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後の世まで語り継がれる偉大な吸血鬼、
レミリア・スカーレットの産声は『ドロワァァァァァァァァ!!』であったと伝えられている。
その幼き身にして全ての奥儀を極め、ヨーロッパ中を恐怖のどん底に落とし、
より良きドロワを求め幻想郷にまで手を伸ばす。
幻想郷に来たレミリアは全ドロワを差し出すように要求。差し向けられた軍勢のドロワを剥ぎに剥いで壊滅せしめ、
天魔や八雲藍といった大妖のドロワまで奪い去り、その勢いは誰にも止められないと思われたが、
八雲紫のドロワを奪い取り匂いを嗅いだとたん「BBA……」という後に幻想郷七不思議となる謎の言葉を残して地に倒れ伏した。
その後、普通に優秀だった部下や連れの魔女のおかげもあり、それなりの土地と地位を得て幻想郷の一翼を担うようになる。
暫くして紅霧異変をおこすも、異変解決に来た巫女のドロワを楽しんでいるうちに涙目の巫女にコテンパンにのされたりした。
良くも悪くもドロワに生きドロワに死ぬ、それがドロワの鬼レミリア・スカーレットの生き様である。
そのレミリア・スカーレットが追い詰められていた。
よりにもよって自身の妹、フランドール・スカーレットの手によって……
事の起こりは数時間前、妹とお茶をしていたときである。
「今まで数多くのドロワを見てきたけど、フランのドロワに勝る物は無かったわ」
素面でこんな台詞が出てくるあたりがレミリア・スカーレットのレミリア・スカーレットたる所以である。
「そうなの。そう言って貰えると嬉しいな」
満更でもない様子で微笑むフランドール。
彼女が姉に只ならぬ想いを抱いているのは幻想郷でも、レミリア以外知らぬ者はいない公然の秘密である。
なぜこんなにも可愛らしい妹があんな姉に至上の愛を抱くのかは、幻想郷七不思議の一つに数えられるほどだ。
ちなみに残りの不思議は、
『なぜ美しいメイド長はあんな吸血鬼に絶対の忠誠を誓っているのか』
『なぜ聡明な魔女があんな吸血鬼の親友なのか』
『なぜ紅魔館の門番はあんな吸血鬼に忠義を尽くすのか』
『なぜあんな吸血鬼を慕って妖精達が集まるのか』
『七不思議の最後の一つは何か?』
である。
「フランのドロワは天界の羽衣よりも上質で百年物のワインより濃厚、それでいて……」
妹の前で等々と妹のドロワの素晴らしさを語りだすレミリア。
それでもフランドールは全く動じることが無い。全く大した胆の据わり方である。
「であるからしてフランのドロワは……」
「お姉様、お姉様」
「なによ。これからが良いところなのに……」
姉の話に横槍を入れるフランドール。
入れられたほうのレミリアはあまりいい気がしない。
しかし次のフランドールの言葉を聞いたとたん、その顔は驚愕に染まった。
「私はもっと素晴らしいドロワを知っているわ」
「何ですって!!」
レミリアには到底信じられなかった。
世界中のドロワを知り尽くした自分が知らないドロワが存在するはずがない。
しかも言っているのが生まれてからずっと一緒に生きてきた妹である。
「お、面白い冗談ね」
「冗談ではないわ」
獲物を狙う蛇のようにフランドールはすっと目を細める。
その気配に圧されてレミリアはビクッと体を震わす。
「フ、フラン……」
「そのドロワはね……お姉様のドロワよ!!」
そう言うやいなや、レミリアに向かって飛び掛るフランドール。
慌てて飛び上がり初撃を避けるレミリア。
かくてドロワ史に残る戦いの火蓋は切って落とされたのである。
レミリアはドロワの奪い合いなら誰にも負けない自負と実績があった。
レミリアの自信の根源、それは歴史上レミリアだけが習得せしめた奥儀ドロワ四十八手である。
それは親友の魔女をして
「あれは古に伝わるドロワ神拳に勝るとも劣らないわ」
と断言するほどである。
現にレミリアは奥儀をもって今まで数多の敵を打ち破ってきたのだ。
そう……今までは……
「ドロワオブダビデ!!」
レミリアが技をかけようとフランドールに掴みかかる。
ドロワオブダビデとはスターオブダビデとは何の関係も無い掴み技である。
ドロワ四十八手は『天と地の狭間でドロワと一対一で向き合う』という思想に基づき、ドロワを己が手で掴み取る技しかない。
ドロワオブダビデは相手を仰向けにして肩で担ぎ、両手で顎と脚を締め付けて拘束しつつドロワを脱がす技である。
レミリアはこの技に絶対の信頼を寄せていた。なんせあの博麗霊夢のドロワを奪った云わば必殺技だからだ。
だが恐るべきはフランドール。彼女は至極簡単な方法でそれを打ち破った。
「残念お姉様、それはダミーよ」
レミリアが拘束していたフランドールが塵となって消える。
技が空振りに終わったレミリアに三体のフランドールが攻撃を仕掛ける。堪らず後ろに下がるレミリア。
その隙にフランドールは先ほど消えた分身を作り直す。
フランドールがとった作戦、それはフォーオブアカインド。
三体の分身を作り出すこの技によってフランドールは姉の攻撃をかわし続けてきたのだ。
無論それだけでは四分の一の確立で本体に技をかけられてしまう。
