注意
この話はWeb公開された【東方智霊奇伝 反則探偵さとり】の世界観およびこちら側(現代)の時系列を元にしております。
端的に読んだことのない方のために必要な情報としては
2019/11/25(現代) 第2話更新
咲夜が幻想郷の人妖から嫌疑をかけられて地下のフランの部屋に監禁される
2020/1/27(現代) 第3話後編更新
疑いをかけられたままフランと共に部屋から脱出
以上となります。
◇◇◇
「……」
棺桶の中で目を覚まして最初に感じたのは不快感と苛立ち、そしてそれに伴うちょっとした焦り。こんな目覚めの時はいつも部屋のものを壊してしまう。別に珍しくもないのでいつもなら気にしないが、今はそうはいかない。壊すと取り返しのつかないものがあるから。
「……寝よう」
しばし考えて出した結論は二度寝。棺桶を開くことなく寝返りをうち、腕の中のぶっさいくなぬいぐるみを抱き直して再び瞼を閉じる。この部屋には時計がない。これは時間に縛られるのが嫌だとかそういう深い考えがあるのではなく、単に必要がないから。必要のないものは私の部屋にはいらない。ゆえに窓のない地下室では時間の概念というものがなく、起きたとして果たして今が朝なのか夜なのか、どのくらい寝ていたのかわからない。規則正しい生活という言葉に対する反抗期が訪れてから幾星霜、いつどれだけ寝ようが気の向くままに……。
「……~♪……~♪」
「……」
数日前……数日なのだろうか?とりあえず我らが愛すべきメイド長、十六夜咲夜がこの部屋に監禁と言う名の人事異動を言い渡された。なんでもパチュリーをやった功績が評価されたとのこと。……昇進?降格?メイド長と当主妹の専属従者はどちらのほうが偉いのだろうか。ひょっとしたら私も美鈴あたりをやれば昇進できるかのかもしれない。お姉様をやれば一気に当主か。紅魔館当主フランドール・スカーレット。悪くない響きだ。疑問は尽きないが別に今の待遇に不満はないから特に気にはしない。とにかくこうして始まった奇妙な同棲生活、最初に何度か揉めはしたものの、なんだかんだうまくやっている。咲夜は優秀なメイド。何でも卒なくこなし、気が利いて、頭も顔もよく、なにより気難しい私ともうまくやれる。しかしただ1つ問題なのはこの子はドがつく天然であり、本人にその自覚が全くないこと。咲夜の鈴のなるような綺麗な声は私も好きだが、今まさに棺桶の外で楽しそうに響く鼻歌は微睡みに落ちようとする私を妨げてこの上なく鬱陶しい。しかも微妙に音を外しているのも余計に気になる。瞼を固く閉じてしばしの抵抗を試みるも、元から苛立っていた神経は我慢をという言葉を放棄して、ついに私は棺桶の扉を蹴り開ける。
「あら?おはようございますフラン様。随分とパワフルなお目覚めですね」
「咲夜うるさい。同居人が眠っているんだからもう少し静かに……何これ……」
咲夜を軽く睨みつけながら吐き出した言葉は、困惑に塗り変えられて消えていく。そんな私とは違い、咲夜は自然な所作で私に近づきブラシなどで身嗜みを整えてくれる。鏡に映らない自分の姿を確認することはできないが、どうせ今日も私は可愛いのだろう。私を見る人々は口々に私がお姉様にそっくりだと言うのだから。
「何これと申されましても……あぁ、フラン様はあまり日付を気になさらないお方でしたね」
「今日って何かお祝い……?」
紅魔館は基本的にお姉様のテリトリーだが、この地下室は私だけのテリトリー。……でも図書館はパチュリーのテリトリーだし、門とお庭は美鈴、キッチンは咲夜のテリトリー。意外とお姉様のテリトリーは狭いのかもしれない。まるでお姉様の器や頭の中のように。どうでもいいけど。私はこの自分だけのテリトリーをわずかな妥協もなく好みに合わせてデザインしている。お姉様とその友人に頼んで取り揃えられた家具達は大英帝国産のクラシック。部屋の落ち着いた厳格な空気を作る私のお気に入り。しかしここ数日、咲夜が来たことで部屋の雰囲気は自然と明るくなり、それになんとか抗っていた彼らだったが、今日ついに飾り付けられた眩いイルミネーションの前に敗北を喫していた。歴史の荒波を超えて吸血鬼の館に流れ着いた彼らの末路がこれかと思うと、どこか寂しさと申し訳無さを感じる。
「今日は誰の誕生日でもありませんよ。……いえ、正確にはある人物の誕生日の前日でしょうか」
「クリスマス・イヴでしょ。見たらわかるよ」
「限られた品の中でなかなかうまく飾り付けできたと自負しております」
部屋の中にはどこから持ってきたのか、見慣れないツリーが置かれ、扉にはリースまでかかっている。机に並べられているカロリーの高そうな料理の中には、今日丸焼きにされること以外で名前の聞く機会のほとんどない七面鳥や、なぜクリスマスに口にするのかもよくわからないブッシュドノエルが並べられている。
「紅魔館はいつからクリスマスを祝うようになったの」
「いつからでしょうか。むしろ私の知っている限りでは毎年お祝いしておりますが……」
恒例行事だったらしい。私の知る限りお姉様のクリスマスに対するスタンスは『なんで友人でもないやつの誕生日を私が祝わないといけないのよ』だったはず。しかし何かに付けてわいわいと騒ぐ退屈嫌いな性格を踏まえれば、考えが変わったとして不思議はない。何よりお姉様は咲夜に甘いし、今みたいに楽しげにしている咲夜にクリスマスはお祝いしないのですか?なんて尋ねられればパーティの1つや2つ企画する姿が目に浮かぶ。
「毎年フラン様もお呼びしようかと思っているのですが、いつもパチュリー様に止められまして……」
「それは別にいいよ。むしろ今までのままにして」
「ですが……」
「賑やかなのとかあんまり好きじゃない」
自分の知らぬところで家族がクリスマスを楽しんだと聞いても、特に嫉妬や寂しさは感じなかった。元より自分で選んだ優雅な引き篭もりライフ。用事があれば人を呼ぶし、誰かに会いたくなれば部屋を出る。私がクリスマスのお祝いを見た記憶がないのなら、その日は別に誰かに会いたいわけではなかったというだけのこと。そもそもうるさいのは好きじゃないし、食事だって咲夜に頼めば好きなものを作ってくれる。
