Coolier - 新生・東方創想話

ドグラ・マリサ

2009/07/11 21:26:32
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胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の
心がわかって
おそろしいのか

                    -ドグラ・マグラ巻頭歌


******


ブウウー…ーン。
私が目を覚ました時に、その耳障りな音は未だ続いていた。
いつから続いているのだろう。私はその記憶を呼び起こそうとするが、頭の中に靄がかかったように、上手く浮かび上がってこなかった。
私は何処に居るのだろう、と思う。どうやら私の部屋ではないようだ。
「目が覚めたかしら、魔理沙」
聞き覚えがある声がした。パチュリー・ノーレッジの声だ。
「全く、貴女は何度言えば禁書に手を出すのを止めるのかしら」
禁書。禁じられた知識の詰まった本。
私は魔法使いとして、たまにそれらの本をパチュリーから無断で借りている。
「お陰でこんな奇妙に捩れた世界が出来てしまった。助け出すのも大変なのよ」
ああ、私は彼女に助け出されたのか。
そう言えば飛び切りの悪夢を見ていたような覚えがある。あれは、あの悪夢は禁書が原因だったのだろう。
「ドグラ・マグラの世界に囚われると、一番顕著なのは因果の崩壊ね」
因果の崩壊、と私は鸚鵡返しに呟く。
「原因があって結果がある、とそう単純には行かなくなるの。無限の一瞬の中に因果が延々と続いて、世界が収斂してしまう事もあるわ」
「それは恐ろしい事なのか」
「とてもとても恐ろしいわ。少なくとも、貴女の時は永遠に進まなくなる。誰かに助け出されるまではね」
これは貴女の辿った記録よ、とパチュリーは私に向かって本を放り投げた。
「…なんだ、これは」
そこには、


******


ブウウー…ーン。
私が目を覚ました時に、その耳障りな音は未だ続いていた。
いつから続いているのだろう。私はその記憶を呼び起こそうとするが、頭の中に靄がかかったように、上手く浮かび上がってこなかった。
私は何処に居るのだろう、と思う。どうやら私の部屋ではないようだ。
「目が覚めたかしら、魔理沙」
聞き覚えがある声がした。パチュリー・ノーレッジの声だ。
「全く、貴女は何度言えば禁書に手を出すのを止めるのかしら」
禁書。禁じられた知識の詰まった本。
私は魔法使いとして、たまにそれらの本をパチュリーから無断で借りている。
「お陰でこんな奇妙に捩れた世界が出来てしまった。助け出すのも大変なのよ」
ああ、私は彼女に助け出されたのか。
そう言えば飛び切りの悪夢を見ていたような覚えがある。あれは、あの悪夢は禁書が原因だったのだろう。
「ドグラ・マグラの世界に囚われると、一番顕著なのは因果の崩壊ね」
因果の崩壊、と私は鸚鵡返しに呟く。
「原因があって結果がある、とそう単純には行かなくなるの。無限の一瞬の中に因果が延々と続いて、世界が収斂してしまう事もあるわ」
「それは恐ろしい事なのか」
「とてもとても恐ろしいわ。少なくとも、貴女の時は永遠に進まなくなる。誰かに助け出されるまではね」
これは貴女の辿った記録よ、とパチュリーは私に向かって本を放り投げた。
「…なんだ、これは」
そこには、


******


ブウウー…ーン。
「そういう訳よ。貴女は無限螺旋の一部に囚われていたの」
私が目を覚ますと、まだ耳障りな音は続いていた。目の前にはパチュリーの姿があった。
彼女は私が無限螺旋に囚われていたと言う。それはいつの事だろう。
「貴女は私の禁書を盗んだでしょう。あれはね、人間には危険極まりない代物だったのよ」
「ちょっと借りてただけだぜ」
「そうね、貴女の時間にしてはたった永遠の間でしかないわ。全く、禁書にはそれなりの理由があるのだから気をつけなさい」
ああ、そう言えば私はずっと夢の中に居たような気がする。けれど彼女に救われたのならば、もう悪夢は終わったのだろう。
いや、彼女に救われたのはいつの事だっただろうか。私にはそれは夢の中で起こった出来事のように感じられた。
「なあ、私はお前に助けられたのか?」
「外部からの助けがなければ永遠に囚われたままでしょうね。これは貴女の記録よ」
そう言って、彼女は私に本を放り投げる。
そこには、


