Coolier - 新生・東方創想話

阿求×マミゾウの末永くなヴァレンタイン

2014/02/22 09:09:15
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「こりゃまあ、何とも立派な邸宅じゃなあ」
「いえいえ、そんなことは。すみません、お忙しいところわざわざ拙宅までお越しいただいて」
「なぁに、阿求には人里で何かと便宜を図ってもろうとるからな。このマミゾウ、借りた恩義は岩に刻むが身上じゃよ。儂にできることなら何でもしよう」
「ん? 今何でもするっておっしゃいましたか?」
「う、うむ。(気のせいかの? 一瞬、野獣のごとき眼光が……)」
「ではですね────こちらをご賞味いただけますか」
「ほぉ、これは甘やかな香り。菓子かいの?」
「はい、チョコレートはご存知ありませんか」
「名前だけは聞いたことがあるの。ふむ、これがそうじゃったか。茶色の白玉のようじゃな。ひぃ、ふぅ、みぃ……九つあるの」
「阿求にちなんで九個作りました。ついでに私自身も食べちゃってほしいです」
「え?」
「はい?」
「い、いや。(今のは聞き違いじゃの、多分)」
「ともかく、是非どうぞ。原材料を溶かし、クルミなどを加えて、型に入れたものです。今、ちょうど固まったところで」
「おお、お主手ずからのものか。では、さっそくいただくとしよう。──美味いのぉ!」
「お口に合ったようで良かったです。ところで本日が何の日かご存知ですか?」
「むぅ? 節分からは日が経っておるし、桃の節句まではまだまだじゃの」
「ヴァレンタイン・デイです」
「伴天連、何じゃと?」
「ヴァレンタイン・デイです。女の子が愛する人にチョコレートを贈る日ですよ」
「ふむ、そのようないべんとがあるというのは、小耳に挟んだことがあったわい。なるほど、なるほど、そのために儂に味見役をさせたわけじゃな。して、お主に惚れられた幸せ者はどこのどいつじゃ?」
「マミゾウさんです」
「ほお、マミゾウ。どこかで聞いた名じゃな。……マミゾウ?」
「はい、マミゾウさん、あなたです。愛してます」
「ひょ?!」
「一目会ったその日から恋の花咲くときもあります」
「らぶすとーりーは突然に?! ま、待て、知っておるぞ、これはあれじゃ、義理ちょこじゃ。そうじゃろ?」
「ド本命です」
「ふぁっ?!」
「野暮ったい眼鏡に隠された美貌、お婆ちゃん的な立ち振る舞いに彩られた細やかな気遣い、ゴンブトな尻尾に目を奪われ見逃しがちな豊満な肢体。全てに心惹かれます」
「ほ、褒められてるのか貶されてるのかよぉわからんが、いや、まさか、冗談じゃろ? 儂を騙そうとしておるんじゃろ?」
「かの二ッ岩大明神を相手に、人間風情が化かせるとお思いですか? 私の真実の想いを疑うのであれば、いくらでもお試しになって構いません。いえ、むしろ私が思い知らせてあげます」
「阿求の形相が肉食獣のそれになっとる……?!」
「さて、マミゾウさん、ヴァレンタイン・デイには『お返し』というものがありまして」
「お返し、とな?」
「はい。チョコなどを贈り返すのです」
「……それより阿求や、なぜ身を寄せてくる?」
「ですから、お返しをいただこうと思いまして」
「そ、そう言うとったな。しかし、儂はあいにく菓子の持ち合わせが、」
「ありますよ」
「ど、どこにじゃ? 阿求、顔が近……」
「マミゾウさんのお口の中です」
「え」
「いただきます」
「あぅ……──」
「………………」
「………………」
「……ごちそうさまでした。私が差し上げたものより甘い気がします。マミゾウさんの味でしょうか」
「……これが、その、『ばれてん何とか』の風習なのかの?」
「そんな感じです(そうだとは言ってない)。マミゾウさん、尻尾が左右に揺れまくってますよ。メトロノームみたいです。顔も真っ赤ですし」