「……ではこれも片付けたほうがよろしいでしょうか?」
飾り付ける前に気づいてほしかったなーと思いながら頬をかく。咲夜は良かれと思ってやったのだろうけど、正直なところ困惑している。視界の端でチカチカ光って主張するクリスマスツリーは鬱陶しいし、脂っこいものを食べたい気分でもない。しかし叱られる前の子犬のような表情でいつもより小さく見える咲夜を見ていると、答えは決まりきっている。心に溜まった疲れと呆れをゆっくりとため息として吐き出しながら告げる。
「明日にはちゃんと元に戻してね」
「……いいのですか?」
「次からはちゃんと私の許可をとってから行動するように」
「ありがとうございますフラン様」
咲夜に甘いのはお姉様だけじゃない。吸血鬼の弱点に末っ子のメイドが追記される日も遠くないだろう。
◇◇◇
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
胃には重いと思っていた七面鳥も決して油っこくなくそれでいてパサパサもしていない。ブッシュドノエルも甘さは控えめでちゃんと私好みの味付け。思いの外あっさりと完食できてしまったあたり、やはり咲夜の料理スキルは高い。
「この後はどうするの?私クリスマスなんて祝ったことないし、本で読んだくらいの知識しかないけど」
「普段ならパーティを催して、お食事しながらお話して……あとはプレゼント交換くらいでしょうか。それにあまり遅くなってもいけませんし」
咲夜が自身の銀の懐中時計でちらりと時刻を確認しながら言う。元の生活もある咲夜は体内時間を狂わせるわけにはいかない。
「プレゼント交換なんて言われても私は用意してないけど」
「もちろん構いません。ですがよろしければ私の気持ちは受け取っていただけませんか?」
そう言いつつ咲夜は可愛くラッピングされた包を渡してくる。あまり余計なものを増やしてもきっとすぐに壊してしまう。そういう思いがあるからあまりものを持ちたがらない性分になった。だから受け取るのに少し迷いはあったが、それでも咲夜が私のために用意してくれたプレゼントを無下にすることはできなかった。
「ありがとう咲夜。……これは?」
「ミサンガといいます。ご存知ありませんか?」
包を開けてみると中にはおそらく手作りであろう編み紐が入ってあった。4色の赤い紐に紫と銀の紐が丁寧に結ばれており、途中でそれぞれ7色の異なるビーズが編み込まれている。
「知らない。装飾品の類い?」
「そのとおりです。早速ですが身に付けていただけますか?」
「いいよ。どこにつけるの?手?首?」
「いえ、足首の方に。私がつけますので少々失礼します」
そう言うと咲夜は椅子に座っている私の前に跪き、ゆっくりと靴を脱がせようとする。急に触れられたせいで一瞬驚いてびくっと反応してしまう。不思議そうにこちらをきょとんと見上げる咲夜になんでもないと告げると、咲夜はそのまま足首にミサンガを結んでいく。
「足につけるものなの?アンクレットみたいだね」
「本来は手首につける事が多いですね。しかしフラン様はこういうものが手首にあるのを煩わしく感じるかと思いまして」
「たしかにそうかも。指輪とかブレスレットって邪魔になるし」
「ならばチョーカーやネックレスのように首にとも考えたのですが、従者であるこの身で主人に首輪をつけるなんて恐れ多い」
「変なところ気にするね」
「その点足首なら靴下の上につけるように長さを調整すれば、邪魔になりづらいかと思いまして」
結び終わった後、こちらを見上げてニコリと微笑まれる。きれいな笑顔に少しドキリとしてしまったのが少し悔しい。ついこの間までは私を見上げながらふらんさまーふらんさまーと言っていたくせに。
「それにミサンガには少し秘密がございまして」
「秘密?私でも壊せないとか?」
「それなら良かったのですが、ご期待に添えず申し訳ありません。ミサンガには万が一切れてしまっても、持ち主の願いが叶うと言われております」
壊れたら願いが叶う編み紐?装飾品が壊れるというのは縁起が悪いイメージがあるが、このミサンガという品はそうでもないらしい。ということは
「今すぐこれを引きちぎったらいいの?」
「えっ」
「ごめん。冗談だからそんな顔しないで」
「えーっと……大事に身に着けて自然に切れた時に叶うはずです」
「なるほど……ありがとう咲夜。大事にするね」
丁寧すぎるくらいに編まれたミサンガが自然に切れるまでどの程度かかるだろうか。願いを叶えるという行為がそれだけ困難だということなのかもしれない。でもそれもいいかと考えながら。
「喜んでもらえて光栄です。では少し早いですがそろそろ夜も深まって参りましたし、私も床に就こうかと思います」
「おやすみー。一応部屋のお片付けは手伝うつもりだから、その時にまだ寝ていたら声をかけて頂戴。起きなかったらごめんね」
「私が勝手に準備したことですし片付けは私一人で問題はありません。ですが今から寝れば起きられないということはないと思いますよ」
「咲夜と違って私は起きてからそこまで時間も経ってないし……まだ眠くないから起きているつもりだけど」
「でも……」
「ちゃんと静かにしてるから。それにこの部屋で生活する上で約束決めたよね?私の生活に過干渉しないで」
珍しく食い下がってくるがこちらも一切譲る気はない。咲夜はここに異動になった初日、私が寝ている間に勝手に部屋の大掃除をした前科があり、それを私は一度許している。いくら可愛い咲夜でも私のパーソナルスペースに必要以上に干渉することは許されない。単に私が過干渉を嫌うというのもあるが、それ以上に距離が近すぎるのは色々と危ないのだ。
「主人の妹が起きているのにその横で眠ることなんてできないとかそういうのはやめて。はっきり言って迷惑だから」
「ですがサンタさんが来るまでに眠らないと」
「サンタさんも関係ないから。……えっ?サンタさん?」
Who is サンタさん?
