「おかしい」
幽香が作ってくれたディナーを食べる。
今日のメニューは野菜を切って焼いただけの野菜ステーキ。
野菜の味と、塩コショウとたれ。味付けはそれだけ。
それがこんなに美味しいのはずるい。
「美味しい、の間違いでしょ。言葉は正しく使いなさい」
「美味しいけどおかしい。こんなに美味しいのはおかしい」
もぐもぐもぐ。人参もピーマンも椎茸も美味しい。
普通に焼いただけじゃ絶対ここまで美味しくならないのに。
他のところで野菜を食べてもこんなに美味しく感じないのに。
絶対味の素とか中毒性のある麻薬とか入れてるに違いない。
「美味しいならいいじゃない。何が気に入らないのよ」
幽香が肩をすくめて自分の分のワインを注ぐ。
「焼いただけでどうしてこんなに美味しくなるの? 他のとこだともっと手間暇かけて味付けしてるのに。
幽香だと玉ねぎなんてごろんと丸ごと煮てる事があるし。皮も向かないでオーブンに入れてるし。
そんな雑な料理で、どこよりも野菜が美味しいなんて絶対におかしいよ」
幽香がおかしそうに笑う。
「花と一緒よ。素材が良ければ、下手に手を加えない方が美味しくなるのよ」
素材が良いのはまあ分かるけど。それでもこんなに美味しいのはやっぱりおかしいよ。
やっぱり、何か変な物を入れているに違いない。今度永琳のところに持って行ってみよう。
「アリスの料理は? アリスは野菜の原型留めないくらいすんごい凝ったのを作るけど。
それでもやっぱり美味しいよ?」
「あの小生意気な料理ね。あれはああいうスタイルだからいいのよ」
幽香がハーブティーの用意を始める。
目分量で何種類かの葉っぱを混ぜて、お湯を注ぐ。
少しするとレモンみたいなとても良い匂いが漂ってくる。
「はい、食後のデザート。文句ばっかり言ってるとあげないわよ?」
ハーブティーと一緒にデザートも持ってきてくれる。
それを見たら、もう全部どうでもよくなった。
「食べる! 幽香の料理はいつも美味しくて幸せよ」
笑顔で受け取る。
マグカップくらいの大きな容器にかぼちゃのプリンがたっぷり詰まってる。
食べると甘くてこってりしてて。どうしてもにやけてしまう。
緩んだ頬が戻らないし。しかめっ面をしようとしても出来ない。
プリンを半分くらい食べてから、幽香が淹れてくれたハーブティーを飲む。
美味しい。すっきりしてて、とっても爽やかな味わい。初夏の草原って感じ。
幽香が私を見てにやにやしてるけど。美味しいものは美味しいんだから仕方ない。
美味しいプリンに勝てるものなんてあんまり無いんだから。
幸せな顔をしながら残りのプリンをゆっくり食べて考える。
お茶もデザートもしっかり作れる。パンも作れる。手間をかけずに美味しい料理が作れる。
花だって沢山咲かせてる。
年の功かもしれないけど。女の子の欲しいものを全部持ってて。
やっぱり幽香はずるいと思う。
§
「幽香はずるい」
三時のおやつはアリスの家で。
今日のおやつはゼリーポンチって言ってた。
深いグラスに、サイコロみたいに四角く切ったゼリーが沢山入ってる。
ゼリーの一つ一つに色がついてて。虹みたいに七色ある。
しゅわしゅわと炭酸の中に沈んでて。眺めてるだけでもとっても綺麗。
持ち上げて光に当ててみると、きらきらしてて、とっても美味しそう。
「シンプルな料理ほど、素材の味と料理人の腕が重要なのよ。お寿司だってそうでしょ?
ご飯の上にお魚を乗せるだけの料理なのに、色んな工夫があって、長い修行が必要なんだから」
「そーれーでーもー。アリスは悔しくないの?」
ゼリーの一つ一つからちゃんと果物の味がする。
赤は苺。オレンジはオレンジ。緑がミント。黄色が林檎。紫がブドウ。水色がブルーハワイ。
それと黒のコーラ味。
よくある薄い味じゃなくて、これだけずっと口の中に入れておいても楽しめる味の濃さ。
一つずつ食べても美味しいし。いくつかまとめて食べると口の中がとっても楽しくなる。
「全然。その野菜を作ってるのは幽香だし。
調理をする何倍もの手間暇をかけて育てているんだもの。ずるいとは思わないわ。
それに、ああいうシンプルな料理こそ経験とセンスが必要で。
火加減とかタイミングにとっても神経を使うんだから。
塩コショウだけであそこまで美味しい料理を作るのは、ある意味天才ね」
「そういうもんかなあ。アリスはああいう簡単な料理は作らないの?」
「作らない事はないけど。どうせ幽香には敵わないもの。
それだったら、違うジャンルの料理を食べさせてあげた方が喜ばれるでしょ?