「お主が大胆なことするからじゃ! は、恥ずかしいわい!」
「これくらいせねば伝わらないと思い詰めた結果です。だってマミゾウさん、アンテナの感度が悪過ぎて、私の大好き電波を全然受信してくださらないんですもの」
「そうじゃったのか……お主、前から……」
「はい、私は嬉しいです。マミゾウさんは私のチョコを召し上がってくれました。私の想いを受け取っていただいて、お返しまでくれた」
「う、うむ、まあ儂もお主のことは憎からず思うておったがの」
「相思相愛ということですね! それでは──」
「何じゃ?」
「お隣の部屋に参りましょう。布団が一つ、枕が二つ用意してあります」
「?!」
「あ、大丈夫ですよ。家人は出払っております」
「さっぱり大丈夫じゃないとなッ?」
「私も初めてのことですが、気まずい思いなどさせません。歴代阿礼乙女が培った手練手管の数々により、ずんどこべろんちょのいんぐりもんぐりです」
「言葉の使い方が間違っているようでいて意味が如実にわかるのが嫌過ぎる!」
「狸の八化けにもう一つ、アヘ顔ダブルピースを追加して差し上げます」
「ま、待っとくれ! やはりこういうのは段階を踏んでじゃな、」
「それじゃ遅いんです。マミゾウさん、それでは遅いのですよ」
「阿求……」
「マミゾウさんほど人間は長く生きられません。それに──」
「それに?」
「美人薄命と申します」
「自分で言うか!」
「あと、マミゾウさん、お身体の方、熱くなってません?」
「そういえば、先ほどから埋もれた炭火に焼かれるような……どういうことじゃ?」
「ガラナチョコの効果です」
「がらな、とな?」
「意中の相手を前にすると性的な興奮が高まる成分が含まれているのです」
「そ、そういうものなのか、この『がらな』なるものは」
「そう聞いた覚えがあります(事実とは言ってない)。さあ、私という想い人相手に辛抱堪らなくなっているマミゾウさんを、切なくさせたままでいるのは忍びありません。早々に同衾し、共に涅槃へと上り詰めましょう! そしてこの一夜のアバンチュールを毎晩やりましょう!」
「一夜を毎晩って何じゃ?!」
「これから毎晩愛を燃やそうぜ、ということです」
「より意味不明じゃぞ?!」
「いえ、単純なことですよ。私が言いたいのは、マミゾウさん、──末永くよろしくお願いします──そういうことです」
「う、うむ、妙に押し切られた感がしないでもないが、ここまで来たら儂も覚悟を決めよう。こちらこそよろしく頼むぞい、阿求」
「……はい!」
「じゃが、その……」
「はい?」
「手が、服の、中に入って、あちこちまさぐっておるのじゃが?」
「すみません、私の内なる魔物も辛抱堪らなくなっているようです」
「ひゃっ! そこはダメじゃっ、ダメっ、ダメと言うとろうに!」
「ここが感じやすいのですね。もっと教えてください、マミゾウさんの身体」
「ま、待て、せめて布団の中でじゃな、阿求、あ、阿求ぅ! あっ! ら、らめぇええええええええええええ!!」





「あれから後、『んほぉー』とか『こくまろみるく』とか叫んだような気もするが、記憶が散り散りになっておるのぉ。記憶回路が焼き切れておるのかもしれん。あるいは思い出すのを精神が拒否しとる可能性も……
 まあともかく、ほれ、阿求よ、ちょこれーとじゃ。毎年作っとるが、なかなかお主がやったようにはいかんがの。形はいびつじゃが、心がこもっとるのは折り紙つきということで勘弁してくれい。
 いや、上手く作れんのは、儂の不器用もあるが、お主にも原因があるのじゃぞ。毎年『お返し』を求めてきおって、儂が作って贈るのを止めておったではないか。儂ゃ『ばれんたいん』が本来どういうものか知ったとき、赤面したのじゃぞ! まったく!