「サンタさんです。少し気が早いかもしれませんが、サンタさんが紅魔館を訪れる時間がわからない以上、出くわしてしまうリスクは減らすに越したことはありません。起きている間にサンタさんは現れないことを加味すれば、できるだけ早めに」
「待って。いい子だからね?少し待って。サンタさん?」
「まさかフラン様……サンタクロースのおじいさんをご存知ない……?」
なんで私は哀れみの視線を受けないといけないのだろうか。
「い、妹様にも今年はきっとサンタさん来ますよ!」
「たまに咲夜は忘れるけど、私はすっごーくお姉さんだからね?」
「見た目は幼いので大丈夫かと」
「よく知らないけどサンタさんは見た目基準じゃなくて実年齢基準じゃないかな?」
「そうですか……」
私がもらえないのに自分がもらえるのが申し訳ないとか思っているのだろう。どうしたものか、咲夜の場合天然の可能性があるからなー……。
「……サンタさんって本当にいるの?」
「仰っている意味がよくわかりませんが」
「どうやって一夜で世界中にプレゼントを配るの?」
「きっと時間止めているのですよ」
「鍵のかかっている家にどうやって入るの?」
「壁ぬけでしょうか。スキマを使えるのかもしれません」
「誰にも見つからないなんて不可能だと思う」
「無意識も操ることが可能なのかと」
「何歳よそいつ」
「きっと蓬莱人で不老不死です」
なにそれ怖い。サンタじゃなくてサタンじゃん。そんなのが眠っている間に来るなんて私は嫌だよ。普通に怖いもん。
「……ここで起きて待っているのはダメかな?刺し違えてでも咲夜のことは私が守るから」
「なんで戦う気なんですか。サンタさんはいい人ですよ?」
「どこにそんな証拠があるのさ」
「毎年プレゼントをくれますもの。銀のナイフに外の世界の童話、ティーカップとお洋服」
……この館の住人は揃いも揃って咲夜に甘すぎる。咲夜の天然の幾分かは周りの教育のせいだろう。私がもっとついてあげなくちゃいけなかったかもしれない。
「……はいはいわかった。咲夜がそこまで言うなら追い返すような真似はしないよ」
「納得していただけて嬉しいです」
「でもうちの子がお世話になっているなら挨拶くらいしないとね」
「えっ」
「冗談だってば。咲夜も参観日を嫌がるようなお年頃になっちゃったかー。お姉ちゃんは悲しいなー」
「紅魔館の皆はどこに出しても恥ずかしくない私の大切な家族ですからそんな事はありませんよ。ですがサンタさんは起きている間は来られないということを考えるとやはり挨拶というのは難しいかと思います。それに私のもとに来るのでしたら今年は隣のフラン様にプレゼントをいただけるようにとお手紙を今から書いて……フラン様?」
「なんでもないよ。うちの咲夜はかわいいなーって」
誤魔化すように笑ってみると咲夜は不思議そうにこちらを見つめていた。咲夜の中に生きる幻想が強固なものであることを確認したので、しょうがないなと思いつつ咲夜に合わせて大人しく眠る準備をする。期待を隠しきれないでいる咲夜におやすみと返して棺桶の中で静かに眠りにつく。自称サンタさん達が来た時に邪魔にならないように。
◇◇◇
……眠れない。当然だ。時間なんて無視して眠くなったら眠る、起きたくなったら起きるという悠々自適な引き篭もりライフを堪能していた私が眠くないのに眠るなんて事ができるわけがない。頭の中で増えすぎた羊をクランベリートラップで一箇所に集めた後、レーヴァテインで一掃したところで諦め、静かにこっそりと棺桶を開けてみる。咲夜はもう寝ているだろうか。
「……すぅ」
真っ暗な部屋の中で咲夜の寝顔がはっきりと見える。恐る恐る近づいてみるが間違いなく深く眠っている。
「あとは自称サンタさんが来るのを待つだけ」
プレゼントは4人分。現在時刻は咲夜の懐中時計以外に知るすべはないがざっと見回しても見当たらない。寝ている時まで懐中時計を身に着けているとは思えないが、いや咲夜ならやるかも。探せば見つかるかもしれないが、そうしている間に起こしてしまうのも申し訳ない。あとどれだけ待てば夜明けなのだろうか。そもそも自称サンタさんはいつ来るのだろうか。
「誰が最初に来るのかな」
私の予想は小悪魔だ。最初に部屋を訪れるサンタさんは万が一まだ咲夜が起きていた場合に訪問理由を誤魔化す必要がある。この中でそれがうまくできるのは小悪魔だけだ。日頃の労いの言葉をかけて、そのまま耳に口づける。そして一緒に楽しい時間を過ごすためのティーカップを置いてその場をあとにするのだろう。
次は迷うところだけど美鈴だろうか。クリスマスくらいは門番の仕事も早めに切り上げているだろう。万が一本物のサンタさんが来たとしても、美鈴には止められないだろうし。咲夜に布団をかけ直して瞼に口づけては、一緒に遊びに行くための服を置いてその場をあとにするのだろう。
次はヘタレのパチュリーだ。いつものむすーっとした顔でグダグダ迷って時間をかけて、やっとの思いで咲夜の部屋に訪れては、おすすめの童話を枕元に置いてそそくさと立ち去る。しかし立ち止まって少し迷った後に引き返し、頭をなでながらおでこに口づけて慌てて部屋を後にするのだろう。
最後はお姉様。いつものように偉そうな態度でズカズカと我が物顔で咲夜の部屋に入ってきては、咲夜にしか見せない顔で微笑んで。それから起こさないように唇に口づけた後で銀のナイフを置いてまたズカズカと部屋を後にするのだろう。
「咲夜は愛されてるなー」
咲夜の透き通るような銀髪が口元にかかっているのに気づいて、のけようと手を伸ばす。しかし触れる直前でピタリと手を止めて、少し迷った後触れずにそのまま手を引っ込める。
「でもそのせいで私は退屈で死にそうだぞー。咲夜のばーか」
小声でポツリと呟いた声は真っ暗な部屋に消えていく。起こさないようにと考えたらできることなんて殆どない。ただただ小悪魔が来るまでずーっと咲夜の寝顔を見つめていた。
◇◇◇
「……遅い」
少しずつイライラしてきた。いつまで待っても誰も来ない。いつまで待っていたのかもわからない。なんで部屋には時計がないのだろうか。そんな八つ当たりをしながら、いつまで経ってもこないサンタさんに苛立ちを募らせていく。
「もういっそ部屋を出ちゃおうか」
ドアノブに手をかけるのはこれで4度目。瞼を閉じて扉の目を探ると、むすーっとした憎たらしい魔法陣が幾重にも重なって妨害しようとする。だが生憎かくれんぼの鬼役は得意だ。あっさりと目を見つけて手中に取り寄せ、握りつぶそうとして……やはりやめる。
「それはきっとだめだよね……」
この人事異動は表向きには監禁とされている。私のテリトリーを牢屋扱いは言いたいことがあるけどそれは今どうでもいい。ともかく監禁されているというのであれば、もしこの扉が一度でも開かれればこの部屋が咲夜を捉える役目をこなせないことの証明となる。そうなれば次にどこに連れて行かれるかはわからない。そこが安全かどうかはわからない。下手をしたら監禁から直接的な処罰に変わる可能性だってあるのかもしれない。それを考えるとこの鍵は壊せない。ここが形だけでも難攻不落の密室という前提があれば、何があっっても私が咲夜を守ってあげられる。
「……あれ?」
そこで気づいた。気づいてしまった。ここが難攻不落の密室である必要があるのに、自称サンタさん達はどうやって咲夜にプレゼントを届けるのだろうか。