幽香がシンプルな料理を作るなら。私は幽香が作らないような凝った料理を作るわ」
アリスがコーヒーを持ってきてくれる。
紅茶やハーブとは違う、香ばしい匂いがする。
甘いものを食べた後にちょびっと飲むと丁度いい。
飲み切れない分は、ミルクと砂糖を入れてカフェオレにしてもらう。
「アリスは凝ったものを作りたがるよね」
「錬金術は台所から生まれた」
「うん?」
「料理も実験も、そんなに変わらないわ。外の世界ではどんどん興味深い調理技術が作られてるし。
道具も日々進歩して、魔法よりも魔法みたいな料理がどんどん作られてる。宝石みたいなお菓子も沢山あるのよ。
それを学ぶのも楽しいし。折角なら他の人にも見せて驚かせてあげたいじゃない。
あ、でも安心してね。魔法的な物とか麻薬的な物は混入してないから。人間が食べても大丈夫なものよ。
でも、あんまりここの料理に慣れてしまうと、他の人の料理じゃ満足できなくなるかもしれないけど」
アリスがかわいくウインクする。
アリスの料理と、人里の料理は、刺身と焼肉くらいジャンルが違うくて。
人里のお団子も美味しいし。アリスの料理しか食べれなくなるって事はないけれど。
それでもやっぱり、月に何度かはアリスのフルコースを食べたくなる。
「そうね。アリスの料理は魔法みたいだもんね」
見た目も綺麗で美味しくて。人里には無い新しい料理がいっぱいで。
アリスの料理が、見ても食べても一番面白い。
§
幽香と毒人形が神社にやってきた。
幽香はいつになくにこにこしていて。メディスンは真面目な顔をしている。
この時点で嫌な予感しかしない。
「この子を預かって欲しいのよ」
「お断りよ」
とりあえず断る。
その後にメディスンが、「ん」と言って、旬の野菜が沢山入った箱を差し出してくる。
土の匂いと、美味しそうな野菜の香りがする。
ひとまずそれを受け取って、とりあえず話を聞くだけ聞く事にする。
要約すると、メディスンに料理を教えて欲しいらしい。
他人が作った料理を食べるだけじゃなくて、自分でも作ってみたくなったらしい。
それで丁度良い先生を探しているのだけど、幽香はシンプル過ぎ。アリスは凝りすぎ。
永遠亭は合成食品とかソイレントの話をし始めたので教育に悪いとか何とか。
私が作る程度の料理だったら、初心者にも優しいだろうから適任だろうという流れになったらしい。
なんだそれ。
「カレーの材料と、他にいくつか使えそうな食材を入れてるから好きに使ってね。余ったらあげるわ。
私は出掛けるから、後はよろしくね」
下拵えまでは出来るから。
毒は制御出来るけど、一応手袋は着けさせた方がいいわよ。
万一の時の解毒薬も渡しておくわ。
おイタしたら退治してもいいから。
夕飯が出来上がる頃に来るから、人数分よろしくね。
そこまで言って、花吹雪に紛れて姿が消えてしまう。
こちらの質問も文句も一切受け付けずに帰ってしまった。
いつもならふよふよ飛んでく癖に今日に限ってさくっと姿を消しやがって。追いかける事も出来やしない。
後には私とメディスンと、野菜の箱だけが残された。
「勝手な奴」
メディスンを見る。
お願いしますと頭を下げてくる。
目が輝いていて、やる気は十分らしい。
はぁ……。
今日は御守りかあ。
渡された野菜の箱を見る。
幽香の畑で作っただけあって、見るからに美味しそうだ。この辺は流石と言ってやろう。
これだけの量があれば、暫くは食べる物に困らなそうだ。
仕方ない。買収されてやるか。
「えっと、メディスンだっけ? 今日はよろしくね」
「よろしく、霊夢っ!」
全部幽香の言いなりなのも腹立つから、肉じゃがでも作ってやろう。後は適当にお浸しと炒め物でいいや。
妖怪に料理を教えるって。巫女を何だと思ってるのよ。
§
一人で夜風に当たっているところに、幽香が晩酌を持ってやってくる。
「ご馳走様。意外と上手に出来てたじゃない」
「どういたしまして」
「それに、意外とちゃんと教えてたし」
「見てたの?」
「勿論。こんなに面白いものを見ないわけないじゃない」
「見られてる気はしてたけど、紫じゃなくてあんただったのね」
「紫と一緒に見てたわ。あの霊夢ちゃんがこんなに立派になってって涙を流して大笑いしてたわよ。
今頃は萃香と一緒にお酒でも飲んでるんじゃないかしら」
「後で見物料払わせてやる」