******


ブウウー…ーン。
と、耳障りな音がまだ続いている。
私は目を覚ました。此処は何処だろう。
私は何処に居るのだろう。私の部屋ではない。それは一目で分かった。
此処には誰もいない。四方を硬い石のような物で覆われた部屋だった。
耳を澄ますと、誰かの話し声がする。私は誰か居るのかと話しかける。
「…ああ、ようやく見つけたわ」
そう、声の主は言った。
「全く、貴女は少し禁書の危険性を認識するべきよ」
ああ、聞き覚えがある。パチュリー・ノーレッジの声だ。
「ドグラ・マグラの原典はね、人間に対して最悪の効果を齎すの」
そうだ、私は永遠に囚われているのだ。
「そうよ。貴女は永遠に囚われた。そこでこうして助けに来たのだけれど」
…いや、私はいつ彼女からそれを聞いたのだろう。そう疑問に思っていると、かつかつかつと足音が響き、ギィとドアを開けて、パチュリーが現れた。
「此処まで来るのも一苦労よ。全く」
そう言って彼女は本を放り投げた。
「貴女のこれまでの記録よ、読んでみなさい」
と、パチュリーはそう言った。
そして私は本を開く。
そこには、


******


「なんだ、これは」
私は驚愕していた。ここまで恐ろしい本には出会った事がなかった。
狂っている。私が狂っている間の記録だった。
「これで少しは身に染みたかしら」
パチュリーは、禁じられた知識の主は、そう言って笑みを浮かべた。
「まあ安心なさい。貴女が本を読み終えたから、ようやくこれで私も抜け出せるわ」
「私は、抜け出したのか」
「周りを御覧なさい。ほら、貴女の部屋よ」
気付くと、辺りはいつも通りの私の部屋だった。原因となった本はパチュリーが小脇に抱えていた。
「…助かった。今回ばかりは私が悪かったよ」
「分かればいいのよ。今後、私の本に迂闊に手出ししないように」
そう言ってパチュリーは部屋を出て行った。


******


「なんだ、これは」
私は本を読み終えた。まだか。まだ私は永遠の螺旋から抜け出ていないのか。
「そうね、そうかも知れないわ。けれど貴女は本を今度こそ読み終えた」
安心していいわ、と何度も聞いた言葉を彼女は口にした。
「さあ、眠りなさい。貴女は疲れているはずよ」
その言葉を聞いて、私はようやく自分が疲れ果てている事に気付いた。
ああ、確かに、これは今までの記録になかった事だ。ならばきっと、私は今度こそ、助け出されたのだろう。
「…そう…だな…」
そして急激な眠気が私を襲った。
眠りに落ちゆく私の耳に、
ブウウー…ーン。
と、耳障りな音が、響いた。


******
-さようなら、バーバラ。愛しているよ(キ○○イの方の方言でこんにちはの意味)

最後までお付き合い下さり有難うございました。
初めましての方は初めまして。そうでない方はぎゃおー!な自分のSSを再び手にとって下さり有難うございます。

ドグラ・マグラのオマージュで無限ループって怖くね?な話でした。おおこわいこわい。
魔理沙は紅魔アローン2でパチュリーがちゃんと助け出してるのでどうかご安心を。そっちからの伏線でもあるのですが。

ちなみにドグラ・マグラは印刷されて量産された物でもこんなもんじゃないです。
著作権がきれているため、ネット上の青空文庫で無料で読めます。とても面白いので興味がある方はどうぞ。

それでは、また機会があれば次も読んで頂けると嬉しいです。
目玉紳士
[email protected]
http://medamasinsi.blog58.fc2.com/
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コメント



0.550簡易評価
4.70名前が無い程度の能力削除
ドグマグの恐ろしさの面にスポットを当てた感じか。
しかし、あの本には禁断の果実のように甘いところもある。近親相姦的な要素が強く強くある。瓶詰めの長いバージョン的な。
そういった側面が混然となってるところが麻薬のような強い効果をもたらすのであって、無限ループって怖くねってだけの話ではない。怖くね?ではなく蠱惑ねという話である。いみふな感想でごめんよ。
9.60名前が無い程度の能力削除
ドグラマグラの原典って何だよww
しかしチャカポコチャカポコしか覚えてないなぁ
11.80名前が無い程度の能力削除







格子戸を開けてくれ
12.100名前が無い程度の能力削除
そのうち魔理沙が旧神になりそうだ、とても面白かったですでは最後に一言「理不尽だぁ!」。
13.100名前が無い程度の能力削除
懐かしいな。おもしろかったです。
あの世界観をながったらしく書かないでさっくり終わったのもよかったです。
14.90名前が無い程度の能力削除
あれこわいよなぁ
20.100名前が無い程度の能力削除
このSSを見て、今まで恐くて読めなかったドグラ・マグラを読んでみました。
ああ、もしかして原典というのは作中に出てきた方のドグラ・マグラなのでしょうか、そういえばあの本は結局読まれないままだったけれど、結局何の意味があったのかあああ。