「あー……来れない可能性があるのか」
どんな形であれプレゼントが届くということは外界との行き来の証明につながる。そこまで考えれば今年はプレゼントを渡せない可能性は十分にある。
「咲夜は納得してくれるかな?」
咲夜が地下室にいたせいでサンタさんはプレゼントを渡せなかった。……だめだ。寝るときの咲夜はサンタさんが今夜来ることを微塵も疑っていなかった。咲夜の思い描くサンタさんは地下室の扉など苦にもしないのだろう。しかし幼心が描いた空想の超人は決して助けてはくれない。いつだって夢物語は現実の前には無力だ。希望も信頼も子供の夢もなんと儚く壊れやすいことか。壊れやすいものは嫌いだ。一度壊れたものは決してもとに戻らない。残るのは虚しい喪失感だけだ。
「サンタクロースの役立たず。お前なんかきらいだ」
存在せぬものに悪態をついたところで何の実りもない。疲れと苛立ちをかき混ぜたような重い溜息を吐き出しながら、もういっそ開き直ってもいいのではないかと思えてきた。世間一般ではサンタさんから幾つになるまでプレゼントをもらうものなのかは知らない。だが咲夜の年齢ならそろそろ、いやむしろすでにもらい過ぎなのではないだろうか。これも前向きに考えればサンタ卒業のいいきっかけかもしれない。人はこうやって世の中を知って大人になっていく。私は引き篭もりだけど。私もあの年のクリスマス、真っ赤なコスプレしたお姉様を見つけて世界の真実を知った。
「ごめんね咲夜」
咲夜は世界の真実を知ってもきっと少し困ったように笑って、でもちゃんと分かって許してくれるだろう。それは期待や願望ではなく、咲夜がそういう子だと知っているから。咲夜の寝顔をもう一度見た後に、起こさないように一人で静かに部屋の片付けでもしようと立ち上がる。クリスマスはこれで終わり。
「……じて……さい」
「咲夜?」
咲夜が苦しそうに言葉を漏らす。
「信じてください……私は……やっていません……」
「……」
一瞬起こしてしまったかと思ったがどうやら寝言のようだった。苦しそうに吐き出された言葉とともに、咲夜の瞼から透明な雫が一筋流れた。
「……っ」
……何がきっと許してくれるだ。サンタさんはいい子のもとに来るもの。咲夜にとって今年クリスマスプレゼントがもらえないということはいい子ではなかったということになる。私は無実の罪を着せられている咲夜に、自身の行いの正しさを否定するような事実を突きつけるつもりなのか。そんなことしていいはずがない。
「……咲夜の夢は私が守る」
そっと指で雫を拭ってやりながら、強い決意をもって立ち上がる。私はフランドール・スカーレット。泣く子も黙る吸血鬼。全てを破壊する悪魔の妹。たしかに私は壊れやすいものが嫌いだ。誰より多くのものを壊し、誰より多くその喪失を経験してきた。だからこそ今回は、咲夜の夢は私が守るんだ。
◇◇◇
「……咲夜のばか」
タイムリミットは咲夜の起床。今この時にもそれが訪れるかもしれない以上、無駄にしていい時間はない。ないのだが、早々に問題にぶち当たってしまい、どうにもならずに棺桶の上に座り込んでしまった。
1つ目の問題は咲夜の喜ぶプレゼントは何か。例年通りナイフ・童話・服・ティーカップ・のクリスマス4点セットを送ることができれば丸く収まるが、生憎ここには狂気はあっても凶器はないし、童話もフェアリーも部屋の外。服はサイズが合わないし、あげられるものはティーカップのみ。中途半端になるくらいならいっそ自分で咲夜の喜びそうなものを考えればと思ったが、これがなかなかの困りもの。私が咲夜にあげると仮定すれば、どんなものでも喜んで受け取るだろう。例え割れたお皿の破片なんかでも後生大事に抱えていそうだ。でも今回は私ではなくサンタさんからのプレゼント。流石に咲夜もサンタさんから割れたお皿の破片をもらったら困惑するだろう。つまり私が探さないといけないのはサンタさんから咲夜がもらって嬉しいプレゼント。
そしてそれを探しているうちに2つ目の問題に当たる。咲夜はここに来た初日、私が棺桶で寝ている間に一通りこの部屋の大掃除をしてしまった。つまりこの部屋にあるものは全て把握している。にもかかわらず私は外に出られない以上、この部屋の物しか咲夜にあげることはできない。咲夜の枕元に置かれたプレゼントが元々この部屋にあるものだと気づけば咲夜は一体どんな反応をするだろう。私がサンタさんだと気づくだろうか。天然だからサンタさんが私のものを奪って咲夜にあげたなんて頓珍漢なことを言い出すかもしれない。咲夜の夢を守るために立ち上がったが、そんな私に立ちはだかる問題もまた咲夜のいい行いから産まれたものだった。
「自称サンタさんも大変なんだねー……」
苦し紛れにイルミネーションからリボンを取り出し、私がプレゼント❤なんてしようとするくらいまで追い詰められていると、そういえばあの日のお姉様もそうだったのだろうかと思い出す。今でこそ私もサンタさんを信じていないが、その存在を夢見てプレゼントを貰っていた少女時代もあった。夢が壊れたのはあの年のクリスマス。当時のことは詳しく知らないけど、世間の情勢がうんたらかんたらとかでお父様もお母様もとても忙しく、12月になる前からお屋敷をずっと空けていた。幼い私はそれが自身へのプレゼントに影響があるなんて梅雨ほども思わず、例年通り次の日の朝には枕元にプレゼントが置かれていることを疑うことなく眠りについていた。そして深夜、もくもくのひげをつけていつも以上に真っ赤なお姉様が私の部屋に仕掛けていた侵入者用のトラップに引っかかっていた。この自称サンタさんは尊大な態度で悪びれることなく世界の真実を私に告げ、夢を打ち砕かれた私はトラップのせいで抵抗できないお姉様を朝までぼっこぼこにしてやったのを覚えている。その後に渡されたぶっさいくな手作りのぬいぐるみについては、私のせいで顔が歪んだと頑なに弁明していたが、私は知っている。自称サンタさんはぼっこぼこにされながらも務めを果たしてプレゼントは死守していたし、何よりお姉様が捕まった時になんだろこの手に持っているぶっさいくなやつ……って思ったの覚えているからあれは元からぶっさいくだったはずだ。
「……あれ?」
ふと閃いて棺桶の中をごそごそと漁る。引っ張り出したのは私より5つ年下のぶっさいくなぬいぐるみ。耳は左右非対称で輪郭も少し歪み、見る角度によっては笑っているようにも泣いているようにも見える。かと言ってそういう不気味さを売りにするには僅かながらの愛嬌が足を引っ張る。そうでなくても何度も下手くそな補修がされた形跡が残っていて、随分とくたびれてしまっており、とても値段のつけられない代物だ。
「……ローレンス。お前ともなんだかんだ随分と長い付き合いだね。それこそこの家ではお姉様の次くらいかな」
咲夜はこの部屋を勝手に大掃除したから部屋の物は全て把握しているだろう。しかし私が眠っていたこの棺桶の中まで開けてはいないはずだ。ここは最後に残された私だけのプライベート空間。ぬいぐるみのローレンスはずっとそこにいたのだから、咲夜もこの子のことは知らない。
相変わらずぶっさいくなぬいぐるみを抱きかかえては彼との思い出を振り返る。碌な思い出がない。引き篭もりの人生にあまり大きなイベントはなかった。思い出したのはせいぜい長年一緒にいたせいで臭うからと洗濯したら、四肢がばらばらになって帰ってきたことくらい。あの時はお姉様に修繕を頼んだら左右の腕が逆になって帰ってきたのを覚えている。