熱燗を受け取り、乾杯をしてからお酒を飲む。
「自分だって和食くらい作れるでしょうに。どういうつもりよ」
「楽しみのお裾分けよ。たまにはこういうのもいいでしょ?」
幽香が楽しそうに微笑む。それを見て熱燗を煽る。
「まあ。そんなに悪くはなかったけど」
幽香がお替りを注いでくれる。
今頃台所ではメディスンとアリスが食器を洗って後片付けをしている。
二人は片づけが終わったら帰るらしい。
「これからも連れてくる気?」
「次からは一人でも来れるだろうし。
メディが飽きるか、博麗秘蔵のレシピを全部制覇するまでは来るんじゃないかしら。
庶民の味にも慣れさせておいた方がいいでしょう?」
「はいはい」
幽香はもうしばらく居るつもりだろう。というか、泊まっていくかもしれない。
今日に限っては、追い返す気にもならない。
というか、話したいことが山ほどある。
「ありがとう、幽香」
「どういたしまして」
お酒を飲む。
今日は朝までコースかしらね。
幽香が作ってくれたディナーを食べる。
今日のメニューは野菜を切って焼いただけの野菜ステーキ。
野菜の味と、塩コショウとたれ。味付けはそれだけ。
それがこんなに美味しいのはずるい。
「美味しい、の間違いでしょ。言葉は正しく使いなさい」
「美味しいけどおかしい。こんなに美味しいのはおかしい」
もぐもぐもぐ。人参もピーマンも椎茸も美味しい。
普通に焼いただけじゃ絶対ここまで美味しくならないのに。
他のところで野菜を食べてもこんなに美味しく感じないのに。
絶対味の素とか中毒性のある麻薬とか入れてるに違いない。
「美味しいならいいじゃない。何が気に入らないのよ」
幽香が肩をすくめて自分の分のワインを注ぐ。
「焼いただけでどうしてこんなに美味しくなるの? 他のとこだともっと手間暇かけて味付けしてるのに。
幽香だと玉ねぎなんてごろんと丸ごと煮てる事があるし。皮も向かないでオーブンに入れてるし。
そんな雑な料理で、どこよりも野菜が美味しいなんて絶対におかしいよ」
幽香がおかしそうに笑う。
「花と一緒よ。素材が良ければ、下手に手を加えない方が美味しくなるのよ」
素材が良いのはまあ分かるけど。それでもこんなに美味しいのはやっぱりおかしいよ。
やっぱり、何か変な物を入れているに違いない。今度永琳のところに持って行ってみよう。
「アリスの料理は? アリスは野菜の原型留めないくらいすんごい凝ったのを作るけど。
それでもやっぱり美味しいよ?」
「あの小生意気な料理ね。あれはああいうスタイルだからいいのよ」
幽香がハーブティーの用意を始める。
目分量で何種類かの葉っぱを混ぜて、お湯を注ぐ。
少しするとレモンみたいなとても良い匂いが漂ってくる。
「はい、食後のデザート。文句ばっかり言ってるとあげないわよ?」
ハーブティーと一緒にデザートも持ってきてくれる。
それを見たら、もう全部どうでもよくなった。
「食べる! 幽香の料理はいつも美味しくて幸せよ」
笑顔で受け取る。
マグカップくらいの大きな容器にかぼちゃのプリンがたっぷり詰まってる。
食べると甘くてこってりしてて。どうしてもにやけてしまう。
緩んだ頬が戻らないし。しかめっ面をしようとしても出来ない。
プリンを半分くらい食べてから、幽香が淹れてくれたハーブティーを飲む。
美味しい。すっきりしてて、とっても爽やかな味わい。初夏の草原って感じ。
幽香が私を見てにやにやしてるけど。美味しいものは美味しいんだから仕方ない。
美味しいプリンに勝てるものなんてあんまり無いんだから。
幸せな顔をしながら残りのプリンをゆっくり食べて考える。
お茶もデザートもしっかり作れる。パンも作れる。手間をかけずに美味しい料理が作れる。
花だって沢山咲かせてる。
年の功かもしれないけど。女の子の欲しいものを全部持ってて。
やっぱり幽香はずるいと思う。
§
「幽香はずるい」
三時のおやつはアリスの家で。
今日のおやつはゼリーポンチって言ってた。
深いグラスに、サイコロみたいに四角く切ったゼリーが沢山入ってる。
ゼリーの一つ一つに色がついてて。虹みたいに七色ある。
しゅわしゅわと炭酸の中に沈んでて。眺めてるだけでもとっても綺麗。
持ち上げて光に当ててみると、きらきらしてて、とっても美味しそう。
「シンプルな料理ほど、素材の味と料理人の腕が重要なのよ。お寿司だってそうでしょ?
