「なあ霊夢、パンダって知ってるか?」
霊夢がいつもの場所でいつものようにお茶を飲んでいると、
いつもの魔法使いがいつもとは違う事を言いながら霊夢の隣に着地した。
「パンダって動物の?実際に見たことは無いけどあんたに色は似てるらしいわね」
「違うぜ霊夢。私の言っているパンダとは外の世界で昔流行したお遊びだ。
幻想郷で知らない奴がいるとは驚いたな。…これを見てくれ」
あらかわいらしい。魔理沙が帽子からパンダのぬいぐるみを取り出した。
「パンダだ」
「パンダね」
…まぁ正直どうでもいい。あぁ、今日は空が青いなあ…。
空に一つだけ浮かんだ雲がキノコに見えた。そうだ、今日のおゆはんはキノコ鍋にしよう。
「ねぇ魔理沙、キノコ持ってきてる?あんた以外でも食べられるやつ」
「それでそのパンダのルールだがな…」
聞いてない。私のキノコ鍋とパンダのどっちが重要か分かっているのか。
「パンダってのは、まぁ一発芸みたいなものさ」
…仕方ない、聞くだけ聞いてあげよう。
「ただ一発芸するだけじゃあ面白くないから、誰がパンダをするか何かで決めるんだけどね。
うーん、何ていうか言葉で説明するのは難しいな…」
私の事を説明が下手だって言ってた癖に。自分自身を見つめなおしてみたら?
「お、ちょうどいい所に」
魔理沙が鳥居のある方面へ目を向けると、そこには日傘を持ったメイドと、吸血鬼の姿が見えた。
軽い挨拶を交わした後、レミリアは私の隣に腰掛けて、私はレミリアと魔理沙に挟まれる形になった。
咲夜は相変わらず立ったまま日傘を差してあげている。
なんというか辛くないのかね。こんなに空は青いのに。
「実は今からパンダをやろうと思っていたところなんだ」
通じるわけが無いだろう…。
「あら、パンダ。久しぶりねぇ。…おお、かわいいパンダのぬいぐるみじゃないか」
通じた。あれ、本当に知らなかったのは私だけ?
「え、レミリアも知ってるの?じゃあ咲夜は?」
「もちろん知っていますわ」
えー。
「だから言ったろ?」
「…それじゃあ私たちはこれで…」
「パンダやろうぜ!」
「くっ…」
「よーし面子は揃ったようだし始めちゃうぞー!」
?何か違和感を感じる。っていうか私はやるって言ってないんだけども。
「え?何を言っているんだ?ここでパンダをやらないだと?パンダやろうぜぇ~」
「見損なったわ、霊夢。とにかく参加しなさい」
何だこの言われようは…別にいいじゃない、勝手にあんたらでやってなさいよ。
「まぁまぁ…今回は運があればパンダはやらなくて済む決め方を用意したんだ。
お前は運には自信があるだろう?」
「それとこれとは別。私は見学に回らせてもらうわ」
「あー、そんなこと言うんだったら神社から力ずくで追い出す。
お前はレミリアや咲夜や私のパンダを見ることができなくなってしまうぜ?」
うっ…魔理沙は存在がすでに一発芸だからいいとしても、レミリアや咲夜のは見てみたい。
特にレミリアなんて宴会のときはどや顔で自慢話するくらいで芸なんて見せてくれたことないし。
きっとものすごい芸を隠し持っているに違いない。まぁそんなのがあったらとっくに見せ付けてたかもしれないけど。
「…まぁ、決め方によるわね。とりあえず聞いてあげる」
「ふふん、乗ってきたな。今回のパンダーマンの決め方は」
ちょっと待て。
「パンダーマン?」
「ああ、パンダーマンだ。言ってなかったか?パンダをやる奴のことなんだが」
「…まあいいわ。続けて」
もうちょっと気の利いた名前は無かったんだろうか。
「このウメボシスッパ4兄弟を使う」
「あら、ウメボシスッパ4兄弟」
「久しぶりに聞きましたわ」
「うん、私も私も」
もう適当に同意しとけば良いや面倒くさい。
「知ってのとおりこの中には一つだけ大当たりのスーパースッパウメが入ってる。それを引いた奴がパンダーマンだな」
「確かにこれは運ね」
「あら、そうとは限らないわ」
ん?どういうこと?