「次のご主人様は私よりもずっといい子で優しい子、少なくても物は大事にする子だ。おまけにセンスも少しおかしいから、ぶっさいくなお前のことも気にいるかも知れない」
500年近くもの間、私が眠りにつく度にただでさえ狭い棺桶のスペースを我が物顔で陣取るふてぶてしい彼ならきっとうまくやっていけるだろう。500年近く私の寝床を守り続けた彼ならきっと咲夜の夢も守ってくれるだろう。
「さよならローレンス」
腐れ縁の相棒を咲夜の枕元に贈り、咲夜の頭を優しく撫でてみる。
「メリークリスマス十六夜咲夜。お前がいい子だってことはこの館の皆が知っている。だから今は安心してお眠り」
そのまま手を握りながらベッドの隣で眠りにつく。今まさにこの手の中にあるものを壊さないようにと願いながら。
この話はWeb公開された【東方智霊奇伝 反則探偵さとり】の世界観およびこちら側(現代)の時系列を元にしております。
端的に読んだことのない方のために必要な情報としては
2019/11/25(現代) 第2話更新
咲夜が幻想郷の人妖から嫌疑をかけられて地下のフランの部屋に監禁される
2020/1/27(現代) 第3話後編更新
疑いをかけられたままフランと共に部屋から脱出
以上となります。
◇◇◇
「……」
棺桶の中で目を覚まして最初に感じたのは不快感と苛立ち、そしてそれに伴うちょっとした焦り。こんな目覚めの時はいつも部屋のものを壊してしまう。別に珍しくもないのでいつもなら気にしないが、今はそうはいかない。壊すと取り返しのつかないものがあるから。
「……寝よう」
しばし考えて出した結論は二度寝。棺桶を開くことなく寝返りをうち、腕の中のぶっさいくなぬいぐるみを抱き直して再び瞼を閉じる。この部屋には時計がない。これは時間に縛られるのが嫌だとかそういう深い考えがあるのではなく、単に必要がないから。必要のないものは私の部屋にはいらない。ゆえに窓のない地下室では時間の概念というものがなく、起きたとして果たして今が朝なのか夜なのか、どのくらい寝ていたのかわからない。規則正しい生活という言葉に対する反抗期が訪れてから幾星霜、いつどれだけ寝ようが気の向くままに……。
「……~♪……~♪」
「……」
数日前……数日なのだろうか?とりあえず我らが愛すべきメイド長、十六夜咲夜がこの部屋に監禁と言う名の人事異動を言い渡された。なんでもパチュリーをやった功績が評価されたとのこと。……昇進?降格?メイド長と当主妹の専属従者はどちらのほうが偉いのだろうか。ひょっとしたら私も美鈴あたりをやれば昇進できるかのかもしれない。お姉様をやれば一気に当主か。紅魔館当主フランドール・スカーレット。悪くない響きだ。疑問は尽きないが別に今の待遇に不満はないから特に気にはしない。とにかくこうして始まった奇妙な同棲生活、最初に何度か揉めはしたものの、なんだかんだうまくやっている。咲夜は優秀なメイド。何でも卒なくこなし、気が利いて、頭も顔もよく、なにより気難しい私ともうまくやれる。しかしただ1つ問題なのはこの子はドがつく天然であり、本人にその自覚が全くないこと。咲夜の鈴のなるような綺麗な声は私も好きだが、今まさに棺桶の外で楽しそうに響く鼻歌は微睡みに落ちようとする私を妨げてこの上なく鬱陶しい。しかも微妙に音を外しているのも余計に気になる。瞼を固く閉じてしばしの抵抗を試みるも、元から苛立っていた神経は我慢をという言葉を放棄して、ついに私は棺桶の扉を蹴り開ける。
「あら?おはようございますフラン様。随分とパワフルなお目覚めですね」
「咲夜うるさい。同居人が眠っているんだからもう少し静かに……何これ……」
咲夜を軽く睨みつけながら吐き出した言葉は、困惑に塗り変えられて消えていく。そんな私とは違い、咲夜は自然な所作で私に近づきブラシなどで身嗜みを整えてくれる。鏡に映らない自分の姿を確認することはできないが、どうせ今日も私は可愛いのだろう。私を見る人々は口々に私がお姉様にそっくりだと言うのだから。
「何これと申されましても……あぁ、フラン様はあまり日付を気になさらないお方でしたね」
「今日って何かお祝い……?」
紅魔館は基本的にお姉様のテリトリーだが、この地下室は私だけのテリトリー。……でも図書館はパチュリーのテリトリーだし、門とお庭は美鈴、キッチンは咲夜のテリトリー。意外とお姉様のテリトリーは狭いのかもしれない。まるでお姉様の器や頭の中のように。どうでもいいけど。私はこの自分だけのテリトリーをわずかな妥協もなく好みに合わせてデザインしている。お姉様とその友人に頼んで取り揃えられた家具達は大英帝国産のクラシック。部屋の落ち着いた厳格な空気を作る私のお気に入り。しかしここ数日、咲夜が来たことで部屋の雰囲気は自然と明るくなり、それになんとか抗っていた彼らだったが、今日ついに飾り付けられた眩いイルミネーションの前に敗北を喫していた。歴史の荒波を超えて吸血鬼の館に流れ着いた彼らの末路がこれかと思うと、どこか寂しさと申し訳無さを感じる。
「今日は誰の誕生日でもありませんよ。……いえ、正確にはある人物の誕生日の前日でしょうか」
「クリスマス・イヴでしょ。見たらわかるよ」
「限られた品の中でなかなかうまく飾り付けできたと自負しております」
部屋の中にはどこから持ってきたのか、見慣れないツリーが置かれ、扉にはリースまでかかっている。机に並べられているカロリーの高そうな料理の中には、今日丸焼きにされること以外で名前の聞く機会のほとんどない七面鳥や、なぜクリスマスに口にするのかもよくわからないブッシュドノエルが並べられている。
「紅魔館はいつからクリスマスを祝うようになったの」
「いつからでしょうか。むしろ私の知っている限りでは毎年お祝いしておりますが……」
恒例行事だったらしい。私の知る限りお姉様のクリスマスに対するスタンスは『なんで友人でもないやつの誕生日を私が祝わないといけないのよ』だったはず。しかし何かに付けてわいわいと騒ぐ退屈嫌いな性格を踏まえれば、考えが変わったとして不思議はない。何よりお姉様は咲夜に甘いし、今みたいに楽しげにしている咲夜にクリスマスはお祝いしないのですか?なんて尋ねられればパーティの1つや2つ企画する姿が目に浮かぶ。
「毎年フラン様もお呼びしようかと思っているのですが、いつもパチュリー様に止められまして……」
「それは別にいいよ。むしろ今までのままにして」
「ですが……」
「賑やかなのとかあんまり好きじゃない」
自分の知らぬところで家族がクリスマスを楽しんだと聞いても、特に嫉妬や寂しさは感じなかった。元より自分で選んだ優雅な引き篭もりライフ。用事があれば人を呼ぶし、誰かに会いたくなれば部屋を出る。私がクリスマスのお祝いを見た記憶がないのなら、その日は別に誰かに会いたいわけではなかったというだけのこと。そもそもうるさいのは好きじゃないし、食事だって咲夜に頼めば好きなものを作ってくれる。
「……ではこれも片付けたほうがよろしいでしょうか?」
