
いいユキマイでした!