 ……ふふっ、こうしてお主の墓前に立つと、共に過ごした日々が浮かび上がってきて仕方ないわい。いろいろあったのう。短い間に、実にいろいろあった。『美人薄命』か……その場ではぬけぬけと言うもんじゃと思うたが、本当に早く逝ってしもうたのう。
 今ならわかる。お主が生き急いでいた意味がな。命短し恋せよ乙女──短命な御阿礼の子であるがゆえに、そのことをより一層痛感しておった。尽きるまでの命全てを、想いの全てを儂にぶつけてきたのじゃな。弾幕の撃てぬお主じゃが、儂は存分に被弾させられたのう。
 『末永くよろしくお願いします』、か。お主はその言葉、短命を自嘲する意味も含めて使ったのかもしれん。じゃがの、儂は今もこうしてお主を愛しておる。そうよ、儂は恩を岩に刻むが、約定は金に彫る。『末永く』じゃったな。そのつもりじゃよ。儂は儂の命が続く限り、お主を愛し続けよう。聞いとるか、阿求よ、阿求よ……。
 …………いかんの。ここでだけは、お主の前でだけは湿っぽくならんと決めたはずじゃのに。情けないのう、年を取ると涙もろくなって、なぁ……」
「──そこまで好いていただけるとは感無量です」
「なっ……? ──ッ?! あ、阿求じゃと! どうなっとる? 儂ゃ、化かされとるのか?!」
「かの二ッ岩大明神を相手に、人間風情が化かせるとお思いですか? って、以前にもそんなやり取りをいたしましたね。お久しぶりです、マミゾウさん。いえ、この身体で向かい合うなら、『初めまして』ですね」
「そうか、転生を……」
「はい、映姫様に無理を言って早めに転生を果たしちゃいました。十代目阿礼乙女、稗田阿天(あてん)と申します」
「(なんで英語読みを採用したんじゃ……)」
「髪型や衣服は当時に似せてみましたが、顔かたちはだいぶ変わってしまったので、わかってくれるか心配でした。胸もかなり小さくなっちゃいましたし」
「同じく扁平じゃろ、前世を盛ってどうすんじゃ。──いや、見紛うはずがありゃせんよ。声の掛け方から表情、仕草がそのままじゃ」
「覚えたことを忘れない、前世のことも含めて背負う御阿礼の子の力を厭うこともありました。しかし、今はこれほど素晴らしい力はないとさえ思えます。マミゾウさんとこうして向かい合えるのですから」
「前世からの記憶はその大半が失われると聞いたことがあるのじゃが?」
「マミゾウさんは岩や金に刻むのでしょうが、私の場合は魂に焼きつけられるのですよ。──いえ、実は恥ずかしながら、思い出したのは最近でして。肉体の変化に伴い、記憶が甦ったものと思われます」
「肉体の変化とな?」
「初潮です」
「う、む、そうか。不躾なことを聞いてしもうたのう」
「いえいえ、これでマミゾウさんとの子供も作れますし」
「何を言うとるんじゃ、お主は」
「マミゾウさん、改めまして──末永くよろしくお願いします」
「うむ。……うむ。阿求、いや、阿天よ」
「はい」
「抱きしめても良いか?」
「抱きしめてもらっても良いですか?」
「…………相変わらず小さい身体じゃ」
「……マミゾウさんも変わらない温かさです。嬉しさが込み上げてきます」
「儂も嬉しいぞ。またお主に愛され、お主を愛することができるのじゃな。思い出の中ではなく現実に。十一代目、十二代目と永遠に」
「はい……!」
「ただな、一言だけ言っていいかの」
「何です?」
「──無限るーぷって怖くね?」
らいじう
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コメント



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2.80絶望を司る程度の能力削除
最後の一言でぶち壊したぁぁぁ!
4.80奇声を発する程度の能力削除
最後w
9.80名前が無い程度の能力削除
阿求、派手にやるじゃねえか!
末永くお幸せに
11.90名前が無い程度の能力削除
おー激しい激しい
12.80名前が無い程度の能力削除
当事者が言ってりゃ世話無いわw
13.80名前が無い程度の能力削除
マミゾウさん、仮にも最近まで外にいたのだからバレンタインくらい知っときましょうよ。ハチャメチャなノリが良かったです。
14.80名前が無い程度の能力削除
善き哉……!
15.100名前が無い程度の能力削除
ぶち壊しの連続だった