飾り付ける前に気づいてほしかったなーと思いながら頬をかく。咲夜は良かれと思ってやったのだろうけど、正直なところ困惑している。視界の端でチカチカ光って主張するクリスマスツリーは鬱陶しいし、脂っこいものを食べたい気分でもない。しかし叱られる前の子犬のような表情でいつもより小さく見える咲夜を見ていると、答えは決まりきっている。心に溜まった疲れと呆れをゆっくりとため息として吐き出しながら告げる。
「明日にはちゃんと元に戻してね」
「……いいのですか?」
「次からはちゃんと私の許可をとってから行動するように」
「ありがとうございますフラン様」
咲夜に甘いのはお姉様だけじゃない。吸血鬼の弱点に末っ子のメイドが追記される日も遠くないだろう。
◇◇◇
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
胃には重いと思っていた七面鳥も決して油っこくなくそれでいてパサパサもしていない。ブッシュドノエルも甘さは控えめでちゃんと私好みの味付け。思いの外あっさりと完食できてしまったあたり、やはり咲夜の料理スキルは高い。
「この後はどうするの?私クリスマスなんて祝ったことないし、本で読んだくらいの知識しかないけど」
「普段ならパーティを催して、お食事しながらお話して……あとはプレゼント交換くらいでしょうか。それにあまり遅くなってもいけませんし」
咲夜が自身の銀の懐中時計でちらりと時刻を確認しながら言う。元の生活もある咲夜は体内時間を狂わせるわけにはいかない。
「プレゼント交換なんて言われても私は用意してないけど」
「もちろん構いません。ですがよろしければ私の気持ちは受け取っていただけませんか?」
そう言いつつ咲夜は可愛くラッピングされた包を渡してくる。あまり余計なものを増やしてもきっとすぐに壊してしまう。そういう思いがあるからあまりものを持ちたがらない性分になった。だから受け取るのに少し迷いはあったが、それでも咲夜が私のために用意してくれたプレゼントを無下にすることはできなかった。
「ありがとう咲夜。……これは?」
「ミサンガといいます。ご存知ありませんか?」
包を開けてみると中にはおそらく手作りであろう編み紐が入ってあった。4色の赤い紐に紫と銀の紐が丁寧に結ばれており、途中でそれぞれ7色の異なるビーズが編み込まれている。
「知らない。装飾品の類い?」
「そのとおりです。早速ですが身に付けていただけますか?」
「いいよ。どこにつけるの?手?首?」
「いえ、足首の方に。私がつけますので少々失礼します」
そう言うと咲夜は椅子に座っている私の前に跪き、ゆっくりと靴を脱がせようとする。急に触れられたせいで一瞬驚いてびくっと反応してしまう。不思議そうにこちらをきょとんと見上げる咲夜になんでもないと告げると、咲夜はそのまま足首にミサンガを結んでいく。
「足につけるものなの?アンクレットみたいだね」
「本来は手首につける事が多いですね。しかしフラン様はこういうものが手首にあるのを煩わしく感じるかと思いまして」
「たしかにそうかも。指輪とかブレスレットって邪魔になるし」
「ならばチョーカーやネックレスのように首にとも考えたのですが、従者であるこの身で主人に首輪をつけるなんて恐れ多い」
「変なところ気にするね」
「その点足首なら靴下の上につけるように長さを調整すれば、邪魔になりづらいかと思いまして」
結び終わった後、こちらを見上げてニコリと微笑まれる。きれいな笑顔に少しドキリとしてしまったのが少し悔しい。ついこの間までは私を見上げながらふらんさまーふらんさまーと言っていたくせに。
「それにミサンガには少し秘密がございまして」
「秘密?私でも壊せないとか?」
「それなら良かったのですが、ご期待に添えず申し訳ありません。ミサンガには万が一切れてしまっても、持ち主の願いが叶うと言われております」
壊れたら願いが叶う編み紐?装飾品が壊れるというのは縁起が悪いイメージがあるが、このミサンガという品はそうでもないらしい。ということは
「今すぐこれを引きちぎったらいいの?」
「えっ」
「ごめん。冗談だからそんな顔しないで」
「えーっと……大事に身に着けて自然に切れた時に叶うはずです」
「なるほど……ありがとう咲夜。大事にするね」
丁寧すぎるくらいに編まれたミサンガが自然に切れるまでどの程度かかるだろうか。願いを叶えるという行為がそれだけ困難だということなのかもしれない。でもそれもいいかと考えながら。
「喜んでもらえて光栄です。では少し早いですがそろそろ夜も深まって参りましたし、私も床に就こうかと思います」
「おやすみー。一応部屋のお片付けは手伝うつもりだから、その時にまだ寝ていたら声をかけて頂戴。起きなかったらごめんね」
「私が勝手に準備したことですし片付けは私一人で問題はありません。ですが今から寝れば起きられないということはないと思いますよ」
「咲夜と違って私は起きてからそこまで時間も経ってないし……まだ眠くないから起きているつもりだけど」
「でも……」
「ちゃんと静かにしてるから。それにこの部屋で生活する上で約束決めたよね?私の生活に過干渉しないで」
珍しく食い下がってくるがこちらも一切譲る気はない。咲夜はここに異動になった初日、私が寝ている間に勝手に部屋の大掃除をした前科があり、それを私は一度許している。いくら可愛い咲夜でも私のパーソナルスペースに必要以上に干渉することは許されない。単に私が過干渉を嫌うというのもあるが、それ以上に距離が近すぎるのは色々と危ないのだ。
「主人の妹が起きているのにその横で眠ることなんてできないとかそういうのはやめて。はっきり言って迷惑だから」
「ですがサンタさんが来るまでに眠らないと」
「サンタさんも関係ないから。……えっ?サンタさん?」
Who is サンタさん?
「サンタさんです。少し気が早いかもしれませんが、サンタさんが紅魔館を訪れる時間がわからない以上、出くわしてしまうリスクは減らすに越したことはありません。起きている間にサンタさんは現れないことを加味すれば、できるだけ早めに」
「待って。いい子だからね?少し待って。サンタさん?」
「まさかフラン様……サンタクロースのおじいさんをご存知ない……?」
なんで私は哀れみの視線を受けないといけないのだろうか。
「い、妹様にも今年はきっとサンタさん来ますよ!」
「たまに咲夜は忘れるけど、私はすっごーくお姉さんだからね?」
「見た目は幼いので大丈夫かと」
「よく知らないけどサンタさんは見た目基準じゃなくて実年齢基準じゃないかな?」
「そうですか……」
私がもらえないのに自分がもらえるのが申し訳ないとか思っているのだろう。どうしたものか、咲夜の場合天然の可能性があるからなー……。
「……サンタさんって本当にいるの?」
「仰っている意味がよくわかりませんが」
「どうやって一夜で世界中にプレゼントを配るの?」
「きっと時間止めているのですよ」
「鍵のかかっている家にどうやって入るの?」
「壁ぬけでしょうか。スキマを使えるのかもしれません」
「誰にも見つからないなんて不可能だと思う」
「無意識も操ることが可能なのかと」
「何歳よそいつ」
「きっと蓬莱人で不老不死です」
なにそれ怖い。サンタじゃなくてサタンじゃん。そんなのが眠っている間に来るなんて私は嫌だよ。普通に怖いもん。
「……ここで起きて待っているのはダメかな?刺し違えてでも咲夜のことは私が守るから」