しかし姉の技を研究し尽くしたフランドールは、姉の死角をとり続ける事により自身を守るだけでなく、
攻撃を受けやすい位置取りに分身を置くことにより、姉に技を繰り出させ体力を奪っていったのだ。
「くっ……」
フランドールの蹴りをまともに受けて、レミリアの口から呻きが漏れる。
フランドールは姉の体力を奪うことに専念していた。
技をかけてくれば分身で受け、合間をみて攻撃する。けして本体の身は危険に晒さない。
技一つで勝負を決めようとするレミリアの性格も災いし、戦いの趨勢は徐々にフランドールに傾いていった。
「……しかたがない」
「あらお姉様、今度は鬼ごっこ?」
堪らず逃げ出すレミリア。
フランドールはそれを止めようとはしない。真の狩人はゆっくりと相手を追い詰めるのだ。
すでにフランドールの頭の中では、戦いの結末までが描き終わっていた。
レミリアは逃げながらも廊下に物陰を見つけ隠れる。
床に座り込むなど、マナーが悪いと思ったが背に腹はかえられない。
今は奪われた体力の回復が最優先である。
レミリアは隠れながら次の一手を模索する。
仲間を呼ぶのは論外である。
レミリアの周りにはレミリアが一から育て上げたドロワメイドや、ドロワ界の全てに通じた魔女、
かつてドロワ勝負の果てに服従させた門番などがいるが、レミリアの信念はドロワと一対一で向き合うことである。
いままでもそうしてスキマ妖怪や博麗の巫女のドロワを剥ぎ取ってきたのだ。
フランドールが今までに無い強大な相手とはいえ、いまさら己の信念を曲げられるはずがない。
それにレミリアにも策が無いわけではない。
いままで全ての技を避けられたが、それは逆にいえば当たりさえすれば勝てるということだ。
そしてレミリアは逃げているうちに間に概ねフランドールの作戦を見破っていた。
「ふふふ、お姉様、もう鬼ごっこは終わりかしら」
「ちっ……」
暫くして廊下にフランドールの声が響く。仕方なく立ち上がるレミリア。
本音を言えばもう少し体力を回復させたかった。
だが戦いとは常にままならぬ物だということは、他でもないレミリアが一番良くわかっている。
「ねえお姉様、なんでお姉様が私に勝てないかわかる?」
「さあね。後勝つのは私よ。姉より優れた妹などいないと思い知らせてあげるわ」
フランドールを挑発するレミリア。これとて何の考えも無くやっているわけではない。
なるべく会話を長引かせることによって、ちょっとでも体力を回復しようとしているのだ。
「それは無理よ。だって私はお姉様だけを愛してるんだから」
「はっ?」
「お姉様は私のドロワが最高と言っておきながら百万のドロワに浮気した!!
でも私はお姉様だけを見て、お姉様だけを想い描いてきたの!!」
そう、これがレミリアとフランドールの最大の差。
レミリアはあらゆる相手を想定して技を磨いたが、フランドールはレミリアだけのために技を策を磨いていたのだ。
「だからお姉様は私には勝てない!! 絶対にね!!」
レミリア目指して一気に突っ込んでくる四人のフラン。
無論ただ突っ込んでくるだけなら、レミリアにも返し技の一つや二つはある。
しかしそれをしたところで無駄なのは先刻承知。
故にレミリアは蝙蝠になって突撃を避ける。
そしてレミリアの死角から攻撃してきたフランドールの後ろに実体化した。
「!!」
驚くフランドール。
なぜならそのフランドールこそ分身ではないフランドール本人だからだ。
すでにレミリアは本当のフランドールが自分の技を絶対にかけられない死角にいることに気がついていた。
そうと分かれば後は簡単。自分の技の死角などそれを習得したレミリア自身が一番良くわかっている。
いったん無数の蝙蝠となり先ほどまで死角だったところに実体化すれば自ずとフランドールを捕らえられるのだ。
「フラン覚悟はいいかしら!! 神槍ドロワニル!!」
一番の得意技で勝負を決めようとするレミリア。
神槍ドロワニルとは全身全霊を込めた抜き手により一瞬にして相手のドロワに奪い取ってしまう恐るべき技である。
だが……
「ホント驚くわ。ここまで予想通りなんて……」
フランドールは心の底から笑った。
そして後ろを振り向くと素早く姉の頭を両手で抱え、自分の唇を姉の唇に重ねた。
「……ん」
「んっ!!」
予想外の攻撃にレミリアの頭が一瞬空白になる。
その隙を逃す事無く、フランドールは右足を姉のドロワに引っ掛けると、
思い切り一回転してものの見事に奪い取った。
これぞ『ちゅっとしてどか~ん』フランドールがレミリアを倒すためだけに完成させた必殺技であり、
姉のドロワだけでなく心まで奪うまさにドロワ界の革命的奥儀である。
後にレミリアも習得し、フランドールと数多の死闘を演じるのだがそれはまた別の話。
「ウボァー」
断末魔と共にレミリアの体が紅き霧となって崩れてゆく。
ここにドロワの魔神レミリア・スカーレットは滅び去った。
だが明日の朝には地獄の果てより甦るだろう。
姉が他のドロワに浮気しなくなるその日までフランドールの戦いは続くのであった。
ちっとも楽しめませんでした……。
だがドロワオブダビデの前に負けを認めざるを得なかった
響き良すぎだろドロワオブダビデ
声出してワロタ
というか、さ、咲夜さんもドロワなのか……!?