「魔理沙なら事前にもう当たりを知っているかもしれない。信用できませんわね」
まぁあんたも同じようなことやりそうだけどね。
「そういうと思ったぜ。私が最後に選べって事だろう?」
「それなら文句は無いわ」
「さっさと始めましょう?退屈してきたわ」
正直私がスーパースッパウメを引くとは思わない。私の幸運がはずれを引いてくれるはずだ。
しかしこんな下らないときに運を使ってしまって良いのだろうか。
…まぁ、若いときに使ってしまったほうが得よね、多分。
魔理沙が言うには、パンダーマンを決めるのは室内がいいらしいので、私たちは縁側からすぐそこの部屋の中に入った。
ちゃぶ台の上に置かれたウメボシスッパ4兄弟を4人で囲む様はとてもシュールであった。
あ、そういえば3人にお茶出してないや。
「お茶なら構わないわ。パンダに集中しましょ」
「え?」
なんと珍しい。せっかく人がお茶を出そうとしているところを止められるなんて。
そんなにパンダというのは真剣になるものなのだろうか…。いや、真剣になるだろう。
なにしろこれはプライドがかかっている勝負なのだから。
「それじゃあ…ウメボシスッパ4兄弟チョイスの時間だぜ。略してメボシ」
気にしない。私は何も気にしない。
そして魔理沙以外の3人がメボシした。最後に魔理沙がメボシる。
「さあ…運命のウメボシスッパ4兄弟を食べてくれ」
「食べるときの名前とかはつけないのね」
「何を言ってるんだお前は?」
何か今日の私の扱いひどくない?
とにかく、みんながメボシしたウメボシスッパ4兄弟を食べる。
…勝った。
私が味わう前にレミリアがなんともいえない酸っぱそうな顔をしている。
パンダのぬいぐるみの目が光ったような気がした。
「…どうやら決まったようだな、それじゃあレミリア、パンダ」
「お嬢様っ…!」
「…」
レミリアは下を向いたまま黙っている。きっとプライドやらカリスマやら面子やらが戦ってるんだろうなあ。
がんばれ、レミリア。
「うん?まさかアラドダワになるってのか?まさかねえ…?」
ん、何?アラッダワ?
そのときレミリアはいきなり顔を上げた。
ああ、決心したんだな。レミリア、応援してるわよ。
「パンダやらないわ」
「えっ?」
え、やらないなんて選択肢あるの?
「あー、霊夢。レミリアの姿を目に刻み付けておけ。これが『アラドダワ』だ」
「パンダやらないわ」
「そしてこの状態のやつにはここぞとばかりに要求してやる。よく聞いてろよ霊夢。
…え?パンダやらない?ここで?パンダを?やらない?うわーないわー。だって負けたじゃん。
パンダやらないようだったら、私がパンダだぜ」
「やっぱりお嬢様にパンダは無理でしたわね」
うん、訳が分からない。
「パンダーマンがあまりにもパンダをやる事を拒んでしまった時は、拒絶反応が起きてしまう。
そして一週間、『パンダやらないわ』以外の事が言えなくなってしまうんだ」
「それが『アラッダワ』状態ということね…」
…ちょっと待て。一週間こんな状態になる?そんな危険な遊びだというの…?
「今更だな、霊夢。覚悟の上で試合に臨んだと思っていたんだがな」
いや、こんなに恐ろしい遊びだと思わなかったし。
「…それでは私はこれで。このままお嬢様をほうっておく訳にはいきませんわ」
「ああ、咲夜。使えない主人に仕えるメイドは大変だな」
「それではごきげんよう」
「パンダやらないわ」
こうはなりたくないものだ。
咲夜はレミリアを掴んで空の彼方へと消えていった。
……
「それにしても魔理沙…この遊びは一体何なの?」
「パンダ」
「そうじゃなくて…ただの遊びって訳ではないでしょ?あんたはこんな下らない魔法にも手を付けたの?」
「これは私の魔法じゃないぜ。なにより私はこんな魔法があっても覚えたくも無い」
まぁ確かに。魔理沙の魔法は大体派手だ。
それではパンダとは何なのだろう。新種の力のある妖怪がパンダをやっている所に潜んでいて、レミリアをどうにかさせたのだろうか。
もしくは実は魔理沙の魔法とか。いや、ウメボシスッパ4兄弟こそがレミリアをああさせたのか?