「なんで戦う気なんですか。サンタさんはいい人ですよ?」
「どこにそんな証拠があるのさ」
「毎年プレゼントをくれますもの。銀のナイフに外の世界の童話、ティーカップとお洋服」
……この館の住人は揃いも揃って咲夜に甘すぎる。咲夜の天然の幾分かは周りの教育のせいだろう。私がもっとついてあげなくちゃいけなかったかもしれない。
「……はいはいわかった。咲夜がそこまで言うなら追い返すような真似はしないよ」
「納得していただけて嬉しいです」
「でもうちの子がお世話になっているなら挨拶くらいしないとね」
「えっ」
「冗談だってば。咲夜も参観日を嫌がるようなお年頃になっちゃったかー。お姉ちゃんは悲しいなー」
「紅魔館の皆はどこに出しても恥ずかしくない私の大切な家族ですからそんな事はありませんよ。ですがサンタさんは起きている間は来られないということを考えるとやはり挨拶というのは難しいかと思います。それに私のもとに来るのでしたら今年は隣のフラン様にプレゼントをいただけるようにとお手紙を今から書いて……フラン様?」
「なんでもないよ。うちの咲夜はかわいいなーって」
誤魔化すように笑ってみると咲夜は不思議そうにこちらを見つめていた。咲夜の中に生きる幻想が強固なものであることを確認したので、しょうがないなと思いつつ咲夜に合わせて大人しく眠る準備をする。期待を隠しきれないでいる咲夜におやすみと返して棺桶の中で静かに眠りにつく。自称サンタさん達が来た時に邪魔にならないように。
◇◇◇
……眠れない。当然だ。時間なんて無視して眠くなったら眠る、起きたくなったら起きるという悠々自適な引き篭もりライフを堪能していた私が眠くないのに眠るなんて事ができるわけがない。頭の中で増えすぎた羊をクランベリートラップで一箇所に集めた後、レーヴァテインで一掃したところで諦め、静かにこっそりと棺桶を開けてみる。咲夜はもう寝ているだろうか。
「……すぅ」
真っ暗な部屋の中で咲夜の寝顔がはっきりと見える。恐る恐る近づいてみるが間違いなく深く眠っている。
「あとは自称サンタさんが来るのを待つだけ」
プレゼントは4人分。現在時刻は咲夜の懐中時計以外に知るすべはないがざっと見回しても見当たらない。寝ている時まで懐中時計を身に着けているとは思えないが、いや咲夜ならやるかも。探せば見つかるかもしれないが、そうしている間に起こしてしまうのも申し訳ない。あとどれだけ待てば夜明けなのだろうか。そもそも自称サンタさんはいつ来るのだろうか。
「誰が最初に来るのかな」
私の予想は小悪魔だ。最初に部屋を訪れるサンタさんは万が一まだ咲夜が起きていた場合に訪問理由を誤魔化す必要がある。この中でそれがうまくできるのは小悪魔だけだ。日頃の労いの言葉をかけて、そのまま耳に口づける。そして一緒に楽しい時間を過ごすためのティーカップを置いてその場をあとにするのだろう。
次は迷うところだけど美鈴だろうか。クリスマスくらいは門番の仕事も早めに切り上げているだろう。万が一本物のサンタさんが来たとしても、美鈴には止められないだろうし。咲夜に布団をかけ直して瞼に口づけては、一緒に遊びに行くための服を置いてその場をあとにするのだろう。
次はヘタレのパチュリーだ。いつものむすーっとした顔でグダグダ迷って時間をかけて、やっとの思いで咲夜の部屋に訪れては、おすすめの童話を枕元に置いてそそくさと立ち去る。しかし立ち止まって少し迷った後に引き返し、頭をなでながらおでこに口づけて慌てて部屋を後にするのだろう。
最後はお姉様。いつものように偉そうな態度でズカズカと我が物顔で咲夜の部屋に入ってきては、咲夜にしか見せない顔で微笑んで。それから起こさないように唇に口づけた後で銀のナイフを置いてまたズカズカと部屋を後にするのだろう。
「咲夜は愛されてるなー」
咲夜の透き通るような銀髪が口元にかかっているのに気づいて、のけようと手を伸ばす。しかし触れる直前でピタリと手を止めて、少し迷った後触れずにそのまま手を引っ込める。
「でもそのせいで私は退屈で死にそうだぞー。咲夜のばーか」
小声でポツリと呟いた声は真っ暗な部屋に消えていく。起こさないようにと考えたらできることなんて殆どない。ただただ小悪魔が来るまでずーっと咲夜の寝顔を見つめていた。
◇◇◇
「……遅い」
少しずつイライラしてきた。いつまで待っても誰も来ない。いつまで待っていたのかもわからない。なんで部屋には時計がないのだろうか。そんな八つ当たりをしながら、いつまで経ってもこないサンタさんに苛立ちを募らせていく。
「もういっそ部屋を出ちゃおうか」
ドアノブに手をかけるのはこれで4度目。瞼を閉じて扉の目を探ると、むすーっとした憎たらしい魔法陣が幾重にも重なって妨害しようとする。だが生憎かくれんぼの鬼役は得意だ。あっさりと目を見つけて手中に取り寄せ、握りつぶそうとして……やはりやめる。
「それはきっとだめだよね……」
この人事異動は表向きには監禁とされている。私のテリトリーを牢屋扱いは言いたいことがあるけどそれは今どうでもいい。ともかく監禁されているというのであれば、もしこの扉が一度でも開かれればこの部屋が咲夜を捉える役目をこなせないことの証明となる。そうなれば次にどこに連れて行かれるかはわからない。そこが安全かどうかはわからない。下手をしたら監禁から直接的な処罰に変わる可能性だってあるのかもしれない。それを考えるとこの鍵は壊せない。ここが形だけでも難攻不落の密室という前提があれば、何があっっても私が咲夜を守ってあげられる。
「……あれ?」
そこで気づいた。気づいてしまった。ここが難攻不落の密室である必要があるのに、自称サンタさん達はどうやって咲夜にプレゼントを届けるのだろうか。
「あー……来れない可能性があるのか」
どんな形であれプレゼントが届くということは外界との行き来の証明につながる。そこまで考えれば今年はプレゼントを渡せない可能性は十分にある。
「咲夜は納得してくれるかな?」
咲夜が地下室にいたせいでサンタさんはプレゼントを渡せなかった。……だめだ。寝るときの咲夜はサンタさんが今夜来ることを微塵も疑っていなかった。咲夜の思い描くサンタさんは地下室の扉など苦にもしないのだろう。しかし幼心が描いた空想の超人は決して助けてはくれない。いつだって夢物語は現実の前には無力だ。希望も信頼も子供の夢もなんと儚く壊れやすいことか。壊れやすいものは嫌いだ。一度壊れたものは決してもとに戻らない。残るのは虚しい喪失感だけだ。
「サンタクロースの役立たず。お前なんかきらいだ」
存在せぬものに悪態をついたところで何の実りもない。疲れと苛立ちをかき混ぜたような重い溜息を吐き出しながら、もういっそ開き直ってもいいのではないかと思えてきた。世間一般ではサンタさんから幾つになるまでプレゼントをもらうものなのかは知らない。だが咲夜の年齢ならそろそろ、いやむしろすでにもらい過ぎなのではないだろうか。これも前向きに考えればサンタ卒業のいいきっかけかもしれない。人はこうやって世の中を知って大人になっていく。私は引き篭もりだけど。私もあの年のクリスマス、真っ赤なコスプレしたお姉様を見つけて世界の真実を知った。
「ごめんね咲夜」