ご飯の上にお魚を乗せるだけの料理なのに、色んな工夫があって、長い修行が必要なんだから」
「そーれーでーもー。アリスは悔しくないの?」
ゼリーの一つ一つからちゃんと果物の味がする。
赤は苺。オレンジはオレンジ。緑がミント。黄色が林檎。紫がブドウ。水色がブルーハワイ。
それと黒のコーラ味。
よくある薄い味じゃなくて、これだけずっと口の中に入れておいても楽しめる味の濃さ。
一つずつ食べても美味しいし。いくつかまとめて食べると口の中がとっても楽しくなる。
「全然。その野菜を作ってるのは幽香だし。
調理をする何倍もの手間暇をかけて育てているんだもの。ずるいとは思わないわ。
それに、ああいうシンプルな料理こそ経験とセンスが必要で。
火加減とかタイミングにとっても神経を使うんだから。
塩コショウだけであそこまで美味しい料理を作るのは、ある意味天才ね」
「そういうもんかなあ。アリスはああいう簡単な料理は作らないの?」
「作らない事はないけど。どうせ幽香には敵わないもの。
それだったら、違うジャンルの料理を食べさせてあげた方が喜ばれるでしょ?
幽香がシンプルな料理を作るなら。私は幽香が作らないような凝った料理を作るわ」
アリスがコーヒーを持ってきてくれる。
紅茶やハーブとは違う、香ばしい匂いがする。
甘いものを食べた後にちょびっと飲むと丁度いい。
飲み切れない分は、ミルクと砂糖を入れてカフェオレにしてもらう。
「アリスは凝ったものを作りたがるよね」
「錬金術は台所から生まれた」
「うん?」
「料理も実験も、そんなに変わらないわ。外の世界ではどんどん興味深い調理技術が作られてるし。
道具も日々進歩して、魔法よりも魔法みたいな料理がどんどん作られてる。宝石みたいなお菓子も沢山あるのよ。
それを学ぶのも楽しいし。折角なら他の人にも見せて驚かせてあげたいじゃない。
あ、でも安心してね。魔法的な物とか麻薬的な物は混入してないから。人間が食べても大丈夫なものよ。
でも、あんまりここの料理に慣れてしまうと、他の人の料理じゃ満足できなくなるかもしれないけど」
アリスがかわいくウインクする。
アリスの料理と、人里の料理は、刺身と焼肉くらいジャンルが違うくて。
人里のお団子も美味しいし。アリスの料理しか食べれなくなるって事はないけれど。
それでもやっぱり、月に何度かはアリスのフルコースを食べたくなる。
「そうね。アリスの料理は魔法みたいだもんね」
見た目も綺麗で美味しくて。人里には無い新しい料理がいっぱいで。
アリスの料理が、見ても食べても一番面白い。
§
幽香と毒人形が神社にやってきた。
幽香はいつになくにこにこしていて。メディスンは真面目な顔をしている。
この時点で嫌な予感しかしない。
「この子を預かって欲しいのよ」
「お断りよ」
とりあえず断る。
その後にメディスンが、「ん」と言って、旬の野菜が沢山入った箱を差し出してくる。
土の匂いと、美味しそうな野菜の香りがする。
ひとまずそれを受け取って、とりあえず話を聞くだけ聞く事にする。
要約すると、メディスンに料理を教えて欲しいらしい。
他人が作った料理を食べるだけじゃなくて、自分でも作ってみたくなったらしい。
それで丁度良い先生を探しているのだけど、幽香はシンプル過ぎ。アリスは凝りすぎ。
永遠亭は合成食品とかソイレントの話をし始めたので教育に悪いとか何とか。
私が作る程度の料理だったら、初心者にも優しいだろうから適任だろうという流れになったらしい。