「パンダのぬいぐるみが関係するとは思わないんだな」
「勝手に私の思考を覗かないでよ」
「実はこのパンダのぬいぐるみはだな、マジックアイテムの一つなんだ。名はP野郎と言う」
「そんなことだろうと思ったわ」
こいつがレミリアをああさせてしまった元凶か…また厄介なものを手に入れたものである。
見た目はかわいいんだけどね。いや、パンダを抱いている魔理沙がかわいいのかしら?
「こいつには幾つか効果というかルールみたいなものがあってだな…。
さっきレミリアと咲夜はあっさりとパンダに参加してくれたろ。あれ不自然だと思わないか?」
あっさりだったか?私には渋々、というか無理やり参加させられたような感じがしたのだけれど。
あの時は参加しないとプライドが許さない的ななにかと思ったけど。
確かにあっさりしすぎかもね。逃げても良かったわけだし。
「お前がどうしても参加しないようだったらあの時に言っていたんだがな。P野郎の半径5m以内の者のパンダの誘いを受けて一時間経過しても尚断り続けたらな…」
「な、何が起こるというの?」
「誘いを受けた全員がパンダになる」
へ?
「パンダになるんだ」
「いや、分かったけど」
そんな恐ろしい遊びに巻き込まないで欲しい…。
パンダになる、というのは一発芸をするという意味なのか、はたまた獣になってしまうのか。
そのことを問おうとした時に魔理沙は続けて言った。
「あともう一つ。レミリアが何もしなかったってのもおかしいとは思わないか?」
うーん、まあアラッダワになるよりは何か適当なことして置いたほうが良かったかもね。
「パンダーマンのやったパンダがつまらなかった時はな…パンダーマンは」
「パンダになるんでしょ」
「よく分かったな、霊夢」
大体予想はつくわよ…
「まぁそんな所だ。幻想郷にP野郎の恐ろしさを知らないものは居ない」
「何でそんな危険な遊びをするのよ…もうこれっきりにしてよね。はいP野郎没収」
「ヤメロォ!」
そう言って魔理沙はP野郎を抱きしめた。P野郎からグエーみたいな声が聞こえてきそうだ。っていうか聞こえた。
「何でそんなにそのぬいぐるみが大事なのよ」
「それは…体がパンダを求めるからだぜ」
「はいはい」
「ってことで霊夢…」
嫌な予感がする。私はとっさに逃げ出した。
「パンダやろうぜ!」
くっ…遅かったか…!
魔理沙の言っていることが本当なら、一時間以内にパンダを始めないと霊夢と魔理沙のパンダパークが開園してしまう!
でも自分がパンダーマンにならないためにはできるだけ人数は多いほうが良い。
誰か…誰でも良い、この際名前も知らない妖精でも良い…!
そのとき目の前に、いつものように唐突に境界が現れた。
「あら、楽しそうね」
「いつも中から入ってくるなよ…外から出直して来い、外から」
スキマ妖怪八雲紫は言われたとおり外から出直してきた。
ああ、ここまで紫がきて嬉しいと思ったのはいつ以来だろう。
っていうか外に出たままそのまま帰ってしまったらどうするつもりだったんだろうか。危ない危ない。
「あら、楽しそうね」
「おう。今パンダを始めようとしていたんだぜ」
「あらあら…それではごきげんよう」
「パンダやろうぜ」
「くっ…」
哀れ、紫。
「さーて、折角ウメボシスッパが4兄弟なんだからもう一人欲しいなあ…お、ちょうどいい所に」
「霊夢~遊びに来たぞ~。お、紫と魔理沙もいるじゃん」
「はい萃香パンダやろうぜ、っと」
「えっ」
よし…案外順調に集まるものだ。もっと人数が欲しいところだが…
「さーてはじまっちゃうぞー☆」
「えっ」
「?」
「も、もっと人数多いほうがいいんじゃない?」
「霊夢の言うとおりだわ、待ちましょうよ」
「私はどうでもいいけどね~」
あ~、萃香もどちらかといえば魔理沙側の人間、もとい鬼だったんだ…存在が一発芸、いや、こっちは一発芸をする存在?