咲夜は世界の真実を知ってもきっと少し困ったように笑って、でもちゃんと分かって許してくれるだろう。それは期待や願望ではなく、咲夜がそういう子だと知っているから。咲夜の寝顔をもう一度見た後に、起こさないように一人で静かに部屋の片付けでもしようと立ち上がる。クリスマスはこれで終わり。
「……じて……さい」
「咲夜?」
咲夜が苦しそうに言葉を漏らす。
「信じてください……私は……やっていません……」
「……」
一瞬起こしてしまったかと思ったがどうやら寝言のようだった。苦しそうに吐き出された言葉とともに、咲夜の瞼から透明な雫が一筋流れた。
「……っ」
……何がきっと許してくれるだ。サンタさんはいい子のもとに来るもの。咲夜にとって今年クリスマスプレゼントがもらえないということはいい子ではなかったということになる。私は無実の罪を着せられている咲夜に、自身の行いの正しさを否定するような事実を突きつけるつもりなのか。そんなことしていいはずがない。
「……咲夜の夢は私が守る」
そっと指で雫を拭ってやりながら、強い決意をもって立ち上がる。私はフランドール・スカーレット。泣く子も黙る吸血鬼。全てを破壊する悪魔の妹。たしかに私は壊れやすいものが嫌いだ。誰より多くのものを壊し、誰より多くその喪失を経験してきた。だからこそ今回は、咲夜の夢は私が守るんだ。
◇◇◇
「……咲夜のばか」
タイムリミットは咲夜の起床。今この時にもそれが訪れるかもしれない以上、無駄にしていい時間はない。ないのだが、早々に問題にぶち当たってしまい、どうにもならずに棺桶の上に座り込んでしまった。
1つ目の問題は咲夜の喜ぶプレゼントは何か。例年通りナイフ・童話・服・ティーカップ・のクリスマス4点セットを送ることができれば丸く収まるが、生憎ここには狂気はあっても凶器はないし、童話もフェアリーも部屋の外。服はサイズが合わないし、あげられるものはティーカップのみ。中途半端になるくらいならいっそ自分で咲夜の喜びそうなものを考えればと思ったが、これがなかなかの困りもの。私が咲夜にあげると仮定すれば、どんなものでも喜んで受け取るだろう。例え割れたお皿の破片なんかでも後生大事に抱えていそうだ。でも今回は私ではなくサンタさんからのプレゼント。流石に咲夜もサンタさんから割れたお皿の破片をもらったら困惑するだろう。つまり私が探さないといけないのはサンタさんから咲夜がもらって嬉しいプレゼント。
そしてそれを探しているうちに2つ目の問題に当たる。咲夜はここに来た初日、私が棺桶で寝ている間に一通りこの部屋の大掃除をしてしまった。つまりこの部屋にあるものは全て把握している。にもかかわらず私は外に出られない以上、この部屋の物しか咲夜にあげることはできない。咲夜の枕元に置かれたプレゼントが元々この部屋にあるものだと気づけば咲夜は一体どんな反応をするだろう。私がサンタさんだと気づくだろうか。天然だからサンタさんが私のものを奪って咲夜にあげたなんて頓珍漢なことを言い出すかもしれない。咲夜の夢を守るために立ち上がったが、そんな私に立ちはだかる問題もまた咲夜のいい行いから産まれたものだった。
「自称サンタさんも大変なんだねー……」
苦し紛れにイルミネーションからリボンを取り出し、私がプレゼント❤なんてしようとするくらいまで追い詰められていると、そういえばあの日のお姉様もそうだったのだろうかと思い出す。今でこそ私もサンタさんを信じていないが、その存在を夢見てプレゼントを貰っていた少女時代もあった。夢が壊れたのはあの年のクリスマス。当時のことは詳しく知らないけど、世間の情勢がうんたらかんたらとかでお父様もお母様もとても忙しく、12月になる前からお屋敷をずっと空けていた。幼い私はそれが自身へのプレゼントに影響があるなんて梅雨ほども思わず、例年通り次の日の朝には枕元にプレゼントが置かれていることを疑うことなく眠りについていた。そして深夜、もくもくのひげをつけていつも以上に真っ赤なお姉様が私の部屋に仕掛けていた侵入者用のトラップに引っかかっていた。この自称サンタさんは尊大な態度で悪びれることなく世界の真実を私に告げ、夢を打ち砕かれた私はトラップのせいで抵抗できないお姉様を朝までぼっこぼこにしてやったのを覚えている。その後に渡されたぶっさいくな手作りのぬいぐるみについては、私のせいで顔が歪んだと頑なに弁明していたが、私は知っている。自称サンタさんはぼっこぼこにされながらも務めを果たしてプレゼントは死守していたし、何よりお姉様が捕まった時になんだろこの手に持っているぶっさいくなやつ……って思ったの覚えているからあれは元からぶっさいくだったはずだ。
「……あれ?」
ふと閃いて棺桶の中をごそごそと漁る。引っ張り出したのは私より5つ年下のぶっさいくなぬいぐるみ。耳は左右非対称で輪郭も少し歪み、見る角度によっては笑っているようにも泣いているようにも見える。かと言ってそういう不気味さを売りにするには僅かながらの愛嬌が足を引っ張る。そうでなくても何度も下手くそな補修がされた形跡が残っていて、随分とくたびれてしまっており、とても値段のつけられない代物だ。
「……ローレンス。お前ともなんだかんだ随分と長い付き合いだね。それこそこの家ではお姉様の次くらいかな」
咲夜はこの部屋を勝手に大掃除したから部屋の物は全て把握しているだろう。しかし私が眠っていたこの棺桶の中まで開けてはいないはずだ。ここは最後に残された私だけのプライベート空間。ぬいぐるみのローレンスはずっとそこにいたのだから、咲夜もこの子のことは知らない。
相変わらずぶっさいくなぬいぐるみを抱きかかえては彼との思い出を振り返る。碌な思い出がない。引き篭もりの人生にあまり大きなイベントはなかった。思い出したのはせいぜい長年一緒にいたせいで臭うからと洗濯したら、四肢がばらばらになって帰ってきたことくらい。あの時はお姉様に修繕を頼んだら左右の腕が逆になって帰ってきたのを覚えている。
「次のご主人様は私よりもずっといい子で優しい子、少なくても物は大事にする子だ。おまけにセンスも少しおかしいから、ぶっさいくなお前のことも気にいるかも知れない」
500年近くもの間、私が眠りにつく度にただでさえ狭い棺桶のスペースを我が物顔で陣取るふてぶてしい彼ならきっとうまくやっていけるだろう。500年近く私の寝床を守り続けた彼ならきっと咲夜の夢も守ってくれるだろう。
「さよならローレンス」
腐れ縁の相棒を咲夜の枕元に贈り、咲夜の頭を優しく撫でてみる。
「メリークリスマス十六夜咲夜。お前がいい子だってことはこの館の皆が知っている。だから今は安心してお眠り」
そのまま手を握りながらベッドの隣で眠りにつく。今まさにこの手の中にあるものを壊さないようにと願いながら。
フランも宝物を手放しても惜しくないと思える人ができたようで微笑ましかったです
心温まりました
さようならローレンス
さようなら
クリスマスって、とても不思議な時期ですよね。
このふわふわした感じはサンタさんを信じる人と信じていない人と、信じていた人の交わる日だからでしょうか。
ご馳走様でした。面白かったです。
天然咲夜と姉ムーブのフランドールが可愛いくて微笑ましく思えました。話の展開の仕方も好きで、特に咲夜の寝言がフランドールを奮い立たせる起点となったところは良かったです。
器用さは……