なんだそれ。
「カレーの材料と、他にいくつか使えそうな食材を入れてるから好きに使ってね。余ったらあげるわ。
私は出掛けるから、後はよろしくね」
下拵えまでは出来るから。
毒は制御出来るけど、一応手袋は着けさせた方がいいわよ。
万一の時の解毒薬も渡しておくわ。
おイタしたら退治してもいいから。
夕飯が出来上がる頃に来るから、人数分よろしくね。
そこまで言って、花吹雪に紛れて姿が消えてしまう。
こちらの質問も文句も一切受け付けずに帰ってしまった。
いつもならふよふよ飛んでく癖に今日に限ってさくっと姿を消しやがって。追いかける事も出来やしない。
後には私とメディスンと、野菜の箱だけが残された。
「勝手な奴」
メディスンを見る。
お願いしますと頭を下げてくる。
目が輝いていて、やる気は十分らしい。
はぁ……。
今日は御守りかあ。
渡された野菜の箱を見る。
幽香の畑で作っただけあって、見るからに美味しそうだ。この辺は流石と言ってやろう。
これだけの量があれば、暫くは食べる物に困らなそうだ。
仕方ない。買収されてやるか。
「えっと、メディスンだっけ? 今日はよろしくね」
「よろしく、霊夢っ!」
全部幽香の言いなりなのも腹立つから、肉じゃがでも作ってやろう。後は適当にお浸しと炒め物でいいや。
妖怪に料理を教えるって。巫女を何だと思ってるのよ。
§
一人で夜風に当たっているところに、幽香が晩酌を持ってやってくる。
「ご馳走様。意外と上手に出来てたじゃない」
「どういたしまして」
「それに、意外とちゃんと教えてたし」
「見てたの?」
「勿論。こんなに面白いものを見ないわけないじゃない」
「見られてる気はしてたけど、紫じゃなくてあんただったのね」
「紫と一緒に見てたわ。あの霊夢ちゃんがこんなに立派になってって涙を流して大笑いしてたわよ。
今頃は萃香と一緒にお酒でも飲んでるんじゃないかしら」
「後で見物料払わせてやる」
熱燗を受け取り、乾杯をしてからお酒を飲む。
「自分だって和食くらい作れるでしょうに。どういうつもりよ」
「楽しみのお裾分けよ。たまにはこういうのもいいでしょ?」
幽香が楽しそうに微笑む。それを見て熱燗を煽る。
「まあ。そんなに悪くはなかったけど」
幽香がお替りを注いでくれる。
今頃台所ではメディスンとアリスが食器を洗って後片付けをしている。
二人は片づけが終わったら帰るらしい。
「これからも連れてくる気?」
「次からは一人でも来れるだろうし。
メディが飽きるか、博麗秘蔵のレシピを全部制覇するまでは来るんじゃないかしら。
庶民の味にも慣れさせておいた方がいいでしょう?」
「はいはい」
幽香はもうしばらく居るつもりだろう。というか、泊まっていくかもしれない。
今日に限っては、追い返す気にもならない。
というか、話したいことが山ほどある。
「ありがとう、幽香」
「どういたしまして」
お酒を飲む。
今日は朝までコースかしらね。
ただし誤魔化しもきかなくなるからMAX目指すのがコンマ3ケタの正解が必要になるイメージ
六十点は簡単にとれるけど七十点以上から一点あげることが指数関数的に難しくなるみたいな
逆に工程数が多い料理はまず六十点とることが難しくなる
でも七十点以上から一点あげることが指数関数的に難しくなるという程ではない
そんなイメージ
もちろん美味しそうなのは料理のことデスヨ?
どっちもディストピアだし