「賛成2、反対2か。まぁ私がぴゃろうなんだから私が居るほうが勝つ。民主主義ってやつだぜ」
「そんな…」
始まってしまった。ぴゃろうとはきっと頭がおかしくなってしまった人のことを言うのだろう。
「さあ!メボシタイムだ!」
魔理沙以外の3人がメボシする。今回も魔理沙は気を遣って最後にメボシるみたいだ。
っていうかメボシって紫と萃香にも通じるのね。
皆がウメを選び終わる。
「さて…食べようじゃないか…」
ぱく。あまりすっぱくない。
「ぎゃー!すっぺぇぇ!!」
哀れ、魔理沙…!策士策におぼれるとはまさにこのことよ…!
「わーい魔理沙パンダ~」
「さあ…観念しなさい魔理沙!」
「くくく、言われなくてもやってやるぜ」
なんたる自信…自分が面白いという絶対的な自信を魔理沙から感じる。
なんでも、つまらないパンダをしたときにはパンダーマンはパンダになるらしいのだが…。
その面白い基準は誰が決めるんだろう?
魔理沙が障子を開けて縁側に出る。なんでも縁側から戻ってきたときにパンダをやるのがルールらしい。
障子越しに魔理沙がどんな事をやろうか、と考えてるのが見えた…。
「どんな事をしでかすのかしら。実際にパンダを見るのは初めてだわ」
「よく見てなさい霊夢、今から魔理沙が『面白い』パンダをやるはずだわ」
ふーん。やたらハードル上げるわね。
その時、唐突に野生の魔理沙がとびだしてきた…!
「うぇーい!パンダパンダー!!!うぇーい!!!」
「「「ブーッ!!!!」」」 ※幻想郷の女の子はこんな下品な笑い方しません
魔理沙は右手右足、左手左足を交互に上げながら発狂した。
私たちは思わず噴出した。魔理沙のその姿は、愉快なパンダそのものだった。
P野郎から魔理沙の声がリピート再生されたような気がしたがきっと気のせい。幻聴。
魔理沙はどや、と言わんばかりの顔で私たちを見回した。これがパンダ…!
「あはは、魔理沙最高だよ~」
「当然だぜ」
「霊夢、パンダにおける面白さというのはいかに全身、全力を使って自分の中の『パンダ』を表現することなの。
魔理沙みたいに全力を出し尽くせばそれは面白いパンダになるわ」
そんな真面目な顔で言われても。
「よーぅし次は負けないぞうー!」
「お、やる気だね魔理沙~」
「ふふふ、盛り上がってきたわね」
え?なんで再戦ムードになってるの?賽銭ムードなら大歓迎なんだけど。
魔理沙がパンダやったんだから無事終わりでいいじゃない。
「え?」
皆が私をそんな感じの顔で見てくる。いや、こっちが「え?」なんだけど。
「あなたは感じないの…?自分の中に湧き上がってくる、パンダマシイを…!」
何か新しい単語が出てきたぞ。きっとテストには出ない。
「霊夢、パンダやろうぜ」
「あ」
くそぅ…忘れてた…!
…でも私に限ってスーパースッパウメを引くことはありえない…はず…
「あらあら、霊夢。このパンダ…いえ、パンダミックゲームは何が起こるかわからないわよ」
どういうことなの…?っていうか別に言い直す必要なかったんじゃない?
「それじゃあ、メボシタイムだ」
私は私の持つ運の全てを信じて、目の前のウメに手をのばす…
「そのウメも~らい」
「あっ!」
萃香が私の狙っていたウメを取ってしまった…。くっ、続けて紫も取ってしまったから残るは後2つ…。
「どうした?霊夢。早く選べよ」
「わ、分かってるわよ…」
魔理沙がにやにやしながら言ってくる。くっ、あとでそのよく分からないぬいぐるみの黒い部分を白く染めてやる…。
「ふっ、皆選び終わったようだな。それじゃあいくぜ…」
パク。
「…~~~~!!!」
スッパァァ!しかし私はあきらめない!何とか誤魔化す!
「私のウメは普通みたいだな。なあ紫?」
「ええ、私のも普通ですわ。ねえ萃香?」
「うん。私のも普通だよ。…ねえ霊夢ぅ?」
「あ、あれ~?みんなはずれなんてめずらしいわねぇ~?」
「嘘は良くないぜ、霊夢」
ばれたか。
「霊夢…これも修行よ」
修行だったらなおさらやりたくない。
「霊夢のパンダ見てみたいな~」
「さあ、霊夢パンダ」
「くっ…!」
あぁ、何ということだろう…まさか私がこんな屈辱を味わうことになろうとは…
その時。P野郎が横目でこちらを睨みつけてきた…。
うっ…なんだろうこの感覚は…!のどの奥からなにかが湧き上がってくる…!!
きっとこれがアラッダワ…!く、苦しい…!!
「ん?どうした霊夢。まさか霊夢がアラドダワになるわけ、ないよなあぁ~?」
魔理沙がここぞとばかりに責めてくる。くっ、あとでそのよく分からないぬいぐるみの白い部分を黒く染めてやる…。
「あら、霊夢がとても苦しそうだわ」
「霊夢早く~」
私はのどの奥から沸きあがってくる「パンダやらないわ」のセリフからひたすら耐えた…!
ううっ、そろそろ限界…!
「おーい霊夢ー?」
(分かったわよ、やればいいんでしょやれば!)
そう必死に念じたところでアラッダワは消え去った。
ふぅ…とやっと私は一息つけた…
「「「おー!!!」」」
3人の歓声が上がる。嬉しくない。
私はゆっくりと縁側に出て障子を閉めた。ああ、これからどうすればいいんだろう…。
(霊夢のパンダ楽しみだね~)
(ああ、どんなパンダを見せてくれるんだろう)
はぁ…
「おや、霊夢さんじゃあありませんか。一人でこんなところに突っ立って、めずらしいですねえ」
帰れ。全力で帰れ。よりによって一番会いたくない奴に出会ってしまった。
「文、私は今幻想郷の未来について真剣に考えているの。邪魔だからあっち行って」
「あやややや、あっち行ってと言われると行きたくなくなりますねぇ」
「じゃあここにずっと居て」
「ではお言葉に甘えて」
そう言って文はゆっくりと私の側に降りてきた。
ああ、いつもの調子で話しかけたら逆効果だったな…
「やっぱかえr」
(おーい、誰か居るのかー?)
(霊夢のパンダの邪魔になったら悪いからこっち来なよー)
チィィッ!
「お?まさか今は霊夢さんがまさにパンダをやろうという所だったのですか?
いやあ何て良い所に出くわしたのでしょう……今、中に入りますねー!」
「ちょ待っ…」
天狗は一瞬にして目の前から姿を消した。そんな速さで障子を開け閉めしたら壊れるぞ。
(遅いわよ、霊夢)
紫の急かす声が聞こえる。いっその事ここから逃げ出してしまおうか…。
いや、それはいけない。魔理沙はそんなことは言ってなかったが、私の勘がそう言っている。逃げてしまったら私はきっと魔理沙色の怪物になってしまうだろう。
(おーい霊夢、あと30秒以内にパンダやらなかったらパンダになってしまうぞー)
ああ、そっち。時間制限タイプ。最悪だ。っていうか最初に言ってくれ。
パパラッチのおかげでだいぶ考える時間が減ってしまった。
異変のときにしかろくに働いてくれない頭をフル回転する。くっ…私に残された選択肢は…
(20秒~)
…3つ。
1、パンダをする
2、パンダをやらない
3、アラッダワ
…3はないだろう。わざわざ耐えてここまできたというのに。
(残り10秒だ)
パンダを…やらない?そういえば、魔理沙はパンダーマンがパンダを、部屋に入ったときにやらなかった時については何も言っていない。
…いや、これは屁理屈だ。どうせパンダになるオチだろう。分かりやすい。ああ、思考が鈍っている。
(5、4、3、2…)
「ああもう行くしかない!」
悩みぬいた末に、私、楽園の素敵な巫女・博麗霊夢のとった行動はこれだった。
「魔理沙のマネ、行きます。おーい霊夢、私のキノコ食べてくrそこまでよ!……みたいな。あ、最後のはパチュリーね。」
それから一週間の間、霊夢パンダを一目見ようと神社には絶え間なく行列ができるのであった。
めでたしめでたし。
と言う訳で、パンダヒエラルキーの頂点に立っているのはチルノ。
一年のほとんどをパンダで過ごしているのは妖夢。これで間違いない!
作者様も初投稿お疲れ様。好きですよ、こういう物語!
実在する遊びなの? マジで!? 俺騙されてない?
パンダに抓まれたような気分です。
……あれ?体がパンダになってる…。
ところで霊夢パンダで一週間の方が賽銭集まるんじゃなかろうか